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徳之島のサトウキビ生産における作業受委託の現状

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最終更新日:2013年6月10日

徳之島のサトウキビ生産における作業受委託の現状
〜受託組織に対するアンケート調査を中心に〜

2013年6月

宇都宮大学 農学部 准教授 神代 英昭

東京大学大学院 農学生命科学研究科 博士課程 今井 麻子

調査情報部 中司 憲佳


【要約】

 徳之島のサトウキビ生産では、収穫作業を中心に作業受委託が順調に浸透し、効率化が図られてきた。その一方、生産量は不安定化・減少傾向が表面化し、機械台数に見合った生産量の確保ができない状況に陥った。そのため、これまではあまり見えてこなかった問題点や見直しを求める声が、特に受託者側からなされるようになってきた。そこで、本稿では、島内での作業受委託の現状、および、今後の生産構造の変化と作業受委託の関係に関して、アンケート調査を基に考察する。

1.はじめに

(1)徳之島のサトウキビ生産と作業受委託をめぐる状況

 徳之島は、鹿児島本土から南へ468キロメートル、面積248平方キロメートル、周囲89キロメートルの島で奄美群島のほぼ中央に位置し、徳之島町、天城町、伊仙町の3町からなる、人口2万4399人(注1)の島である。耕地面積は約6,880ヘクタール(注2)で群島最大であり、サトウキビを主体に野菜、畜産との複合経営による農業が盛んである。そのうちサトウキビは栽培面積が4,317ヘクタール(注3)で、島内の耕地面積の約63パーセントを占める重要な土地利用型作物である。またサトウキビの生産額は約49.6億円(注3)であるが、それに連関するサトウキビ産業全体の経済波及効果は約4倍(県試算値)(注4)と言われており、島の経済にとって極めて重要な位置づけにある。

 平成8年以降、徳之島では収穫作業を中心に作業受委託が順調に浸透してきた。平成22年時点における島内のハーベスタ保有台数は130台に達している。製糖工場の適正操業率を確保するための製糖日は約100日とされているが、これを基に年間処理可能量を計算すれば、ハーベスタ1台あたりで約2,000トン (=20トン×100日)、島全体では計26万トン(=2,000トン×130台)の機械化収穫が可能な水準まで到達している。実際に、平成22年のハーベスタ収穫率は90.4パーセントとなっており、他地域と比較しても極めて高い水準である(沖縄県平均43.1パーセント、鹿児島県平均82.5パーセント)。以上の数値が示す通り、徳之島では高いレベルでサトウキビ生産・収穫作業の規模拡大・効率化が進展しているが、これは徳之島における「電脳手帳」の活用による搬入・製糖作業の効率化とも相まって、サトウキビ産業(製糖フードシステム)の高いレベルでの効率化を実現してきたといえる(電脳手帳の詳細と効果については、『砂糖類情報』2011年11月号:中嶋・今井「徳之島におけるさとうきび生産・収穫システムの革新に向けた新たな取組」を参照)。

(注1)鹿児島県毎月推計人口(平成25年4月1日現在)による。
(注2) 平成24年度奄美群島の概況「市町村別耕地面積」による。
(注3) 平成24年度奄美群島の概況「島別市町村別農業生産実績」による。
(注4)叶芳和「さとうきび産業の発展方向と地域経済(その1)『砂糖類情報』2002年3月号、鹿児島県糖業振興協会報告書(2001年10月)による。


(2)サトウキビ生産の不安定化・減少傾向と作業受委託との関係

 その一方、サトウキビの生産状況に目を向けると、栽培面積はばれいしょや飼料作物などの他作物との競合状態にあり、単収も短期的には変動が大きく長期的な逓減傾向にあるため、生産量の不安定化・減少傾向が表面化している。特に、平成23/24年期にはメイチュウ類が大発生したことにより、生産量が20万トンを割り込んで、過去最低を更新した。この様に、機械台数に見合った生産量の確保ができない状況に陥ったことによって、これまではなかなか見えてこなかった作業受委託の問題点を指摘したり、見直しを求めたりする声が、特に受託者側からなされるようになってきた。

 その一例をまず、前年度(平成22/23年期)に実施したヒアリング調査より、拾い上げてみよう。委託側としては、作業委託を活用することで、高齢化した小規模経営でも効率的な経営が可能になったこと、そしてそれが島全体の耕作放棄地の発生防止につながってきたことなどの好影響が指摘されている。しかしその一方、受託側は平常時でも委託者の作業を優先し、受託者自身の圃場の管理作業を後回しにする傾向があるため、受託者の経営への悪影響が懸念されている。

 また、近年のサトウキビ生産量の減少は作業受託量の減少に直結し、機械が遊休化してしまうこと、特に収穫機械についてはすでに過剰傾向にあることも指摘されている。さらには、島全体の受託組織数が増加し作業受委託市場が成熟化していく中で、受託組織間の効率性の格差が明確となり、一部の地域では受託組織間の競争が激化している可能性も指摘されていた。こうした組織間の競争によって、今後淘汰される組織が発生する可能性も否定できないが、もしそうなるとそれまで委託してきた生産者にとって大きな影響を与える事態も想定される。

2.アンケート調査の実施

(1)アンケート調査の意義と目的

 これらの声を総合すれば、徳之島全体のサトウキビ産業(製糖フードシステム)を今後、より効率的で安定的なものにするためにも、これまで徳之島で急速に進展してきた作業受委託に関する展開過程や現状、方向性を、今一度見直し、考えてみることには重要な意義があると考えられる。

 そこで本研究グループは、2012年度の共同調査において、作業受委託に関するアンケート調査を、受託組織、生産農家の双方に実施した。「受託組織アンケート調査」では、受託組織のこれまでの展開状況と、現在の作業受託を行う上での問題点、今後の作業受託の意向の状況について質問した。「生産者アンケート調査」では、作業委託先の選択状況、作業受託者と委託者の関係および今後の意向について質問した。

 本稿では「受託組織アンケート調査」の結果を中心に、適宜「生産者アンケート調査」結果も補足的に用いながら、ア. 受託組織の現状、イ. 今後の生産構造の変化と作業受委託の関係について考察する。

(2)アンケート調査の実施方法

 アンケート調査は、調査票を用いた対面ヒアリング形式で行った。実施時期は平成24年11月下旬〜12月中旬である。調査対象は、ア. 天城町内全域の受託組織とイ. 生産者であり、各アンケート調査の実施状況は表1の通りである。特にイ. 生産者に関しては本来ならばア. と併せて天城町全域にすべきかもしれないが、主体数が極めて多数にわたるので、図1の様に天城町内の特徴を代表する与名間、瀬滝、三京の3つの集落に限定して調査を実施した(註)。
 
(註)生産者アンケート調査の対象の各集落の概要を整理すれば以下のとおりである。第1の与名間集落は、海岸沿いに位置し、基盤整備が未整備の地域である。また、圃場内に大きな岩が多く存在するため、機械化の阻害要因となっている。農家数も少なく、一戸当たり平均サトウキビ栽培面積は1ヘクタール未満に留まっている。第2の瀬滝集落は、島内でも農家数が多く、基盤整備も進んでいる地域である。一部には、灌水設備も整備されている圃場もある。また、比較的生産意欲の高い農家が多いといわれており、生産量も多い。第3の三京集落は山手に位置し、基盤整備が進んでいる地域である。農家数は多くはないものの、比較的後継者に恵まれている。また、規模拡大が進んでおり、一戸当たり平均サトウキビ栽培面積も2.5ヘクタールを超えている。

3.アンケート調査の結果

(1)受託組織アンケートの調査結果

 まず、「受託組織アンケート調査」の結果をもとに、天城町内の受託組織の現状について整理する。

1)受託組織の展開状況

 受託組織の組織タイプ別に、どのように組織数が増えてきたかを見ていく(図2)。ここでは、受託組織の展開時期を3つに区分した。まず、第1期(平成8〜11年)はハーベスタ導入開始初期で、主に集団の受託組織が設立を開始している時期である。第2期(平成12〜18年)は特に個人の受託組織の設立を中心に、受託組織が急増した時期であり、天城町の農作業受委託市場が成長した時期と言える。第3期(平成19年以降)は品目別経営安定対策の導入時期であり、受託組織の逓増時期である。この時期には農作業受託市場がより競争的になっていると考えられる。

 1組織当たりのサトウキビ生産量に注目すれば、受託組織数が拡大するにしたがって、次第に減少している。前述したとおり、製糖工場が100日操業の場合のハーベスタ1台当たり年間処理可能量は2,000トンであるが、第2期の後期にはすでに、1組織当たりのサトウキビ生産量が2,000トン水準に近づいており、さらに大不作の平成23年には、2,000トンを割り込む状況になっている。受託組織数が増大する一方、生産量が伸び悩み、さらには減少する過程において、ハーベスタの稼働率が大きく低下していることがうかがえる。
 
 次に図3より、受託組織の集落別存立状況を確認すると、受託組織数に大きな地域差が生まれていることが確認できる。兼久・三京・岡前・西阿木名では比較的早く(第1期)、受託組織が成立している。一方、浅間・平土野・松原西区では比較的新しい組織が多い(第3期)。また、現在でも集落内に受託組織がないのは、大津川、当部、与名間の3集落である。(ちなみに与名間集落の受託組織は平成24年度より受託を廃止している。)

 また、瀬滝集落には農家数は多いとは言えども(表1および図1)、集落内の受託組織数が最多の7であり、非常に競争的な状況にあると予想される。
 
 作業受託の面積の維持・拡大のための工夫については、表2のような結果であった。最も多い回答が「無料サービスの実施」であり、現在88パーセントの組織が実施している(これについては、3)にて詳細に分析する)。次に、64パーセントの組織が「(委託者の)作業時期の要望に応える」ということを挙げている。特に、管理作業の早期実施、年内収穫、翌期春植え圃場の早期収穫など、作業時期を早める要望が多かったが、登熟を待っての収穫作業の依頼など、作業時期を遅らせる要望はほとんど聞かれなかった。
 
 設立時期による差に注目すれば、第2期の組織ではきめ細やかな作業を工夫する回答が多く、第3期の受託組織で「営業活動を積極的に行っている」と回答する組織が多かった。図2と関連付けて考えれば、急速に受託組織数が伸びていく最中に設立された第2期の組織は、作業のきめ細やかさなど作業の質を高めることで顧客の維持を図っている。それに対して後発的な第3期の組織は積極的な営業活動の比重が高い様子が読み取れる。

 次に、委託先の選択理由について、「生産者アンケート調査」結果を見てみる(表3)。委託先の選択理由には、「以前からの人間関係・付き合い」が圧倒的に多かった(その中身については表4が示すように、「知人・友人」、「親戚」、「近隣者」の順番となっている)。人間関係・付き合い以外の理由の回答率は非常に低い。例えば作業料金に関してみれば、それぞれの受託組織が作業ごとに多様な料金設定を提示しており、作業料金の価格差は明確に存在するのだが、それにも関わらず特に、作業料金を重視した選択をしている委託農家は極めて少ない。また、作業ごとに委託先を変更するという例も少なく、作業委託の依頼相手の選択に関しては、人間関係が決定的に重要といえる。

 以上の結果は委託者を中心とした生産農家の声だが、受託組織に対するヒアリング調査では、ア. 受託組織が各委託者との間で作業料金の交渉を進めることが困難である、イ.地域の標準を作ってほしいという受託者側の声により、現在、地域の標準料金設定の話し合いが進められている段階にある、という情報も得られた。

 これらのことから、現状においては、委託者に対する受託側の交渉力が低い状況にあることがうかがえる。
 
2)作業受託のメリット・デメリット

 次に、作業受委託は受託者にとってどのようなメリット・デメリットがあるかを質問した結果について、受託組織の設立時期別に整理・分析する(表5)。

 まず、メリットに注目すれば、第1期の受託組織は、いずれの項目においてもメリットを感じる割合が高いとともに、特に「機械の効率的利用」の回答率が高い。その一方、第2期、第3期についてはいずれの項目においてもメリットとして感じている組織の割合は相対的に低い。特に、第3期組織では、「現金収入」をメリットとして挙げている組織の割合が低い。参入が新しい組織ほど、メリットを享受できていない傾向にある。
 
 次にデメリットについて注目すれば、第1期の組織ではいずれの項目についてもデメリットを感じている割合は低い傾向にある。その一方、第2期、第3期の受託組織では「自作分の収穫・管理作業が自由にできない」という項目で割合が高く、また第3期では特に「委託者の単収が低くて割に合わない」や「圃場が一層分散」という項目が高くなっている。ヒアリング調査で得られた情報によれば、第2期の組織急増期の終わりごろには、すでに固定客が定着し始めたため、第3期の受託組織では他組織が断ったような圃場条件が悪い農家に関しても積極的に引き受けていく必要があったという。このことからも分かるように、比較的新しい受託組織では条件の良い圃場の集積が困難なため、デメリットを感じる組織が多いと推測できる。

 以上のように、参入の新しい組織は作業受託のメリットをうまく享受できずに、デメリットを挙げる傾向があることが明らかになった。そこで、デメリットのなかでも、特に第2期・第3期の受託組織で指摘されている、自作分の作業スケジュールの調整困難に関して、具体的に見ていく。

 図4は「農作業のスケジュールを、作業実施希望日からどの程度の範囲内で行っているか」を、自身の経営および受託先農家に分けて質問した結果である。いずれの作業に関しても、自作分の経営の管理・収穫作業が遅れ気味であり、最大2カ月遅れる場合もあると回答する例もあった。さらに、ヒアリング調査では、天候による影響を指摘する声も多かった。雨天時の作業は、畑を荒らす原因にもなり、翌年の生産に影響するといわれているため、本来雨天時には機械での収穫作業は実施せず、受託作業も延期することが多い。しかし晴天の日数や時期は自らではどうしてもコントロールできない条件であり、収穫スケジュールに間に合わせるために仕方なく晴天時には受託分を優先する結果、雨天時には自作分を行うことが多いという声も聞かれた。
 
 以上のように、受託組織では受託した作業を優先するあまり、自作分の作業の適期管理が上手く調整ができない傾向があることが明らかになった。特に、設立時期が新しく顧客開拓が不可欠な組織では委託者の交渉力が高まるため、受託者は自身の経営を後回しにして受託作業を優先して行わなければならない状況も想定される。

3)無料サービスの実施について

 既に表2で見たように、無料サービスは、現在では天城町内の88パーセントの組織で実施されているが、実施理由としては、表6が示すように、「他の組織が実施している」「単収が低い」という回答が多い。

 ヒアリング調査によれば、このサービスの発端は、ある1受託組織が、株揃えを無料サービスにした平成16年であり、「農家が儲かることが結局は、受託組織が儲かることにつながる」という思いのもと開始された。その後、委託農家から「他の組織では無料サービスを実施しているので、同じようにしてほしい」という要望が増え、多くの受託組織に広まっていった。作業受委託市場が成長し競争意識が強まる中で、組織間の横並び状態の下、本来は有料であった株揃えが付加的な無料サービスとして浸透していき、地域の標準として定着したと考えられる。ただし現在では、一部の受託組織による「ガソリン代等を考慮すると、無料化は厳しい」という声も聞かれる。一部の受託組織では、ガソリン代の高騰などの条件変化によって負担が増しており、やめるにやめられない状況といえる。

 この点に関しては、無料サービスの実施が、受託者、委託者双方に一定の経済性を有するものか、実際の単収に与える影響も含めて、きちんと検証する必要があるだろう。
 
4)受託組織の現状についてのまとめ

 以上の「受託組織アンケート調査」の結果を整理すれば、設立時期が早い組織では、固定客の確保が出来ており、機械の効率的利用が順調にできていた。これに対して、後発の組織に残されていた作業受託の引き受け先は、圃場条件が悪い、低単収農家という状況であった。また、両者に共通する全体的な課題として、委託されたら断れないということ、また自作分の作業の自由度が低下しているということが指摘できる。

 また、農作業の実施スケジュールや無料サービスの実施においては、受託先の要望を最優先し、自身の経営を後回しにする傾向が見られる。個別の作業受委託においては委託者のニーズを尊重する行動が、地域全体で見れば非効率につながる可能性も否定できない状況にある。

(2)今後の生産構造の変化と作業受委託の関係

 次に、徳之島の中長期的なサトウキビ経営の将来像をどのように描くべきか、そしてその中で作業受委託がどのような位置づけにあるのかについて、受託側・委託側の双方の意向調査をもとに検討する。

1)受託組織の今後の意向

 まず、受託組織の今後の意向について確認する。表7は、今後10年のサトウキビの作業受託面積の意向の結果である。現状維持が16戸、受託面積の拡大は13戸、受託面積の縮小は6戸となっている。縮小6戸の内訳は、高齢化による規模縮小が1戸、残りの5戸は自身の経営の拡充という理由になっている。受託面積が十分確保できている一部の組織では、すでに受託作業と自身の経営のバランスを重視している段階に移行していると言えるだろう。しかし、第2期、第3期を中心とした多くの組織では、受託面積の拡大が依然として課題となっていることも読み取れる。
 
 次に集落別に、作業受委託の今後の意向をみたものが表8になる。拡大意向の組織の割合が、縮小意向の割合より高い地域には、兼久、松原上区、松原西区、西阿木名、平土野、天城集落が挙げられる。これに対して、縮小意向の割合が、拡大意向の割合よりも高い地域として瀬滝、前野集落がある。なおデータの提示は省略するが、縮小意向を持つ受託組織の多くが、自作分の経営の拡充を指向していることから、縮小意向の割合が高まっている地域は、作業受託市場の成熟が進んだ地域といえるだろう。

 次に、経営の規模拡大の手段に対する意向と、その中での作業受託の位置づけについて見たものが、表9である。規模拡大の手段として優先度が高い方法は、「土地の貸借」であり、「作業受託」より高いという結果であった。また、表10からわかるように、現在、作業受託が規模拡大の手段として優先順位1位ではない理由としては、「貸し手・売り手ともに見つからない」が最も多い結果になった。ただし同時に、作業受託が将来的な土地貸借・売買につながることを見越している組織も少なくない。実際これまでに作業受委託の関係から発展して土地の貸借や売買につながったという声も聞かれる。しかし、一方、口約束までは行ったが、直前に親戚等の手にわたり土地貸借・売買にまで漕ぎ着けないという声も聞かれる。土地の貸借・売買による流動化の進展は、個別事情・地域事情による差が大きいようである。
 
 以上を総合すれば、受託者の多くは、土地の貸借による規模拡大を志向しながらも、農地の貸し手・売り手ともに見つからない現状において、次善策として作業受託を行っている現状が明らかになった。

2)生産者のサトウキビ生産と作業委託に関する今後の意向

 次に、生産者の今後のサトウキビ生産の意向および作業委託の意向について見ていく。まず、生産者のサトウキビ生産の今後の意向については、図5のように、現状維持が60パーセント、縮小意向と規模拡大意向は同程度であった。サトウキビの規模拡大の方法としては農地の借入れが多く、サトウキビの規模縮小方法は、他作物への転換が最も多いという結果になった(表11)。
 
 サトウキビの作業委託に対するサトウキビ生産農家の意向について見たものが表12になる。今後(約10年後)の方針は、「作業委託を現状のまま続ける」が最多であり、次いで「作業委託を増やす」という結果であった。作業委託から「土地の貸借への移行」は、僅かに1戸のみであり、「土地を売る」は皆無であった。作業委託から土地の貸借・売買への移行の程度は受託組織が期待するほどには及ばす、移行の程度は非常に小さいことが明らかになった。

 今回の委託者へのアンケートの結果では「作業委託を現状のまま続ける」という農家が多かったものの、80歳代の高齢農家も益々増えていく中で、現実は管理作業の委託が今後益々拡大していくことが予想される。したがって、地域の生産システムにおける、作業受委託への依存傾向がさらに加速することは避けられないであろう。
 
3)サトウキビ生産の将来像と作業受委託のまとめ

 受託者、委託者双方の今後の意向に着目すると、現状では、受託者は賃貸借を優先したいものの、農地の貸し手が見つかりにくく、こうした状態が作業受託開始以降続いている状態である。長年にわたって作業受委託の実績を蓄積することが、将来的な土地貸借につながるという思いで続けてきたが、実現できていない状況にある。さらに、近年、管理作業までの小型・中型機械作業一貫体系が構築されたことも影響し、委託者における、土地売買・賃貸借への転換意向は依然として小さいままである。作業委託への依存度は管理作業にまで高まっていくことが予想される。

 今後、生産者の高齢化が一層進行することが予想され、農作業を自分だけではやり切れないがサトウキビ生産には関わり続けたいという思いを持つ生産者はおそらく増えるため、今後、受託側がいつまで受けきれるのかという問題が表面化するのではないか。

4.まとめ

 本稿では作業受託組織の展開と現状、今後の意向に関してアンケート調査を基に分析してきた。これまで作業受委託の積極的意義については指摘されることが多かったが、その担い手の具体的内情に関してはあまり明らかにされることはなかった。

 本稿の分析の結果、作業受委託市場の成熟化やそれによる組織間の競争激化の結果、非効率が発生しつつあることが明らかになった。また、現状では、委託者に対する作業料金や作業スケジュールに代表されるように、委託者に対する受託組織の交渉力が低いことがアンケートの結果よりうかがわれた。受託者がまとまりを持つことで、受託者側の交渉力が上がり、受託者のみが不利になる状況も回避できよう。

 徳之島におけるサトウキビ生産の中長期的な将来像を描く上では、個々の生産者のみならず、受託組織の気持ち、事情を尊重しつつ、島全体での安定的、効率的なサトウキビ生産・製糖という共通目的の実現に向けて、誘導していく仕組みが必要となるであろう。そのための具体的な材料として、データの活用が挙げられる。徳之島では、平成16年以降、先進的に電脳手帳システムが導入されており、圃場別の生産実績が把握できるようになっている。しかし現在は、こうしたデータは、製糖工場の搬入計画に活かされているのみである。今後は、地域内の受託組織がより作業の効率的な受委託関係を構築していくためにも、こうしたデータを、再整理し、視覚化することで、関係機関で一体となって活用することも可能であろう。島全体でのさらなる効率的なサトウキビ生産・製糖のシステムを進展させるためにも、こうしたデータの活用の重要性は高まっている。

 作業受託の非効率の解消のための一つの方策として、受託組織間の緩やかな結合による、作業の集約化が考えられるであろう。現状の受託組織間の競争では、人間関係をもとに作業受委託の関係が構築されており、圃場分散が拡大していることが予想される。これを、たとえば、集落でまとまりをもった受託組織に一括して依頼することで、最も圃場分散を抑えられる組織が作業を請け負い、より効率的な体系を構築することも可能になるのではないか。

(付記)
 アンケート調査の実施にあたっては、徳之島のサトウキビ生産者、受託組織の皆様方、ならびに南西糖業(株)の方々に多大なご支援・ご協力を頂戴いたしました。皆様のご協力に改めて深く感謝申し上げます。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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