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平成23年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要について

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最終更新日:2011年12月9日

平成23年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会の概要について

2011年12月

鹿児島事務所

はじめに

 当機構鹿児島事務所は、「平成23年度さとうきび・甘蔗糖関係検討会」を平成23年10月26・27日の両日、鹿児島市において開催した。

 同検討会は、鹿児島、沖縄両県のさとうきび生産者、国内産糖製造事業者、さとうきびに関する研究者、国、県などの関係者が一堂に会し、さとうきびの生産性向上や担い手育成、甘しゃ糖製造の歩留りの向上等に関する諸課題について鹿児島、沖縄両県のさとうきび関係者の間で認識を共有するとともに諸課題の解決に向けた具体的方策を検討することを目的としている。



 今回の検討会では、

(1)砂糖政策をめぐる現状と課題について

(2)平成23年産対象甘味資源作物生産者要件審査申請書提出状況

(3)品目別経営安定対策への取組

(4)砂糖の価格調整制度と生産性向上の必要性

(5)現地における生産性向上等の取組

(6)製造事業者による歩留向上等の取組

(7)調査・研究の取組

 について報告があり、それぞれ意見交換が行われた。
 
 
 
 

1.砂糖政策をめぐる現状と課題について

 農林水産省生産局農産部地域作物課の藤田砂糖類調整官から、砂糖政策をめぐる現状と課題について、また、同課地域作物第1班甘味資源作物生産振興係の亀谷係長から平成24年度農林水産予算概算要求の概要などについて解説が行われた。

2.平成23年産対象甘味資源作物生産者要件審査申請書提出状況

 当機構那覇事務所の薄井所長から、平成23年産対象甘味資源作物生産者要件審査申請書の提出状況について、また、平成22年産対象甘味資源作物生産者の対象要件別実績の報告を行った。

3.品目別経営安定対策への取組

(1)鹿児島県農政部農産園芸課の新坂課長からの報告では、「鹿児島県における品目別経営安定対策への取組」と題して、平成22年産からの対象甘味資源作物生産者の要件の見直しを受け、特例農家の本則要件適用に向け関係機関・団体などが一体となり、制度の周知を図るとともに基幹作業の委託や共同防除の推進などにより、22年産までの特例農家は、高齢化による離農者を除き、21年産の本則要件に移行することができたとしている。

 今後の課題と取組みについては、共同利用組織に係る構成員の特例等への対応を推進するとともに、さとうきび生産者の経営・生産基盤を強化し、さとうきびの増産を推進するとの報告があった。


(2)沖縄県農林水産部糖業農産課の島尻課長からの報告では、「沖縄県における担い手育成に向けた取組」と題して、要件見直しに伴う取組みとして、21年度においては、各地区や各生産組合を対象とした説明会を行うとともに、生産組合の再編等を行い、22年度は、防除作業推進に関する調整会議の開催や、生産組合での野そ防除に関する説明・講習会を開催するなど、関係機関が連携して防除を行う生産組合の組織作りを推進したことにより、特例農家の大部分は共同防除に移行することができたとしている。

 また、担い手の育成については、生産性の向上・安定生産に向けて、機械化・受委託の推進を支援するとともに、適正かつ効率的な防除体系の確立支援を行っていくとの報告があった。

4.砂糖の価格調整制度と生産性向上の必要性

 鹿児島大学農学部の坂井准教授から、「砂糖の価格調整制度と生産性向上の必要性」と題して、

(1)国内のさとうきび生産を現在の形で維持するためには、国際情勢が許容する限り、現行の制度を維持することが生産者サイドにとって有益であること

(2)現行の制度を維持するためには、さとうきび生産と製糖の生産性向上が不可欠であるとともに、調整金赤字の常態化の解消、消費者やユーザーなどに制度についての理解を深めてもらうことが重要である

との講演があった。

5.現地における生産性向上等の取組

(1)鹿児島県種子島の大脇光矢氏からは、「農事組合法人南種子さとうきび生産組合の取り組み」と題して、同法人設立の経緯や組合員の雇用の維持など、経営の安定を図るための取り組みについて報告があった。

(2)鹿児島県沖永良部島の谷山健一郎氏からは、「東内会(調苗・植付班)の取組状況について」と題して、さとうきびの生産農家や生産量の減少が続く中、他の地域(島)と比較して作物生産が多様化している状況に鑑み、さとうきび生産の確保と維持を図るため、優良種苗を生産者へ配布するなどの取組みについて報告があった。

 (3)鹿児島県沖永良部島の園田孝徳氏からは、「魅力あるきび作りを目指して」と題して、平成12年の就農後、ハーベスタやビレットプランターなどの導入により省力化を図り、機械化一貫体系を確立し、作付面積の拡大を図っているものの、島の限られた耕地面積の中で作付面積の増加は困難な状況となっていることから、他の生産者からほ場を借り入れて作付面積の拡大を図ることとした。ほ場の借入れに際しては、収穫後に返却する農地について株出管理を実施して返却することにより、借入先の生産者へのメリットが明確になり、ほ場の借入れがし易くなったなどの報告があった。
 
 
(4)沖縄県農林水産部営農支援課の上原副参事からは、「沖縄におけるさとうきび生産性向上の取組」と題して、近年、沖縄県内の各地域において、茎数の減少が要因であると思われる単収の低下への対策として伊江島、南大東島、北大東島における優良事例の報告があった。伊江島では発芽の遅い品種Ni15を夏植えに使う場合は、比較的早期に植え付けると発芽率の向上に有効であること、南大東島では全茎苗を植え付け数日前に採苗して、葉で覆って水を定期的に散水し、発芽したのを確かめてから植え付けるなどの工夫、さらに、北大東島では植え溝を深くV字型として覆土を浅くする「深溝浅覆土」の実践、などの事例が紹介された。

 また、独自技術によるさとうきび作りとして、専用の「苗ほ場」で良質の苗作りや除草剤と機械除草を組み合わせた効率的で効果的な除草作業など栽培土の工夫により、茎数の確保が可能となり生産性の向上につながるとの報告があった。
 
 
(5)沖縄県宮古農林水産振興センター農業改良普及課の又吉主任からは、「さとうきび増産に向けた株出栽培の普及活動」と題して、関係機関と連携した取り組みによるアオドウガネやハリガネムシなどの土壌害虫防除の徹底および展示圃による株出管理機の作業実演会により株出栽培・株出管理作業の普及を図ったことなどの報告とともに、増産のためには株出管理機の導入や株出オペレーターの組織化による株出管理実施体制確立の必要性が取り上げられた。

6.製造事業者による歩留向上等の取組

(1)新光糖業株式会社農務部の林部長からは、「さとうきびの安定的な生産量確保及び高品質原料搬入による工場歩留り向上への取組」と題して、昨今、高齢化による収穫作業の労働力が減少する状況下、平成19年産の品目別経営安定対策の実施に伴い、

1) 収穫作業機械の導入
2) 収穫受委託組織の設立
3) 各地域の生産者大会及び研修会などの実施
により、作付面積の維持や安定的な生産量の確保が可能となっていることとともに、早期高糖品種の普及促進により歩留まり向上を図っていることを報告した。


(2)石垣島製糖株式会社業務部農務担当の黒島係長からは、「石垣島における増産取組」と題して、石垣島では原料確保で10万トンを目標としており、収穫面積の減少、台風による被害、生産者の高齢化などの課題を解消するために、

1) 遊休地の解消
2) 夏植えの適期植付(8月植え)の督励
3) 台風による塩害に強い品種の導入
4) 若者の就労への参入に向けた関係者が一体となった取組が必要であるとの報告があった。

7.地域・試験研究の取組

(1)独立行政法人種苗管理センター鹿児島農場の末松農場長から「さとうきび原原種の生産・配布状況」と題して、県の需要に対応した原原種の生産・配布状況、側枝苗の生産状況などについて状況説明をするとともに、種苗を通じた病害の拡大防止とさとうきびの安定生産を図る観点から、今後も関係者の需要に対応して原原種を生産・配布することとしているとの報告があった。


(2)当機構調査情報部の宇敷上席調査役から「世界の砂糖需給について〜世界の需給と米国の最新状況〜」と題して、

1) 世界の砂糖生産は回復している中、ブラジルの生産量が拡大し世界の需給に与える影響が大きくなっている
2) アジアでは、インド・中国の生産が、引き続き回復傾向にあるものの、需要拡大が生産を上回る見込みである
3) 最近では、砂糖相場の上昇によりさとうきび産業の収益性が改善され、後継者が増える傾向にある
4) 甘しゃ糖については、米国南部・東部を中心に砂糖を供給しているものの、環境、安全等に関するバーンハーベストの問題や度重なるハリケーンの被害、景気の変動による他作物との競合等により供給量が不安定となっている との報告があった。


(3)沖縄県農業研究センター作物班の伊禮上席主任研究員から「指定試験事業で行われてきたサトウキビ育種 〜これまでの取り組みと成果、廃止とその影響、今後のありかたについて〜」と題して、指定試験事業によって行われてきた「奄美以南に向けたサトウキビ育種」については、

1) 生態育種の戦略に基づき、鹿児島県と沖縄県の関係機関の協力の下、現地試験を展開し、育種を行ってきた
2) 品種育成が軌道に乗り、より一層の高水準の品種開発に向けた技術開発や研究についても進捗している
3) 一方で、同事業の廃止に伴い、育種の研究の継続が困難な状況となっている
4) 今後さらに厳しくなる研究環境の中、限られた研究資源で効率的かつ効果的に「サトウキビ育種」を進めていくには、県や機関を超えた総力の結集が必要となる との報告があった。


(4)沖縄県農業研究センター病虫管理技術開発班の新垣班長から「指定試験事業廃止のサトウキビ害虫防除技術への影響と課題」と題して、

1) 本来、国が必要とする試験研究の内、実施困難なものについては、適地の都道府県の試験研究機関を指定し、さとうきび害虫の生態と防除に関する研究・技術開発等を委託事業として行ってきた
2) 平成22年度をもって当研究開発は終了することとなった
3) 今後は、「ケブカアカチャコガネの生態解明と防除技術の開発」、「イネヨトウの生態解明と防除技術の開発」、「ハリガネムシの低コスト防除技術の開発」の3課題を中心に研究を引き続き実施していくこととしている との報告があった。


(5)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センターの寺内上席研究員から「サトウキビ研究の課題と研究協力」と題して、近年のさとうきび研究の動向や研究開発のより効率的な実施に向けた取り組みについて報告があった。

おわりに

 今回の検討会では、さとうきび生産者、糖業、行政の関係者を始め185名の参加者があり、両県の重要な基幹作物であるさとうきびの生産性向上や担い手育成、甘しゃ糖製造歩留まりの向上等について意見交換が行われた。検討会の中で報告された優良事例や研究等を各地域でのさとうきび栽培を行う上での参考として活用していただき、さとうきび生産の一助となれば幸いである。

 開催に当たり、開催地である鹿児島県の関係者をはじめ数多くの皆様から多大なるご協力をいただいたことに感謝いたします。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713