砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 地域だより > 地域だより

地域だより

印刷ページ

最終更新日:2012年8月17日

2012年7月

札幌事務所
 


1.はじめに

 近年、北海道における天候不順や作付面積の減少等によって、てん菜の生産量が減少している。22年産においては、作付面積の減少に加え雨が多く高温だったことから、褐斑病、黒根病の被害が多発し、収量、糖度ともに平年作を大幅に下回った。また、23年産においては、4月下旬から5月上旬の雨により移植時期が遅れたことや小麦、そば等に転換したことから作付面積がさらに減少し、生産量も依然低迷している現状である。


2.平成24年産のてん菜の生育状況について

 てん菜の移植は、本来であれば5月上旬にピークを迎えるが今年は5月3〜5日の大雨により、圃場に水が溜まるなどトラクターが入れない状況であったため移植作業が出来なかったことから、十勝地方の移植は平年に比べ11日遅れとなった。全道でも、移植の完了は6月の上旬と、やはり8日遅れとなった。

 そのため、5月上旬までに移植を終えた圃場と、それ以降に移植された圃場における生育状況の差が大きく、どの圃場を平均的な圃場として生育状況を判断するかが難しい状況となっている。 

 今回、芽室町、本別町、池田町の圃場の生育状況を視察してきたので報告する。


(1) 芽室町の圃場
 写真1の圃場は、4/29〜5/3の4日間で移植されたもので、畝間がはっきり見えるが順調に生育しているとのことで、しっかりと育っている印象であった。(畝間66cm×株間22cmで6,800本/10a)
 
 
(2) 本別町の圃場
 写真2の圃場は、4/29〜5/1にかけて移植されたもので、順調に育っており、畝間は見えなかった。
 
 
(3) 池田町の圃場
 写真3の圃場は、右側は5/2に、左側は5/20に移植され、移植時期の違い(18日間)により生育差が発生したもので、同じ圃場でも移植時期の違いで、これだけの生育差がはっきりと表れている圃場であった。
 
 
 写真4の圃場は、5/1に直播した圃場で、移植の圃場と比べると草丈は小さいが順調に生育していた。施肥管理等をしっかりと行い、この程度の生育が安定的に確保できれば、春作業で他作物と競合する移植よりも、直播を選択するのも有効であると思われた。
 
 
 写真5の圃場は、4/30に直播したが、クラスト(土壌表面の硬質化)等の発生により芽が出なかったため、5/22に再度直播を行った。そのため草丈も小さいうえ欠株が目立ち、直播にともなうリスクの高さが感じられた。他の生産者の場合は、再度直播はぜず、生育が早い豆などに転作する場合もあるとのことであった。
 
 
 なお、北海道農政部が発表した7/1現在の全道のてん菜の生育状況は、「遅2日」の平年並となっており、十勝管内も同様の「遅2日」となっている。


3.最後に

 雪の影響で生育期間の短い北海道では、1963年の移植栽培技術の確立・普及により収量が大きく増加し、現在でも9割近い農家が移植栽培を行っている。

 直播栽培は、移植栽培に比べ生育期間が短いため、収量が2割程度減少する。また、風害や雹、クラスト等により欠株が発生した場合は、更に収量が落ち込むためリスクが高い。

 しかしながら直播栽培は、てん菜の作付面積の減少の要因である1)移植栽培は労働投下時間が他作物より多いこと、2)移植栽培は他作物と春作業で競合すること、3)ペーパーポットの移植機への積込みが重労働であることなどを解消する一つの選択肢として有効であると考えられる。

 そのため、これらの要因を解消するためにも、移植栽培の省力化やリスクの低い直播栽培技術の確立が望まれる。

 てん菜は、好天と適度な降雨に加え、9月以降に寒暖の差が大きいと糖分を多く蓄える作物である。今年の作付けの遅れを取り戻せるように、今後の天候に期待したい。

鹿児島事務所
 


 平成24年6月30日(土)に沖永良部島で約480名の生産者が一堂に会し、第17回さとうきび生産者大会・きび祭りが行われたので、その概要を紹介する。

 沖永良部島では、さとうきび生産量と高品質なさとうきびを安定的に確保するため、毎年、前年産の生産量・品質など優良な生産者への表彰と、さとうきび栽培技術の浸透を図るための講演を行うとともに来期の増産に資するための取組みとして、さとうきび生産者大会・きび祭りを開催している。

  今年度の生産者大会では、主催者である沖永良部さとうきび生産対策本部池野本部長による挨拶に始まり、表彰式では、鹿児島県さとうきび生産改善共励会における最優秀賞(知事賞)1名の表彰伝達や高生産量、高品質、高単収部門それぞれ2名の表彰が行われた後、南栄糖業且ミ長賞として、一定の基準を満たした生産組合2組合の表彰が行われた。
 
 
 表彰式に引き続き、県大島支庁芝農林水産部長から同大会への祝辞が述べられた後、さとうきび生産者に対し、「さとうきび増産プロジェクト基本方針に」に基づき策定した、島毎の「さとうきび増産計画」に沿って、単収向上や省力化対策等に向けて取組んでほしいとの内容の挨拶があった。

 その後、当機構鹿児島事務所安所長から価格調整制度の仕組みについて、また、優良生産者である瀬川清一郎氏による講演等が行われた。

 当機構鹿児島事務所安所長から「みんなで支えるさとうきびの島 〜日本の砂糖を支える仕組み〜」と題して、甘味資源作物交付金及び国内産糖交付金の主な財源は輸入糖、異性化糖等からの調整金であり、これらを最終的に負担する消費者や納税者に対し、糖価調整制度の必要性や仕組みについて説明するとともに島のさとうきびの生産は地域経済を支えていること、また、平成23年産のさとうきび収量が過去最低となったことから、平成24年産以降の収量確保に向けてさとうきび生産者、関係機関・団体が一体となって取り組むことが必要であると述べたのに対し、多くの参加者は、メモを取るなど熱心に聴きとっている姿もみられ、価格調整制度に対する一層の認識の醸成を図ることができたとのではないかと思われる。
 
 
 また、和泊町を代表する優良生産者の瀬川静一郎氏は、「瀬名字糖家さたや会の活動について」と題して、和泊町瀬名字地区においてさとうきび栽培に係る防除等の作業を集落営農として行うことを目的としている生産者で構成された、当該糖家会の組織概略や平成23年産減産の要因となったメイチュウ類の被害を食い止めるため、和泊町が行った国の産地活性化総合対策事業を活用した一斉防除の内容を説明した。同氏は、メイチュウ類の害虫は「人を見る」として、一層の収量向上につながる栽培管理技術のポイントとして、日頃からの除草管理の徹底、適期防除の重要性、ほ場へのかん水を十分に行うなどを挙げたので、今年度からは点滴チューブによるかん水設備を布設し、さらなる収量向上に繋げたいとのことであった。
 最後に、平成24年産の生産計画について、沖永良部さとうきび生産対策本部先田事務局長から説明があった。それによると、同年産の収穫面積は、和泊町・知名町合わせて春植184ha、夏植348ha、株出 673haの合計1205haを予定している。現況は、適度な降雨と昨年大発生となったメイチュウ類の被害も少なく順調に生育しているが、夏場の干ばつ及び台風等の被害が懸念されるため、畑かん施設や両町にあるトラックタンカー等を利用して、ほ場への散水を行う必要があり、関係機関が一層の連携強化を図って単収向上を図るよう要請があった。

 また、同島におけるハーベスタの普及率が9割となっているため、ほ場の植付を行うに当たっては、ハーベスタがほ場に入りやすくなるよう、若干のスペースを空けて植付するよう参加者へ依頼した。

 その後、地元生産者代表による、スローガン採択、がんばろう三唱が行われた。
 
 
 なお、当日当会場内では、島内の生産者が栽培する主なさとうきびの品種である農林22号、23号、30号などの実物展示による各品種の特性紹介のほか、前述の瀬川氏の講演内容の一部でも紹介された点滴かん水チューブによる敷設事例について、ビデオ放映による説明・実物の点滴かん水チューブの展示によるさとうきびの収量の確保を行うためのかん水の重要性の周知の取組みが行われた。また、当機構は「日本の砂糖を支える仕組み」等のパネルを展示し、参加者に対し、砂糖制度への理解の浸透を図る取組みが行われた。
 
 

鹿児島事務所
 


1.はじめに

 鹿児島県における平成23年産さとうきびの収量は、春先の低温、相次ぐ台風の襲来、夏季の干ばつ、病害虫による被害で歴史的な減収となった。当事務所は、このような状況を受け、平成24年産の収量確保へ向けた各島の取組みについて現地聞取り調査を実施した上で、当該内容を整理することとしている。

 今回は、既報(奄美大島、沖永良部島、与論島)に続き、喜界島において、さとうきび生産現地実態調査を実施したので、その概要を報告する。
 
 
2. 喜界島の概要等

 喜界島は、四季を通じて温暖な亜熱帯性気候で、平坦であることから農耕地に最適な環境である。島のほとんどが隆起珊瑚礁で保水力が弱い土壌のため、干ばつの被害を受けやすい。平成16年3月から地下ダムが運用されてきており、未だ一部の地区は整備されていないものの、干ばつ被害の低減も期待されている。

 農家一戸当たりのさとうきび収穫面積(平成22年産186.9a)は奄美群島内で最も多く、さとうきびと肉用牛、ごま、きく、かぼちゃ、トマト等との複合経営を行っている生産者が多い。  最近では、これらの作物等の他、マンゴーの栽培も積極的に行っている。
 
 
 なお、同島における平成23年産さとうきびについては、前述のとおり大幅に単収が落込み、収穫量は昨年比34%減の5万7633トンとなり、糖業関係者や地域の経済にも大きな影響を与えた。一方、平成24年産のさとうきびの生育状況は、現時点では、一定の降雨・日照によって平年並みとなっている。
 
 
3. 喜界島における取組み

(1)さとうきび緊急生産振興対策本部の取組み 

 喜界島における平成23年産さとうきびの収量については、台風による潮害、メイチュウ類による被害等の要因が重なり過去最低の成績となった。 

 この事態を重く受けとめた喜界町、あまみ農業協同組合喜界事業本部、生和糖業株式会社等の各糖業関係者は、平成24年3月5日にさとうきび緊急生産振興対策検討会を開催し、同日、生産者及び各糖業関係者の10組織が連携協力し、平成24年産以降のさとうきびの安定生産に寄与することや生産回復の事業を行うことを目的とした、さとうきび緊急生産振興対策本部(以下「対策本部」という。)を設置した。 

  対策本部に係る組織体制については、本部長である喜界町長の指示の下、(1)国、県の事業執行を実施する等の総務班、(2)生産者への営農に関する情報提供や収集等を行う情報班、(3)さとうきびの生産回復に関係する栽培及び防除に関することを生産者へ指導を行う生産班、(4)さとうきび防除技術及び実証に関することを行う技術班の4班が設置された。対策本部では、平成24年産以降、緊急にさとうきびの増産に向けた取組みを行う方針を打ち出している。  

 特に、情報班では、メイチュウ類等の病害虫を抑制するためのスミチオン等による農薬の散布時期・量について、平成24年4月17日、18日の両日、同島の2地区において約120名生産者を対象に現地指導を行う等、積極的な取組みを実施しているところである。当該現地指導では、今後、高齢化が急激に進むことに鑑み、防除の管理作業は集落単位で一斉作業を行うこと、いわゆる集落営農を行うことが効果的であるとの説明が行われた。管理作業を行うための機械を製造・販売する企業による防除機械の実証や実演、県職員による農薬散布の指導等を行うとともに、喜界町の職員が、生産者の目前で実物のメイチュウに農薬を散布して模範実演を行い、病害虫防除技術の周知を図る取組みを行った。


(2)生産者の取組み 

 今回の現地実態調査では、喜界町の認定農業者である体岡徳章氏と河上弘仁氏の2名の生産者に協力をいただき、各人のほ場を訪ね聞取りを行った。平成23年産については、両氏とも減産を余儀なくされたが、当該実態を踏まえ「防除等の基幹作業については、適期に行うこと」が重要であるとして、基幹作業等を効率よく行うことを念頭に置き、24年産の作業に取り組んでいる。調査概略は、以下の通り記述する。

 1) 生産者:体岡 徳章(タイオカ ノリアキ)
  認定農業者
  あまみ農業協同組合喜界事業本部管内の生産者代表
  農業従事者:本人、妻 (収穫作業時に3名程度、臨時雇用している。)
  収穫面積:604ha 主な品種:農林8号、22号、23号 
  栽培体型:春植、株出

 基本方針として、収穫後、速やかに株揃えの管理作業を行い、メイチュウ類が発生すると予想される5月10日以前に除草を徹底するとともに、除草剤の散布や中耕・培土の作業等の基幹作業を徹底することが重要であるとのことである。   

 平成24年産の収量確保に向けた取組みとして、害虫防除作業については、5月上旬のゴールデンウィーク頃にメイチュウ類に効果があるスミチオン乳剤を動力ポンプで散布し、除草作業についても、アージランを使用してほ場へ2回散布している。これらの作業は、メイチュウ類に対する防除効果があったと思われ、萌芽率について良好なほ場が多数確認された。   

 また、体岡氏は、担い手の育成や集落営農の推進にも尽力している。同氏は、基幹作業において最も労力を要す収穫作業について、高齢の農業従事者が多い坂嶺地区35名分の生産者のほ場を自らが保有するハーベスタを活用し受託している。   

 管理作業の中で、ハーベスタの普及により収穫作業の労働負担は軽減されたものの、病害虫の発生に伴い防除作業の労働負担が増加していると考えており、若い生産者とともに相互に資金提供を行い、防除作業を行うための大型機械を購入することを検討し、収穫作業とともに防除作業についても受託する、いわゆる集落営農を進めることとしている。
 
 
2) 生産者:河上 弘仁(カワカミ ヒロヒト)
  認定農業者
  農業従事者:本人、妻、弟
  収穫面積:624ha 
  主な品種: 農林22号、23号 
  栽培体型:夏植、春植、株出  

 昨年度のメイチュウ類の被害を受け、平成24年産については、メイチュウ類に効果があるスミチオン乳剤や除草時においてはアージランの散布を2回行ったが、一部のほ場にメイチュウが確認され一概に効果があったとは言えないとのことであり、メイチュウが確認されると防除剤等のほ場への散布する回数が増加することとなる。 

 なお、適期防除と中耕培土の徹底を行うことや収穫後のスミチオン乳剤も単収の向上を図る上で、効果的であるとのことである。 

 また、以前、喜界町が、誘殺燈を設置していた時点では、メイチュウ類の数が現在より少なかったが、維持管理費の増加に伴い同燈の使用を中止したことがメイチュウ類の異常発生を引起したのではないかと危惧している。 

 同氏は、防除作業の効率化を図るため、防除作業に係る大型機械を近隣の生産者6人と共同購入している。今後は、集落の高齢者からの受託回数を増加させて、当該機械の有効利用を図り、地域における基幹作業の受委託を推進していきたいとのことである。
 
 
4.おわりに

 平成23年産のさとうきび大減産は、生産者の収入に大きな影響を与えた。日本一のごまの生産地である喜界島では、さとうきび栽培からごま栽培に移行する生産者が増加して、さとうきび作付面積が減少することが懸念されている。

 これに加え、さとうきび作では一戸当たりの収穫面積が大きく、高齢の生産者の基幹作業の労力の負担が大きくなっているため、「地域の集落営農の活性化・担い手の育成」、という課題がある。

 また、さとうきび生産者の所得向上を図るため、「生産コストの低減や品質向上・生産性の向上」も必要である。今般の調査を通して、上記の課題に対し、生産者、あまみ農業協同組合喜界事業本部、生和糖業株式会社等の各糖業関係者が真剣に対応している状況を感じることができた。平成24年産のさとうきび生産量が回復し、喜界島の経済が活性化するよう祈念したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713