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5. 日本の主要輸入先国の動向

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最終更新日:2011年8月9日

5. 日本の主要輸入先国の動向

2011年8月

調査情報部
 

 2010年における砂糖輸入量のうち、甘しゃ糖・分みつ糖(HSコード1701.11‐190)が118万4848トンと全体の97.1%を占め、そのうち43.7%をタイ、41.5%を豪州、8.6%を南アフリカと、この3ヵ国で93.8%を占める。(財務省「貿易統計」)

タイ

 
 

(1)2011年7月における生産見通し

〜砂糖生産量、最高記録を更新する〜

 2010/11タイ砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は、虫害対策の遅れるキャッサバからの作付転換および砂糖価格高騰により作付けが前年度から大幅に増加し、150万ヘクタール(前年度比39.0%増)に達するとみられる。これにより、さとうきび生産量も前年度から大幅増加の9540万トン(同39.2%増)とされる。

 こうしたさとうきびの大幅な増産により、通常5月ごろに終わる収穫作業は1カ月ほど延長され、6月21日に終了した。この時点でのさとうきびの圧搾量は9540万トンとされ、前年度の生産量を同39.2%上回る。この結果、砂糖生産量は前年度の生産量を大幅に上回る1000万トン(粗糖換算、同40.1%増)と見込まれ、過去最高記録の更新は確実視されている。

 2011/12年度については、現在もキャッサバの虫害対策が遅れていることから、さとうきびへの作付転換がさらに進むと予測され、生産量は9800万トン(同2.8%増)と見込まれる。これと同時に砂糖生産量も増加し1030万トン(粗糖換算、同2.8%増)と、いずれも過去最高記録を更新すると予測される。

 一方、タイ北部の農場で散発的に白葉病の発生が確認された。同病は乾季に拡大するとされ、感染防止には疑いのある株を早期に伐採する必要がある。現在被害が出ている地域は最小限にとどまっており、2011/12年度の生産量を脅かすものではないとされている。ただし、今後病害への対処と天候によって、被害が拡大する場合もありさとうきび生産の懸念材料となっている。
 
 

(2)貿易状況

〜輸出量も最高記録を更新する見通し〜

 2010/11年度の砂糖消費量は290万トン(粗糖換算、前年度比8.6%増)と予測される。

 輸出量は生産量と消費量の差から710万トン(粗糖換算、同22.8%増)とされ、このうち430万トンが粗糖と見込まれる。これは過去最高水準であり、既に港湾は労働力不足などの理由から混雑を来している。この混雑のため、バンコクの一部の港湾は一時閉鎖状態となり、滞船が長期化したことで船混み割増料金を船舶業者が負担する事態も発生した。さらに、5月末にチャオプラヤ川で砂糖の輸送船が転覆し、その撤去に1週間以上要した。このため、タイ北部の工場からバンコクに輸送するルートは完全に途絶え、輸出業者はバンコクからレームチャバン港に輸送港を変更せざるを得なかった。港湾の混雑状況は改善されつつあるものの、解消には10月までかかる見込みである。

 5月の粗糖・白糖輸出量は、砂糖の増産を受けて前月から大幅増加の97万3000トン(前月比51.3%増)となり、主要輸出先はインドネシア、日本、バングラデシュなどであった。一方で、こうした増産を受けて輸出白糖に上乗せされるプレミアム価格は現在下落基調にある。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, July 2011”
 
 

豪州

 
 

(1)2011年7月における生産見通し

〜2011/12年度の製糖はほぼすべての工場で開始〜

 2011/12豪州砂糖年度(7月〜翌6月)の製糖は5月18日にクイーンズランド(QLD)州北東部のバーデキン地域で例年より1カ月早く開始され、7月14日時点では、24の製糖工場のうち23工場が稼動し、残り1工場も18日に開始予定である。

 7月時点における2011/12年度の生産見通しは、さとうきび収穫面積が38万ヘクタール(前年度比7.6%増)、さとうきび生産量が2930万トン(同0.6%増)、砂糖生産量が380万トン(同5.0%増)と予測される。収穫面積増にもかかわらず、さとうきび生産量が前年度からほぼ横ばいとなっているのは、今年2月にQLD州北東部を襲ったサイクロン「ヤシ」による大雨の影響によって、豪州さとうきび生産の約2割を占める主産地の単収が3割程度落ち込み、豪州全体でも77.0トン/haと、直近5年間の平均(86.4トン/ha)を約1割下回るとみられるためである。また、砂糖生産量については前年度から増加するものの、前年度収穫期後半の大雨により刈り残された500万トンのさとうきびのショ糖の含有量が通常のものより低いとみられることから、製糖歩留りは例年よりも低下して、直近5年間の生産量の平均(445万トン)を14.6%下回ると予測される。
 
 

(2)貿易状況

〜中国企業によるタリー・シュガーの買収が完了〜

 2011/12年度の砂糖消費量は110万トン(粗糖換算、同1.1%増)とわずかな増加が予測され、輸出量は270万トン(粗糖換算、同6.0%増)と増加が予測されるものの、2009/10年度までと比較すると依然として低水準である。今シーズンに製造された粗糖の最初の輸出は6月12日、QLD州北東部に位置するタウンズビル港からニュージーランドに向けて、2万7000トンが出荷された。

 豪州の製糖企業は近年、外国企業による合併・吸収の動きが活発となっている。こうした中、豪州の製糖企業タリー・シュガーは7月19日、中国国有企業である穀物大手COFCOが前日までにタリー・シュガーの株式99%を獲得したことを発表した。タリー・シュガーの生産能力(2010/11年度、推定値)は、圧搾量が203万トン、産糖量が26万トンで、豪州の砂糖生産の7%を占め、生産された粗糖はすべて輸出向けとなっている。タリー・シュガーの買収をめぐっては、今年4月から動きが活発化し、米国の農業大手ブンゲ、豪州のマッケイ・シュガーも名乗りを挙げていたが、COFCOが提示した1株当り44豪ドル(3900円、1豪ドル=88.5円)が両社より1豪ドル上回った。7月4日には、ブンゲがCOFCOに持ち株を売却し、買収から撤退した。18日には、マッケイ・シュガーも持ち株31.5%をCOFCOに売却した。COFCOは今後、残る株式についても取得し、タリー・シュガーを完全子会社化する。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, July 2011、Australian Sugar Milling Council他
 
 

南アフリカ

 
 

(1)2011年7月における生産見通し

〜砂糖生産量は前年度並みにとどまる見込み〜

 南アフリカでは、1工場を除く全ての製糖工場が2011/12年度(4月〜3月)の生産を開始した。同年度のさとうきび収穫面積は前年度並みの30万ヘクタール(前年度比1.7%増)と予測され、さとうきび生産量は1650万トン(同3.3%増)と前年度からやや回復する見通しである。ただし、前年度の干ばつが2011/12年度に収穫されるさとうきびの生育にも悪影響を及ぼしたことから、単収は1ヘクタール当たり54.6トンと、過去5年間の平均(63.0トン)を大きく下回ると予測されている。砂糖生産量は210万トン(粗糖換算、同0.7%増)と、干ばつの影響により過去15年間で最低水準に落ち込んだ前年度と同程度にとどまる見通しである。

 大手砂糖企業Illovo Sugar社は、2011/12年度のさとうきび生産量は前年度に引き続き低調になるとの見込みから、クワズール・ナタール州のUmzimkulu工場を稼働しないことを決定した。これは、通常、同工場で処理するさとうきびを他工場に仕向けることで、工場稼働率の向上を図ろうとするものである。
 
 

(2)貿易状況

〜輸出量は前年度に引き続き低水準の見通し〜

 2011/12年度の砂糖消費量は前年度並みの180万トン(粗糖換算、前年度比0.6%増)と見込まれ、輸出量は40万トン(粗糖換算、同1.1%増)にとどまる見通しである。これは、過去5年間の平均(80万トン)を大きく下回る水準である。

 2011年4月の粗糖・白糖輸出量は、減産による供給余力の低下から、前年同月比74.7%減の4,236トンとなった。主要輸出先はアンゴラ、モザンビーク、ジンバブエなどのアフリカ諸国であった。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, July 2011”
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713