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地域だより

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最終更新日:2013年12月4日

平年25年度 沖縄県「防風林の日」関連行事が開催された

2013年12月

那覇事務所 井 悠輔

はじめに

 沖縄県は台風の常襲地帯であり、平成25年度は、9月以降立て続けに台風が襲来し、強風や潮害によってサトウキビなどの農作物や農業用施設へ大きな被害をもたらした。防風・防潮林は、台風の被害を軽減するために欠かせないもので、沖縄県では、これまでも、整備を進めてきているが、効果を発揮するまでに時間を要することなどから、今なおその整備が十分とはいえない状況にある。沖縄県は、この状況を改善するために、平成18年に「沖縄県防災農業推進会議」を設置し、また、11月の第4木曜日を「防風林の日」と定め、防風・防潮林についての普及活動に取り組んでいる。

 「防風林の日」の関連行事は、農家はもとより広く県民に防風・防潮林整備の重要性を理解してもらうことにより、防災農業の確立を推進することを目的として全県的に行われている。

 当機構では、防風・防潮林がサトウキビの塩害や倒伏・折損を防ぎ、収量の減少および糖度の低下を防ぐことに寄与していることから、毎年、関連行事に出席して、激励のあいさつと記念植樹を行っている。

 平成25年度は、11月25日に北部離島の沖縄県島尻郡伊平屋村の離島振興総合センターにおいて、同村の協力のもと沖縄県防災農業推進会議主催により、「防風林の日」関連行事が開催された。

 平成25年度「防風林の日」関連行事は、
(1)沖縄県防災農業賞表彰式
(2)防災農業推進講演会
(3)植樹大会

の3部構成で行われた。

 また、伊平屋島の玄関口である前泊港にて防風・防潮林の普及のためのパネル展示が行われた。
 
 

1 沖縄県防災農業賞表彰式

 防風・防潮林を積極的に整備し、また、他の地域の模範となる取り組みを行っている次の1団体・1個人について、沖縄県防災農業賞の表彰が行われた。

(1)団体の部:NPO法人げんき村(伊平屋村)
 NPO法人げんき村は、平成23年2月に設立、会員数35名の組織である。伊平屋村の第一産業である水稲、サトウキビは台風による被害が大きく、早急に防風・防潮林などの整備が必要であるが、担い手の流出、公共工事の減少などにより、整備が進まない状況にあり、これらを地域コミュニティーにより改善していくことを目的に設立された。

 防風・防潮林を整備することによって、農作物の安定生産を目的とし、リュウキュウマツの育苗などに取り組んでおり、約1,000本の苗木を育成している。

 今後は、育苗した樹木を農家に配布し、防風・防潮林の普及啓発を図っていくことや、ツツジなど村在来の樹木から防風・防潮林として適している木々を選定し、防風・防潮林帯を増やしていくことによって里山を再生させ、農作物を保護する防災農業につなげることを目標にしている。

(2)個人の部:長嶺 宗勇氏(名護市)
 平成6年から父親の経営する果樹園を引き継いでいる。農地は約4,000坪あり、現在はタンカンを栽培している。

 長嶺氏の祖父の代から3代にわたって防風・防潮林としてイヌマキを植え、現在では農地のほとんどがイヌマキで囲われるまでに至っている。現在あるイヌマキは、実生苗を70センチメートル間隔で移植したもので、施肥、かん水、剪定、薬剤散布による防除など維持・管理にも力を入れている。また、イヌマキは沖縄の祭祀用葉物として需要があるため、一部若枝を販売している。

 防風・防潮林については、農地の周囲をほぼ囲んでいることから、今の状態を維持することを第一に考えている。
 

2 防災農業推進講演会

 「地域で育む防風林、地域で営む防災農業」をテーマに、ふるさとフクギの会会長の宮良安晃氏と、沖縄県森林資源研究センター班長寺園隆一氏を講師に、防災農業推進講演会が行われた。

 宮良氏は、「ふるさとフクギの会の活動について」と題し、フクギの会の設立の経緯やこれまでの活動内容について講演を行った。フクギの会では防風・防潮林の維持・管理活動の重要性を理解してもらうために、参加者に野菜作りの土地を提供する代わりに、防風・防潮林の維持・管理活動についても一緒に行うことにしている。これにより、参加者の意識が向上し、積極的に防風・防潮林の維持・管理活動を行うようになったという。

 寺園氏は、「防風林の樹種の選定について」と題し、防風・防潮林の効果、樹種の違いによるメリットなどについてデータを交えながら講演した。防風・防潮林の樹種の選定で大切なことは、地域の立地条件に適した樹木を選ぶことと、5年、10年、20年、50年と先の林型を想定し樹木の組み合わせを考えることであるという。また、恒久的な防風・防潮林帯を築くために管理が極めて重要であると述べた。
 

3 植樹大会

 主催者である伊平屋村長挨拶、当機構小菅理事によるあいさつ、農家代表によるスローガン・がんばろう三唱、防風林の日ポスター原画コンクールの表彰、次年度開催地である石垣市への引き継ぎセレモニーが同センターで行われた。その後、場所を移動し、当機構理事を含む関係者代表によるリュウキュウコクタンの記念植樹が行われた。

 なお、本来は、記念植樹に続き、地域住民や近隣の小・中学生によるリュウキュウコクタンとテリハボク約700本の植樹が行われる予定であったが、悪天候のため、後日行われることになった。
 
 
 

おわりに

 平成25年度は、昨年度に比べ、台風の襲来は少なかったものの、9月以降に立て続けに台風が襲来し、農作物に大きな被害をもたらした。また、近年、台風の大型化が進んでおり、農作物の安定生産のために防風・防潮林の重要性がより注目されている。

 防風・防潮林を恒常的に機能させるためには、防風・防潮林の維持・管理活動が極めて重要であり、「防風林の日」の関連行事は、多くの方にその重要性を伝えることのできる貴重な機会である。

 今後も防風・防潮林に対する理解が浸透するように、継続的に「防風林の日」の関連行事が開催され、地域の理解と協力により防災農業の確立がいっそう推進されることを期待したい。

 当機構としても、防風・防潮林の重要性を少しでも多くの方に伝えられるよう、情報提供に努めてまいりたい。

【参考】
 当機構情報誌「砂糖類・でん粉情報11月号」宮古島における防風林の役割と普及の取り組み 
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713