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さとうきびの気象災害予防に向けて

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最終更新日:2011年12月9日

さとうきびの気象災害予防に向けて
〜エルニーニョ現象のさとうきび栽培への影響の研究〜

2011年12月

南西糖業株式会社 取締役 業務部長 當 好二

はじめに

 南西諸島のさとうきびは、台風や干ばつなど気象災害の常襲地帯に栽培され、時折大きな気象被害を受け生産量が大幅に減少するなど、その年の気象条件が生産量に大きく影響している。

 このさとうきびの生産状況とエルニーニョ現象との関係を調査した結果、エルニーニョ現象年は7〜9月の降雨量が少なく、干ばつによる低単収傾向にあり、また、逆にラニーニャ現象年は雨量が多く、豊作傾向にあることが分かったので、その結果を報告する。

1.エルニーニョおよびラニーニャ現象について

 エルニーニョやラニーニャ現象は、南米ペルー沖の海水温の変化を指しているが、南米からの東風(貿易風)の強弱の影響による暖水海域の変動と、太平洋西側と東側海域の気圧の差(南方振動)が連動し、ペルー沖の海水温の変化が生じる現象で、別名「エルニーニョ南方振動(ENSO)」とも呼ばれている(図1)。

 平常時は太平洋西側海域の水温が高く、西側地区の上昇気流の発生により東風が吹いているが、この東風が何らかの影響で弱くなると、西側海域の暖水はつっかえ棒をはずされたように東の方に移動し、南米ペルー沖の海水温が高くなる。これを「エルニーニョ現象」と言い、逆に東風が強く、暖水が太平洋西側海域に移動し、西側の海水温が上がり、南米沖の海水温が下がることを「ラニーニャ現象」と呼んでいる。

 このような現象は、太平洋西側海域のインドネシアやアジア近海の海水温にも影響し、この地域の降雨量や台風の発生などに関係すると言われている。
 
 
 
 

2.調査方法

1)調査期間:
昭和50年〜平成22年期製糖実績(36年間)

2)調査島名:
ア)徳之島、イ)種子島、ウ)沖永良部島、エ)与論島、オ)沖縄本島、カ)南大東島、キ)宮古島、ク)石垣島、以上8島

3)調査項目:
各島別の、 ア)7〜9月雨量、イ)平均単収、ウ)製糖歩留り  (与論島の雨量は沖永良部測候所データー使用)

4)現象年区別:
以下3現象年を気象庁データーより抜粋
ア)平常年(15回) 昭和52年、53年、54年、55年、56年、平成2年、5年、6年、8年、12年、13年、15年、16年、17年、18年
イ)エルニーニョ年(10回) 昭和51年、57年、58年、61年、62年、平成3年、4年、9年、14年、21年
ウ)ラニーニャ年(11回) 昭和50年、59年、60年、63年、平成元年、7年、10年、11年、19年、20年、22年  

 図2はエルニーニョ監視海域(北緯5度〜南緯5度、西経150度〜西経90度の範囲)内の海面水温の基準値(30年間の平均値)との差を表し、5カ月の移動平均が6カ月以上続けてプラス0.5℃以上高くなった場合を「エルニーニョ現象」、逆にマイナス0.5℃の場合は「ラニーニャ現象」と定義しています。 

3.調査結果

 各島別の現象年区分とさとうきび生産状況などとを比較して取りまとめたところ、下表のような結果となった。
1)単収との関係
・調査したすべての島において、ラニーニャ年の単収の平均値は平常年の平均値を上回っていた。

・また、ラニーニャ年とエルニーニョ年との比較では、石垣島を除いて前者の平均値が後者を上回っていた。

・エルニーニョ年と平常年との比較においては、傾向はまちまちであった。

2)歩留りとの関係
・調査した島のうち、宮古島および石垣島においては、ラニーニャ年およびエルニーニョ年の歩留まりの平均値は平常年を下回り、それ以外の島の平均値は上回っていた。エルニーニョ年と平常年との比較においても、同様の傾向がみられた。

・また、ラニーニャ年とエルニーニョ年との比較では、すべての島においてラニーニャ年の歩留まりの平均値がエルニーニョ年の平均値を上回った。

3)雨量との関係
・南大東島を除き、ラニーニャ年の雨量の平均値は平常年およびエルニーニョ年の平均値を上回っていた。

・エルニーニョ年と平常年との比較においては、徳之島、沖縄本島を除き、エルニーニョ年の雨量の平均値は平常年の平均値を下回っていた。

4.各現象年における留意点

1)エルニーニョ年
・平常年に比べて雨量が少ない場合が多く、単収、歩留まりはラニーニャ年よりも低くなる場合が多い。

・台風の発生については、フィリピンの東側海上の低緯度地域での発生が多く、その勢力は徐々に強まりながら北上し、その後南西諸島に甚大な被害をもたらすことも多い。

2)ラニーニャ年
・雨量、単収は、平常年、エルニーニョ年よりも高くなる場合が多い。歩留まりについても、一部地域を除き平常年よりも高くなる場合が多い。

・フィリピンの北や沖縄近海の高緯度地域での低気圧や小さな台風の発生が多く、この種の台風は、南西諸島に強風による被害よりも降雨による恩恵をもたらす場合が多い。

5.現在および今後の予測

・ラニーニャ現象が発生しているとみられる。

・このラニーニャ現象は、冬から春までの間に終息する可能性が高い。

 図3の監視速報のように、再びラニーニャ現象が発生しているとの観測で、10月からの降雨量も多くなっているが、現在(11月時点)のさとうきびは、3〜5月の低温や台風による塩害、8〜9月の少雨などの影響で、生育は平年より大幅に遅れ、徳之島においては史上最低の生産の見込みとなっている。今後、来期にかけてはラニーニャ現象が終息し、しばらくはさとうきびには適さない気象が続く可能性もある。

6.おわりに

 さとうきびは収穫までの栽培期間が1年〜1年半と、国内の畑作物の中では最も長く、その間、干ばつ・台風などの厳しい気象条件や、逆に多雨による豊作など、その年の作況と気象条件が高い相関で反映されていると考えられる。

 エルニーニョ現象年の発生周期は約4年と言われている。今後気象状況とさとうきびの生産状況との関係を詳細に検証していく必要があるが、気象庁が定期的に発表する「エルニーニョ監視速報」を参考に、エルニーニョ年、ラニーニャ年を予測することで、気象状況に応じた対応について、早めに検討に入れる可能性があると考える。

 最後に、今後とも気象災害を最少限に留めるために、栽培基準に基づいた「適期肥培管理」作業の徹底の重要性を再認識し、これらの作業を推進しながら「さとうきび増産」と「歩留り向上」に努めていきたい。

※参考文献及び資料

1.エルニーニョと地球環境:気候影響利用研究会編成山堂書店
2.エルニーニョ現象を学ぶ:佐伯理朗著成山堂書店
3.異常気象:村山貢司著KKベストセラーズ
4.地球温暖化時代の異常気象:吉野正敏著成山堂書店
5.昆虫と気象:桐谷圭治著成山堂書店
6.太陽活動と景気:嶋中雄二著日経ビジネス文庫
7.気象庁気象データー及びエルニーニョ監視速報資料
8.日本甘蔗糖工業会製糖実績資料
9.日本分蜜糖工業会製糖実績資料
10.三井製糖(株)タイ国サトウキビ生産実績

(参考)

 南西諸島同様に「タイ国」の関係について調査した。

 調査対象期間は1992年(平成4年)から昨年までの19年間であったが、単収については、ラニーニャ年がエルニーニョ年より+1383kgと際立って高い結果となった。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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