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てん菜栽培作業受託の取り組み

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最終更新日:2011年6月10日

てん菜栽培作業受託の取り組み

2011年6月

しずお建設株式会社 専務取締役 森岡 秀雄
 

◎はじめに

 北海道北の大地士別市では、豊かな自然と冷涼で寒暖の差が大きいという気候を活かし、水稲・小麦・豆類・てん菜・ばれいしょなどが基幹産業である農業の主力作物として耕作されています。中でも砂糖の原料作物で北海道特産のてん菜(ビート)は、製糖工場が士別市にあることから主力中の主力作物と言えます。時代の流れと共に農業経営環境が大きく変化する中、当社は、この変化によるてん菜・てん菜糖生産関係者への影響を和らげるための中和剤的立場になれれば良いと考え、異業種ではありますが、農業に参入をいたしました。以下、建設業の当社がてん菜栽培作業受託という形で農業に参入した状況について若干つづってまいりたいと思います。

◎取り組み開始の経緯

 当地基幹産業である農業の経営環境は、平成に入り、農業後継者の多くが農村から都市へと憧れにも似た思いを抑えきれず、次々と新しい環境を求め流失するなど、厳しさを増してまいりました。このような状況は、農業経営の後継者不足を生み、離農地および休耕地が増加する所となりました。

 この結果、当地主力作物であるてん菜の作付は年を追うごとに減少していきました。北海道内のてん菜糖工場3社8工場体制の見直しが検討されるに至り、危機感を持った日本甜菜製糖株式会社士別製糖所(以下「日甜士別工場」)及び士別市は、てん菜作付面積増加に向けての行動を起こしたのです。

 この時点で、当社は、昭和55年以後継続して、てん菜の運搬に携わってきた関係もあり、日甜士別工場と士別市が直面する困難な状況の克服に少しでも貢献する事は、当社の今後にとって大きな意義があると判断いたしました。

 また一方、本業である建設業にあっても行財政改革からの長引く景気低迷や、公共投資縮減の影響から、従業員130名を抱え、車両・重機の保有台数が小規模リース会社を上回っていた当社にとって、取り巻く環境は大変厳しいものであり、先の見えない時代に突入いたしました。農業への参入は、当社従業員の働く場所の確保のためにも、有効であると捉えたのです。

 以上のような環境・時代背景から農業部門への参入を決定いたしました。

◎コントラクター業務の概要

 当社は、昭和43年創業、資本金3千万円、従業員95名、道路工事・農業土木工事を主力として年間16億円前後の売上高を計上している建設業者です。前述した状況から平成11年より5年間にわたり、てん菜を耕作するコントラクター事業を受託してまいりました。受託面積は表1のとおりです。当社は以前から北海道が発注する農業土木工事を受注していたため、農業機械を保有していた事に加え、農業経験者が多数作業員として従事していた事から、オペレーター数も十分にそろっており、比較的農業への参入が容易な体制でありました。
 
 

◎農作業請負のシステム

 当社が進めて来た農作業の請負システムは次の通りです。
 
 

◎システム運営の考え方

 当社の農作業を受託するに当たってのコンセプトは、当市経済において中核企業として貢献している製糖工場の存続、拡大、さらには雇用機会の増大による地域の活性化においており、このコントラクター事業においては、利益追求は二の次という考えに立ち、次のように契約条件を設定いたしました。

・コントラクター業務はてん菜に限定する
・農作業の請負単価は、士別市の農民連盟が設定している単価とする (農連単価5,000円〜6,000円/日、建設業単価最低8,000円)
・契約農業者の収支状況がマイナスになるようであれば、さらに見直しをし行い農業者の負担軽減を図ること
・契約農業者が希望する場合は、当社作業員として雇用すること

◎コントラクター事業の効果と課題

☆効果
・当社の雇用機会が広がり、雇用に対する従業員の安心感が増したこと
・地域から建設業を見る目が感謝の気持ちへと変化したこと
・当市中核企業である日甜士別工場との関係が一層強いものとなったこと

☆課題
・建設業単価と農連単価の差が大きい事から、採用時点の工夫が必要であること
・農作業における除草・防除などの適期管理作業を行う時期が建設業の繁忙期と重なり、農作業実施のタイミングのズレから減収につながることがあること

◎農業法人設立・認可

 当社は、5年間に渡るコントラクター事業の経験から、休耕地を取得し大型農業を行う事によって認定農業者の特典が得られ、さらに士別市のてん菜作付面積増加にも大きく貢献する事が出来るとの認識にたち、平成16年2月に農業法人を設立しました。(名称:士別エフ・シー(株))。

 農業法人設立後、直ちに農業生産法人認定申請を行い、認可された平成16年4月以後、農業委員会の斡旋を受けながら順次休耕地の取得に当たり、表2に示すとおり農地を取得して、てん菜作付面積を拡大する事となりました。平成23年度はてん菜の作付面積を100haに拡大することを計画しております。
 
 
 以上のように、当社はてん菜を中心に農業を展開してきましたが、平成18年に上記農業法人の名称を変更(かわにしの丘しずお農場(株))し、士別市の活性化推進事業であるサフォーク種羊の増頭計画に参加する事と致しました。表2における牧草面積は、サフォーク種羊用の放牧地と飼料収穫のための牧草地の面積であります。

◎今後の展望

 当社は、今日まで表2で示した行動を進めてまいりました。てん菜の耕作事業は当社にとって無くてはならない重要な事業となっています。平成22年度のてん菜による売上高は7千万円弱を計上する状況となっており、また、単年度収支においても若干の黒字という所までこぎ着ける結果となりました。今後においては、当面、てん菜作付面積110haで売上高1億円を目標に積極的に推進してまいりたいと思います。

 一方、サフォーク種羊飼育販売についても、現在700頭ほど飼育しており、平成22年は横浜で開催されたAPECのデナーにおいてメインデッシュとして利用され、さらには、国際線ファーストクラスのメインデッシュとしても利用されるなど「しべつブランドラム肉」として徐々にPRが進行しておりますので、こちらも積極的に推進を図ってまいりたいと思います。

◎結びに

 以上、当社が進めてきた農業参入事業について述べてまいりましたが、てん菜根部は北海道特産の砂糖の原料であることは勿論の事、その絞りかすはビートパルプとなって冬場の牛の重要な食料として利用され、さらに葉の部分は畑に鋤込み、緑肥として利用されています。また、そのほかにも副産物のビートオリゴ糖は、健康食品・調味料として今日大変重宝されております。

 てん菜は捨てる所の少ない極めて利用度の高い作物として、今後も生産を拡張させて行くことが重要です。

 食料基地北海道において生まれるてん菜は、安心・安全な作物として、今後一層飛躍するものと期待しています。当社におきましても、てん菜と共に北海道の農業を発展させていくという気持ちで歩んでまいりたいと思います。
 
 
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713