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地元産りんごを使った古くて新しい和菓子

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最終更新日:2012年9月10日

地元産りんごを使った古くて新しい和菓子〜信州須坂フルーツおこし〜

2012年9月

信州須坂餅菓子処 コモリ餅店 島田 昌明
 


【要約】

 須坂市は、長野県内でも有数のフルーツ産地であるが、近年りんごをはじめ生食用需要が低迷しており、フルーツを使用した菓子などの加工品の開発が課題となっている。

 このような中、当店では、社団法人長野県農村工業研究所が開発した地元産りんごのセミドライフルーツを使った菓子の創作に取り組んだ。その結果、伝統的な和菓子である「おこし」への利用を考え出した。製造工程における温度・湿度管理に苦心したが、最終的に2種類のフルーツおこしが誕生した。

 各方面からさまざまな反響をいただく中、現在は松本大学地域健康支援ステーション作成のフルーツおこしに関する栄養情報をパッケージに入れるなど、地元とも連携しながら、息の長い地元のお土産菓子を目指して、製造を続けている。

はじめに

 「おこしって何〜?」、試食を兼ねてテストマーケティングをしていたあるイベント会場での出来事だ。その3人の女子高生のグループは「おこし」というお菓子を食べたことも聞いたこともなかったそうだ。

 ちょっとショックな事実を受け止めながら、「でも食べてみてよ」と勧めると、「なにコレ、カリカリしていてりんごの味が一杯して美味しいじゃない、初めての食感!」ととっても高評価。アプローチ次第では、知らないということがむしろチャンスになったりするのだ。逆に「昔はよく食べたね」という人には郷愁を感じさせることができる。色んな意味でこの菓子が新しい風を吹かせることができるのではないかと、この時、期待で胸が膨らんだ。もちろん、地元産果実の需要拡大、果樹王国としての認知度拡大、地元の土産品の開発という難しい背景を抱えながら。

長野県有数のフルーツの産地

 ここ長野県須坂すざか市は県の東北部に位置し、千曲川と3つの河川によって作られた扇状地で、年間を通じて降水量が少なく、水はけがいい、夜は涼しい空気が流れるなど、フルーツ栽培には最適な自然条件の土地である。実際、県内でも有数のフルーツの産地で、りんご、ぶどう、桃を中心に栽培されているフルーツをを挙げ出すと切りがない。

 一方で課題がないわけではない。近年フルーツの生食需要が低迷していて、特に若年層でのフルーツ離れが大きい。りんごを例に挙げると、皮をむくのが面倒だとか、手が汚れるなどといった声も上がってくる状況には驚きだ。さらに、生食用りんごの優等生以外はほとんどがジュースになってしまうなど、いわゆる「もったいない、生産者泣かせ」の状況がある。そこで期待されているのがフルーツの加工品や二次的・三次的活用だ。ジュース以外の加工品や菓子、土産品などを作って欲しいという声が出てくるのは必然的なことで、何も須坂市に限ったことではない。

本当に美味い“りんごセミドライフルーツ”

 そんな中、3年前、あるりんごの加工品に出会った。表面はサラサラ、食感はサクサク、果肉は肉厚で半生タイプ、りんご本来の甘味・酸味と色が生きている、本当に美味い須坂産セミドライフルーツだ。カラカラに乾いていたり、ベタベタしていたり、甘すぎたり、といった従来のドライフルーツのイメージを一新、しかも地元の「ふじ」、「シナノゴールド」の生食用のりんごを使った安心の純国産品である。

 開発したのは市内にある社団法人長野県農村工業研究所で、製造方法は特許出願中だ。新技術「真空調理加工技術(真空調理釜、気熱式減圧乾燥機使用)」により、トレハロースを果肉内に含浸させ褐変を防止し、適度の水分保持、柔らかな食感を与えている。

地元産りんごセミドライフルーツを使ったお菓子とは?

 菓子屋の端くれとしてこの素晴らしい素材を見過ごすわけにはいかない。そんな思いで菓子作りをスタートした。以前より課題であった、地元の土産菓子としてお客様に選択していただけるような製品の開発が第一目標だ。

 りんごを使った菓子で思い浮かぶものは?恐らく、殆どの人が挙げるのが焼き菓子だ。使用するりんごは、生のりんごを加熱加工して使用したものである。砂糖と一緒に煮あげたり、漬けたりし、それらを中に詰めて焼き上げたり、製品にのせたりする。砕いてピューレ状にして混ぜ込むといった方法も多い。この際、上白糖やグラニュー糖といった砂糖と一緒に加工されるので、りんご味を残すために酸味の強い紅玉などが使われるケースが多い。

 一方で、今回のセミドライフルーツはどうだろうか。この味や食感を活かしきれるお菓子とは何なのだろうか。試行錯誤の日々が始まった。できる限り色々チャレンジしてみようと、煮る、焼く、混ぜ込む、のせる、砕く、といった考えられるあらゆる方法で、様々な菓子への応用を試みた。最終的にたどり着いた結論は、当たり前のことだが、「セミドライフルーツが菓子の中の水分や糖類と一緒になると元のりんごに戻ってしまい、この製品が持つベネフィットを100%活かしきれない。」ということだった。ドライであることの特性を活かすには、相手もドライでなければならないのではないか。そこで「ドライにはドライを」という方向で研究してみることにした。目指したのはシリアルバーやグラノーラバーと言われる栄養価の高いものを絡めた菓子だ。このセミドライフルーツは、生のリンゴに多く含まれる食物繊維やカリウムなどの栄養成分が残ったままになっていることから、機能性菓子にも向いている。最近の流行りの言葉でいえば「ホールフード(注)」だ。ナッツ類やキャラメルを加えたりしながら数パターンをオーブンで焼成してみた。

 味は確かにいける。美味しい。ただきれいな色のドライフルーツに焦げ目がつく姿はいただけない。これを何とかそのままの状態で維持できないか。そんな思いでたどり着いたのが今回の「おこし」だ。

注:皮ごとの野菜や果物、頭から尻尾まで食べる魚など、精製していない食材をなるべく自然な形で食べる「一物全体食」。

信州須坂フルーツおこしの誕生

 ご存知のとおり、「おこし」は日本の伝統的な和菓子でありライススイーツの代表格だ。おこしは様々な素材をそのままくっつけた「接着の技術」によって生まれる和菓子で、その「くっつける」役割は糖質類が担っている。糖質類はお菓子に旨みやシトリを与えてくれる。一方、加熱温度を上げることにより飴状にその姿を変え、冷却後は加熱温度に応じた「硬さ」が得られるのが特徴だ。この「硬さ」を利用して出来るのがおこしに他ならない。

 そして、おこしを作る上で重要なポイントが温度と湿度の管理で、いかに湿度の高い環境を避け、製品自体も湿気を帯びた状態にならないように温度と湿度を管理するかで出来栄えが左右する。ドライな素材同士をドライな状態で結合しそれを維持することが大切なわけだが、この製品を考える上で最もハードルの高かった点でもあった。

 セミドライタイプのりんごは完璧なドライではない。当然水分を持っているため最終製品にベタつき感が残ることになってしまう。この課題への対応は、様々な糖質の使い分けと配分、加熱温度、素材の混ぜるタイミングなどを変えて何度もトライし、最終的にベタつき感を克服した。また、おこし種にはしっかりとした食感、噛みごたえを出すために小麦系のパフ種を使用せず、「うるち米」の白丸種を使用している。現在の菓子の主流である「ふんわり、もっちり、なめらか、とろける」といった流れに逆行するが、お米の美味みを出すことを優先させた。こうして、セミドライりんごにクランベリーを合わせた甘酸っぱいタイプ「須坂産りんご&クランベリー」と、えん麦や麦、玄米、とうもろこしなどを蜂蜜と混ぜてオーブンで焼いたグラノーラと合わせた「須坂産りんご&キャラメルグラノーラ」という2種類の「須坂フルーツおこし」が誕生した。現在では秋季限定で、地元産高級種無しぶどう「ナガノパープル」を使った製品もあり、大変好評だ。

多方面からのうれしい反響

 フルーツ、和の菓子、洋風の味・・・いろいろな意味で今までの「伝統的なおこし」とは違うものになったこの製品は、現在ありがたいことに、年齢を問わず様々なお客様にお求めいただいている状況だ。娘さんとお母さんといった組み合わせでわざわざおこしを目的にお越しいただくようなケースも多い。

 思わぬ反響もあった。ここ須坂市では過去3回にわたって「須坂フルーツスイーツコンテスト」が開催されている。その第2回目のコンテストで「準グランプリ」をいただいた。募集対象は全国であり、審査委員長にToshi Yoroizuka オーナーシェフの鎧塚俊彦さんを迎え、ホテルブレストンコート軽井沢 飲料統括エグゼクティブディレクターの梶川俊一さん、轄v総本店 代表取締役社長 マスターソムリエの高野豊さんの三名を審査委員に実施された。

 また、松本大学健康栄養学科の学生達と同校地域健康支援ステーションの先生に興味を持っていただき、授業の一環として「おこしの持つ栄養面や食育面でのコラボ」が実現した。栄養価分析に加えて、例えば、昔ながらのうるち米を使っていることから、歯ごたえがあり、よく噛むと唾液が出て虫歯を防ぎ、顎が発達し、歯並びが良くなるとか、須坂産リンゴのドライフルーツについて、ミネラルや食物繊維が凝縮、血圧上昇を抑制するなどと紹介してもらった。現在、これらの有難い情報は商品のパッケージ内に一緒に入れている。

息の長い地元のお土産菓子に

 地産地消、フルーツの需要拡大、産地としての認知度拡大、お土産菓子の開発、など須坂の抱える沢山の課題に対し、今後どの程度貢献できていくかはわからない。ひとつの菓子にできることは限られている。ただ、これをきっかけに様々な人たちの気持ちや物が動き、つながりが増えていくことによって少しでも良い方向へ進んでいければと思っている。また、商品的にいえば、多くの地元の方々にまず手にとっていただけるお菓子であって欲しいと願っている。地元のお客様に愛されなければ土産菓子にはなりえないし、それ以上の広がりも期待できないと考えているからだ。あくまで地道な販売活動をし、息の長い地元のお土産菓子を目指している。

 フルーツの専門家でも砂糖の専門家でもない私が、知識の範囲内で好き勝手に記述してきたので間違っている箇所も多分にあるかと思うがどうかお許しいただきたい。いつかどこかでこの「須坂フルーツおこし」が皆様にお会いできる機会がありますよう、願って止みません。

※問い合わせは以下のとおり。

★商品「須坂フルーツおこし」
信州須坂餅菓子処 コモリ餅店
〒382-0077 長野県須坂市北横町1316
TEL:026-245-0528
URL:http://komorimochiten.com

★松本大学地域健康支援ステーション
〒390-1295 長野県松本市新村2095-1
TEL:026-348-7371(直)
FAX:026-348-7390
URL:http://www.matsu.ac.jp/matsumoto_u/m-station/index.html

★「りんごセミドライフルーツ」
社団法人 長野県農村工業研究所
〒382-0084 長野県須坂市大字須坂 787-1
TEL:026-248-0875

★須坂市
・須坂市役所
〒382-8511 長野県須坂市東横町1528-1
TEL:026-245-1400(代)

・須坂市観光協会
〒382-0077 長野県須坂市北横町1295ー1
(須坂駅前シルキービル2F)
TEL:026−215−2225
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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