砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > ユーザーから  > 沖縄の素材を活かした「琉球スィーツ」ブランドプロジェクト

沖縄の素材を活かした「琉球スィーツ」ブランドプロジェクト

印刷ページ

最終更新日:2012年6月11日

沖縄の素材を活かした「琉球スィーツ」ブランドプロジェクト

2012年6月

JTB法人東京チーフマネージャー 石川 智康

■「琉球スィーツ」ブランドプロジェクトとは

 今、沖縄では地元のシェフ、製菓関係者が中心となった、「琉球スィーツ・ブランド形成プロジェクト」が展開されている。これは、中小企業庁のJAPANブランド育成支援の一つとして2010年度にスタートしたものだが、本稿では、その概要や今後の展開などをご紹介したい。【資料(1)】【図(1)】

 まず、このプロジェクトスタートのきっかけについてである。これは、数年前に国際的なスィーツ・イベントを手がけたJTBの社員と、沖縄県の観光振興担当者の間で行われた 「沖縄の魅力を倍加させる新しい素材はつくれないだろうか」というミーティングの中で双方から出た「沖縄の素材を使ったスィーツはどうだろうか」というアイディアにある。実際、スィーツを地域・観光資源の有力素材として活かしているケースは多い。帯広を中心とした北海道・十勝地方などはその代表例だろう。また、沖縄には様々なフルーツや黒糖など、お菓子の材料になりそうな素材が多くある。プロジェクトの構想段階で来沖したパティシエ世界大会の日本代表チーム関係者も「沖縄にこんなに良いスィーツの素材があるとは知らなかった」と驚嘆の声をあげていた。それら優良な素材に沖縄のシェフたちの力が加われば、きっと人々の心をとらえるような上質なスィーツができるに違いない――こんな考えのもと、2010年の年明けに、県内外のスィーツ関係者による「新しい沖縄オリジナル・スィーツをつくろう」というプロジェクトが産声をあげることになった。

 プロジェクトはその後、中小企業庁の「平成22年度JAPANブランド育成支援事業」に応募、採択されることになるが、そのキーワードは「農商工観(観光)連携による新・沖縄ブランドの創出と発信」である。スィーツという素材を核に、オール沖縄の産業振興と地域活性化を図ろうというもので、併せて地元の若い菓子職人たちの人材育成としての意図も包含している。

 プロジェクトは、JAPANブランド事業に採択されたことで財政的な裏付けを得、この年の夏前から本格的に稼働。沖縄県洋菓子協会(2年目からは沖縄県調理師会)を母体に、県内のシェフや、製菓関係、広告代理店、JTBスタッフなどで組織された「推進委員会」が中心となった活動がスタートした。

■琉球スィーツの定義と目指すもの

 プロジェクトでは、はじめに「琉球スィーツ」の定義付けを行った。この件については、推進委員会でくり返し討議され、
○県産の食材を一定量以上使用する
○沖縄県内で製造される
ことを基本原則とし、この規定に基づいた「琉球スィーツコンテスト&選考会」を実施、そこで優良と判定されたものを「琉球スィーツ」として認定する、ということとした。

 また、琉球スィーツは「沖縄らしさ」「高級感・上質感」を追求するという方針も決まった。「沖縄にしかない」という希少価値と、日常食べる菓子とは違う「ハレの日のスィーツ」というイメージだ。ターゲットとする顧客は、県内在住者および県外(海外も含む)からのツーリスト(どちらも女性が中心)である。そこには、スィーツの販売・消費を通じ、県内での消費拡大に貢献しようという目論見がある。

 さらに、対象とするスィーツのジャンルについて、ブランド構築自体を主目的とする1年目は、まず、イートイン主体のプチガトーで商品開発とブランドの基盤整備をすすめ、2年目以降はそれにギフト菓子部門を加えて外販が可能なスィーツ・ラインナップ構成を目指すなど、段階を踏んだ展開を図ることになる。

■コンテスト&選考会

 年度ごとの「認定スィーツ」を選定する「コンテスト」は、これまで2回開催されている。応募要項や審査規定、レギュレーションはその年ごとにコンテスト運営チームで検討することとした。また、認定作品を決定する「審査」については、日本を代表するパティシエの横田秀夫氏を審査委員長、後藤順一、松島義典、フレデリック・マドレーヌの3シェフを特別審査員に配し、それに県内のベテランシェフが審査員として加わるという体制で厳正・公正を期している。2年目からは、消費者の目線も取り入れようという意味合いから、一般審査員枠も加えられた。

 コンテスト作品募集の呼び掛けに対しては、1年目は短期間のうちに180アイテムの応募が寄せられ、一次・二次審査を経て、その中から10作品が「認定」された。2年目は、応募資格を厳しくしたことで応募件数は減少したが、全体的な作品のレベルはアップしたようだ。この年の認定作品は、プチガトー部門13作品、ギフト部門7作品の計20作品。1年目と合わせると30の「認定スィーツ」が誕生したことになる。【資料(2)】

 ちなみに、認定作品の多くが「県産の砂糖・黒糖」を使用している。【資料(1)(2)】【写真(1)(2)】【図(1)(2)】

■認定作品のPRと販売

 コンクールで認定されたスィーツは、プロジェクトのホームページや、「琉球スィーツフェア」と題した試食イベント等でPRしている。

 今年2月の「フェア(公開試食会)」は、那覇空港国内線ロビーで行った。無論、ツーリストへの訴求を意識してのことだ。会場にお越しいただいた方は3日間のべ9時間で数百名、認定スィーツの試食とアンケート記入を実施した。アンケートの結果をざっと表現すると、「楽しい」「美味しい」「もっと食べたい」ということになる。「今後の拡大に期待」という声も多く聞かれた。【写真(3)】

 現在、認定作品の販売はそれぞれの認定者の店任せになっているが、琉球スィーツ食べ歩きを組み込んだ県外発のパッケージツアーが販売されるなど、販売チャンネル拡大の予兆は確実に現われはじめている。

■課題 今後の展開

 プロジェクトは今年で3年目を迎えるが、まだまだ克服すべき課題は多い。プロジェクトでは今年のテーマとして
(1)「食べたくなる」「買いたくなる」魅力的なスィーツアイテムの開発
(2)マーケティングと有効なプロモーション活動。琉球スィーツ・ブランドの認知度アップ
(3)販路の拡大
等を掲げ、積極的な取り組みを予定している。

 (1)については、県内はもとより、県外のシェフや製菓関係企業の協力も得た商品開発やアイテム数の拡充が急務だろう。また、ギフト製品の場合、製造ラインの確保も課題だ。

 (2)のプロモーションも必須である。過去2年間は、ブランド基盤構築と認定スィーツ制作に主眼を置いたため、プロモーションに力が回らず、その結果ブランドの認知度はあまりアップしてこなかった。この状況を打破し、一刻も早く「沖縄の、琉球スィーツ」の存在感を県内外にアピールしなければ、(3)でいう販路確保・販売量増大、そして「沖縄を代表する地域資源としての自立」という大目標を達することはできないのである。今年度は、首都圏や海外(台湾)でのプロモーションにも注力していきたいと考えているが、琉球スィーツ単体で展開するのではなく、沖縄県の観光プロモーションや、地元産品の販売促進キャンペーン等と連携を図り、相乗効果を図りたいと考えている。

 「琉球スィーツ」は、始まって2年足らずのプロジェクトだ。マーケティング、アイテム数拡大、品質向上、プロモーション、販路拡大のどれをとっても「まだ、これから」の素材だ。本稿をお読みの関係各位におかれては、ぜひ「琉球スィーツ」に絶大なるお力添えをいただければと願う次第である。


☆「琉球スィーツ」お問い合わせ先
 沖縄県調理師会 TEL (098)863-2882
 琉球スィーツ東京事務局(JTB法人東京内) TEL (03)5909-8439
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713