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4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2011年7月8日

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

2011年7月

調査情報部

ブラジル

 
 

(1)2011年6月における生産見通し

〜砂糖生産量、前年度をわずかに上回る見込み〜

 2011/12ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきびの収穫面積は、前年度とほぼ同じ790万ヘクタールと予測されるものの、さとうきび生産量は6億1110万トン(前年度比1.4%減)と、過去最高であった前年度をわずかに下回ると見込まれる。この要因として、2010年を通して乾燥した天候であったこと、ほ場の更新が低調であったことなどにより、単収が低下したことが考えられる。砂糖生産量は、4120万トン(粗糖換算)と過去最高であった前年度を0.8%上回る一方、エタノール生産量は2680万キロリットル(前年度比3.2%減)と前年度を下回ると予測されている。

 生産の約9割を占める中南部*注で、2011/12年度の収穫開始は遅れている。6月16日時点のさとうきび生産量は、1億3458万トン(前年同期比22.63%減)と、大幅に減少している。それに伴い砂糖生産量は674万トン(同24.78%減)、エタノール生産量は53万キロリットル(同25.42%減)である。5月後半には、収穫に適した乾燥した気候であったが、生育時期にあるさとうきびには悪影響となった。6月前半には、主生産地域に降雨があり、収穫作業が進まなかった。さらに降雨によって糖度の低下が懸念される。今後の天候次第ではあるものの、同地域における生産量は前年度の水準をやや下回る5億4700万トンになると予測される。

 ブラジルでは、フレックス車の増加にエタノール供給が追いついておらず、燃料費の高騰が問題となっている。さらに、砂糖・エタノール生産企業がさとうきびの多くを、エタノールよりも収益が良い砂糖に仕向けていることも影響している。このような状況を改善するため、政府は4月末、エタノールの安定供給を図る目的とした暫定措置令(MP532)を制定し、エタノールについては、重要なエネルギー政策として位置付け、石油・天然ガス・バイオエネルギー監督庁(ANP)が生産から消費、貿易まで一貫して所管すること、現在のエタノール需要を緩和するため、無水エタノールのガソリンへの混合比率を20〜25%から18〜25%に引き下げることとした。

*注:中西部、南東部および南部が含まれる。
 
 

(2)貿易状況

〜輸出量は前年度比5.6%減の見込み〜

 2011/12年度における砂糖の消費量は1270万トン(粗糖換算、前年度比1.9%増)、輸出量は、2750万トン(粗糖換算、同5.6%減)と予測される。

 5月の砂糖輸出量は160万トンであり、前月(130万トン)よりは22.8%増加したものの、前年同月(213万トン)と比較すると、24.7%減少している。輸出量の減少の原因として、(1)で述べたように主生産地における砂糖生産の開始の遅れが考えられる。ブラジルは、以前より輸出港のインフラ整備の必要性が多方面から指摘されており、昨年度は砂糖輸出の遅延が問題となった。今年度も輸出の出足が遅いにもかかわらず、既に港湾では、積み込みを待つ待機船が50を超えているようである。今後、輸出遅延が起こる可能性も否定できない。5月における主要輸出先は、ロシア、アラブ首長国連邦、アルジェリアなどであった。

資料:LMC“Monthly Sugar Report, June 2011” ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)“IMPRENSA”2011/6/13、28 プレスリリース
 
 

インド

 
 

(1)2011年6月における生産見通し

〜砂糖生産量は前年度比29.4%増の見込み〜

 2010/11インド砂糖年度(10月〜翌9月)の製糖作業は全州で終わりに近づき、さとうきび収穫面積は490万ヘクタール(前年度比19.3%増)、さとうきび生産量は3億3830万トン(同20.8%増)、砂糖生産量は2630万トン(同29.4%増)と、いずれも前年度から大きく増加する見通しである。

 4月末時点で砂糖生産量は前年同期比24.2%増の2260万トン(白糖換算)に達したとされる。このうち、最大生産地マハーラーシュトラ州では、前年同期比23.8%増の820万トン(白糖換算)となり、最終的には前年度(710万トン)から大幅増加の910万トン(白糖換算)に達すると予測されている。一方、国内価格が下落していることから、同州では2012/13年度の作付けが減少するのではないかとの懸念もある。また、ウッタル・プラデーシュ州では4月末に生産が終了し、砂糖生産量は585万トン(白糖換算)と前年度(520万トン)を上回った。

 2011/12年度については、インド気象庁が今季のモンスーンによる降雨が平年並みかやや上回ると予測しており、さとうきびの生育にとっては好材料となっていることから、さとうきび収穫面積は530万ヘクタール(前年度比8.1%増)、さとうきび生産量は3億7840万トン(同11.9%増)といずれも増加し、砂糖生産量も前年度を上回る2930万トン(粗糖換算、同11.6%増)と予測されている。
 
 

(2)貿易状況

〜輸出量は3年ぶりに200万トン超へ〜

 2010/11年度の砂糖消費量は2340万トン(粗糖換算、前年度比6.5%減)と、国内価格が高騰したことから前年度より減退すると予測されている。一方で生産量は増加しているため、その差から約300万トンの余剰が見込まれる。

 政府は3月下旬、OGL方式*注1による国産原料由来の砂糖50万トンの輸出を許可した。前述のように生産余剰が見込まれるものの、政府はこれまで同方式による追加輸出には慎重な対応をとっていた。しかし、製糖業者からの強い要請を受け、6月23日に50万トンの追加輸出を決定した。

 なお、同方式50万トン分の輸出は当初、5月18日までと定めていた申請期限を6月中旬まで延長した。これは、申請から承認までに時間を要することに加え、年初に比べ5月の前半まで国際価格が下落基調で推移してきたことから、製糖業者の申し込みが鈍化し制限枠の半分にも至らなかったことによる。

 また、これとは別に外交上の約束で5万1400トンがバングラデシュなどの近隣諸国に輸出されることとなっている。さらに、今年度はALS*注2制度に基づき白糖120万トンの輸出も許可された。

 以上のことから、2010/11年度の輸出量は前月から大幅に上方修正され、前年度比16.3倍の240万トン(粗糖換算)に達するものと予測されている。

 2011/12年度の消費量は、前年度に減少した反動から増加すると見込まれ2550万トン(粗糖換算、前年度比9.3%増)と予測されている。輸出量は、増産見込みを受け、300万トン(粗糖換算、同22.7%増)に増加する見通しである。

資料:LMC “Monthly Sugar Report , June 2011”他

*注1:OGL(Open General Licence)とは、登録を行った業者に対し、個別のライセンスを取得せずに輸出を許可する制度。
*注2:ALS(Advanced Licensing Scheme)とは、輸入粗糖を精製後、一定期間内に再輸出することを条件に輸入関税を免除する制度。
 
 

中国

 
 

(1)2011年6月における生産見通し

 中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。

 2010/11中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、150万ヘクタール (前年度比1.4%増)にとどまるとみられている。さとうきび生産量は、夏季の干ばつや昨年12月から1月にかけて発生した低温の影響により、前年度から微減の8100万トン(同0.1%減)と予測される。単収の減少およびさとうきびの品質低下により、さとうきび由来の砂糖生産量は1040万トン(粗糖換算、同6.1%減)と、生産が少なかった前年度からさらに減少するとみられている。

 てん菜生産地では、2010/11年度の生産が終了した。同年度のてん菜収穫面積は、黒龍江省を中心に作付けが増えたことから19万ヘクタール(前年度比47.6%増)と、前年度から大幅に増加した。このため、てん菜生産量は690万トン(同37.9%増)に回復し、てん菜由来の砂糖生産量は前年度から大幅増加の90万トン(粗糖換算、同31.1%増)に達したとみられている。

 この結果、中国全体の砂糖生産量は前年度から減少し1130万トン(粗糖換算、同4.1%減)とみられる。これは前回の予想1171万トンと比較して3.5%下方修正された。

 2010/11年度が3年連続の天候不順により大幅な減産となり、中国国内の砂糖価格は過去最高水準を記録したことから、2011/12年度の作付面積は、低温などの影響が残る主産地や労働力不足など問題があるものの回復に向かうと予測されている。
 
 

(2)貿易状況

 2010/11年度の砂糖消費量は前年度比2.2%減の1470万トン(粗糖換算)と予測され、生産量との差は300万トンを超えるとみられている。政府は需給ひっ迫に対応するため、今年度において5回にわたり合計103万トン(白糖換算)の国家備蓄を放出した。5回目の放出は6月1日に入札が行われ、25万7千トンが1トン当たり6844元(87,466円。5月末TTSレート1元=12.78円で換算)で市場に供給されている。国家備蓄水準については、前年度にも171万トン(白糖換算)が放出されており、備蓄量は少なくなっているとみられる。このような需給ひっ迫と国家備蓄の減少を受け、輸入量は前年度から大幅増加の210万トン(粗糖換算、前年度比36.3%増)と予測されている。

 4月の粗糖・白糖輸入量は15.8万トンと、前年同月の8倍を越える水準となった。主な輸入先は粗糖としてキューバから8.8万トン、タイから5万トン、白糖として韓国から1.2万トンであった。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, June 2011”
 
 
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