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地域だより

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最終更新日:2013年11月25日

平成25年度第1回さとうきび試験研究委員会(現地検討会)の開催について

2013年11月

鹿児島事務所 渡邊 陽介

 

  さとうきび試験研究委員会は、公益社団法人鹿児島県糖業振興協会が年に2回開催している。そのうち1回を現地検討会と称し、さとうきびの生産振興の重要課題である優良品種の選定・普及について、生産力検定試験※1の進捗状況や新品種の育成状況などを検討することを目的として、毎年度各島の持ち回りで開催している。

 今年度は、平成25年11月7日(木)から8日(金)の2日間、鹿児島県大島郡喜界町(喜界島)にて、試験研究委員や各島の生産力検定試験の担当者を中心に約40名の関係者が参集し開催された。

※1生産力検定試験は、鹿児島県糖業振興協会からの委託により、種子島、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島の糖業振興会またはさとうきび生産対策本部が各島において実施している試験である。調査は、原料茎数、原料茎長、原料茎径、原料茎重、甘蔗糖度など多項目について行われ、鹿児島県におけるさとうきびの品種選定や技術普及の基礎資料を得る上で、重要な試験の一つである。

〜1日目〜

 喜界町に設置された生産力検定試験ほ場にて、生和糖業株式会社原料部の安原主任の案内により各品種の生育状況について見学した。当該試験ほ場では、農林8号や22号をはじめ、「KR05-80」や「KY06-151」などの品種が栽培されており、参加者はさとうきび畑に分け入って、実際に手に取り触れながら、生育状況を確かめていた。
 
 続いて、地下ダムを訪問し、ダムの管理をしている喜界町土地改良区の得田事務局長からダムの構造や効果について概要説明を受け、紹介ビデオを視聴した。

 喜界町の地下ダムは、国営かんがい排水事業により農業用水源として平成15年に利用が開始され、これと併せて、畑地かんがいを行うために必要な農業水利施設が整備された。地下ダムによる受益面積は1,677ヘクタールであり、喜界町の耕地面積(2,250ha※2)の7割を超える。

 今夏は降雨がほとんどない干ばつ状態が続き、地下ダム建設以前であれば土壌が固まってしまい、夏植作業を行うことができなかったが、現在では地下ダムの水資源を有効活用し、定期的にかん水が行えている。今年は、受益地区のほ場では、予定どおりに夏植作業を行うことができたと、地下ダムの効果が評価された。

※2:平成24年度奄美群島の概況「島別市町村別農業生産実績」
 
 次に、喜界町役場内の会議室に移動し、水利用についての検討が行われた。鹿児島県下の各島では、今夏、無降雨状態が続いたことで干ばつに見舞われており、関係者にとって水資源の利用については、関心の深い話題であった。

 林委員長(鹿児島大学名誉教授)は、あいさつの中で、「異常気象が続く昨今、高糖多収品種だけではなく、このような事態に対応できる品種も必要ではないだろうか。」と今後の品種育成の在り方について自らの所感を述べた。

 沖永良部さとうきび生産対策本部の奥村氏からは、沖永良部島の各町における渇水対策や生育状況について、「農業用水として利用されているため池の貯水率は、9月末時点で和泊町54パーセント、知名町62パーセントであり、貯水率の低いため池ではローテーションや時間制限により対応した」と報告があった。

 また、鹿児島県農業開発総合センターの若松農業改良普及指導員は、曽於地区における事例をもとに水利用の効果と使用器具について説明を行った。
 

〜2日目〜

 各島における生産力検定試験の中間成績などについて、喜界町役場内の会議室にて報告や検討が行われた。

 まず、今回の開催地である喜界町におけるさとうきび栽培の現状と課題について、喜界町糖業振興会から報告があった。

 課題の一つに「収穫面積の確保と単収向上」を挙げ、その対策として、同振興会では、堆肥、緑肥の推進を行っており、製糖工場から出るフィルターケーキと精脱葉施設から出るハカマを混ぜ合わせた堆肥に対し、一部補助を行っていることを紹介した。また、株出ほ場の補植用として一芽苗を推進しており、平成25年3月には約8万本の一芽苗を無償配布した実績を報告した。このほか、土壌病害虫の防除、雑草防除、生産戸数の減少などの諸課題に対する取り組みについても報告があった。

  続いて、各島における新品種の生産力検定試験の中間成績について、各担当者からの報告に移り、「KY06-56」は、徳之島、沖永良部島、与論島において現時点では、比較的生育が良いとのことであった。同試験では、農林8号、22号、23号などに加え、「KY06-56」「KR05-80」「KY06-151」「KR07-20」などの品種の生育状況(仮茎長、茎数、ほ場ブリックス、病害虫の発生程度、倒伏の程度など)について、調査が実施されている。

 生産力検定試験の報告と併せて、各地域における最近の品種および作型の動向についても報告があったので、紹介する。 ((品):品種動向、(作):作型動向と記述する。)

○種子島
 (品)植付比率は、農林8号が78パーセント、農林22号が19パーセント、農林18号が3パーセントである。
 (作)株出が71パーセントを占め、春植が27パーセント、夏植が1パーセントである。

○奄美大島
 (品)農林22号を中心に栽培され、農林23号が微増傾向にあり、農林17号が減少傾向である。
 (作)株出が6割を超え、春植がやや増加傾向にあり、夏植は減少傾向にある。

○喜界島
 (品)農林8号が減少し、初期生育および株出萌芽の優れた農林22号、23号が増加傾向にある。
 (作)株揃え機や小型管理機の普及に伴い株出栽培が6割近くまで増加。

○徳之島
 (品)農林8号は収量が安定しているため、他品種からの回帰がある。農林23号は干ばつ地帯を中心に増加傾向にあり、特に伊仙町で人気がある。
 (作)機械収穫後の株出管理技術の向上などにより、春植と株出の比率が増加している。

○沖永良部島
 (品)農林22号は初期生育・株出萌芽性に優れているので面積比で4割を超える。
 (作)構成比でみると、春植、夏植は減少傾向であり、株出が増加傾向である。

○与論島
 (品)耐干性、株出萌芽性に優れている農林23号に偏り、7割以上を占める。
 (作)春植からの株出体系が中心であり、株出が約9割を占めている。

 最後に、永田副委員長(鹿児島県農業開発総合センター作物園芸部長)から、「2年連続で不作が続き、今年も干ばつにより不作となることが危惧された。このような厳しい状況の時にこそ、品種の育成が求められていると思う。今回の検討会では、良い傾向の品種もみられたので、次回開催の際に、良い結果が得られることを期待したい。」とあいさつがあり、2日間に及ぶ会議を締めくくった。

 環境要因による被害が続いている近年において、さとうきびの品種の選定も生産量を左右する重要な要因であり、当機構としても、今後の品種育成の動向について注視し、微力ながら品種に関する情報を提供できるよう努めてまいりたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713