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豪州砂糖産業をめぐる情勢

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最終更新日:2011年10月7日

豪州砂糖産業をめぐる情勢 〜現状と今後の見通しについて〜

2011年10月

調査情報部 前田 昌宏
伊藤 久美

 

【要約】

 タイと並ぶ日本の主要輸入元である豪州の2010/11豪州砂糖年度(7月〜翌6月)の砂糖生産は、ラニーニャ現象による大雨から大幅な減産となった。2011/12年度も、昨年末から今年前半にかけての洪水被害やサイクロンの影響から、生産量は低水準にとどまると見込まれる。ほ場の再整備やさとうきびの更新、インフラの復興などに時間がかかり、通常の水準まで生産が回復するのは2013/14年度以降とみられる。

 しかし、今後は、高値で推移する国際砂糖価格を背景とした他作物からの転換により、さとうきびの作付面積増が期待される。また、昨年から今年にかけては、外資による製糖企業の買収が進むなど産業構造の変化が見られ、業界はこれまで停滞していた設備投資が進むことを期待している。外資参入による輸出への影響については、現段階では大きな変化は見られないが、引き続きその動向を注視する必要がある。

はじめに

 豪州は、我が国にとってタイに次ぐ供給国であるとともに、世界全体でも有数の輸出国である。近年、同国の砂糖生産量は2002/03年度(7月〜翌6月)の540万トン(粗糖換算)をピークに減少傾向で推移している。特に2010/11年度は、ラニーニャ現象の影響による大雨により収穫期後半の収穫作業が難航し、大量の刈り残しが発生したことから大幅な減産となり、国際需給にも影響を与えることとなった。また、2011/12年度についても、昨年末から今年前半にかけての洪水やサイクロン「ヤシ」の被害により、低水準の生産量にとどまることが予測されている。

 一方、産業構造に目を向けると、昨年から今年にかけて、外資による製糖企業の買収が活発化しており、これが輸出動向にどのような影響を与えることになるのか関係者の注目を集めている。

 このような状況の中、本稿では、同国の砂糖生産量の95%を占めるクイーンズランド州を中心に、砂糖産業の現状と今後の見通しについて報告したい。

1.豪州のさとうきび・砂糖生産の特徴

〜輸出向け砂糖のほぼ全量がQLD州産〜

 豪州のさとうきび生産は、同国東部のクイーンズランド(QLD)州北東部からニューサウスウェールズ(NSW)州北部にかけて広がる全長2100キロの東海岸沿岸地帯で行われている。当該地域は豪州内でも比較的降水量が多く、かんがい設備も整備されているところが多い。なおQLD州のさとうきび生産量は、豪州全体の95%を占め、輸出向け砂糖のほぼ全量がQLD州産である。
 
 
 さとうきび生産地域が南端と北端で2000キロ以上も離れている豪州では、植付けや栽培期間は地域によって異なる。北部では3月頃にさとうきびの植付けをし、約18カ月の栽培期間を経て収穫される。栽培期間の長さから、同地域ではさとうきびの高さは4メートルにも達する。一方、3月に霜がおりる南部ではこの時期の植付けを避けて、8〜9月に植付けをし、約12カ月で収穫する。

 収穫は、北部の最も早い地域で5月後半に開始され、南部の最も遅い地域では12月後半に終了する。なお、株出し回数は、概ね4〜5回となっている。
 
 
〜スピーディな原料輸送体系により高い生産性を実現〜

 豪州ではさとうきび栽培に適した気候に加え生産技術も高いことから、単収および製糖歩留りが国際的に高水準となっている。豪州の最近5年間の平均単収は、1ヘクタール当たり86.4トンと、ブラジル同77.6トン、タイ同65.0トンなどほかの主要生産国を大きく上回る。ただし最近は気象条件に恵まれなかったことから減少傾向での推移となっている。
 
 
 また、さとうきび1トン当たりの砂糖生産量についても最近5年間の平均が137キログラムと、単収と同様にブラジルの同119キログラム、タイの同108キログラムを上回っている。
 
 
 この製糖歩留りの高さの要因の一つには、QLD州における専用鉄道を用いた原料輸送体系が挙げられる。これにより、さとうきび収穫から工場搬入、圧搾までを迅速に行い、さとうきびの品質やしょ糖含有率、搾汁液の純度の低下を最小限に抑えている。収穫されたさとうきびは概ね6〜14時間以内に圧搾される。

 専用鉄道を用いたさとうきびの輸送は、QLD州北部のモスマン(Mossman)から州南部のチルダース(Childers)までの地域に属する19の製糖工場で行われている(2011/12年度に稼働中のQLD州内の製糖工場数は21)。この専用鉄道により、例年3000万トン以上のさとうきびが輸送される。   この鉄道の敷設および維持費用には、公的資金は投入されておらず、各製糖工場の負担によって賄われている。なお、さとうきびの輸送費については、鉄道のある集荷地点から製糖工場までは工場負担、集荷地点までは農家の負担―という形になっている。


〜政府支援はない〜

 豪州においては、さとうきび、砂糖ともに支持価格の設定や介入買い上げなど政府による直接的な価格支持は行われていない。

 QLD州では、砂糖産業の監督・規制等々を目的に1999年に制定された「砂糖産業法」によって、2005年までは州内で生産された粗糖は、業界が運営する団体のクイーンズランド砂糖社(Queenland Sugar LTD., 以下「QSL」)にすべて販売されることが義務付けられ、QSLが粗糖の国内販売および輸出を一元的に行っていた。しかしながら2006年に砂糖産業改革の一環として州法が改正され、QSLによる一元的な粗糖の売買は撤廃されて今に至っている。

 なお、1997年7月に粗糖と白糖の関税が全面的に撤廃されている。この背景には、豪州産砂糖は生産性が高く、かつ、国際的な価格競争力も高いことが挙げられる。現地関係者によればその生産コストは、世界最大の生産国ブラジルと同程度とのことである。

2.最近の糖業事情

 ここでは、豪州の砂糖生産動向、産業構造および輸出動向に加え、砂糖生産の動向に影響するバイオ燃料生産について、それぞれ現状を整理したい。

(1)生産動向

(1)−1 砂糖生産量の推移
 〜2002/03年度をピークに減少傾向〜

 国内の砂糖消費量が100万トン程度であり、生産する砂糖の約7〜8割が輸出に向けられる豪州の砂糖産業は、国際砂糖価格の動向にその収益性が大きく影響される。そのため、1990年代後半から2000年代初めの国際砂糖価格低迷による収益性低下を受け、生産者数、収穫面積および砂糖生産量のいずれも減少傾向で推移してきた。  特に生産者数の減少は顕著で、小規模生産者の廃業などにより2000/01年度の6270戸から2010/11年度には3840戸となり、10年間で約4割減少した。生産者のほとんどは家族経営であるが、最近では高齢化も課題となっている。

 また、収穫面積についても、2000/01年度には44万3000ヘクタールであったが、より収益性の高い他作物への転換などが進んだことから、ここ数年は36〜38万ヘクタールで推移している。

 なお、2010/11年度は国際砂糖価格の上昇により作付面積が増加したものの、ラニーニャ現象による大雨によって収穫作業が行えず、大量の刈り残しのさとうきびが発生したため、収穫面積は前年度の36万ヘクタールから30万ヘクタールと大幅に減少した。なお、2011/12年度は約38万ヘクタールへの回復が見込まれている。
 
 
 砂糖生産量も2002/03年度の540万トンをピークに減少傾向で推移している。特に2010/11年度は、前述の収穫面積の減少により、過去20年間で最低の水準となる354万トンにまで落ち込むこととなった。
 
 
(1)−2 2011/12年度の生産に影響を与えた洪水やサイクロン
 〜その影響は2年にわたる〜

 2010年末から2011年前半にかけて、大雨による洪水やサイクロン「ヤシ」などが生産地を襲い、甚大な被害を与えた。洪水の被害が大きかったのは、バンダバーグからNSW州にかけての一帯である。また、サイクロン「ヤシ」は、イニスフェール(Innisfail)からマッカイ(Mackay)までの広範囲においてほ場の浸水や表土流亡、さとうきびの折損といった被害を与えた。

 これによって、2011/12年度の生産は、大幅な減産となった2010/11年度に続く低迷が予測されている。その要因として、2011/12年度の新植さとうきびの作付割合が30%と通常年の2倍になったことが挙げられる。2011/12年度に収穫される予定であったさとうきびのうち、面積で約5万7000ヘクタール分、量にして28万5000トンが苗に向けられた。また、大きな被害のあったイニスフェール(Innisfail)からインガム(Ingham)の一帯では良質な苗がなく、200キロメートル離れたテーブルランド(Tableland)から購入して調達せざるを得なかったことも、生産者にとって負担増となった。

 洪水やサイクロンはインフラ設備にも被害をもたらした。6カ所のバルクシュガーターミナル(ばら積み粗糖積み出し港)のうちバンダバーグ(Bundaberg)港は洪水によって大量の泥が航路に流れ込んだ。4月より使用は再開されているものの、船のサイズは限定されている状態である。また、ルシンダ(Lucinda)港はサイクロン「ヤシ」によって桟橋などの設備に大きな被害を受け、来年度まで使用できない見込みである。このため、今年度はトラックでタウンズビル(Townsville)港まで輸送され、同港から輸出される。

 今回のサイクロンの被害に対する州政府の支援策は、さとうきびを含むすべての作物を対象とした(ア)農家1戸当たり2万5000豪ドル(約210万円;1豪ドル=83.88円、8月末日TTS相場)を上限とした現金給付、(イ)農家1戸当たり50万豪ドル(約4200万円)を上限とした低利融資−の2種類であった。6月現在、これらの支援策の実績は、被害額の内訳の申請や、金融機関からの貸付拒否の証明書の添付など申請手続きが煩雑なため、(ア)は1800戸に総額1390万豪ドル(一戸当たり7700豪ドル、約65万円)、(イ)は対象農家14戸−とわずかにとどまっている。

 こうしたことから、関係者は、今回の気象災害の影響からの回復は、2013/14年度以降になるとみている。
 
 
 
 
 
 
(2)業界の動向

(2)−1 製糖業への外資参入の現状
  〜外資のシェアは5割超に〜

 豪州には製糖業者10社が24の工場を有しており、このうちQLD州に9社21工場が立地する(2011/12年度)。
 
 製糖業界では、昨年から今年にかけて外資による2つの大きな買収が成立している。
 一つは、国内最大手のSucrogen社である。2010年7月、豪州砂糖・建材大手のCSR社は、同社の砂糖およびバイオエタノール部門であるSucrogenをシンガポールのパーム油大手Wilmar社に17億5000万豪ドル(1468億円)で売却し、Sucrogen社が誕生した。同社は豪州内に7カ所の製糖工場を所有し、その国内製糖シェアは4割に上る。

 また、今年5月には、業界第4位のTully Sugar社が1億3600万豪ドル(114億円)で中国国営企業の穀物大手COFCO(中糧集団有限公司)に買収されることが決定した。Tully社をめぐっては、豪州資本で業界第2位のMackay Sugar社、米国のBunge社の3者による買収合戦となったが、最高額を提示したCOFCOに買収されることとなった。  さらに9月上旬現在、業界第5位のProserpine社の買収が進行中である。Proserpine社に対して、Sucrogen社、Mackay Sugar社、COFCOが買収を提案し、いずれも8月末までに否決されたが、Sucrogen社とCOFCOは引き続き買収を提案している。

 このほかに、業界第6位のBundaberg Sugar社が、従来からベルギーのFinasucre社の傘下となっている。

 こうしたことから現在、業界1、4、6位の製糖業者が外資となっており、QLD州の産糖量における外資の占める割合は、2010/11年度のさとうきび圧搾量ベースで、53.6%と5割を超えている。Proserpine社が外資に買収された場合、外資のシェアは59.5%と約6割に上ることとなる。
 
 
(2)−2 外資参入が進む背景とその影響
  〜業界は肯定的に受け止める〜

 豪州政府は従来から、海外からの投資の重要性を認識し、基本的に歓迎の姿勢をとっているが、最近の製糖企業への外資参入のスピードは急速である。この背景について、現地関係者の見方を聞いた。大勢を占めたのは、砂糖の国際価格が高水準で推移している状況に加え、今後もアジア諸国をはじめとした新興国や発展途上国の需要増が見込まれることから、価格競争力もあり、かつアジアへの輸出に際して地理的に有利である豪州の砂糖産業が、資金力が豊富な外資にとってはビジネスとして魅力的であるとの見方である。こうした魅力は国内製糖業者も享受できるものであるが、豪州資本の製糖業者は過去の砂糖価格の低迷により、経営体としての体力が消耗しているところもあり、こうしたことが外資参入が進む一因といえよう。

 また、中国企業による豪州企業買収については、中国国内の増加する砂糖需要を賄う観点からという意見に加え、二次的な効果として、豪州の栽培技術の習得(品種改良、病害虫対策など)を目的としているとみる向きもある。8月には、中国最大のさとうきび産地である広西チワン族自治区の研究者などが、豪州の生産現場を視察するなどしている。

 このような外資参入について現地関係者は、「砂糖産業はQLD州の伝統的な産業の一つであり、製糖企業が外資所有となるのは心情的には寂しい面もある」とした上で、停滞していた設備投資などが進むことへの期待から、「肯定的に受け止める」とする意見が大勢を占めた。Sucrogen社やCOFCOは製糖工場の能力増強に加え、農地の取得によりさとうきび生産にも取り組むとみられる。


(3)輸出動向

(3)−1 QSLによる一元輸出体制
 〜規制撤廃後も実質的な一元輸出体制が続く〜

 前述のとおり、2005年までQLD州では、州内で生産された粗糖はすべて、QSLに販売することが法律で義務づけられ、QSLがQLD産の粗糖の国内販売および輸出を一元的に取り扱っていた。しかしながら2006年、砂糖産業改革の一環として、QSLに与えられていた粗糖の独占販売権は廃止された。これにより製糖業者が独自に粗糖を販売することが可能となった。

 しかしながら、製糖業者の意思により、QLD州から輸出される粗糖の9割以上はQSLを介したものとなっている。QSLは、製糖業者がQSLを介するメリットとして以下の点を挙げている。

1.QSLからの低利融資の享受
2.砂糖販売に係る価格やコストをプールすることによるリスクマネジメント
3.品質面などにおける輸出先国との高い調整能力

 一方、2010/11年度は、生産量の落ち込みが予想を超えるものであったことから、QSLは輸出契約を履行するために、他国から粗糖調達を余儀なくされた。QSLは、これらによる損失をプールされた資金で賄うとみられる。QSLは今後、より正確に生産量を把握した上で輸出計画を立てることが求められ、現地報道によれば、生産量把握の新しい手法についての検討が現在行われているところである。

(3)−2 外資参入後の輸出体制の状況
 〜1社を除く8社が2014/15年度までQSLへの輸出委託を選択〜

 製糖企業がQSLに輸出向け粗糖を供給する場合、毎年度末の6月に、翌々年度から向こう3年間の粗糖供給契約を締結することとなる。QSLとの契約を更新しない場合は、前年度の契約が適用され、その契約期間が終了するまではQSLを通じて粗糖を輸出することになる。

 QSLは今年7月、州内の製糖企業のうちMSF Sugar 社を除く8社と、2012/13年度から3年間の契約を更新したことを公表した。これにより、8社は2014/15年度末までQSLを通じて粗糖を輸出することとなる。注目すべきは、この8社に、Sucrogen社やTully Sugar社も含まれることである。すなわち、QSLが窓口となる豪州砂糖の輸出体制には、外資参入による大きな変化は現在のところない、ということとなる。なお、QSLの輸出方針については、従来どおり利益重視であるとのことである。

 一方、MSF Sugar 社は2013/14年度までQSLを通じて粗糖を輸出するが、2014/15年度以降は自社で直接販売することが濃厚となった。同社は最近合理化を進めており、現在は5つの製糖工場を持ち、総圧搾能力は年間420万トンと、州内第3位の規模である。


(4)バイオ燃料生産

 近年、砂糖の需給動向を見通す上では、バイオ燃料生産の動向にも着目することが必要となっている。しかし、豪州については、バイオ燃料生産が今後の砂糖生産に与える影響は限定的とみられる。ここでは、豪州のバイオ燃料生産の概要とともに、今後の見通しについて述べる。

(4)−1 バイオエタノール生産の概要
 〜3工場で生産され、うち糖みつ利用は1工場のみ〜

 バイオエタノールは現在3工場で生産され、2010/11年度の生産量は4億4000万リットルであった。ここ2年間は、原料となる穀物が豊作であったことから生産量は急増しているものの、主要生産国との比較では米国の1%未満、ブラジルの2%程度にとどまっている。

 3工場のうち糖蜜を原料とするのはSucrogen社が運営する1工場であり、同社の製糖工場から糖みつの供給を受けている。この工場の生産量は年間6000万リットルと豪州内では最小の規模である。
 
 
 
 
(4)−2 今後の生産見通し
 〜糖蜜利用量の急増はない見込み〜

 豪州政府は、バイオ燃料の消費拡大を図るため、バイオ燃料に係る物品税(1リットル当たり38.1豪セント、約32円)を2010/11年度まで無税とする税制優遇策をとっている。当初、2011/12年度以降は物品税を段階的に引き上げる予定であったものの、豪州政府は6月、2021年まで無税とすることを発表した。このことによってバイオエタノール生産は今後増加するとみられ、廃棄小麦やソルガムを利用する工場は増産を検討している。

 これに対し、糖みつ由来のエタノール生産量は大きく伸びることはないとみられている。これには2つの背景がある。一つは、工場が立地するQLD州内での使用目標設定がなされていないことである。QLD州政府は、州内のガソリンへのエタノール混合率を2010年末から5%に義務付けると発表していたが、現在棚上げされた形になっている。もう一つは、糖みつ価格の上昇である。砂糖国際価格の上昇に加え、糖みつは国内だけでなくニュージーランドなどにおいても家畜飼料としての需要があることから、その価格が堅調に推移しており、エタノール原料としてのコスト的な魅力は薄い状況である。したがって、バイオエタノール生産が砂糖生産に与える影響は現在のところ限定的と見ることができよう。

3.今後の見通し

〜砂糖生産の回復は2013年度以降との見方〜

 サイクロンや洪水が残した傷跡は深く、浸水したほ場の再整備などが必要となることから、さとうきび生産量が従来の水準である3500万トンへ回復するのは、2013/14年度以降になると関係者は見ている。一方では、今後、さとうきび作付面積の増加が期待されている。これは、国際砂糖価格が堅調に推移していることから農家の増産意欲が刺激されていることに加え、資金力の豊富な外資によるさとうきびほ場への投資なども進むとみられるためである。また、森林事業が現在不調であることから、今後、これらに使用されていた農地がさとうきび栽培に向けられることも見込まれている。

 輸出動向についてみると、アジアからの豪州産砂糖への需要は引き続き伸びるとしている。QSLは、今後の成長が見込まれる市場としてインドネシア、中国、マレーシアを挙げた。インドネシアおよびマレーシアはこれまでも主要輸出先国の一つであるが、中国向けは2008/09〜2009/10年度の輸出実績はない。COFCOによるTully Sugar社の買収など中国資本の参入が活発化していることで、対中輸出が台頭するとの見方である。

 外資参入などによる産業構造の変化は、今後も進むという関係者の意見が多く聞かれた。現在のところ、外資参入による輸出動向への目立った影響は見られていないが、豪州は我が国の主要輸入先国であることから、今後も外資参入の動向とそれによって生じる変化について注視していく必要があろう。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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