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地域だより

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最終更新日:2012年8月20日

2012年8月

札幌事務所
 


 平成24年7月20日(金)、札幌市の北農ビルにおいて、NPO法人グリーンテクノバンクおよび農林水産省の主催により、てん菜研究会第10回技術研究発表会が道内の農業試験場、糖業関係者など103名の参加の下、開催された。

 同発表会は、農林水産省の実施する委託事業「地域産学連携支援委託事業」の一環として開催されており、一般講演(学術的な研究発表)については、糖業や農業研究機関等により10件の発表が行われ、それに続いて2件の特別講演が行われた。

 近年、我が国のてん菜は、黒根病、褐斑病、そう根病などの病害の多発によって、不作が続いているため、これら病害に対する複合抵抗性品種の育成が急務となっている。そのため、今回の一般講演の発表内容は、これら病害に対する抵抗性を有する新品種の特性を紹介するもの、病気の発生要因及び病気に対する防除方法を検討するものが多かった。その他には、遺伝子を研究した発表が2件、てん菜研究の歴史を考察するものが1件あった。

 てん菜の新品種を紹介するものでは、「クリスター」(北糖)、「ラテール」(ホクレン)、「北海101号」(北農研)の3品種について、それぞれ特性の発表があった。また、てん菜研究の歴史を考察した「てん菜研究50年」では、てん菜の収量は他の作物と比較して1960年前半から急激に増加しているグラフが示され、その増加時期は3つの成果(事象)と時期が一致していた。3つの成果とは、(1)移殖栽培技術の普及(63年)、(2)高糖、高品質品種モノヒカリの普及(82年)、(3)糖分取引制度への移行(86年)としており、先人の研究成果等が今日のてん菜を支えていることがよく分かる講演であった。

  特別講演の一題目は、当機構調査情報部脇谷和彦上席調査役による「海外におけるてん菜・てん菜糖の生産動向〜EU、中国を中心に〜」であった。講演では(1)新興国の消費増によって砂糖需要が増加する中、最大の消費国インドのさとうきび不作などの要因による短期的な需給ひっ迫の発生で、砂糖の需給は均衡的な構造に移行してきたこと、(2)近年の砂糖需給の変動要因として、EUの砂糖制度改革(06/07年度〜)によるてん菜糖の生産減少、ブラジルのエタノール生産拡大、インドのシュガーサイクルなどが挙げられること、(3)主要国におけるてん菜生産動向として、EUは2015年以降の生産割当制度の取扱いが注視され、中国は消費量が毎年増加しているものの、生産量は伸び悩み、特にてん菜の作付面積が1999年に大幅に減少して以来回復していない状況などが報告された。

 二題目は、北海道農業協同組合中央会農業対策部畑作農業課鈴木昭寿主幹による「てん菜生産現場の現状と今後の対応方向」であった。(1)てん菜の生産状況、(2)中央会等が行う作付推進活動、(3)収集した現地の意見・要望、(4)作付減少要因について独自の分析に加え、JAからの聞取り結果、(5)てん菜の生産振興に向けた今後の対応方向を発表した。(5)において、てん菜の作付面積の減少要因は@生産者手取り(収量・所得)の減少、A労働力不足(特に育苗・移植期)、B制度的側面による生産意欲の減退、C配合飼料価格の高止まりによる飼料作物への移行の4点に集約され、個々の経営状況や地域・気象条件等に応じて、様々な作物に作付けが移行したとした。また、今後のてん菜の生産振興については、作付の阻害要因や多様な動機に対して、きめ細かな対応が必要とした。

 今年の作況も作付面積の減少や春先の降雨等による移植時期の遅れから厳しいと予想されながらも6月以降天候が回復してきている。道農政部による直近の生育状況(平成24年8月1日現在)によると、生育については平年並みとなっている。今後も、てん菜の生育に合った天候が続くことに加え、てん菜の増収に資するような研究が活発に行われることを期待したい。

札幌事務所
 


 北海道農政事務所では、平成24年8月2日(木)〜3日(金)の2日間、小学生を対象にした「わくわく夏休み子ども見学デー〜体験しよう!食と農林水産の世界〜」を開催した。この取組みは、子どもたちに農政事務所の業務説明や所内見学等を行うことにより、親子のふれあいを深め、子どもたちが夏休みに広く社会を知る体験活動の機会とするとともに、農林水産省の施策に対する理解を深めてもらうことを目的としたもので、今回が初の開催であったが、2日間で延べ380人の親子が参加した。

 当札幌事務所も、砂糖の価格調整制度周知・浸透の取組の一環として展示スペースにおいて、てん菜とさとうきびの模型や砂糖に関するパネルを展示するとともにパンフレットの配布を行った。

 この見学デーでは、夏休みの自由研究に役立ててもらおうとイカスミを使っての魚拓・書道体験、タマネギの皮を染料にした染色体験、道産米の食味クイズなど複数の体験コーナーが設けられた。中でも、食品Gメンになった子供たちが会場内に設けられた八百屋さんや魚屋さんの食品表示に間違いがないか厳しくチェックする仕事体験が人気を集めた。この他、農・林・水産の関係機関から講師を招き実験をとおして学ぶ「じゃがいもが甘くなるって、ほんとう?」「森の木は、なぜ切らなければならないの?-間伐と森林整備-」「スルメイカの一生、イカはどこで生まれるのか?」など6種類のミニ講座が行われ、どの講座も定員を満たす盛況ぶりであった。

 当事務所では、子供たちに対して砂糖の原料はてん菜やさとうきびであり、砂糖は植物から作られる自然食品であることを模型やパネルを用いて説明した。てん菜を知らない子供たちも多く、てん菜の模型を見た子供たちは「こんな大根からお砂糖が出来るのか」と興味深く見つめるとともに、形態の全く異なるてん菜とさとうきびから同じ砂糖が出来ることに驚いていた。さらに、地元の北海道でつくられるてん菜やてん菜糖の作り方などについて、(社)北海道てん菜協会の子供向けのパンフレット「おさとうのおはなし(社会科・総合的な学習資料)」を用いて説明を行った。

 また、子供たちに同伴してきた親御さんに対しては、砂糖の正しい知識を普及啓発するため「砂糖は安心な自然食品」や甘味資源作物の重要性、価格調整制度の役割などを紹介した「日本の砂糖を支える仕組み」のパンフレットの配布を通じて、砂糖の制度の必要性や砂糖の正しい知識について一層の理解の向上を図った。

 今後も札幌事務所では、関係機関と連携を図り道内の食に関するイベント等への出展を積極的に行い、砂糖の価格調整制度や砂糖の正しい知識の普及・啓発を行っていきたいと考えている。

(北海道農政事務所の「わくわく夏休み子ども見学デー」開催報告のHPアドレス)
http://www.maff.go.jp/hokkaido/annai/photoreport/kikaku/240802-03.html

鹿児島事務所
 


 平成24年7月24日(火)に鹿児島県農業共済会館において、公益社団法人鹿児島県糖業振興協会主催により平成24年度さとうきび研究成果発表会が開催された。同発表会は、鹿児島県農業開発総合センターをはじめ県内のさとうきびの研究者が、日頃の研究成果を当発表会に参加した市町村及び農業団体等に伝えることで、各地域の営農の向上を図ることを目的として開催されており、今年で47回目を迎え、100名を超えるさとうきび関係者が一堂に会した。

 今年の発表会は、品種、栽培及び病害虫関係の成果発表と、平成23年産の収量が大減産になったことに伴い、平成24年産の安定的かつ増産に向けた収量確保を念頭においた「さとうきびの低収要因と対策」をテーマにシンポジウムが開催された。

 以下、同発表会の内容の一部について紹介する。
 
 
フェロモントラップによるハリガネムシの発生推移
 鹿児島県農業開発総合センター大島支場 病害虫研究室長 宮路克彦氏


 ハリガネムシの防除対策として導入されてから2011年で15年が経過した性フェロモンによる大量誘殺について、その効果の解析結果を踏まえ、今後のハリガネムシに対する防除のあり方について発表された。

 フェロモントラップによる誘殺虫数は、奄美大島の笠利町では600頭前後、徳之島の徳之島町では400頭前後で他の島においても、導入以来ほぼ横ばいの状態で推移してきたが、ここ2,3年は減少傾向に転じてきており、2006年12月に農薬登録されたベイト剤が普及したことが影響しているのではないかとの見解であった。

 しかし、2011年3〜6月にかけて1トラップにつき38〜708頭が誘殺されているため、メイチュウ類に対する防除だけではなく、今後もハリガネムシに対し、フェロモントラップによる大量誘殺と薬剤の併用による防除及びハリガネムシの発生モニタリングを継続していく必要があると強く訴えかけた。


徳之島における減収結果と生産改善への取り組み
 南西糖業株式会社徳之島事業本部業務部課長代理 富山俊和氏
 
 
 鹿児島県において、平成23年産さとうきび生産量が過去最大の減収であったことを受け、気象条件と5月末に発生した台風の影響に絞り徳之島における低単収要因の分析について発表された。

 昨年産については、3月1日から5月31日までの有効積算温度が平年と比べ約100℃(日数にして約12日)少なかったことから、5月末に台風が襲来するまでの期間において、生育に必要な気温がかなり不足していたことが推測され、生育が遅延していたところに台風が襲来したことが減産の最大の要因になったのではないかと述べ、徳之島における平成23年産さとうきび生産量が前年比約35%減収となった要因の内訳について、気象要因が約15%、台風による被害が約15%、メイチュウ類やイノシシによる被害が約5%とした。

 減収を踏まえた生産改善の取り組みとして、(1)徳之島さとうきび生産対策本部を中心としたメイチュウ類対策、(2)苗の浸水処理や優良種苗の活用などの生育初期の管理、(3)梅雨入りまでの徹底した管理、(4)収穫後の大型機械による初期管理、(5)営農集団と関係機関のより一層の情報共有などが紹介された。


メイチュウ(イネヨトウ)の発生と防除対策
 鹿児島県農業開発総合センター大島支場病害虫研究室長 宮路克彦氏
 
 
 奄美大島において、2009年−2011年の各年とも3月の最低気温が低かったことでさとうきびの初期生育が遅延し、イネヨトウの産卵、生息に適した低い茎のさとうきびが長期間存在したことが大発生の一要因ではないかと、宮路氏は推察していた。

 夏植え栽培における薬剤処理の効果について県の試験が実施されており、植付け時にベイト剤を散布し、植付けから40日後にオンコル粒剤もしくはスミチオン乳剤を散布することで芯枯れ被害を抑えることができるとの報告があった。

 また、株出し栽培においても、アドバンテージやオンコル粒剤など計6種の薬剤を用いて試験が行われ、処理後40日には全6種の薬剤に芯枯れ被害を抑える効果が見られたとのことであった。

 メイチュウ類防除におけるポイントとして、「防除を行うタイミングが難しいこと」、「雑草の多いほ場においてメイチュウ類による芯枯れ被害が多い傾向があること」などを挙げ、これらについての対策として「日頃からほ場の見回りを行い、芯枯れを発見したら早期防除を行うこと」、「除草を行い、雑草管理を徹底すること」など管理作業を適切に実施することが重要であると説明があった。


平成23/24年期さとうきびの低収要因と対策
 鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場作物研究室長 小牧有三氏
 
 
 平成23/24年期の種子島・奄美群島におけるさとうきび減収の要因は、生育初期の低温・寡照などであり、さらに奄美群島では台風による潮風害やメイチュウ類・干ばつによる被害も減収の一要因であったとの報告があった。

 今後の単収回復へ向けた対策の一つとして、メイチュウ類の防除のため、イネ科雑草等の除草や薬剤による防除の徹底が重要であるとした。

 また、メイチュウ類の防除だけでなく、低温・少雨への対策や台風による潮風害への対策などについても重要性を訴えるとともに、低温・少雨への対策については、早期に確実に発芽や萌芽をさせる基本技術を実施することで良好な初期生育に繋がることを述べた上で、新植の発芽を早めるため、苗を流水や石灰水500倍液へ浸漬すること、植付け時の覆土をしっかりと行うこと、また、株出しの萌芽を早める技術として、収穫後にできるだけ早く株揃えを行うことなどが紹介された。

那覇事務所


 平成24年7月31日(火)、うるま市石川のほ場において、うるま市さとうきび生産振興対策協議会石川支部、うるま市石川さとうきび生産組合、中部地区さとうきび生産振興対策協議会の共催により、さとうきび増産推進実演会が開催され、生産者、製糖メーカー、農薬・農器具メーカーなど約40名が参加した。

 このさとうきび増産推進実演会は、生産者の労力の低減を図り、増産につなげるため、各種作業機械や農薬散布の方法を紹介することを目的に毎年開催されている。今年度は特に、昨年度の不作に対応して24年産以降の生産回復を図るため、昨年度被害が大きく不作の要因となったイネヨトウに対する防除について説明があった。

 開会のあいさつでは、うるま市石川さとうきび生産組合伊波組合長が、作業の機械化によりいかに能率がよくなるか見てほしいと呼び掛けたほか、当機構の大泉那覇事務所長が、機構の実施する経営安定対策によりさとうきび価格を下支えしているので、安心してさとうきび作に励んでほしいとの激励のあいさつを行った。

 実演会では、除草剤および農薬の使用方法の説明に続き、小型管理機や調苗機などの作業実演が行われた。
○除草剤および、害虫防除用農薬の使用方法

 第一農薬株式会社から関係薬剤について、次のとおり説明があった。

 除草剤については、サシグサなど広葉でつる性の雑草に効果のある2,4-D、キク科雑草に効果のあるアージランについて、使用時期(それぞれ収穫90日前、30日前までの散布)や、特性(枯れるまでに1〜4週間を要する遅効であるため、二度まきをしない)に注意すること。

 害虫防除用農薬については、イネヨトウ対策として、植え付け時または培土時にアドバンテージSなどの粒剤を散布すること、また芯枯れなどが見られた場合にはスミチオン、スミバッサなどの乳剤を散布すること。

 メイチュウ類であるイネヨトウは、梢頭部に卵を生み、幼虫が下りてきて原料茎の中に入って茎を食べ成長点を止め、芯枯れ、折損を引き起こす。さらに、次々とさとうきびを渡ることから、被害が拡大する特徴があること。

 乳剤散布の際は、梢頭部だけでなく、幼虫などが存在する原料茎の近くまで散布する必要がある。さらに、イネヨトウおよびバッタについては、イネ科雑草よりほ場に侵入するとされていることから、ほ場および周辺の除草を行うことが害虫防除につながること。


○管理機による除草および調苗機を用いた苗切り

 株式会社くみきにより次のとおり各作業機の説明と実演が行われた。

 (1) 小型管理機ハンマーモアによる除草
 生育期の畝間の除草作業のほか、収穫後の梢頭部・枯葉のチョッピングなども可能。


(2) 小型トラクターによる中耕除草及び除草剤散布
 中耕除草と同時に除草剤散布ができ、効率的に作業を行う事が出来る。


(3) さとうきび調苗機「きりこ」による苗切り
 梢頭部・枯葉を除いたさとうきびを1、2本ずつ投入口から投入。約30cmに切断されたさとうきび茎が連続的に排出口からコンテナに収納される。1a分の苗切り作業を(約3,500本分)を1時間で行うことができる。


(4)文明式ベビー脱葉機による苗切り
 脱葉および、苗切りを同時に行うことができ、作業を能率的に行うことが可能。


○球陽製糖株式会社の支援

 球陽製糖株式会社から、今回紹介されたハンマーモアを含む機材のレンタルのほか、バガス堆肥への助成金及び堆肥まき条件の緩和など、同社がさとうきび増産に向けた各種支援を行っていることが紹介された。

 このような支援策の活用、また今回紹介のあった機材などの利用が、生産回復、作業労力の低減、さらにはさとうきび単収向上およびさとうきび収量確保につながることを期待したい。

那覇事務所
 


 さとうきびの平成23年産の不作の要因の1つとして、イネヨトウの被害が挙げられている。

 イネヨトウは、幼虫がさとうきびの葉鞘内部を食害し、芯枯れを引き起こす。また、成茎の芽子部分からも侵入し、二次的に赤腐病を併発させ、収穫茎の品質(糖度)低下をもたらす。幼虫がさとうきびの内部にいることから、被害に気付きにくく、気付いた時には大きな被害が出てしまった後であることが多い。被害が大きくなる前にさとうきびの生育不良や葉が枯れるなどの異変を感じ取ることが重要である。

 平成24年産以降の生産回復に向けて、沖縄県病害虫防除技術センターは、沖縄本島でのイネヨトウによる被害の状況を確認するため、各市町村に被害状況調査を依頼している。これを受けた沖縄本島南部地域に属する6つの市町は、平成24年7月24日(火)から26日(木)にかけて、春植えほ場の一斉調査を実施した。調査は、同センター指導の下、各JA、製糖会社、各市町などの職員が中心となって実施した。

 今回、南風原はえばる町の調査に同行したので、調査の様子や南部地区全体の調査結果について紹介する。


1 南風原町における調査の様子

(1)調査の方法 

 春植えほ場を対象に、高い位置から観察ができるように車高が高い車に乗って目視しながら移動し、異変がある場合は、ほ場に入ってさらに詳しく見て、後述の(2)の基準に従い被害状況を評価した。南風原町では、調査漏れがないよう、町内を3つに分割し、事前に、地図を基に綿密な打ち合わせを行った。
 
 
(2)被害状況判断基準 

 被害状況の判断基準は、被害の種類(a、b)及び被害の大きさ(0〜3)の組み合わせにより、16段階に区分し、段階に応じた発生程度を5段階(−、少、中、多、甚)で評価した。
 
 
(3)南風原町における調査結果と考察  

 南風原町では、全部で60筆の春植えほ場を確認し、結果は以下のとおりであった。

 被害無しとされたほ場の多くは、ほ場および周辺の除草がしっかりと行われていたことからも、イネヨトウを防ぐ対策として、除草を徹底することが重要であることが伺われた。

 また、植付け時の薬剤散布など、イネヨトウに対する被害に備えていたことが、被害の少なさに繋がったと考えられる。
 
 
2 南部地区全体の調査結果

(1)調査結果と考察


 南部地区全体の調査結果は、次のとおり。
 
 
 これによると、春植えのさとうきびについては、依然としてイネヨトウの被害が見られるものの全体的に甚大な被害にまでは至っていないことが分かる。

 昨年、イネヨトウの被害が大きかった糸満市においては、糸満市防除協議会(糸満市さとうきび生産組合、JAおきなわ糸満支店、製糖会社などで構成)が今年度、イネヨトウに効果のあるオンコル粒剤を生産者に配布した(生産者も費用の一部を負担)。このような生産者、JA、製糖会社などが連携した積極的な取り組みにより、イネヨトウの被害が減少傾向にあると考えられる。

(2)今後の対策  

 調査の結果から、依然としてイネヨトウによる被害は続いていることが確認された。さらに、被害を拡大させないために、現時点で被害が見受けられないほ場や今回の調査の対象ではない夏植え及び株出しのほ場に薬剤散布を行う必要がある。イネヨトウの幼虫は、さとうきびの内部を食害し芯枯れを引き起こすことから、浸透移行性の粒剤(根から浸み込んで、さとうきびに浸透していき、害虫が食害すると効果があるもの)によって内部の幼虫を駆除することや、乳剤の散布によってイネヨトウの幼虫がさとうきび内部に侵入するのを防ぐといった複合的な対策が重要であると考えられる。


3 おわりに 

 平成23年産のさとうきび作においては、イネヨトウによる被害を受け、生産量が大きく減少した。今回取材を行った沖縄本島南部地域では、生産者、JA、製糖会社、行政などが連携し、病害虫による被害状況の調査やほ場ごとに適した農薬散布など、病害虫に対する早めの対策を行っている。こうした取り組みにより、イネヨトウの被害を減少させ、今期のさとうきびの生産が回復することを期待したい。

※:沖縄県病害虫防除技術センター提供の資料から作成
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713