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UAEにおける砂糖産業の情勢

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最終更新日:2012年4月10日

UAEにおける砂糖産業の情勢

2012年4月

調査情報部
 

【要約】

・UAEでは、砂糖の原料作物は生産されておらず、ドバイにある世界最大級の精製糖工場で、輸入粗糖から精製糖を生産。
・国内砂糖産業の保護政策は無く、輸入も自由。
・精製糖工場は、大規模生産による生産コストの低減、巨大な貯蔵設備と深水港を利用した粗糖の大量輸入によるフレートコストの削減、世界の物流ハブであるドバイに位置することで安価な輸出フレートの実現を可能にしており、国際競争力を維持。
・生産された精製糖の大半は、近隣の中東諸国へ再輸出。このため、白糖プレミアムは精製糖工場の利益に重要な指標となる。

1.はじめに

 アラブ首長国連邦(以下UAE)は、砂糖の原料作物を生産しておらず、ブラジルなどから輸入した粗糖をドバイに位置する世界最大級の精製糖工場で精製し、砂糖を生産している。生産された砂糖の大半はイラン、イラク、サウジアラビアなどの近隣諸国へ再輸出される。UAEには国内砂糖産業を保護する政策が無く、砂糖輸入も自由化されているため、精製糖工場は国際砂糖価格の動向に強く影響される状況となっている。

 このような同国における砂糖産業の情勢および需給動向について、英国の調査会社LMCからの報告に基づいて紹介する。

2.砂糖産業の概要

(1)生産状況

 UAEはアラビア半島の南東に位置し、7つの首長国(アブダビ、ドバイ、シャルジャ、アジマン、ウム・アル・カイワイン、フジャイラ、ラス・アル・ハイマ)が一つの国を形成している。

 UAEでは、砂糖の原料作物の生産は行われていない。同国には現在、ペルシャ湾地域で唯一かつ世界最大級の精製糖工場があり、ブラジルなどから輸入した粗糖を精製し、砂糖を生産している。生産される砂糖はICUMSA(国際砂糖分析法統一委員会)色価45以下の高純度の精製糖である。同工場はAl Khaleej社の所有であり、ドバイのジェベルアリ自由貿易区に位置する。1995年に操業を開始し、現在の年間産糖能力は160万トン(白糖換算)となっている。同工場で生産された砂糖は国内に供給されるほか、イラン、イラク、サウジアラビアなど近隣の中東諸国へ再輸出されている。
 
 
 表1は、UAEの精製糖工場の生産実績を示している。1日当たりの平均産糖量および年間稼働日数は、国内砂糖消費量の増加と輸出機会の拡大を背景に年々増加しており、2010年時点でそれぞれ5000トン(白糖換算)、302日となった。これは世界の平均(1日当たりの平均産糖量1500トン、年間稼働日数262日)を大幅に上回る水準である。
 
 
 UAEには、国内価格の支持制度など国内の砂糖産業を保護する政策が無く、砂糖の流通に関する規制もない。また、粗糖および砂糖の輸入に対する関税は無税となっている。このように、同国の砂糖産業は自由化されており、精製糖工場は輸入粗糖から生産した砂糖の大半を輸出に仕向けるため、その経営は国際砂糖価格の動向に強く影響されている。

 UAEの精製糖工場は、粗糖の保管能力が100万トン以上の巨大な貯蔵設備を有しており、国際価格が安い時に粗糖を大量に輸入し、国際価格が上昇してから精製糖を再輸出することで利益の最大化を図っている。こうした事情から、精製糖工場は精製した砂糖を粗糖輸入と同じ年に再輸出しない場合も多く、このためUAEの砂糖在庫量は年によって大きく変動する状況となっている。
 
 

(2)精製糖工場の優位性

 表2は、UAEの精製糖工場の生産コスト(減価償却費、利息を含む)を示している。同工場は大規模生産によりコストを削減しており、2010年時点の砂糖1トン当たりの生産コストは49.3米ドル(約4043円:1米ドル=82円)となった。これは世界の平均(92.5米ドル;約7585円)の約半分の水準である。

 UAEの精製糖工場は、生産コストのほか、立地の面でも他国の精製糖工場に比べ優位性がある。同工場が位置するドバイのジェベルアリ自由貿易区には巨大な深水港がある。UAEの精製糖工場は、この深水港と自社が保有する巨大な貯蔵設備によってパナマックス級の船舶(貨物輸送能力6万トン)で一度に大量の粗糖を輸入することが可能であり、トン当たりのフレートを最小限に抑えている。さらに、ドバイが世界の物流ハブとして位置づけられていることも、UAEによる砂糖の再輸出を有利にしている。ドバイにはコンテナ船が頻繁に出入港し、フレートが比較的安い。また、アジア諸国から大量の工業製品がドバイへ輸出されており、ドバイからアジア諸国へ戻るコンテナ船を利用することにより、安価なフレートでインドネシアやシンガポール、パキスタンなどのアジア諸国へ砂糖を輸出することが可能となっている。

注:TTSレート2月最終日

(3)白糖プレミアム

 UAEの精製糖工場は、国際市場から粗糖を輸入し、生産した砂糖の大半を再輸出しているため、世界の白糖プレミアム(ロンドン白糖市場とニューヨーク粗糖市場の価格差)が利益の指標となる。白糖プレミアムが高い時、すなわち国際粗糖価格の指標となるニューヨーク粗糖市場の価格が安く、国際精製糖価格の指標となるロンドン白糖市場の価格が高い時に粗糖を輸入し、砂糖を再輸出することで、精製糖工場は利幅を拡大することができる。一方、白糖プレミアムの低迷が続いた時は、精製糖工場は損失の拡大を防ぐため稼働率を低く抑える。2011年はじめは白糖プレミアムが著しく低迷し、生産コストを下回ったため、UAEの精製糖工場は操業を一時的に停止する事態となった。

 2011年は粗糖価格が高騰し、各国の精製糖工場にとって厳しい年となった。白糖価格も上昇したが、粗糖価格の上昇がそれを上回ったため、精製糖工場の利益は低下した。さらに、同年の大半においてニューヨーク粗糖市場とロンドン白糖市場が逆ザヤとなったことも、UAEのように精製した砂糖の再輸出を事業の中心に据える精製糖工場にとって大きな打撃となった。これは、精製糖工場が粗糖を輸入する際、期近価格を基準とし、その粗糖から生産した砂糖を輸出する際は期先価格を基準にするためである。例えば、3月にUAEの精製糖工場がニューヨーク粗糖市場3月限(期近)の価格を基準にブラジルから粗糖を輸入した場合、その粗糖がUAEに到着するのは1カ月後であり、さらに精製処理の時間も要する。このため、ブラジル産粗糖から生産された砂糖は、ロンドン白糖市場8月限(期先)の価格を基準に輸出されることになる。市場が逆ザヤの時はこのタイムラグにより、精製糖工場は粗糖を高値で輸入し、生産した砂糖を安値で輸出することになるため、利幅が減少することになる。

注:先物市場において、期近の価格が期先を上回ること。
 
 
 図3は、過去10年間の白糖プレミアム(A)および精製糖工場の利幅(B;白糖プレミアムから精製時のロスを差し引き、さらに粗糖の輸入から砂糖の輸出までのタイムラグによる損益を考慮したもの)の推移を示している。(B)は(A)に連動しているが、2009年後半以降その差は拡大傾向にある。これは、粗糖価格が砂糖価格を上回るペースで上昇したことによって精製時のロスによる損失が増加したこと、また、砂糖の目先の需給ひっ迫感が強まり、逆ザヤが拡大したことによる。

 UAEの精製糖工場が砂糖を1トン生産する際に発生する現金支出額は43.9米ドル(約3600円)となっており(表2)、砂糖の袋詰めコストがトン当たり10〜15米ドル(約820〜1230円)とすると、精製糖工場が利益を得るには、(B)が50〜55米ドル(約4100〜4510円)の水準を上回る必要がある。図3の通り、2011年はじめは(B)がこの水準を大きく下回ったため、UAEの精製糖工場は操業を停止した。特に2011年2月は落ち込みが大きく、トン当たり27米ドル(約2214円)の赤字となった。
 
 

3.砂糖需給と貿易の状況

(1)需給動向

 UAEでは、砂糖の原料作物は生産されておらず、国内に供給される砂糖の大半は輸入粗糖を国内で精製したものであり、残りは輸入砂糖となっている。

 砂糖消費量は、国内における清涼飲料、製菓産業の発展を背景に増加傾向にあり、2011年は18万トン(粗糖換算)と見込まれている。UAEは16歳以下の若年人口の割合が約50%と高く、このことが清涼飲料、製菓産業の拡大に寄与している。なお、一人当たりの年間砂糖消費量は34キログラムと、世界平均(29キログラム)を上回る水準となっている。

 UAEでは砂糖輸入が自由化されており、国内価格の支持制度も存在しない。このため、国内の砂糖価格は砂糖の輸入価格(CIF)に連動していると考えられる。図4は、ロンドン白糖市場価格とUAEの砂糖輸入価格(LMC推定)を示している。2010、2011年は、国際砂糖価格の乱高下の影響を受け、UAEの国内価格も図4のように大きく変動したとみられる。
 
 
 
 

(2)貿易状況

 砂糖輸入の大半は粗糖であり、輸入された粗糖はドバイの精製糖工場で精製される。輸入先は世界最大の生産・輸出国ブラジルが中心となっているが、2008年については、インドからの輸入量がブラジルを上回った。これは、この年にインドが豊作となり、ブラジルよりも安価な粗糖が同国から供給されたためとみられる。
 
 
 UAEの砂糖輸出に関する詳細なデータはないものの、主要輸出先はイラン、イラク、バングラデシュ、サウジアラビアと推定される。また、一部の輸入粗糖については、UAEで精製されず、そのままイランや東アフリカ諸国に輸出されているとみられる。

 輸入量は、2004年まで増加傾向で推移していたが、その後は年によって変動し、2005年〜2010年の動向をみると、最も少ない年は170万トン(2007年)、最も多い年は210万トン(2008年)となった。輸出量も同様の傾向であり、最も少ない年は100万トン(2005年)、最も多い年は180万トン(2006年)となった。貿易量の変動は、2.−(1)で述べた通り、精製糖工場が大規模な貯蔵設備を利用して、利益の最大化を図るために国際価格の動向に応じて輸出入の時期、数量を設定するためである。

 2011年については、輸入量は120万トン(前年比31.7%減)、輸出量は80万トン(同51.3%減)と前年から大幅に減少すると見込まれている。これは、前述の通り、2011年はじめに白糖プレミアムが著しく低迷し、精製糖工場が操業を一時的に停止した影響による。

 なお、UAEの精製糖工場はサウジアラビア東部の都市ダンマン(同国3番目の都市)周辺にも砂糖を供給しており、同国における砂糖供給の約12%を占めている。ダンマンはジェッダ(同国2番目の都市)に位置するSavola社の精製糖工場から離れているため、UAEから同地域への砂糖供給が可能となっている。年間供給量は12万5000トン〜15万トンと推定される。

4.その他の甘味料の需給動向

○ブドウ糖
 UAEではブドウ糖の生産は行われておらず、国内供給は輸入に頼っている。ブドウ糖消費量は砂糖消費量の6%と市場規模は小さいものの年々増加しており、2010年には1万593トンとなった。なお、最近では穀物価格の高騰を受け、エネルギー源として鶏用飼料にブドウ糖を代替品として使用する生産者もいる。現在のところ、飼料用のブドウ糖需要は少量であるが、将来的にこの需要が拡大する可能性もある。


○異性化糖
 UAEでは異性化糖の生産は行われていない。需要は輸入で賄われているが、ごく少量であり、2010年には277トンとなった。これは砂糖消費量の1%にも満たない。


○人口甘味料
 UAEでは、人口甘味料はほとんど消費されていない。伝統的にサッカリンが薬品産業で使用されているが、2010年の消費量はわずか16トンである。チクロ(サイクラミン酸ナトリウムおよびカリウム)は、2008年以降輸入されていない。これは、アブダビ首長国でチクロを含む食品の輸入が禁止された影響とみられる。
 
 

5.UAEの砂糖産業をめぐる今後の課題

 UAEの精製糖工場は、大規模生産による生産コストの低減、巨大な貯蔵設備と深水港を利用した粗糖の大量輸入によるフレートコストの削減、そして、世界の物流ハブであるドバイに位置することで安価な輸出フレートの実現を可能にしており、引き続き高い競争力を維持すると見込まれている。しかしながら、今後、ほかの中東諸国で精製糖産業が拡大するにつれ、その優位性が低下する可能性もあり、競争力のさらなる向上がUAEの砂糖産業にとって課題となるだろう。

 バーレーンのArabian Sugar Company社は現在、同国北東部の工業地域Hiddで精製糖工場を建設している。同工場は2012年6月に完成予定であり、産糖能力は年間60万トンの計画である。バーレーンの精製糖工場は、輸入粗糖から精製した砂糖を国内へ供給するほか、再輸出も行うとみられ、UAEの精製糖工場のペルシャ湾地域における市場シェアを奪う可能性がある。とりわけ、バーレーンは、現在UAEの砂糖供給先の一つとなっているサウジアラビア東部のダンマン周辺に対し、立地面で優位性がある。

 また、現在2つの精製糖工場が稼働するシリアで産糖能力が拡大している。このうち一つの精製糖工場は、シリア西部ホムス県のJidarに位置するNSCとカーギルの合弁事業である。この精製糖工場は年間産糖能力が100万トンと推定される。もう一つの精製糖工場はTariff Akhrasグループの所有であり、2010年に操業を開始した。2012年にはフル稼働となる見通しであり、年間産糖能力は32万トンと推定される。また、シリアでは国内で生産されるてん菜から年間10万トンの砂糖が生産されている。これらを合わせると、シリアの年間産糖能力は142万トンと見込まれる。一方、シリアの砂糖消費量は90万トンを上回る程度(2011/12年度)とみられることから、同国は砂糖の輸出余力を十分に持っていると考えられる。このことから、将来的にシリアは同国に隣接するイラクなど、現在UAEが砂糖を供給している国に砂糖輸出を行う可能性がある。

 これまでUAEの精製糖工場は、近隣の中東諸国に砂糖を供給できる唯一の存在として優位性を持っていたが、前述の通り、ほかの中東諸国で精製糖工場の新設や産糖能力の拡大が行われるにつれ、その優位性が低下する可能性もある。今後、UAEの砂糖産業をみる上では、近隣諸国の精製糖産業の動向についても注視する必要があるだろう。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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