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ロシアにおける最近の砂糖需給動向

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最終更新日:2011年9月9日

ロシアにおける最近の砂糖需給動向
〜2011/12年度は増産が見込まれ、輸入量は前年度から大幅減少の見通し〜

2011年9月

調査情報部

 ロシアは世界有数の砂糖消費国であり、需要の約4〜5割を輸入に頼っている(2009/10国際砂糖年度(10月〜翌9月)では世界第6位の消費国、世界第3位の輸入国、LMC推計)。輸入量は近年、国内生産がソビエト連邦崩壊後の経済混乱による停滞から回復しつつあることなどを受け減少傾向にあったが、2009/10年度および2010/11年度においては、天候不順などの影響により減産となったため再び増加した。この間、ロシアの輸入増加が砂糖の国際価格上昇の一因とされるなど、同国の動向は世界の砂糖需給に大きな影響力を持つ。このことから、本レポートでは、英調査会社LMCのレポートなどをもとに、ロシアにおける最近の砂糖需給動向について報告する。

注1:本レポートの年度は、断りがない限りロシア砂糖年度(7月〜翌6月)である。
注2:本レポートの数量は粗糖換算である。
 
 
 
 

ロシアの砂糖需給の動向

 ロシアではてん菜を原料として砂糖生産が行われており、主な生産地は中部および南部である。国内には76の製糖工場があり、てん菜生産の大半は大手の砂糖企業と、企業の委託を受けた農家が担っている。同国の砂糖生産量は、ソビエト連邦崩壊に伴う経済混乱と政府の砂糖産業に対する政策の不透明さから、1990年代には200万トンを割り込む水準にまで落ち込んだ。一方、消費量は、食料不足により安価にカロリーを摂取できるパン類や菓子類の需要が伸びたことから、年間600万トンを上回る水準にまで増加した。国内供給の不足は輸入で補われ、これらの大半は世界最大の生産国ブラジル産の粗糖である。輸入粗糖はてん菜製糖工場で製糖期(8月〜12月)以外の期間に精製される。

 2000年代に入ると、砂糖生産量は砂糖産業への投資が再開されたことで年々増加し、その一方で、消費量は人口減少の影響を受け頭打ちとなった。ロシアは出生率の低下に加え、社会情勢の不安などを背景に平均寿命が低下しており、世界の成長市場として注目されるBRICsの中で唯一人口が減少している国である。これらの影響を受け、近年の砂糖輸入量は減少傾向にあったが、2009/10年度においては、減産により輸入量が再び増加した。減産の要因として、小麦など代替作物の価格高騰によるてん菜生産の減少、2008年の世界金融危機による投資の減少、および天候不順の影響が挙げられる。

 農業省は2009年10月、砂糖供給における海外依存度を低減し、国内砂糖価格の安定化を図るため、砂糖の増産計画(Program for the Development of Sugar Beet Production in 2010-2012)を打ち出した。総予算額は614億ルーブル(約1891億円、1ルーブル=3.08円、以下同じ)、期間は2010年から3年間で、2012年までに国内における製糖工場全体の1日当たりのてん菜処理能力を38万5960トンに拡大し、国産てん菜由来の砂糖生産量を432万トンに増加させるとしている。この計画により、てん菜生産対策として肥料および農薬の購入経費の一部補助、糖業対策として工場新設(5工場)に対する補助および設備投資資金の借り入れに対する利子補給(18工場)が実施されることとなった。製糖工場の新設については、既に2工場着工し、残りについても間もなく着工予定となっている。

注:TTS相場7月最終日

2010/11年度は干ばつによる減産で輸入量320万トンに増加

 2010/11年度のてん菜作付面積は、前年度の砂糖価格高騰と政府の生産奨励策を背景に97万ヘクタール(前年度比17.8%増)に増加した。てん菜生産量は、作付面積の拡大により、年度当初においては、前年度からの大幅な増加が予測されていた。しかしながら、夏季に深刻な干ばつが発生し単収が著しく低下したため2240万トン(同10.1%減)に減少した。この結果、砂糖生産量は300万トン(同14.3%減)に減少した。一方、消費量は前年度並みの580万トンとなった。このため、輸入量は前年度から大幅増加の320万トン(同18.2%)となり、ロシアの砂糖需給は2006/07年度以来4年ぶりに輸入量が生産量を上回る状況となった。

 国内の砂糖卸売価格は、減産による需給ひっ迫と国際価格の高騰で上昇を続け、2011年4月には1トン当たり34,290ルーブル(約105,613円)に達し、前年同月の同26,550ルーブル(約81,774円)を大幅に上回った。政府は国内価格を抑制するため、通常5月に行う粗糖の輸入関税引き下げを3月に前倒しして実施し、1トン当たり50米ドル(約3,942円、1ドル=78.85円)に設定した(なお、ロシアの砂糖輸入関税制度については、砂糖類情報2011年1月号需給レポート「ロシアの砂糖需給動向」を参照されたい)。輸入関税の引き下げを受け、3月の輸入量は48万9000トンに急増し、その後も高水準で推移している。

注:TTS相場7月最終日
 
 
 
 

2011/12年度は生産回復し、輸入量大幅減少の見通し

 ロシアでは、7月下旬に2011/12年度の生産が開始された。同年度のてん菜作付面積は、前年度から大幅増加の125万ヘクタール(前年度比29.4%増)の見通しである。前年度と同様、政府の生産奨励策に加え、砂糖価格が引き続き高水準で推移したことが増加の要因と考えられる。ロシア砂糖生産者組合によれば、好天によりてん菜の生育状況は良好とされ、7月下旬時点で、てん菜の根重は過去5年間の平均を22.0%上回っている。このことから、てん菜生産量は前年度から大幅増加の3750万トン(同67.5%増)と見込まれ、砂糖生産量は480万トン(同61.1%増)に達すると予測されている。消費量は前年度並みの590万トンとみられるため、輸入量は前年度から大幅減少の170万トン(同47.2%減)の見通しである。

 このように、世界の主要な砂糖消費・輸入国であるロシアは、2011/12年度においては国内生産の増加により輸入量の大幅な減少が予測されている。しかし、同国の生産は開始されたばかりであり、今後の天候次第では生産量および輸入量が大きく変動する可能性もあるため、引き続き動向が注目される。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, August 2011”
    USDA GAIN Report “Russian Federation, Sugar Annual 2011”
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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