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4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2012年6月11日

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

2012年6月

調査情報部

ブラジル

 
 

(1)2012年5月における生産見通し

〜砂糖生産量は前年度比4.6%増の見込み〜

 米国農務省(USDA/FAS)によると、2012/13ブラジル砂糖年度(4月〜翌3月)のさとうきび収穫面積は900万ヘクタール(前年度比1.2%増)、さとうきび生産量は5億6500万トン(同0.7%増)と、いずれも前年度からわずかに増加すると予測されている。さとうきびの砂糖、エタノールへの仕向け割合は48.6:51.4と、前年度(48.1:51.9)に比べ砂糖向けの割合が高まるとみられている。これは、世界的に砂糖需要が堅調に推移するとみられ、砂糖・エタノール工場は砂糖生産を優先すると見込まれるためである。さとうきびの仕向け割合の増加に加え、さとうきびの糖度上昇も見込まれることから、砂糖生産量は前年度からやや増加の3780万トン(粗糖換算、同4.6%増)と予測されている。

 ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)によると、生産の約9割を占める中南部では、既に2012/13年度の収穫が開始された。5月15日までのさとうきび収穫量は3510万トン(前年同期比38.7%減)、砂糖生産量は160万トン(粗糖換算、同33.9%減)、エタノール生産量は13億1950万リットル(同39.3%減)と、いずれも前年度を大幅に下回った。これは、中南部で2012年2月から3月下旬にかけて非常に乾燥した天候が続き、さとうきびの生育に遅れが生じていること、4月に降雨が続き、収穫が行えなかったことから砂糖・エタノール工場の操業開始が例年に比べ遅れているためとされる。5月15日までに操業を開始した工場の数は235と、前年(273工場)を大きく下回っている。
 
 

(2)貿易・政策動向等

〜輸出量は前年度比2.4%増の見込み〜

 2012/13年度の砂糖消費量は前年度からわずかに増加の1170万トン(粗糖換算、前年度比1.7%増)と見込まれている。輸出量は、増産が見込まれることから2530万トン(粗糖換算、同2.4%増)と、前年度からわずかに増加すると予測されている。 2012年4月の粗糖・白糖輸出量は54万9000トンと、前年同月(130万3000トン)の半分以下の水準となった。輸出量の減少は、前年度の減産やタイの輸出増加などの影響とみられる。主要輸出先はロシア、アルジェリア、モロッコであった。

資料:USDA “GAIN Report, Brazil, Sugar Annual 2012” 2012/4/13 ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)プレスリリース 2012/05/24
 
 

インド

 
 

(1)2012年5月における生産見通し

〜2011/12年度の砂糖生産量は前年度比8.5%増の見込み〜

 米国農務省(USDA/FAS)によると、2011/12インド砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は509万ヘクタール(前年度比3.0%増)、さとうきび生産量は3億4790万トン(同1.6%増)といずれも前年度を上回る見通しである。砂糖生産量については、さとうきびの増産に加え、糖度が前年度に比べ高いこと、また、アルコール生産などに利用されるグル向けのさとうきびが砂糖向けに流入していることから、前年度からかなりの程度増加し、2880万トン(粗糖換算、同8.5%増)と予測されている。インド製糖協会(ISMA)によると、4月22日までの最大産地マハーラーシュトラ州における砂糖生産量は870万トン(白糖換算、前年同期比8.5%増)、国内2位のウッタル・プラデーシュ州における砂糖生産量は690万トン(白糖換算、同18.0%増)といずれも前年度を上回った。同日までのインド全体の砂糖生産量は2500万トン(白糖換算、同12.8%増)に達したとされ、製糖は順調に行われている。

 USDAは、2012/13年度のさとうきび収穫面積は525万ヘクタール(前年度比3.1%増)に増加すると予測している。増加の要因は、さとうきび価格が前年度に引き続き高い水準で維持されるとの見込みから生産者の意欲が高く、作付けの増加が見込まれるためとされる。モンスーン期の降水量が平年並みとなれば、さとうきび生産量は3億6500万トン(同4.9%増)、砂糖生産量は2980万トン(粗糖換算、同3.2%増)に増加するとみられている。

注:インドの伝統的な含みつ糖
 
 

(2)貿易・政策動向等

〜政府は5月上旬、輸出制限の一時解除を決定〜

 砂糖需要の約6割は飲料メーカー、製パン・製菓メーカーなどの大口ユーザーが占め、消費量は経済成長と人口増加を背景に増加傾向にある。2011/12年度は、増産により国内供給が改善したことも影響し、2550万トン(粗糖換算、前年度比8.5%増)に増加すると見込まれている。

 国内供給が豊富であることを受け、政府は2011/12年度において2回にわたり合計200万トンのOGL方式注1による国産原料由来の砂糖の輸出を許可した。なお、政府は3月下旬、同方式による輸出を100万トン追加することを決めたが、輸出枠の製糖工場への割り当て方法をめぐり関係者間で対立が生じたため、この追加許可については正式な公表が行われないままとなっている。先に許可された輸出枠については、過去3年間の平均生産量に基づき各製糖工場へ割り当てられた。

 さらに、政府は5月上旬に砂糖輸出の制限を一時的に解除することとした。この背景には、輸出を後押しすることで製糖工場の資金繰りを改善し、さとうきび代金の未払いを解消することで生産者のさとうきび生産意欲を維持したいとの政府の思惑があるとされる。インドでは、さとうきび価格の上昇と国内砂糖価格の下落で製糖工場側が原価割れを起こし、生産者に対するさとうきび代金の未払い額が20億米ドルに達しているとされる。USDAは、4月時点で2011/12年度の輸出量を260万トン(粗糖換算、同33.4%減)注2と予測しているが、輸出制限の解除が今後どのような影響を与えるか注目される。

 2012/13年度について、消費量は同年度の経済成長率が7.6%、人口増加率が1.8%との見込みから、2650万トン(粗糖換算、前年度比3.9%増)に増加すると予測されている。輸出量は、同年度の生産量が消費量を上回るとの見込みから250万トン(粗糖換算、同3.8%減)と予測され、前年度に引き続き純輸出国になるとみられている。

資料:ISO “Market Report & Press Summary, May 2012” USDA “GAIN Report, India Sugar Annual 2012” 2012/4/20

注1:OGL(Open General Licence)とは、登録を行った業者に対し、手続きを簡素化するため、包括的に輸出を許可する制度。
注2:2011/12年度の輸出量が前年度に比べ減少するのは、前年度において、国産原料由来の砂糖に加え、輸入粗糖を原料とする砂糖および輸入された粗糖、砂糖の余剰品が再輸出されたためである。
 
 

中国

 
 

(1)2012年5月における生産見通し

〜2011/12年度の砂糖生産量は前年度比10.0%増の見込み〜

 中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。米国農務省(USDA/FAS)によると、2011/12中国砂糖年度(10月〜翌9月)のさとうきび収穫面積は174万ヘクタール(前年度比3.2%増)に増加の見通しである。収穫面積の増加に加え、最大産地の広西チワン族自治区を中心に単収も前年度から増加が見込まれるため、さとうきび生産量は前年度からかなりの程度増加し、1億2100万トン(同9.2%増)と予測されている。さとうきびの増産を受け、甘しゃ糖生産量は1120万トン(粗糖換算、同8.6%増)に増加の見通しである。

 てん菜生産地では、2011/12年度の製糖がほぼ終了した。同年度のてん菜収穫面積は26万ヘクタール(同19.6%増)に増加し、単収も前年度を上回ったことから、てん菜生産量は1160万トン(同25.0%増)に増加の見通しである。てん菜の増産を受け、てん菜糖生産量は前年度から大幅増加の110万トン(粗糖換算、同27.5%増)と予測されている。

 これらのことから、中国全体の砂糖生産量は1230万トン(粗糖換算、同10.0%増)と、前年度からかなりの程度増加すると見込まれている。

 2012/13年度について、さとうきび収穫面積は179万ヘクタール(同2.9%増)に増加すると見込まれている。天候が平年並みとなれば、さとうきび生産量は1億2600万トン(同4.1%増)、甘しゃ糖生産量は1180万トン(粗糖換算、同5.1%増)に増加すると予測されている。一方、てん菜収穫面積は30万ヘクタール(同14.5%増)に増加すると見込まれ、てん菜生産量は1340万トン(同15.3%増)、てん菜糖生産量は130万トン(粗糖換算、同15.0%増)と、いずれも前年度からかなり大きく増加するとみられている。さとうきびおよびてん菜の収穫面積の増加は、これらの価格上昇や製糖工場による生産支援を背景に作付けの増加が見込まれるためとされる。2012/13年度の中国全体の砂糖生産量は、1310万トン(粗糖換算、同6.0%増)に増加の見通しとなっている。
 
 
 
 
 
 

(2)貿易・政策動向等

〜国内供給の不足により、2011/12年度の輸入量は前年度比7.3%増の見通し〜

 2011/12年度の消費量は、人口増加や所得向上を背景に1430万トン(粗糖換算、前年度比2.1%増)に増加し、前年度に引き続き国内生産量を上回るとみられている。このため、同年度の輸入量は230万トン(粗糖換算、同7.3%増)に増加すると予測されている。なお、2012年3月の粗糖・白糖輸入量は26万3千トンと、前年同月と比べ約6倍に増加した。主要輸入先はキューバ、タイ、グアテマラであった。

 2012/13年度について、消費量は1470万トン(粗糖換算、同2.8%増)に増加すると見込まれている。一方、輸入量は、生産量の増加を受け、210万トン(粗糖換算、同8.7%減)に減少するとみられている。

資料:USDA “GAIN Report, China-Peoples Republic of, Sugar Annual 2012” 2012/4/17
 
 
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