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4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2010年12月28日

2011年1月

調査情報部

◆ブラジル◆

需給見通し
(1)2010年12月における生産見通し

 生産量の約9割を占める中南部地域の4月から11月15日までのさとうきび生産量は5億2520万トン(前年同期比10.8%増)、砂糖生産量は3200万トン(粗糖換算、同22.1%増)、エタノール生産量は2400万キロリットル(同16.5%増)とされ、いずれも前年度を上回っている。しかしながら、ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)によれば、乾燥した天候によりさとうきび生産量が当初予測を下回り、未収穫のさとうきびは4000万トン程度にまで減少していることから、砂糖、エタノール生産量はいずれも当初予測を下回る可能性が高まっている。収穫が平年に比べ早いペースで行われた結果、早期に圧搾を終了する砂糖・エタノール工場が多く、11月中旬までに操業を停止した工場は76と、前年同期の17工場を大幅に上回った。

 2010/11ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)におけるブラジル全体のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け、796万ヘクタール (前年度比5.4%増)に増加するとみられる。さとうきび生産量は、前述の通り、主産地中南部で乾燥した天候が続き、単収が低下したため、前月予測を100万トン下回る6億2850万トン(同3.7%増)と予測される。これを受け、砂糖生産量は4170万トン(粗糖換算、同15.5%増)と前月予測から70万トン引き下げられたものの、過去最高に達すると見込まれる。なお、エタノール生産量は2820万キロリットル(同11.0%増)と予測される。

(2)貿易状況

 2010/11年度の砂糖輸出量は、生産量の下方修正により前月予測を70万トン下回るものの、増産と世界的な需要の高まりを受け、2920万トン(粗糖換算、前年度比13.2%増)と前年度からかなり大きく増加するとみられる。ただし、国際砂糖価格の上昇を背景に輸出向けの粗糖生産が優先された結果、国内需給がひっ迫し、価格が上昇しているため、製糖業者が輸出向けに販売した砂糖を買い戻し、国内へ供給する動きがみられるなど、輸出動向に不透明な面もある。

 世界の需給ひっ迫を背景に月間砂糖輸出量は2009年以降高水準で推移しており、2010年11月は310万トンと、4カ月連続で300万トンに達した。主要輸出先はロシア、インドネシア、カナダであった。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, December 2010”
ブラジルさとうきび産業協会(UNICA) “Media Center” 2010/11/29記事
図11 ブラジルの粗糖輸出状況
図12 ブラジルの砂糖輸出量

◆インド◆

インドの需給見通し
(1)2010年12月における生産見通し

 2010/11インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け、516万ヘクタール(前年度比24.9%増)に増加すると予測される。さとうきび生産量は、収穫面積の増加に加え、モンスーン期の降水量が平年並みとなり、単収の増加が見込まれることから、3億6300万トン(同31.0%増)と、前年度から大幅な増加が予測される。さとうきびの増産により、砂糖生産量は2880万トン(粗糖換算、同41.9%増)に回復すると見込まれる。ただし、主産地のウッタル・プラデーシュ州において、生産者と製糖工場によるさとうきび価格の交渉が長引き、製糖作業が本格化したのは11月下旬と平年に比べ遅く、また、マハーラーシュトラ州では、季節外れの降雨が収穫に悪影響を及ぼし、11月20日までの同州における砂糖生産量は41万トン(白糖換算)と、前年同期(57万トン)を下回るなど生産に不透明な面もあり、今後の動向が注目される。

(2)貿易状況

 2010/11年度の砂糖消費量は2550万トン(粗糖換算、前年度比2.0%増)と、3年ぶりに生産を下回るとみられる。このため、輸入量は前年度から大幅減少の80万トン(粗糖換算、同81.8%減)と予測される。なお、2010年6月における粗糖・白糖輸入量は前年同月比42.8%減の16万2000トンとなり、主要な輸入先はブラジルであった。

 砂糖生産の大幅な回復により、インドは今年度、純輸出国に転じるとの観測が強まっている。政府は9月以降、合計150万トンの砂糖輸出を許可したとみられ、これらはALS*注制度下で輸入された粗糖を原料とする白糖、および前年度に輸入された粗糖、白糖の余剰品とされる。現時点では、国産原料由来の砂糖輸出は行われていない。パワル農相によれば、政府は今年度の生産が予測通り豊作となれば追加輸出を許可するとされ、仮にこれが行われた場合、2010/11年度の輸出量は330万トンに達すると見込まれる。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, December 2010”
*注:ALS(Advanced Licensing Scheme)とは、精製後の再輸出を条件に輸入粗糖の関税を免除する制度。
図13 インドの粗糖輸入状況

◆中 国◆

中国需給見通し
(1)2010年12月における生産見通し

 中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。2010/11中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰による作付け増加を受け、152万ヘクタール(前年度比4.1%増)に増加するとみられる。さとうきび生産量については、主産地の広西壮族自治区と雲南省で深刻な干ばつが続き、さとうきびの初期生育に悪影響を及ぼしたことから、前月予測を70万トン下回る8990万トン(同9.9%増)と予測される。広西壮族自治区では11月から製糖作業が開始され、これまでの砂糖生産量は30万トン(白糖換算)に達したとされる。

 黒龍江省など北部のてん菜生産地では、既に製糖作業が本格化している。2010/11年度のてん菜収穫面積は、春の低温で作付けに遅れが生じたことから当初の政府計画を下回るものの、19万ヘクタール(前年度比26.7%増)と増加が見込まれる。てん菜生産量は、収穫面積が増加した上、生育期の天候が良好で単収が向上したことから、760万トン(同52.0%増)と前年度から大幅に増加するとみられる。

 原料作物の増産により、中国全体の砂糖生産量は前年度から増加し、1280万トン(粗糖換算、前年度比8.5%増)と予測される。

(2)貿易状況

 政府は11月22日、2010/11年度では2回目となる砂糖の国家備蓄放出(20万トン、白糖換算)を行った。平均販売価格は1トン当たり6,288元(81,932円:1元=13.03円注)と、10月放出時の同6,680元(87,040円)から下落したものの、依然高水準となった。なお、前年度においては、8回にわたり合計171万トン(白糖換算)の国家備蓄が放出されている。

 2010/11年度の砂糖生産量は回復が見込まれるものの、消費量が1580万トン(粗糖換算、前年度比3.9%増)と予測されるため、前年度から引き続き需要が供給を上回るとみられる。輸入量は、前年度の放出により国家備蓄が100万トン程度にまで減少したとみられることから、前年度から大幅増加の220万トン(粗糖換算、同37.5%増)と予測される。ただし、中国では異性化糖の生産が需要の増加を反映して増加しているため、砂糖輸入量が予測を下回る可能性もある。

 2010年10月における粗糖・白糖輸入量は前月から減少したものの、前年度の減産による国内需給のひっ迫を受け、前年同月の約4.4倍となる25万3000トンに達した。輸入先の大半はブラジルであった。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, December 2010”
注:TTS相場11月最終日
図14 中国の粗糖輸入状況
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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