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4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2012年8月10日

4. 世界の需給に影響を与える諸国の動向

2012年8月

調査情報部

ブラジル

 
 

(1)2012年7月における生産見通し

〜砂糖生産量は前年度比1.5%減の見込み〜

 生産の約9割を占める中南部では5、6月に平年を上回る降雨が続き、製糖作業に大幅な遅れが生じている。ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)によると、2012/13砂糖年度(4月〜翌3月)開始から7月16日までの中南部におけるさとうきび収穫量は1億7060万トン(前年同期比21.9%減)、砂糖生産量は930万トン(粗糖換算、同22.2%減)、エタノール生産量は64億2320万リットル(同26.4%減)と、いずれも前年度を大幅に下回った。

 2012/13年度におけるブラジル全体のさとうきび収穫面積は、前年度をわずかに下回る818万ヘクタール(前年度比2.8%減)と予測されている。これは、新植の割合が前年度に比べ増加し、平年を上回るため今年度は収穫されないほ場が多いとの予測に基づく。さとうきび生産量は、収穫面積の微減に加え、株出し回数の増加と前年度の乾燥した天候により単収の低下が見込まれるため、前年度をやや下回る5億3800万トン(同4.0%減)と予測されている。砂糖生産量については、前月予測から50万トン下方修正され3880万トン(粗糖換算、同1.5%減)と、前年度からわずかに減少するとみられている。この下方修正は、主産地中南部で4〜6月の降水量が平年を大きく上回り、さとうきびの糖度が低下していることを受けたものである。なお、エタノール生産量は217億リットル(同4.7%減)に減少の見通しである。
 
 

(2)貿易・政策動向等

〜輸出量は前年度比2.7%減の見通し〜

 2012/13年度の砂糖輸出量は、生産量の下方修正を受け、前月予測から50万トン引き下げられた。この結果、輸出量は2540万トン(粗糖換算、前年度比2.7%減)と前年度からわずかに減少の見通しとなっている。2012年6月の粗糖・白糖輸出量は、主産地中南部で平年を上回る降雨により製糖が遅れている影響から、前年同月比33.3%減の165万9000トンとなった。主要輸出先は中国、サウジアラビア、アルジェリアであった。消費量については、前年度からわずかに増加の1340万トン(同1.9%増)と見込まれている。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, July 2012”
    ブラジルさとうきび産業協会(UNICA)プレスリリース 2012/7/25
  
  

インド

 
 

(1)2012年7月における生産見通し

〜2011/12年度の砂糖生産量は2810万トンに増加〜

 2011/12インド砂糖年度(10月〜翌9月)の製糖は、タミル・ナードゥ州を除く全ての州で終了した。同年度のさとうきび収穫面積は507万ヘクタール(前年度比4.8%増)に増加し、さとうきび生産量は3億4490万トン(同1.7%増)と、前年度に引き続き高水準となった。砂糖生産量は、さとうきびの豊作に加え、主産地ウッタル・プラデーシュ州を中心にアルコール生産などに利用されるグル向けのさとうきびが砂糖向けに流入したため、2810万トン(粗糖換算、同7.0%増)に増加すると見込まれている。

 2012/13年度のさとうきび収穫面積は498万ヘクタール(前年度比1.6%減)と、前年度からの減少が予測されている。これは、生産の約3割を占めるマハーラーシュトラ州で降雨不足により貯水池の水位が下がり、さとうきびよりも水要求量の少ない作物が生産される傾向にあるためとされる。一方、ウッタル・プラデーシュ州では、製糖工場によるさとうきび代金の未払い問題が発生しているものの、小麦やコメなどの競合作物と比べさとうきびの収益性が良いことから、生産者のさとうきび作付け意欲は高いとみられている。

 6月から9月にかけてのモンスーン期の降水量は、インドのさとうきび生産量に大きな影響力を持つ。7月25日までの降水量は過去50年間の平均を22%下回っており、生産への影響が懸念されている。中でも、西部のマハーラーシュトラ州では降雨不足が深刻な状況にあり、さとうきび生産量は前年度から15〜20%減少する可能性があるとされる。ただ、北部のウッタル・プラデーシュ州では増産が見込まれており、マハーラーシュトラ州の減産分をある程度補うものとみられている。現時点では、インド全体のさとうきび生産量は前年度からやや減少の3億2900万トン(同4.6%減)と予測されている。さとうきびの減産により、砂糖生産量は2650万トン(粗糖換算、同5.7%減)に減少の見通しである。

注:インドの伝統的な含みつ糖
 
 

(2)貿易・政策動向等

〜2011/12年度の砂糖輸出量は前年度比19.7%増の見込み〜

 2011/12年度の砂糖消費量は2480万トン(粗糖換算、前年度比2.2%増)に増加すると予測されている。増産により国内供給は過剰になるとの見込みから、政府は2011/12年度において2回にわたり合計200万トンの砂糖輸出を許可した。この輸出枠は、過去3年間の平均生産量に基づき各製糖工場に割り当てられた。さらに、政府は5月上旬に砂糖輸出の制限を一時的に解除することとした。政府は、さとうきび生産者の作付け意欲を維持するため、輸出を後押しすることで製糖工場の資金繰りを改善し、さとうきび代金の未払いを解消させたいとの思惑があるとされる。製糖工場は輸出量を政府に報告することが義務付けられており、政府は、2011/12年度の砂糖輸出量が合計400万トンに達した時点で再び輸出を制限するとしている。なお、6月15日までの輸出量は230万トンに達したとみられる。6月以降はモンスーンの降雨により砂糖の船積み作業などが制限されることから、2011/12年度の最終的な砂糖輸出量は340万トン(粗糖換算、同19.7%増)と予測されている。

 2012/13年度の砂糖消費量は、前年度からやや増加の2530万トン(粗糖換算、同2.0%増)と予測されている。生産量は前年度からの減少が見込まれるものの、消費量を上回るとみられることから、輸出量は140万トン(粗糖換算、同59.1%減)と予測され、インドは前年度に引き続き純輸出国となる見通しである。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, July 2012”  
 
 

中国

 
 

(1)2012年7月における生産見通し

〜2011/12年度砂糖生産量は前年度比10.2%増の見込み〜

 中国における砂糖生産の約9割は南部で生産されるさとうきびを原料とし、残りは北部のてん菜に由来する。2011/12中国砂糖年度(10月〜翌9月)の製糖は終了した。同年度のさとうきび収穫面積は158万ヘクタール(前年度比5.4%増)に増加し、単収も前年度を上回ったため、さとうきび生産量は8950万トン(同10.8%増)と、前年度からかなりの程度増加したとみられている。さとうきびの増産を受け、甘しゃ糖生産量は1140万トン(粗糖換算、同8.8%増)に増加したと見込まれている。

 一方、てん菜収穫面積は22万ヘクタール(同11.9%増)に増加し、単収も好天により前年度から大幅に上昇したことから、てん菜生産量は900万トン(同31.9%増)と、前年度から大幅に増加したとみられている。てん菜の増産により、てん菜糖生産量は前年度から大幅増加の110万トン(粗糖換算、同27.0%増)になったと見込まれている。

 これらのことから、中国全体の砂糖生産量は1240万トン(粗糖換算、同10.2%増)と、前年度からかなりの程度増加したとみられている。

 2012/13年度について、さとうきび収穫面積はほぼ前年度並みの158万ヘクタール(同0.1%増)と予測されている。天候が平年並みとなれば、さとうきび生産量は9220万トン(同3.1%増)、甘しゃ糖生産量は1190万トン(粗糖換算、同5.2%増)に増加すると見込まれている。7月時点では、国内砂糖生産の7割弱を占める広西チワン族自治区の天候はさとうきび生育にとって良好な状態にあるとされる。

 一方、てん菜収穫面積は前年度から変わらず、22万ヘクタールと予測されている。てん菜生産量は、天候に恵まれた前年度から単収が減少するとの見込みから、810万トン(同10.1%減)に減少すると予測されている。てん菜の減産により、てん菜糖生産量は100万トン(粗糖換算、同6.4%減)に減少するとみられている。

 これらのことから、2012/13年度における中国全体の砂糖生産量は、前年度からやや増加の1300万トン(粗糖換算、同4.2%増)の見通しとなっている。
 
 

(2)貿易・政策動向等

〜2011/12年度の輸入量は前年度比約2倍の見込み〜

 2011/12年度の砂糖消費量は1490万トン(粗糖換算、前年度比1.5%増)に増加し、前年度に引き続き国内生産量を上回るとみられている。2012年5月の粗糖・白糖輸入量は25万4000トンと、前年同月と比べ46.8%増加した。主要輸入先はタイ、キューバ、韓国であった。2011/12年度において、5月までの砂糖輸入量は合計230万トンに達し、前年同期と比べ3倍近くに増加した。業界筋によると、旺盛な輸入の背景には、政府の砂糖備蓄の積み増し計画(360万トン)があるとされる。これまでの輸入状況を受け、2011/12年度の輸入量は前月予測から80万トン引き上げられ440万トン(粗糖換算、同90.1%増)と、前年度の2倍近くに増加すると見込まれている。

 2012/13年度について、消費量は1520万トン(粗糖換算、同2.2%増)に増加すると見込まれている。一方、輸入量は、増産により230万トン(粗糖換算、同46.9%減)に減少するとみられている。

資料:LMC “Monthly Sugar Report, July 2012”
 
 
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