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ライムケーキの再資源化による土壌改良剤等の開発

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最終更新日:2011年11月9日

ライムケーキの再資源化による土壌改良剤等の開発
〜北海道帯広市 ニチゴ産業株式会社の取組み〜

2011年11月

札幌事務所 所長 角田 恵造

はじめに

 てん菜は北海道畑作農業の輪作体系を維持するために重要な基幹作物である。このてん菜を原料として製造されるてん菜糖の製造過程において発生するライムケーキ(注)の再資源化技術を開発するとともに、再資源化され製品となった土壌改良剤を農地に循環させることで、地域の環境リサイクルへの貢献を目指し、活動しているニチゴ産業株式会社の取組みを紹介する。

(注):てん菜から抽出された糖液の中には、砂糖成分以外にタンパク質、ペクチンや色素などが含まれている。これらを除去、脱色するために、石灰石を燃焼した粉末と炭酸ガスを投入し、吸着あるいは共沈させた凝集物を濾過機で除去する。この濾過機で除去した炭酸カルシウムと非糖分の不純物の凝集物をライムケーキと言う。

1.ニチゴ産業株式会社の歴史・沿革

 同社は昭和54年1月、現会長足助護氏が日護産業として創業。同56年5月ニチゴ産業株式会社を設立。官公庁などの発注する土質試験、地質調査、ボーリング調査、土木一式工事などの建設業を中心に営業を開始した。平成14年からは障がい者の仕事をサポートするジョブコーチを備えた上での精神障がい者の就労支援を始めるなど独自の活動にも取り組んでいる。

 平成16、17年度には、帯広畜産大学畜産学部と共同で乾燥ライムケーキおよび木炭との混合資材について、その土壌改良効果や肥料成分を明らかにする研究にも取り組んだ。このような経緯を踏まえ、平成19年、環境リサイクルに貢献することを目的とし、ライムケーキを熱処理して再資源化する技術が国土交通省の「建設業の新分野進出モデル構築事業」に採択されたことから、現在は建設関係の事業のほか、ライムケーキ関連製品などの製造販売の事業も手掛けている。

2.ライムケーキの再資源化による土壌改良剤開発のきっかけ

 北海道では、てん菜糖製造の副産物としてライムケーキが年間約20万トン発生すると言われている。てん菜糖業の先進国であるヨーロッパでは、ライムケーキのほとんどを農地に還元している。しかし我が国では、8割程度が農地還元ほかに有効利用されているものの、残りは産業廃棄物として埋め立て処分されている。

 その理由の一つとして、てん菜とともに輪作作物の一つであるばれいしょ栽培において、石灰質資材であるライムケーキの投入に伴うペーハーの上昇(アルカリ化)により、そうか病の発生率が高まる危険性があるので、その利用を控えていることがある。また、ライムケーキの水分含量が約30パーセントと高く、保存や散布を行いにくいことに加え、市販されている炭酸カルシウム肥料が安価であるため、あえてライムケーキを肥料として使う必要が無いとの事情もある。一方、毎年大量に発生するライムケーキに対し将来埋め立て処分場の確保が困難になれば、結果的にてん菜糖の製造に支障が出ることも想定される。このような状況下同社は、ライムケーキを土壌改良剤として再資源化し、地元に供給することが、循環型農業につながるのではないかと考え、関係技術の開発に取り組んだ。

3.ライムケーキ再資源化の方法と特徴および土壌改良剤の効果

(1)木炭の生産

 同社が開発した万能窯(一般軟鋼板による容積5立米の金属窯)に流木・間伐材を並べ入れ、木炭を生産する。原料である河川などの流木は、流木回収事業を委託されている会社から無償で提供されている。
 
 

(2)ライムケーキの乾燥

 万能窯上部に設置された乾燥機でライムケーキを連続的に高熱乾燥させ、水分含有率を30パーセントから24パーセント程度に低下させる。この乾燥に用いる熱エネルギーは化石燃料を使用せず木炭生産時の排熱を利用している。
 
 

(3)土壌改良剤「Mライム」の製造

 (1)、(2)で生産、製造された粉砕した流木などの木炭と乾燥ライムケーキを混ぜ合わせ、加工・袋詰を行い製品とする。Mライムに含まれる炭酸カルシウムと木炭には、植物生育に欠かせない必須元素であるカルシウムとカリウムがそれぞれ含まれており、これらの資材を組み合わせることによりミネラルバランスを良好に保つことが可能となる。「Mライム」の効果は、ア)土壌の酸性改良、イ)作物へのカルシウム補給、ウ)家畜ふん尿の消臭効果などであるが、含有する木炭が太陽光線の吸収をより高めるため融雪剤としても有効である。

(4)園芸用土壌改良剤「花もりもり」の製造

 園芸用土壌改良剤「花もりもり」は、前述の「Mライム」に完熟した牛ふん尿堆肥を追加混合し、それをペレット化することで消費者の取扱いを簡単にした製品である。牛ふん尿堆肥に含まれる溶存有機成分がカルシウムとキレート(注)と呼ばれる化合物を形成し、作物が吸収しやすい形態で養分を供給することが可能になると考えられる。「花もりもり」の効果は、ア)土壌の通気性、排水性の向上、イ)土壌の生物性を活性化、ウ)作物へ養分を供給するなどである。なお、材料となる牛ふん尿堆肥は帯広市川西町の肉用牛農家から提供され、見返りにライムケーキ製品を提供することで、一種の耕畜連携となっている。

(注)キレートとは、1個の分子が持つ2個以上の配位原子が、金属原子をはさむように配位してできた環構造。キレートはギリシャ語で「蟹のはさみ」の意味である。
 
 
(参考1)
 万能窯1ユニットの外形寸法は縦、横、高さ各2メートル、重量1.5トンでトラックでの運搬と設置が可能である。なお、既存の炭焼き釜の内部容積は10〜15立米が主流となっており、万能窯も基本的には3ユニットを連結して使用する。1日当たりの万能窯1ユニット製造能力は、おおよそ乾燥ライムケーキ5〜6立米、木炭500キログラムである。

(参考2)
 木炭生産時に排煙から製造される木酢液も有効利用している。

おわりに

 同社は一企業一福祉を提唱し環境問題、福祉活動にも積極的に取り組んでいる。今後の展望としてはライムケーキ、流木・間伐材などの未利用資源を活用し、循環型・環境保全型の地域社会づくりに貢献するとともに、ライムケーキを再資源化した土壌改良剤の製造販売事業を軌道に乗せ、障がい者、高齢者に働く場の提供やジョブコーチ(職場適応援助者)制度によるきめ細かな技術指導で障がい者の自立と自社の経営の強化が両立できる環境・福祉循環型事業を目指して進んで行きたいとしている。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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