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地域だより

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最終更新日:2011年8月8日

2011年8月

札幌事務所
  

 平成23年7月7日(木)〜8日(金)、社団法人北海道てん菜協会の主催により、平成23年度輸入品種検定試験などの現地調査が行われた。同調査は、てん菜の優良品種の開発や栽培技術改善を促進するために毎年実施されている。

 調査ほ場は、北海道立十勝農業試験場、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター、(ともに芽室町)、日本甜菜製糖株式会社(帯広市豊西町)、北海道糖業株式会社(本別町負オフイビラ)、北海道立北見農業試験場(訓子府町)、ホクレン農業協同組合連合会(大空町女満別)の6試験ほ場で、道庁、研究機関、てん菜糖業者など16名が参加して行われた。

 調査に先立ち、社団法人北海道てん菜協会の石原専務理事から「春先の天候不順により農家の作付作業が遅れたことや6月上旬の網走・北見地方を中心に約1,600ヘクタールが雹害の被害を受けたものの、6月中旬以降十勝、オホーツク地方ともに平年気温を上回ったことなどから生育の遅れが回復基調となっていることが紹介された。また、農家の高齢化などによる労働力不足、他作物への転換などてん菜をめぐるさまざまな課題が山積しており、北海道庁、糖業3者などで構成している「てん菜の明日を考える会」が作付面積60,000ヘクタールの確保へ向けて、実施したアンケート調査(てん菜農家5%を抽出)の結果をもとに、作付面積の減少要因を分析し、交付対象数量64万トンの確保に向けた取り組みを行っていく旨の説明があった。

 今回の検定試験における供試品種は、別表1のとおり検定品種10品種、標準品種2品種、比較品種2品種、対照品種8品種及び参考品種5品種の合計27品種となっている。

 優良品種として認定されるまでには、予備試験の1年と品種検定試験の3年の早くても4年という長い時間がかかる。また、現地検定試験と特性検定試験は品種検定試験のなかで同時並行しながら行うこととなっている。

 これらの試験は、優良品種として検定するための基本データとなるので、特に慎重に生育を観察する必要があり、毎年同調査において各品種の生育状態および栽培管理などがてん菜の栽培技術者、研究者によって実施されている。

 現地調査後の検討会では、6月上旬に発生した雹害による破葉はほぼ回復しており試験には影響がないこと、一部の品種に葉が丸まってしまうなどの状態がみられたこと、調査ほ場以外の直播とみられるほ場では生育は芳しくなかったことなどが報告された後、今回調査した6ほ場いずれも生育が良好かつ試験精度が高く、今年の試験結果には期待ができるとの報告が検討会座長の北見農試・白井部長からなされた。なお、各調査場所の概要は別表2のとおりとなっている。

 現在のところ、昨年多発した病害などの発生は確認されていないが、6月下旬以降は高温多湿で推移していることもあり、昨年発生した褐斑病、根腐病、黒根病などの病害の発生には十分注意していきたいとのことであった。また、25℃を超える日が続くと葉腐病の懸念があり、昨年病害が多発した反省を活かして適期防除などの対策を講じていくものと思われる。
 
 

鹿児島事務所
 

 平成23年7月21日(木)に鹿児島県市町村自治会館において産官学のさとうきび関係者106名が一堂に会し、(社)鹿児島県糖業振興協会主催による平成23年度(第46回)さとうきび研究成果発表会が開催された。

 同発表会は、鹿児島県農業開発総合センターをはじめ、鹿児島県内のさとうきび研究者が、日頃の研究の成果を発表会に参加した市町村及び農業団体等の指導者等に伝えることで、各地域の営農の向上を図ることを目的として、46年開催されている。

 研究成果の発表会では、品種、栽培、農業経営、病害虫等に関する6つの発表が行われ、続いて「機械化による生産性向上」をテーマにシンポジウムが開催された。今回は、この発表会の中から4つの発表について紹介する。

地域特産黒糖製造に向く新品種候補「KY96T-547」

〜九州沖縄農業研究センター 作物開発・利用研究領域さとうきび育種グループ長 寺内 方克 〜

 新品種の候補である「KY96T-547」(平成23年4月品種登録申請)は、徳之島支場での現地選抜を経て育成された従来にない極早期高糖性のさとうきびである。糖度の上昇が極めて早く地域によっては10月収穫が可能であるとの説明があった。

 「KY96T-547」は、農林8号に農林9号を交配したもので、種子島や九州本土などの低糖度となる地域でも良質原料を生産でき、製造される黒糖も良質で、地域特産品として黒糖製造に向く。株出し多収となる茎数型品種で、種子島の育成地では可製糖量は農林8号を上回るが、黒穂病に弱いことから同病の多発地帯での栽培は避けることが必要であるとのことであった。

 また、既存のさとうきび栽培地域では、収穫・製糖時期を早めることができるが、痩せ地では生育が劣り、株出し栽培で茎が細くなりやすいので、肥料投入などの十分な肥培管理を行う必要があるとのことであった。

さとうきびの気象災害予防(エルニーニョ現象との関係)

〜 南西糖業株式会社 業務部長 あたり 好二 〜

 エルニーニョ現象やラニーニャ現象は、世界の天候に様々な影響を及ぼす状況となっているが、これらの現象が南西諸島のさとうきびの栽培にも多大なる影響を与えている。徳之島においては、エルニーニョ現象の発生年は、太平洋高気圧に覆われ、その影響で8月の1ミリ以上の降水日数が少なく、また、7〜9月の降水量も少ない傾向があることから干ばつ被害の発生が多くなり、「低単収・低歩留り」の傾向となっていると報告された。

 これに対しラニーニャ現象の発生年は、気流の流れ込みの影響で、沖縄付近の高緯度海域での低気圧や小さな台風の発生が多くなり、その影響で8月の1ミリ以上の降水日数が多く、また、7〜9月の降水量も多いことから、「高単収、高歩留り」の傾向となっているとの報告があった。

 これらの傾向は種子島や沖永良部島、与論島といった鹿児島県南西諸島だけでなく、石垣島を除く沖縄本島、南大東島、宮古島においても同様の傾向であるとのことであった。

 このことから、エルニーニョ現象の予報が出された場合には、早めの干ばつ対策が必要であるとの話があった。
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ハーベスタ収穫残渣の有効活用法

〜 鹿児島県農業開発総合センター熊毛支場 作物研究室長 上野 敬一郎 〜

  種子島におけるさとうきび生産では、収穫後早期の株出し管理とマルチ栽培を原則としているが、ハーベスタ収穫が7割を超えており、収穫残渣(ハカマ)がほ場に残った場合、株出し管理作業の障害となるため、焼却処理されている現況にあり、それによる火災や事故が発生して問題となっている。

 また、株出し栽培は、春植え等に比べ、労働時間の短縮や農作業のコスト削減となるため、昨今は株出しの回数が増加傾向となってはいるが、堆肥や石灰の投入が困難であることから、さとうきびが土壌から吸収する養分量が肥料として土壌に加える投入量を上回って、収量の低下や土壌の酸性化の原因となっている。

 このような問題に対し、収穫残渣を畑にすき込むことにより、火災発生を予防するとともに収穫残渣の養分を畑に還元することができる。さとうきびの持続的かつ安定的な生産には、収穫残渣の有効利用が不可欠であり、株揃え機と根切り排土機(ディスク型)の組み合わせで、収穫残渣の効率的な土壌還元とマルチ被覆が可能となる。なお、収穫残さは石灰窒素とともに畦間にすき込むことにより、分解が促進され、土壌の酸性化や地力低下を防ぐ効果が期待できるとの報告があった。

 また、収穫残渣(ハカマ)を焼却しないことによる害虫の発生増加は今回の研究では確認されていない。「焼かずに活かそう!きびハカマ」をスローガンに掲げ生産者に呼び掛けているとの話があった。

ベイト剤連年処理のハリガネムシに対する防除効果

〜鹿児島県農業開発総合センター大島支場 病害虫研究室長 宮地 克彦 〜

  近年、ハリガネムシによる被害が多発しているほ場に対し、夏植えさとうきびの新植時とそれを収穫したあとの株出し萌芽時にプリンスベイト(以下、「ベイト剤」)6kg/10aを連続処理することによって、収量は得られるが、新植時のみの処理であっても少なくとも株出し2年目までは、十分な収量が得られた。ハリガネムシの防除対策は、新植時のベイト剤6kg/10a処理を基本とすることが有効であるとの報告があった。

 なお、株出し時のベイト剤の処理は、萌芽1カ月までのメイチュウによる心枯れ被害を軽減できるが、防除対策については、今後の課題となるとの話があった。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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