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草地整備改良事業におけるライムケーキの活用

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最終更新日:2012年9月10日

草地整備改良事業におけるライムケーキの活用

2012年9月

北海道十勝総合振興局産業振興部 北部耕地出張所 工事第1係長 長瀬 大児
 


【はじめに】

 北海道十勝地方は、畑作と酪農を主体とした農業が展開されており、耕地面積は21万1500ha と広大である。

 畑作においては、作付面積12万5000ha の内、ばれいしょ、小麦、てん菜、豆類の畑作4品による輪作体系を維持するため、てん菜が毎年2万6000ha 程度作付けされている。てん菜は、10月中旬より収穫作業が開始され、十勝管内の3つの製糖工場へ搬入され2月中旬までの期間において砂糖が製造される。

 一方、酪農においては、乳用牛及び肉用牛の多頭飼育経営が主流であり、飼養頭数は45万頭以上となっている。牧草及び飼料作物の作付面積が8万6500ha であるが、慢性的な飼料不足の状況で自給飼料の確保が地域的課題となっている。

 このような状況を背景として十勝管内上士幌町では、自給飼料率の向上と効率的な飼料基盤整備を目的に、平成19年度より国庫補助事業である道営草地整備改良事業を実施している。公共事業である草地整備改良事業では、事業コストの削減と効率的かつ効果的な飼料基盤整備の推進が求められるため、地域資源を活用した循環農業の推進と事業費のコスト縮減を目的に、製糖工場で砂糖を精製する工程で排出される「ライムケーキ」を草地整備の土壌改良材(土壌pH調整)として平成22年度から使用している。

 平成 23年度は地元農家の協力により、草地整備面積320haを対象にライムケーキによる土壌改良を実施し、事業費ベースで約3千万円程度のコスト縮減が達成され、今後の草地基盤整備事業においてもライムケーキの活用が期待される。

 今回は、草地整備改良事業における「ライムケーキ」利用の取り組み事例を紹介する。
 
 

1.ライムケーキとは

 「ライムケーキ」は、てん菜製糖工場にて砂糖を精製する工程で不純物を除去するために使用された石灰と炭酸ガスにより発生する副産物のことである。液状化された生石灰(きせっかい)を製糖工程に投入し炭酸ガスを吹き込んで炭酸カルシウムに変化させ、不純物を沈降させた後、固液を分離して粉末の状態で排出される。粉末状のライムケーキは、アルカリ成分が30%程度残存していることから、その大半が土壌改良資材として農地に還元されている。
 
 

2.ライムケーキ処理の課題

 北海道内のてん菜製糖工場より副産物として発生するライムケーキの年間発生量は、約16万トン程度で、そのうち農地還元が12万トン、産業廃棄物としての埋め立て処分他が4万トンとなっており、次のような課題がある。

(1)廃棄物の減量化と再資源化による発生量の抑制・・・環境保全対策の推進
(2)ライムケーキの最終処分(埋め立て)に多大な敷地と費用を要する

3.上士幌町内におけるライムケーキ農地還元状況

 上士幌町の一般畑及び飼料畑では、製糖工場と地元JAとの連携により、農地の土壌pH調整を目的としてライムケーキの農地還元利用を毎年600ha程度実施している。

 還元された農地では、土壌の硬化や生育不良などの障害はなく、ライムケーキの農地還元に対する農業者の認知度は年々高まっている状況である。

4.道営草地整備改良事業での利用について

 十勝総合振興局産業振興部北部耕地出張所では、地域資源の循環活用と持続的農業の展開を柱に、平成22 年度より上士幌町内で実施中である道営草地整備改良事業の事業参加農家に協力を頂き、従来の土壌改良資材である炭酸カルシウムに代わり、モデルケースとしてライムケーキを活用している。

 ライムケーキ活用の目的は、適正な土壌酸度の矯正であるが、公共事業費のコスト縮減につながるという利点もある。コスト縮減額は、1ha 当たりの草地整備工事費55 万円に対し、約10万円である。
 
 

5.ライムケーキの投入量計算

 以下に、草地整備改良時に使用する土壌改良資材(炭酸カルシウム)との比較計算を行う  

・石灰質資材 炭酸カルシウム(粉状 アルカリ成分53% 20kg/ポリ袋詰)  
・ライムケーキ       (粉状 アルカリ成分30%程度 水分率30%)  
※ライムケーキについては各製糖工場にて特殊肥料生産者届出済みである。  


<投入量の計算例>
 草地整備前の土壌条件
 現況土壌のpH 5.6(土壌改良目標値pH6.5)
 土壌の種類   黒色火山灰土
 土性      壌土
 腐植含有   富む


 土壌pH 現況pH5.6→目標pH6.5に必要な施用量を計算

○酸性矯正用石灰施用量  
 3.04t/ha(作土10cm当たり)
 ※アレニウス氏表より酸性矯正石灰施用量を算出
 石灰質資材の投入量  3.04t/ha×1.5(15cm換算)=4.56t/ha
 ライムケーキの投入量  アルカリ換算 53%÷30%=1.767倍
 割増率 1.2(十勝農業試験場試験〜施用効果報告書より)
 3.04/ha×1.5(15cm換算)×1.767×1.2=9.67t/ha

○資材価格の比較  
 ・石灰質資材 15,600円/t×4.56t/ha= 71,136円/ha  
 ・ライムケーキ 286円/t×9.67t/ha= 2,765円/ha(石灰と比較して−68,371円/ha)

○コスト削減額の試算(事業費ベース)
 資材価格の差額に諸経費を加算し試算(施工費は加味しない)
  −68,371円×1.5(経費)=−102,556円/haの事業費削減が見込める。
 工事コストの削減率
  102,556円/ha÷550,000円/ha(草地整備改良平均工事費)=0.186≒19%の削減率
 平成23年度の削減額
  平成23年度の草地整備面積(上士幌西地区・上士幌東地区)320ha
  320ha(ライムケーキの使用)×−102,000円/ha=−32,640,000円の削減達成

6.ライムケーキの活用における土壌改良状況

 
 

7.牧草の収量とTDN値

 上士幌町内のナイタイ高原牧場での平成22 年度に草地整備を実施した圃場にて、牧草収量及び牧草の可消化養分総量(TDN)の調査を実施した。

 草地整備後の牧草生育状況は旺盛であり、牧草収量は十勝管内の牧草平均収量を上回った。また、牧草採取試料における可消化養分TDN 値の平均値は64%、粗タンパク(CP)の平均値は11%であり、給与飼料の栄養価として良好な結果となった。
 
 

8.施工現場での課題と対応

 ライムケーキの散布作業にあたっては、平成22 年度当初はライムソア(注1)による散布作業を前提として工事計画とした。しかし、施工業者・総合振興局・製糖工場の三者による試験散布を実施した結果、ライムソアでの均一散布は困難であると判断し、散布機種の検討や機械の改良を重ねた。

 その結果、有機質資材散布機であるマニアスプレッダ(注2)及びスカベンジャー(注3)を用いて散布作業を現在実施している。散布機械の特性から広範囲な拡散散布作業を行っているが、強風時には隣接圃場への飛散も懸念されるため、強風時の作業は慎重を要する。

(注1)土壌改良資材〜炭酸カルシウム散布機械
(注2)有機質資材散布機械〜後部のピーターと呼ばれる羽が回転し、攪拌しながら堆肥等を散布
(注3)有機質資材散布機械〜横の排出ゲートからハンマーの高速回転により堆肥等を散布
 
 

9.散布機械の紹介

 
 
(1)マニュアスプレッダ散布ローターリー部へのゴム板の取り付け
(2)スカベンジャー排出ハンマー部に油圧調整板の設置
 
 
散布機改良による期待される効果

 ●ライムケーキ拡散の防止
 ●強風時にも散布作業が可能
 ●拡散防止より均一散布が可能となり作業性の向上が得られた
 ●散布作業時間はライムソアより1ha当たり1時間程度の短縮が見込まれる 
 
 
新機種の紹介〜ライムスプレッダ

 十勝管内では、畑作農家でも積極的なライムケーキの農地還元が求められている情勢より、平成24年度に外国産であるライムスプレッダが導入された。

 ライムスプレッダはライムケーキや鶏糞肥料等の散布専用機械として開発され、平成24年5月より草地整備改良事業でも散布作業を実施しており、現地の散布状況より次の効果が確認された。


○ライムスプレッダの効果
 ・資材送り出し開口部のレバー調整による定量散布作業の向上  
 ・1工程の作業における散布幅が大幅に拡大し、作業時間が50%程度短縮される
 ・機械の小型化による圃場角部での小回り作業が可能
 ・ホッパー形状のため、積み込み時の作業が効率的である
 
 

10.散布状況と草地整備後の状況

 
 

おわりに

 昨今の社会情勢より、公共工事の効果的な整備とコストの縮減、さらには地域資源の有効活用・リサイクルが求められている。

 耕畜農家の連携と製糖業及び関係機関の積極的な取り組みがあってこそ、今回の取り組みであるライムケーキの活用が実現し、資源リサイクルが可能となることも確かである。

 地域資源の循環形成により、持続的農業の展開も実現可能となることから、良質な飼料生産と地域の目指す農業基盤整備の推進を念頭に、今後も、本取り組みを継続して取り組む重要性がある。

 私たち公共事業に携わる一員としては、今後も創意と工夫を重ね、施工時のコスト縮減、作業効率の向上と高品質な施工管理を目指すことが重要である。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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