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さとうきび品種「農林27号」の特性と利用

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最終更新日:2012年5月10日

さとうきび品種「農林27号」の特性と利用

2012年5月

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 九州沖縄農業研究センター
作物開発・利用研究領域上席研究員 寺内 方克

はじめに

 サトウキビ産業の強化を通じた南西諸島の持続的発展には、サトウキビの単収増大が欠かせない。その方策として、九州沖縄農業研究センターでは、早期収穫や機械化に対応可能な多収品種の開発を進めてきた。その結果、収量や糖度、株出し能力に秀でた品種を提供できたが、一方で、生産現場からは、茎が長く数が多い品種は収穫しにくい、あるいは脱葉性が悪く収穫に手間がかかるといった声を聞くようになった。現に新しい高糖多収品種が開発されている中で、中茎で脱葉性が良く収穫しやすい農林8号(品種登録名称:NiF8)が育成から20年を経てなお南西諸島の品種シェアの首位を占めていることは、この現れと考えられる。中太茎で脱葉性の良いさとうきび農林27号(品種登録名称:Ni27)は、こうした生産者の期待に応えるもので、特に高い収穫適性が求められる手刈りにおいて、収穫作業を容易とする多収品種である。ここでは、農林8号を親とし、農林8号の草姿、品質、主要な特性そのままに、太茎化によって多収を実現した農林27号の特性と利用面での注意点について紹介する。

1.品種の来歴と特徴

(1)来歴

 さとうきび農林27号は、「NiF8」を種子親、「RF79-247」を花粉親として沖縄県農業試験場(現沖縄農業研究センター)で交配された種子から九州沖縄農業研究センターが選抜・育成した品種である(図1)。同じ交配組み合わせには、農林17号(品種名:Ni17)があり、兄弟にあたる。交配種子は1995年に播種し、1996年に実生選抜を開始、1998年に系統名「KR96-93」を付し、2002年から各地での試験に供試した。

 その結果、南西諸島全域でNiF8に比べて多収で同等の糖度を有する可能性が高いとの試験結果が得られた。しかしながら、2003年に鹿児島県内で台風による著しい折損被害が認められたことから、鹿児島県内では奨励品種採用のための試験が打ち切られた。
 
 
 一方、沖縄県内のうち、特に夏植えで手刈りが中心の宮古島では、本品種の高い収量性と収穫適性に注目し、風折発生のリスクを承知の上で試験が継続された。宮古島は、南西諸島内でも最も台風被害の発生しやすい地域の一つで、2002年〜2007年の間に最大瞬間風速50m/sを越える台風が4回襲来した。これにより、春植えでは大きな折損被害が見られる年次もあったが、夏植えでの折損被害は多くても10%台、宮古島の主力品種「宮古1号」とほぼ同等程度であったことから、夏植えでは、実用的に問題がないと判断された(表1)。

 このような経過を経て、沖縄県の奨励品種に採用され、2009年に「Ni27」として品種登録申請を行い、2010年には農林水産省から「さとうきび農林27号」の認定を受けた。
 
 
(2)形態および生態的特性

 農林27号は、概ね母親である農林8号と形態的外観が類似する(図2、3、4)。茎がやや太く緑色で、葉鞘を含めてアントシアンによる着色がない点で農林8号と異なり、この着色の有無で識別できる。草型、葉の形態、茎の形状や屈曲の様態、芽子の形態などを含めて、農林8号とほぼ同じである。

 発芽性は農林8号と同等の「良」で、株の萌芽性や分げつ性は農林8号よりもやや劣る。茎は直立し、初期伸長性は農林8号よりも優れる。登熟性は農林8号と同じ「やや早」である。出穂は少なく希で、従って、収穫期の側枝の発生もほとんどない。葉焼け病、さび病類、モザイク病など葉身に生じる病気に抵抗性である。また、梢頭部腐敗病にも抵抗性である。黒穂病抵抗性については、試験期間を通じて黒穂病発生は認められず、実際栽培上重要となる圃場抵抗性は「中」と判定している。近年多発しているメイチュウ類に対する抵抗性は、農林8号と同等の「中」と判定されている。風折抵抗性は農林8号よりも劣り、宮古1号と同等でF177に優る。発生する茎の形状は均一で、耐倒伏性および脱葉性は農林8号と同程度で、農林8号同様に収穫しやすい。
 
 
 
 
 
 
(3)収量性および品質特性

 農林27号は種子島から石垣島までの南西諸島のほぼ全域で農林8号に比べて多収を示す。南西諸島北端に位置する種子島の育成地での成績では、春植え5回、株出し4回の試験のうち、原料茎収量において農林8号を下回ったのは、風折被害のあった春植えの1回だけである。南西諸島のほぼ南端に位置する宮古島の沖縄県農業研究センターでの試験では、春植え6回、株出し5回、夏植え5回の試験において、原料茎重が農林8号を下回ることはなかった。その多収の要因は、茎径が大きく一茎重が大きいことよる。原料茎数や、原料茎長は農林8号とほぼ同等である。

 農林27号の品質は農林8号と同等である。試験年次や作型などで変動は見られるが、種子島試験地および宮古島支所、これ以外の試験地の試験成績を含めて、登熟特性、甘蔗糖度、繊維分の累年成績の平均値は農林8号とほぼ一致する。
 
 

2.栽培上の注意点

 育成経過からも明らかなように、農林27号は台風による風折の危険がある。そのリスクは、生育の状況によって異なり、台風襲来時点において生育の進んでいる夏植えにおいては、被害の程度は軽微となる。従って、(1)風折の発生しやすい圃場での栽培を避ける、(2)夏植えを原則として、(3)春植えする場合は、早期植え付けにより台風襲来までの生育量を確保する、といった点に注意すべきである。

3.おわりに

 農林27号は、農林8号を太茎化することで多収を実現した品種で、南西諸島全域で多収、茎揃い良く耐倒伏性で、脱葉性が良く、手刈り・機械収穫ともに作業性の良い品種である。しかし、太茎化したことによって、風折への抵抗性が低下している。太茎品種は、細茎品種に比べて物理的な問題として折れやすいことが確認されている。風折抵抗性は生産量の安定確保の点で極めて重要な形質である。農林27号の育成を通じて得られた教訓は今後の品種開発に活用したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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