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ビートファイバーの用途拡大に向けて

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最終更新日:2013年10月10日

ビートファイバーの用途拡大に向けて

2013年10月

公益財団法人とかち財団事業部研究開発課 研究員 四宮 紀之
日本甜菜製糖株式会社 今井 奈津夫

【要約】

 北海道十勝地域の主要作物の一つであるビートの副産物で、同地域の特徴的な資源であるビートファイバーの用途拡大と同地域への周知を目的とし、タラすり身揚げへの添加試験を行った。その結果、揚げ物自体への効果および揚げ油への効果が認められた。他の食用ファイバーとの比較においても、アレルギーフリーであることなどアドバンテージが認められた。ビートファイバーは、すり身揚げに限らず、他の食品への応用も期待できる可能性をもつ素材である。

1.目的

 北海道十勝地域では様々な農畜水産物が生産、加工され素材として流通している。素材であるがゆえに目に触れる機会が少ないが、主要作物の一つであるビートから砂糖を製造する過程で発生する副産物のビートファイバーは、同地域の特徴的な資源である。このビートファイバーの用途拡大と地域への周知を目的とし、今まで使われていなかったタラすり身揚げへの添加試験を行い、揚げ物および揚げ油への効果を検証した。

2.試験方法

(1)試料
 本試験では市販の新鮮なタラすり身を用い、対すり身重量1パーセント(注)のビートファイバーを均等にふりかけた後、2分間ミキサーで混合し調製したすり身(以下「BF添加区」という。)とビートファイバー無添加のすり身(以下「無添加区」という。)を試料とした。揚げ油は市販のキャノーラ油を用いた。

(注)ビートファイバーの添加量は、対すり身重量2パーセント、同1パーセント、無添加区で行った比較予備試験の結果、歩留まりが同2パーセント=同1パーセント>無添加区となったため、添加量がより少なくて済む同1パーセントを採用した。

(2)調理方法
 油ちょうのための調理器具として電気フライヤーを用いた。油ちょう温度は180度、時間は5分間とした。揚げ試験一回につき約20グラムのすり身を10個揚げることとし、これをそれぞれ必要回繰り返した。

(3)すり身揚げに対する試験
 100回の揚げ試験の10回ごとにサンプリングし、水分・脂質・物性を測定した。水分は常法、脂質はソックスレー抽出法、物性はテクスチャーアナライザーにより測定した。1/4インチ円筒型のプローブで、移動速度を秒速5ミリメートル、移動距離を35ミリメートルの条件で突き刺し試験を行った。また、100回の揚げ試験全てにおいて、すり身の油ちょう前重量・油ちょう後重量を計測し、歩留まり((油ちょう後重量/油ちょう前重量)×100)を計算した。

(4)揚げ油に対する試験
 100回の揚げ試験の10回ごとにサンプリングし、酸価とカルボニル価を測定した。酸価はフェノールフタレインを指示薬とした水酸化カリウム滴定法により測定した。カルボニル価はより毒性の低い1−ブタノールを溶剤に用いるブタノール法により測定した。

 揚げ油重量の変化は、10回ごとに電気フライヤー油槽全体の重量を計測することにより把握した。揚げ油粘度はディジタル粘度計を用い、揚げ試験後十分に温度が下がってからサンプリングし、30度のインキュベーター中に1時間放置後、粘度測定に供した。揚げ油色相は分光色差計の透過光モードにより測定した。

(5)他の食用ファイバーとの比較
 ビートファイバーとアップルファイバー、小麦ファイバーとの比較を 1)水分 2)脂質 3)物性 4)食物繊維含量 5)アレルゲン−について行った。水分、脂質、物性の測定は(3)の方法に準じて行った。食物繊維含量は各ファイバー規格書記載の数値を用いた。

3.結果と考察

(1)すり身揚げに対する効果
 表1および図1にすり身揚げの水分測定の結果を示した。BF添加区の水分は最小値68.1パーセント、最大値73.5パーセント、平均値が70.7パーセントであった。無添加区の水分は最小値65.8パーセント、最大値69.6パーセント、平均値が67.4パーセントで、ほとんどの場合BF添加区の値が無添加区の値を上回った。水分平均値の有意差検定を行ったところ、有意水準1パーセントで有意差が認められた。すなわち、すり身揚げにビートファイバーを添加することにより、水分を多く保持させられる可能性が示唆された。
 表2および図2にすり身揚げの脂質測定の結果を示した。BF添加区の脂質割合は最小値2.7パーセント、最大値3.8パーセント、平均値が3.1パーセントであり、無添加区の脂質割合は最小値3.3パーセント、最大値5.0パーセント、平均値が4.1パーセントであった。脂質平均値はt検定の結果、有意水準1パーセントで有意差が認められた。ビートファイバー添加により揚げ油の吸着を抑制し、油切れがよくなる可能性が示唆された。
 表3にすり身揚げの歩留まりについて比較した。BF添加区の歩留まりは最小値87.3パーセント、最大値96.2パーセント、平均値が92.7パーセント、無添加区の歩留まりは最小値86.2パーセント、最大値95.5パーセント、平均値90.8パーセントであった。平均値は有意水準1パーセントで有意差が認められた。また、歩留まりの数値を10区間に分けヒストグラム化したところ、BF添加区では歩留まりのバラツキが減少し、最頻データ区間がより高い数値側にシフトしていることが認められた(図3・4)。ビートファイバーを添加することにより、歩留まりが向上するとともにバラツキが減少するものと考えられる。特にバラツキの減少は工程管理上有利になるであろう。
 ビートファイバー添加がすり身揚げの食感に及ぼす影響を検討するため、テクスチャーアナライザーによる突き刺し試験を行い、その結果を図5・6に示した(n=30)。波形には矢印で示した2つのピークが認められ、最初のピークが上部表皮破断荷重を、二番目のピークが下部表皮破断荷重を表している。全体的なパターンに大きな差異は認められなかった。上部表皮破断荷重のBF添加区平均値は690グラム、無添加区の平均値は702グラムであった。下部表皮破断荷重のBF添加区の平均値は480グラム、無添加区の平均値は511グラムであった。この平均値に有意差は認められず、実際の官能評価においても差は感じられなかった。このことから、対すり身重量1パーセントのビートファイバー添加割合であれば、ほとんど食感に影響を与えないものと考えられた。
(2)揚げ油に対する効果
 ビートファイバー添加の揚げ油に対する効果を検討するために、酸価およびカルボニル価の測定を行い、その推移を図7・図8に示した。酸価、カルボニル価ともに揚げ回数に比例する形で数値が高くなったが、両群の間に明確な差異は認められなかった。
 揚げ油の重量推移は、BF添加区が5.06キログラムから4.30キログラムへ減少し、無添加区では5.06キログラムから4.16キログラムへ減少した(図9)。減少量はBF添加区が760グラム、無添加区が900グラムで、無添加区が多く減少した。ビートファイバー添加により、すり身揚げに吸着される揚げ油が減少した可能性が示唆された。

 B型粘度計により揚げ油の粘度推移を計測した。揚げ回数30回までは無添加区の粘度が低かったが、その後はBF添加区の粘度の方がより低くなった(図10)。ビートファイバーを添加することにより粘度上昇が、すなわち油の劣化が抑制される可能性があると考えられる。
 揚げ油劣化指標の一つとして色調の測定を行いL*a*b*値を取得した。L*値は色調の明るさを、a*値は赤味を、b*値は黄色味を表している。L*値は揚げ回数が進むに従い減少、すなわち色調が暗くなったが、無添加区の方がより大きく減少する傾向にあった。a*値も揚げ回数が進むに従い減少、すなわち赤の補色である緑色が濃くなった。a*値も無添加区がより大きく減少した。b*値も揚げ回数に伴い増加し、この場合も無添加区がより大きく増加した(図11)。総じて色調は無添加区の方がより暗く濃くなる傾向が示され、BF添加区では色調の変化が抑制されたものと推察された。
(3)他の食用ファイバーとの比較
 他の食用ファイバーと5項目について比較を行った(表4)。すり身揚げ水分は小麦ファイバー、BF添加区が68.3パーセント、68.0パーセントと高くなった。すり身揚げ脂質はBF添加区が3.3パーセントと低くなった。すり身揚げ物性はアップルファイバー、小麦ファイバーともに801グラム、859グラムと低くなり柔らかくなる傾向を示したが、BF添加区は927グラムと大きく低下することはなかった。ファイバー自体に含まれる食物繊維含量はアップルファイバーが57.6パーセント、小麦ファイバーが90パーセント、ビートファイバーが81.4パーセントであった。食物繊維含量の多いファイバーほどすり身揚げ水分が高くなっており、何らかの関係があるものと推察された。脂質の吸着と食物繊維含量に関係は見られず、BF添加区のすり身揚げ脂質が低いのは、ビートファイバー自体が持つ特性によると考えられた。さらにビートファイバーの優位な点としては、アップルファイバー、小麦ファイバーともに人に対するアレルゲンとなり得るが、ビートファイバーはアレルゲンフリーであることが挙げられよう。

4.まとめ

 北海道十勝地域を代表する作物であるビートの副産物、ビートファイバーの用途拡大を目指し今まで使われていなかったタラすり身揚げへの適用を検討した。

 すり身自体への効果としては、対すり身重量1パーセントのビートファイバーをすり身に添加し、よく混合することによりすり身揚げの水分保持が向上し、揚げ油の吸着を抑えることによる脂質低下、すり身揚げ歩留まりの向上およびバラツキ低下の可能性が示唆された。食感への悪影響も認められなかった。

 揚げ油への効果としては、化学的な指標である酸価・カルボニル価測定において差異は認められなかった。しかし揚げ油減少量の低減、粘度上昇抑制、褐変抑制の可能性が示され、揚げ油使用量の低減も期待された。

 他の食用ファイバーとの比較においては水分保持能の向上、脂質吸着低減、物性への影響が少ないといった特性とともに、アレルゲンフリーであることも大きなアドバンテージになりうると考えられた。このようにビートファイバー添加によるタラすり身揚げ自体と揚げ油に効果が認められたことから、ビートファイバーは、すり身揚げに限らず他の食品への応用も期待できる可能性を持つ素材である。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報グループ (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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