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平成25年産のさとうきび生育状況などについて

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最終更新日:2013年7月10日

平成25年産のさとうきび生育状況などについて

2013年7月

特産業務部 砂糖原料課

1.はじめに

 平成24年産のさとうきび生産は、前年度に引き続き2年連続の不作となった。これを受けて、生産者をはじめとする関係者による生産回復のためのさまざまな取り組みがなされている。

 本稿では、主に糖業関係者から聞き取った6月末時点での平成25年産のさとうきびの生育状況を報告する。

2.平成25年産の生育状況

【鹿児島県】

 春植では4月の低温により初期生育が緩慢であったが、その後は回復傾向。株出では2〜3月に気温が高めに推移したため、萌芽はおおむね良好。夏植の生育はおおむね良好。

 予想収穫面積は、株出では昨年の新植の減少により、春植では前年の台風の影響で苗が不足し、面積の大幅な減少が見込まれる。とくに与論島では、必要な苗の1割ほどしか供給できず、春植の面積の大幅な減少が見込まれる。

 ほかにも、種子島では不足しているかんしょの面積が増加しているため、その分さとうきびの作付が減ったこと、徳之島・沖永良部島では豊作となったばれいしょの収穫作業が長引いたことにより春植が遅れてしまったことなど、他作物の栽培状況の影響による面積減少要因もみられる。一方、夏植では昨年の台風の影響で植え付けが遅延したことにより面積が減少した地域が見られる。

 メイチュウ類などの害虫の発生により一部の圃場で被害が発生しており、さとうきび増産基金を活用した一斉防除を実施した。

<各島の生育状況>

・種子島

  春植の発芽や株出の萌芽は3月の気温が高めで推移したことから比較的順調だが、4月下旬以降の気温が低めで経過しているため、生育はやや停滞気味。一方、夏植は冬場の降霜被害や季節風などによる葉の傷みもなく生育は順調。

・奄美大島

 春植の発芽や株出の萌芽は2〜3月の天候に恵まれたことにより良好。春植・株出・夏植とも、4月以降の生育は低温により遅れ気味だったが、5月以降は回復傾向。

・喜界島

  春植・株出の初期生育、夏植の生育状況とも、4月中旬以降の低温のため緩慢な状況。

・徳之島

  春植の発芽、株出および夏植の生育とも、2〜3月の天候に恵まれたことにより良好。

・沖永良部島

  春植は1月上旬〜3月上旬の少雨が影響し、生育がやや遅れ気味。株出は萌芽が良く、初期生育はおおむね良好。夏植は昨年の秋から冬まで低温・日照不足が続いたため、生育はやや遅れ気味であったが、2〜3月は天候に恵まれたことにより回復傾向。

・与論島

 春植は3月下旬〜4月の多雨傾向のため生育は順調。株出については手刈り収穫や初回株出圃場では、萌芽状況はほぼ良好であるものの、機械収穫や多回株出圃場では萌芽が弱く欠株も目立ち、4月の日照不足で萌芽・分けつが鈍化。夏植の生育はおおむね良好。

【沖縄県】

 3月中旬以降の降雨により、春植では植え付け作業などが遅れるとともに、4月の低温と日照不足により、発芽に遅れが生じた。夏植は昨年の台風の影響を受け、植え付け作業が遅れたことに伴い、茎長が短かい。株出の萌芽については平年並みの地域も見られるものの、メイチュウ類などの害虫の発生により一部の圃場で被害が発生しており、さとうきび増産基金を活用した一斉防除を実施。

 予想収穫面積は、高齢化に伴う離農、病害虫被害などの影響により、前年産より若干減少する見込み。

<各島の生育状況>

・沖縄本島

 春植の発芽については、3月下旬〜4月に植え付けた圃場は良好であるものの、曇天雨が続いたため植え付け作業の遅れた圃場も多い。株出の萌芽については製糖期に株出管理を実施した圃場と製糖終了後に実施した圃場で生育のばらつきがある。夏植は昨年8月の台風の影響や曇天雨が続いたため、植え付け作業が遅れたことに伴い初期生育は緩慢であったが、5月の気温の上昇により回復の兆し。

 カンシャコバネナガカメムシ、メイチュウ類に加え、さび病、黒穂病などの被害が発生。

 ・久米島

 株出の萌芽は4月の低温と日照不足にかかわらず、おおむね良好。一方、夏植は昨年の台風の影響で生育が遅延。

・南大東島

 春植の発芽、夏植および株出の生育は、日照不足気味ではあるものの、おおむね良好。

 カンシャコバネナガカメムシ、メイチュウ類に加え、バッタなどの被害あり。

・北大東島

 春植・株出の初期生育は4月の低温や日照不足により緩慢。

 アザミウマが平年に比べ多く発生。

・宮古島

 春植については製糖終了期の3月末〜4月上旬は雨天続きで、植え付け作業の遅れにより、生育は遅れている。株出については面積は増加しているものの全体の3割程度の圃場で生育が遅延し、この影響で単収低下が懸念。夏植は昨年9月の台風の影響により発芽が不良。

 梅雨入後は、降雨がなく干ばつとなっている圃場があったが、6月下旬の台風4号の接近により降雨がもたらされ、一時的に干ばつは解消した。

・伊良部島

 春植の発芽については、植え付け期に降雨が少なく遅延。株出の萌芽についても春植同様に降雨が少なく遅延。夏植は昨年の9月末の台風の影響で発芽不良の圃場が多い。

 梅雨入り後、少雨となったためやや干ばつ傾向となったが、台風4号の接近により降雨がもたらされ一時的に干ばつは解消した。

・石垣島

 春植については3月中旬の集中豪雨により埋没・流出した圃場が見られ、発芽が遅れたものの、5月は日照が多く少雨のため、生育は回復傾向。夏植は4月の低温により品種間で生育のばらつきあり。

 梅雨入り後は降雨がなく、かん水設備のない圃場では干ばつ傾向にあったが、台風4号の通過に伴い降雨があり一時的に干ばつは解消した。なお、台風による被害などはほとんどない。
 

3.おわりに

 台風や干ばつなどの自然災害の常襲地帯である沖縄県や鹿児島県南西諸島において、さとうきびは代替困難な基幹作物であり、関連産業の雇用確保など地域経済に大きな役割を果たしており、また、国土・領海を守るためになくてはならない作物である。

 台風などの自然災害による経済的損失を減らすことは生産者の経営安定にとって重要な課題となっている。さとうきびは、他の作物と比較すると台風による実害が少ないと言われているが、直近2年間のように、たび重なる台風の襲来や病害虫の発生などにより甚大な被害を受ける可能性もあることから、生産者の経営安定を図るためには、農業共済制度への加入率向上も重要な課題である。

 2年連続のさとうきび不作を受けて、平成24年度の国の補正予算事業により、防除、土づくり、優良苗確保支援など、さまざまな支援が行われている。

 病害虫については、メイチュウ類などの発生が見られる圃場もあるが、一斉防除の実施の効果により、被害の軽減が見込まれている。また、たい肥購入費用の助成など土づくりにも力を入れている。
 
 国の補助事業のほかにも、製糖工場の社員が中心となった春植の採苗や植え付けの応援作業なども行われた。苗が極端に不足した与論島では種子島からの苗の供給を受けるなど、同じさとうきび生産者からの支援も行われた。また、久米島では昨年の台風の影響により苗不足が予想されたため、梢頭部苗の使用を奨励した。この結果、梢頭部を使用した圃場では発芽が良く比較的順調な生育となっている。
 
 このように、生産現場では生産者、製糖工場など関係者が一丸となって、さとうきび生産回復のための取組や生産者の経営安定に資するさまざまな努力がなされている。このような努力が実を結ぶとともに、今年産は自然災害などの影響を受けず、さとうきび生産が回復することが期待される。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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