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脳も体も砂糖が大好き

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最終更新日:2013年6月10日

脳も体も砂糖が大好き

2013年6月

東京農業大学 名誉教授 中西 載慶
 


 砂糖には、歴史あり、文化あり、科学あり。おいしい料理やスイーツも、さまざまな食品や酒や医薬品製造の原料も、砂糖あればこそ。最近では、バイオエタノール製造の原料としても注目されています。砂糖は本当に身近で有益、話題豊富な物質です。そこで、今回は、砂糖の歴史と味覚と効果にまつわる話を易しく分りやすくまとめました。

 サトウキビの原産地は、南太平洋のニューギニア周辺といわれ、紀元前2000年ごろには、既にインドで砂糖がつくられていたようです。一方、てん菜(さとうだいこん、ビートともいう)の発見は17世紀初頭で、製糖技術の確立は18世紀半ばですから、サトウキビの歴史に比べれば、ごく最近のことです。日本でのサトウキビやてん菜からの砂糖生産の始まりは、諸外国に比べるとかなり遅く、サトウキビからは江戸時代、てん菜からは明治以降と記録されています。平成23砂糖年度の砂糖の国内生産量は約67万トン、サトウキビから約11万トン、てん菜から約56万トンです。一方、砂糖の消費量は205万トンですから、自給率は33パーセント。つまり、67パーセントを輸入に頼っています1)。世界的にみると、我が国の砂糖消費量は少なく、世界149カ国中105番目です2)。また、日本人一人当たりの年間消費量は約18キログラムで、欧米諸国の1/2 〜1/3です1)。甘い食べ物があふれている現状をみると、ちょっと意外な気もしますが、ダイエットブーム“甘さ控えめ”が影響しているのかもしれません。
 
 砂糖生産の始まりに比べ、日本への砂糖の伝来は意外と古く、天平時代の753年に鑑真和上が薬として持参したと伝えられています。鑑真和上とは、中国唐の時代の名僧で、当時の日本に招聘(しょうへい)できるなどありえない人物でした。当然、時の玄宗皇帝も、その才能流出を惜しみ、日本への渡航を決して許さなかったとのこと。それにもかかわらず、鑑真は、なぜ6回も密航を企ててまで日本に来ようとしたのでしょうか。高齢と失明という、幾多の艱難辛苦(かんなんしんく)を乗り越えてまで。そこには、鑑真の仏教に対する純粋な熱い思いと、2人の若い日本人僧のひたむきな懇願と情熱に心が揺り動かされたからとも伝えられています。この真実と物語にふれると、あらためて人間の凄さと偉大さと素晴らしさを感じ、心が洗われる気持ちになるのです。今年(2013年)は、名僧鑑真の没後1250年にあたります。それを記念して、国宝の鑑真和上坐像が色彩鮮やかに複製され、お身代わり像として、6月に一般公開されるとのこと。唐招提寺に出かけて奈良時代と平成の像を見比べつつ、悠久の歴史に思いを馳せ、鑑真の足跡にふれてみてはどうでしょうか。
 
 ところで、“おいしい”、“うまい”の語源は“甘い”からきているとのこと。甘さはうまさに通じるとすれば、砂糖はうまくおいしいことに間違いはなさそうです。人は甘さの味覚を先天的にもっていて、赤ちゃんもミルクの甘さ(乳糖)をしっかり味わっているそうですから、甘さは人間が経験する最初のおいしさの感覚といえます。しかし、化学的には、砂糖の甘みはしょ糖で、うまみはグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸などの物質ですから、甘いとうまいは別の成分ということになりますが・・・。

 甘い話に関連して、人間の味覚について少しばかり。味の基本的要素は、甘味、塩味、酸味、苦味の4種類です(うま味を加え5種類という場合もあります)。甘味、塩味、うま味は、人体に必要な栄養分を含んでいるので、必然的に皆が好ましい味と感じます。酸味は、食物の腐敗とも関係する味なので注意信号と認識します。一方、多くの毒物は、苦味があるので、人は苦味を有害物として本能的に避ける傾向があります。人が味の物質を感知する最低の濃度を「閾値(いきち)」といい、苦味3)の閾値は、砂糖の甘味の1,000分の1です。言い換えれば、苦味は甘味に対して1,000倍も感度が高いということです。つまり、苦味のある食物を口にした時、微量でもその味を感知して、有害(毒物)か否かを判断できるようになっているのです。これは、人間の本能、生体防御機構の1つでもあります。乳幼児が、酸っぱいものや苦い食べ物を好まず避けようとするのはそのためです。
 
 もう少し科学的に説明すると、口に入った味物質は、まず舌の表面にある味蕾という味の受容器に取り込まれます。この味蕾の中には、それぞれの味を感じ取るための味覚細胞があり、その細胞表面には、味物質(味分子)を受け取る受容体があります。もちろん、この受容体はそれぞれの味分子に対応しているので、例えば甘味においては、しょ糖分子が味覚細胞の受容体と結合します。すると、その化学刺激が電気信号として感覚神経系を通じて脳に伝達され、甘味を感じるのです。厳密には、味の種類によって、受容体との化学反応とその伝達メカニズムは少し異なっているので、結構複雑な話です。

 ちなみに、味蕾の数は7,000〜9,000個程度あり、舌の上に均等には存在せず、部分的に集中しているとのこと。また、味細胞も、10日に1回の割合で、入れ替わっているとのことです。いずれにしても、味覚の科学は難解ですが、一言でいえば味覚は味物質と細胞の化学反応で、舌と脳で感じるということです。もっとも、舐めてみればすぐ分かるといわれれば、そのとおりですが・・・。
 
 少々頭の痛くなるような話で、脳が疲れたと思います。そこで最後に、脳の活性化には砂糖が最適という話。人の脳は体重の約2パーセントほどですが、摂取する総エネルギーの20パーセント近くを消費しています。しかし、脳のエネルギー源はブドウ糖だけで、タンパク質や脂肪は利用できないのです。そのうえ、ほとんどブドウ糖を蓄えておくこともできません。脳は、四六時中働いていますから、常にブドウ糖を補給し続けなければならないのです。ちなみに、安静時でも一日120グラムものブドウ糖が必要です。それゆえ、体のみならず脳にとっても砂糖やでん粉(ブドウ糖が多数結合している)などの糖質は必要不可欠な物質なのです。特に、砂糖はでん粉より消化吸収が速く、小腸で瞬時にブドウ糖と果糖に分解・吸収され、数十秒で血液に取り込まれ、脳に送られます。それゆえ、脳の即効性のエネルギー源として優れているのです。また、砂糖は、ストレスを和らげたり心身をリラックスさせる働きをする物質(β―エンドルフィン)や精神を落ち着かせる働きをする物質(セロトニン)の生成も促進させるとのこと。疲れたとき、ストレスが溜まったとき、集中力を必要とするとき、素早い脳の活性化に砂糖は最適です。適度、適量の砂糖は、甘くておいしいばかりでなく、手軽で簡単な脳と体の栄養剤ともいえるのです。
 
1)農林水産省「平成24砂糖年度における砂糖及び異性化糖の需給見通し(第3回)」の統計データによる。なお、国際砂糖機関(ISO)「sugar year book」によると、2011年の世界の砂糖生産量は、1億7112万トンで、その78パーセントがサトウキビから、22パーセントがてん菜から製造されている。

2)JAS情報 47(8)、1−10、2012−08−00甘味料(砂糖ならびに各種機能性甘味料)の動向 古西義正

3)苦味の標準物質キニーネの苦味
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