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ロシアの砂糖需給動向

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最終更新日:2010年12月28日

ロシアの砂糖需給動向
〜干ばつによる減産で、2010/11年度の輸入量320万トンに達する見通し〜

2011年1月

調査情報部

はじめに

 ロシアは、砂糖の年間消費量が600万トン(*注)に達する世界有数の消費国であり、需要の多くを輸入に頼っている。近年、国内生産は1990年代の経済混乱による落ち込みから回復しつつあり、輸入依存度も低下してきたが、2009/10ロシア砂糖年度(7月〜翌6月)は減産となって再び輸入が増加し、2010/11年度についても、当初は増産が見込まれていたものの、夏季の干ばつにより減産の可能性が高まり、輸入量の増加が予測される。同国の輸入増加は世界の砂糖需給への影響が大きく、動向が注目される。
 
*注:本レポートの数量は粗糖換算である。
 
 

近年、砂糖の輸入依存度は低下

 ロシアでは国産のてん菜を原料として砂糖生産が行われている。生産量は、1990年代、ソビエト連邦崩壊に伴う経済混乱と政府の砂糖産業に対する政策の不透明さから200万トンを割り込む水準にまで減少した。
 
 一方、消費量は、食糧不足を受け、安価にカロリーを摂取できるパン類や菓子類の消費が増加したことから、年間600万トンを上回る水準にまで増加した。国内供給の不足は輸入で補われており、これらの大半は世界最大の生産国ブラジル産の粗糖である。輸入粗糖はてん菜製糖工場で製糖期(8月〜12月)以外の期間に精製される。
 
 2000年代に入り、砂糖産業への投資が再開されたことでてん菜の生産量が増加し、製糖歩留まりも向上したことから、砂糖生産量は年々増加した。その一方で、消費量は人口減少の影響を受け頭打ちとなった。このため、輸入量は減少傾向で推移し、2007/08年度には初めて生産量が輸入量を上回った。
 
 
 
 
 
 
 国内砂糖価格は、国際価格に連動しつつも、可変輸入関税制度によって高い水準に維持されている。この制度は、国際価格の低迷時に高額の関税を設けることで国内のてん菜生産者を保護することを目的としており、関税は国際価格に反比例する。
 
 ただし、国産原料由来の砂糖が販売される時期には高く、輸入粗糖の精製が行われる時期には低く設定される仕組みとなっている。すなわち、8月1日から4月30日までの期間は、関税の上限が1トン当たり270米ドル、下限が140米ドルとされ、5月1日から7月31日までの期間は、上限が同250米ドル、下限が50米ドルに引き下げられる。
 
 関税は毎月、ニューヨーク粗糖市場の先物平均価格に基づいて設定されており、この参照期間は2010年4月、3カ月から1カ月に短縮された。なお、制度の対象となっているのは粗糖だけであり、白糖には年間を通して高い固定関税が適用されている。
 
 
 
 

2009/10年度は減産となり、輸入量再び増加

 ロシアの砂糖生産は近年増加を続けてきたが、2009/10年度においては、小麦など代替作物の価格高騰によるてん菜作付けの減少、2008年金融危機による投資の減少、および天候不順の影響を受け、生産量は350万トン(前年度比7.6%減)に減少した。
 
 一方、消費量は金融危機による2008/09年度の減少からやや回復し、610万トン(同6.0%増)となった。このため、輸入量は前年度から大幅増加の290万トン(同53.8%増)となり、3年ぶりに増加に転じた。
 
 国内の白糖卸売価格は、国際砂糖価格の高騰と減産による需給ひっ迫で上昇を続け、2010年4月には1トン当たり26,500ルーブル(78,175円、1ルーブル=2.95円注)にまで達し、前年同月の同20,400ルーブル(60,180円)を大幅に上回った。
 
 しかしながら、5月に粗糖の輸入関税が前月の1トン当たり140米ドル(11,937円、1ドル=85.27円*注)から50米ドル(4,263円)に引き下げられ、また国際価格も下落したことから輸入量が急増し(図4)、白糖卸売価格は下落に転じた。6月以降は、国際砂糖価格の下落で輸入関税が再び引き上げられ、また5月の大量輸入の反動もあり、輸入量は低水準となっている。
 
*注:TTS相場11月最終日
 
 
 
 
 
 

干ばつによる減産で、2010/11年度の輸入量増加の見込み

 2010/11年度のてん菜収穫面積は、前年度の砂糖価格高騰で作付けが増加したことから、前年度から大幅増加の102万ヘクタール(前年度比24.1%増)とみられる。この増加により、てん菜生産量も当初増加が見込まれていたが、夏季の深刻な干ばつで単収が著しく低下したため、前年度から大幅減少の2150万トン(同19.6%減)と予測される。ロシア砂糖生産者連盟によれば、今年度のてん菜収穫はほぼ終わりつつあり、大幅な減産は確実との見方が強まっている。
 
 てん菜の減産により、砂糖生産量は300万トン(前年度比13.1%減)と減少が予測される一方、消費量は前年度並みの610万トンと見込まれる。このため、輸入量は320万トン(同12.2%増)に増加するとみられ、2010/11年度は4年ぶりに輸入量が生産量を上回る状況となる可能性が高まっている。輸入時期については、関税が引き下げられる2011年の5月〜7月が中心になるとみられる。干ばつによる減産に加え、国際価格も上昇したことから、国内の白糖卸売価格は7月以降再び上昇基調となり、10月には1トン当たり28,930ルーブル(85,343円)と4月の高値を上回った。
 
 世界有数の砂糖消費国ロシアの輸入増加は、豪州やインドネシアなど各国の天候不順による減産と相まって最近の国際砂糖価格に大きく影響しており、その動向については引き続き注視が必要とされる。
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:情報課)
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