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地域だより

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最終更新日:2012年12月17日

2012年12月

鹿児島事務所
 


 当事務所は、平成24年12月4日(火)に鹿児島市内のブルーウェーブイン鹿児島にて地域情報交換会を開催した。

 同交換会は、当事務所で行う業務に対する管内関係者からの意見・要望等の把握、砂糖・でん粉およびその原料であるさとうきびやかんしょについての情報提供や意見交換を行うため、情報収集提供業務の一環として毎年開催されており、平成24年度において2回目の開催となる今回は、精製糖企業、国内産糖企業、物流関係者らと当機構の計18名が出席した。
 
 
 同交換会は、当事務所の安所長の挨拶に始まり、続いて当機構調査情報部の植田職員から「米国におけるさとうきび生産事情〜ルイジアナ州におけるメイチュウ類防除への取り組み〜」と題し、米国の砂糖生産の概況や、ルイジアナ州におけるさとうきび生産振興体制、メイチュウ類の防除対策について情報提供を行った。この中で、米国ルイジアナ州のさとうきび生産において、州立大学農業センター、生産者団体、州政府の農林部がそれぞれさとうきびの生産を振興する業務を行うとともに、各機関が常に情報を共有できる体制が確立されていることや、メイチュウ類に対する防除について、生産者が栽培に関する専門的なアドバイスを受けるために農業コンサルタント会社と契約を行い、IPM(※)に基づく害虫の予防的防除が行われていることについて報告があった。

※IPM:Integrated Pest Management(総合的病害虫管理)
 
 
 次に、当事務所の石井所長代理から、当機構が平成24年度に実施している砂糖の価格調整制度の周知・浸透に向けた取組みについて報告を行った。主な取組みとして、鹿児島県霧島市京セラ国分工場にて開催された九州農政局鹿児島地域センター主催の「移動消費者の部屋」への出展(平成24年5月25〜31日)、鹿児島女子短期大学における出前講座の開催(平成24年10月27日)、平成24年度(第51回)農林水産祭「実りのフェスティバル」への出展(平成24年11月10日、11日)の内容が紹介された。

 続いて、帝国倉庫運輸株式会社新港営業所倉庫部長中森浩美氏から「九州管内における倉庫業者から考察した物流事情」と題して、現在、高速道路の整備等が進んでいることや、景気の低迷に伴う輸送関係に対するコストカットが図られ営業倉庫への依存度が縮小してきており、営業倉庫を取り巻く状況は非常に厳しいこと、同営業所の在庫量は砂糖と米で7割を占めていることなどについて紹介があった。

 同交換会の後半には、各出席者からさとうきびおよび砂糖の生産状況等について近況報告が行われた。精製糖企業からは、各社の製造予定に関するコメントの中で九州地区における荷動きが悪く、特に家庭消費が伸びていないとの報告があった。また、国内産糖企業からは今年産のさとうきびの生育状況について、メイチュウ類への防除作業を徹底したため、メイチュウ類による被害は昨年より抑制されたところであるが、度重なる台風の襲来による葉部損傷や塩害により生育が停滞し、茎長・茎数ともに平年比を下回っており、品質(ブリックス値)については、奄美群島、中でも徳之島、沖永良部島、与論島の南3島が著しく低いとの報告があった。
 
 
 最後に当事務所の安所長から閉会の挨拶があり、生産者・関係団体の一層の連携強化の下、さとうきびおよび砂糖の生産回復に努めていきたいとの話で締めくくった。

 現在、さとうきびの不作や砂糖の消費低迷等により、さとうきびおよび砂糖は厳しい状況に置かれており、関係者間の更なる連携と情報共有が重要であるため、今回のような会合の場がその一助となるよう期待し、今後とも有意義な会合の開催に努めて参りたい。

那覇事務所
 


○はじめに

 平成24年10月30、31日の2日間、石垣島において、沖縄県さとうきび生産法人連絡協議会の通常総会、講演会、現地検討会が行われた。

 同協議会は、沖縄県農業の近代化を促進するとともに、農業生産の増大と農業経営の安定した発展に資するため、さとうきび生産法人の知識、技術向上を図ることを目的に、11年前に設立され、現在41の生産法人が加盟している。

 総会には、32生産法人の代表の他、JA、糖業関係者及び行政関係者など約70名が参加した。
 
 
○通常総会

 冒頭の挨拶では、同協議会会長の喜久里猛氏、来賓として出席した石垣島製糖株式会社山田忠弘代表取締役社長が、平成24年産のさとうきびの生育は、8月以降の台風の影響で葉片裂傷や潮害などの大きな被害を受けたことにより、さとうきびの生育が遅れ、糖度が例年よりも低いことが予想される大変厳しい状況であるが、さとうきび生産の中核を担う生産法人が力を合わせて回復に取り組むことが大切であると述べた。

 通常総会では、事務局より同協議会における平成23年度の活動報告、平成24年度の活動計画についての説明が行われた。特に平成24年度の活動計画の説明の中では、昨年度の不作及び今年度の台風被害の状況を踏まえ、関係者一丸となって増産を推進するために、活発な意見交換がなされた。
 
 
○講演会

 沖縄県農林水産部営農支援課の河野伸二副参事と沖縄県八重山農林振興センターの池田伸輔氏の講演が行われた。

 河野氏は、「さとうきび栽培におけるIPM実践」と題し、講演を行った。IPM(Integrated Pest Management)は、次に示す定義の通り、病害虫防除、雑草管理について経済性を考慮に入れ、人や生態系へ与えるリスクを抑えることによって、安全かつ消費者に信頼される農作物の安定生産を行うことである。
 
 
 河野氏は、防除について経済性を考慮するためには、害虫の発生時期や予防的措置を行う時期などを十分に把握することによって、天敵など生態系が有する病害虫及び雑草抑制機能を可能な限り活用し、必要以上の農薬は使用しないといった考えを持ちながら作業を行うことの大切さについて述べた。
 
 
 池田氏は、「親子で引き継ぎ築くさとうきび栽培〜機械化一貫作業と創意工夫で大規模経営」と題し、石垣島の生産者である當銘幸榮氏のさとうきび栽培事例について講演を行った。當銘氏のほ場では、多くの作業を手作業から機械化し、また自らのほ場で使用しやすいように機械を改良することによって、作業効率を向上させ、計画的に作業を行えるよう工夫している。計画的に作業を行えることによって、必要な作業を最適な時期に実施することができ、その結果、石垣島の平均単収より、約1トンも多い生産を維持している。翌日には、同氏のほ場において現地検討会を行うこともあり、出席者は、直接本人に話を聞くことを楽しみにしている様子であった。
 
 
○現地検討会

 當銘幸榮氏のほ場と沖縄県農業研究センター石垣支所において検討会を行った。この日は、あいにくの雨であったが、参加者は雨など気にせず、ほ場や機械に真剣に目を注いでいる様子が印象的であった。

 同氏のほ場では、まず、今日までの歩みについて説明があった。

 平成24年産の作付面積は26.5haであり、大規模経営を行っている。従来の夏植え中心の栽培体系から近年では、1年1作で土地利用効率の高い春植え、株出しに作型を変換しているとのこと。同氏は、さとうきびの生産にとって土づくりが極めて重要と考えており、もみ殻を牛舎に搬入し、牛糞と一緒に回収したのち、堆肥を製造してほ場に散布している。また、ここ数年1500トン近くの生産量を維持していることから、現在は、2000トンを目標に日々努力を行っているとの話であった。

 その後、當銘氏と出席者との間で意見交換が行われた。出席者も大規模経営を行っている生産法人のため、出席者保有の機械と同氏保有の機械の違いについて、どのような目的で機械を改良しているかなどの意見交換が活発に行われた。
 
 
 沖縄県農業研究センター石垣支所では、比屋根主任研究員から、さとうきびの育種行程についての説明の後、選抜試験のほ場について現場での説明が行われた。育種行程の説明では、さとうきびの新しい育種が登録されるまでに最短で11年の年月を有すること、石垣島の気候に合った品種を生み出すために、現地での試験栽培が極めて重要であることなどについて話があった。

 選抜試験のほ場では、石垣島周辺の離島では、黒糖の生産を行っていることから、黒糖の生産に最適な品種の育種に力を入れているとの説明があった。黒糖の選抜試験では、実験プラントによって実際に黒糖を生産し、細かな成分分析を行いながら選抜を行っている。
 
 
○おわりに

 平成24年産のさとうきび生産は、8月以降に襲来した台風の影響により、さとうきびの生育が遅れ、糖度が例年よりも低いといった大変厳しい状況が予想されている。そのような中、出席した生産法人の代表者は、1つでも自分のほ場に活かせることはないかと、強い気持ちを持って本協議会の総会に参加していた。特に現地検討会においては、ほ場や機械など現場の状況に触れ、土作りの大切さや機械の改良の仕方など、新たな発見や参考になる点が見つかった出席者も多く、活き活きとした表情が印象的であった。今後も今回のような地域間の交流が活発に行われ、生産法人が切磋琢磨しながら、沖縄県のさとうきび生産を引っ張っていくことを期待したい。

那覇事務所


1 はじめに 

 沖縄県は台風の常襲地帯であり、台風の強風や潮害によるさとうきびなどの農作物や農業用施設などへの被害が大きく、防風・防潮林の整備を推進する必要があることから、県は、平成18年に「沖縄県防災農業推進会議」を設置し、また、11月の第4木曜日を「防風林の日」と定め、防風・防潮林についての普及活動に取り組んでいる。

 「防風林の日」の関連行事は、農家はもとより広く県民に防風・防潮林整備の重要性を理解してもらうことにより、防災農業の確立を推進することを目的として全県的に行われている。

 防風・防潮林がさとうきびの塩害や倒伏・折損を防ぎ、収量の減少および糖度の低下を防ぐことに寄与していることから、当機構では、毎年、関連行事に出席して、激励の挨拶と記念植樹を行っている。

 平成24年度は、11月22日(木)に沖縄本島中部の読谷よみたん村において、同村の協力のもと沖縄県防災農業推進会議主催により、「防風林の日」関連行事が開催された。

 平成24年度「防風林の日」関連行事は、
 (1)防風・防潮林の整備に積極的に取り組んでいる団体の表彰
 (2)防災農業推進講演会
 (3)記念植樹、関係者や地元児童による植樹大会
の3部構成で行われた。
2 沖縄県防災農業賞表彰式

 防風・防潮林を積極的に整備し、また他の地域の模範となる取り組みを行っている次の2団体について、沖縄県防災農業賞の表彰が行われた。


(1)長浜川土地改良区(読谷村) 

 長浜川土地改良区は、長浜ダム建設及び各土地改良区の解散・吸収合併に伴い、平成5年に設立され、当該施設の運営・維持管理や農事従業者の円滑な営農と効率的・安定的な農業経営に繋げるため、スプリンクラーなどの農業用施設の管理を行っている。

  同改良区が事務局を務める、「読谷村地域資源保全隊」はその活動の中で、定期的な防風林帯の清掃・草刈作業、シャリンバイ約400本の植採を行ってきた。 

 今後も、これまでの5年間の「読谷村地域資源保全隊」での活動を活かし、引き続き防風林帯の清掃・草刈作業や植採を行うことを計画している。  


(2)沖縄県農業協同組合

 北部柑橘生産部会 国頭支部(国頭村) 沖縄県農業協同組合 北部柑橘生産部会 国頭支部は、タンカン生産農家が中心となって平成9年に設立され、現在、144名の部会員から構成されている。沖縄県内の柑橘生産が沖縄県外の柑橘産地との競合や、毎年の台風被害による生産量減少にある中、同生産部会では、柑橘の生産量の確保と品質の安定化のために、防風林の管理、保全を行っている。

 同生産部会は、防風林としてのイスノキ等の植採や、防風林を育成するための散水、肥料散布、防除など適宜管理を行ってきた。また、防風ネットを傷つけないように防風林の枝の剪定を定期的に行い、防風林+防風ネットの効果を最大限に発揮できるよう工夫している。

 今後は、防風林の保全管理について、現地検討会を通じ、部会員の意識の向上を目指すこととしている。  
3 防災農業推進講演会

 「地域における防風林の役割と台風対策」をテーマに、すま宮古みゃーくグリーンネットの宮平勝吉氏と、株式会社海邦技研の上間泰男氏を講師に、防災農業推進講演会が行われた。

 宮平氏は、「美ぎ島宮古グリーンネットの活動について」と題し、他地域に比べ宮古島において森林が少ない現状、その現状を打開するための、植樹活動や就業体験受入の事例を紹介しながら、災害に強い島と花と緑の美ぎ島づくりを行うためには、持続的に活動を行っていくことの重要性等について講演を行った。

 上間氏は、「防風林の防風効果について」と題し、宮古島や本島北部の事例を紹介しながら、防風林の減風効果、栽培する作物にあった樹木の選定、樹木植え付け後の初期管理の重要性、防風ネットの張り方等防風林の維持管理方法についての講演を行った。


4 植樹大会

 同村喜名地区において植樹大会が開催された。主催者である読谷村長挨拶、当機構小菅理事による挨拶、農家代表によるスローガン・がんばろう三唱の後、次年度開催地である伊平屋村長への引継ぎセレモニー、当機構理事を含む関係者代表による記念植樹などに続き、地域住民や近隣の小学校および中学校の児童が参加し、約100メートルの防風林帯に約600本の苗木を植樹した。複数の樹種を組み合わせることで、地域にあった防風林帯を作りあげることができるため、今回は、シャリンバイ、フクギの2種が植樹された。
5 おわりに

 台風の常襲地帯である沖縄県では、毎年台風被害が発生する。今年度は8月後半以降、15号、16号、17号、21号と大型台風が立て続けに襲来し、大きな被害をもたらしたことから、農作物の安定生産のための防風林の重要性を改めて認識した年であった。今回の植樹には多くの地域住民や子供たちが参加しており、防風林への関心の高さがうかがわれた。本行事で植樹した木が生長し、防風・防潮林として効果を発揮するには長い年月が必要で、それまでの間、台風の影響等から植樹後の木を守っていくために、育林・維持管理作業を持続的に行うことが非常に重要である。防風林推進活動の重要性が次世代に継承され、地域の理解と協力により防災農業の確立がいっそう推進されることを期待したい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713