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奄美地域におけるさとうきびの安定生産を図る土づくり

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最終更新日:2014年2月10日

奄美地域におけるさとうきびの安定生産を図る土づくり

2014年2月

鹿児島県農業開発総合センター 企画調整部普及情報課
農業専門普及指導員 脇門 英美

【要約】

 奄美地域のさとうきび畑は、腐植含量が少なく粘土質で、保水性や排水性の悪い土壌が多い。粘板岩や花崗岩由来の土壌はpHが低く、強酸性の場合も多い。昨今のさとうきび低収要因は気象だけでなく、これら栽培ほ場の土壌特性なども指摘される。

 さとうきびの安定生産を図るためには、牛ふん堆肥など有機物の施用、緑肥作物のすき込みによる腐植の供給、深耕や耕盤破砕などによる土壌物理性の改善、低pH土壌における酸度矯正など、総合的、継続的な土づくりの実践が重要である。

はじめに

 さとうきびは、台風や干ばつなどによる悪影響が他作物に比べて小さく、奄美の地域経済を支える重要な作物である。奄美地域では、さとうきび増産対策のため、鹿児島県が平成18年度に策定した「鹿児島県さとうきび増産計画」に基づき、さとうきび増産プロジェクト基金などの活用により、「担い手の育成や機械化の推進」「地力増進や干ばつ対策の強化」「優良品種の育成・普及」などに、生産者をはじめ関係機関・団体が一体となって取り組んでいる。

 しかし、当地域の平成23年産および24年産におけるさとうきびは、2年連続で平均単収が10アール当たり3.8トンと、目標とされる平均単収の同8.0トンを大きく下回った。この低収要因を検討した「さとうきび研究成果発表会(平成25年7月23日開催)」では、さとうきびの生産回復を図るためには、優良苗の移植、早期の株出し管理、雑草対策などと併せて、土づくりの重要性が再確認された。

 本稿では、さとうきびの安定生産を図る上で重要な土づくりの推進に資するため、奄美地域の畑土壌の特性などからみた生産上の問題とその対策を紹介する。

1. 土づくりとは?

 さとうきびに限らず作物の生育に必要な条件は、光、温度、空気(酸素・二酸化炭素)、水、養分が適当であることと、作物の生育を害する有害因子(土壌有害センチュウや硫化水素など)がないことである。これら6つの条件が整わないと、作物は健全に育たない。例えば、土壌中に養分があったとしても、作物は養分を水に溶けた状態で、主に根から吸収することから、土壌中に水がないと、養分の吸収が抑制され、健全に育たない。

 根は地上部を支え、養分と水とを吸収するものであることから、作物は、根が健全に発達していなければ十分に生育できない。土づくりとは、作物の根が十分に伸張し、養分や水を効率的に吸収できるように、土壌の持つ化学性、物理性、生物性の性質を整えることである。これら土壌環境が土づくりによって改善されると、作物の生産が安定し向上する(図1)。

 以上のことから、奄美地域におけるさとうきび畑の土壌特性、栽培管理状況などの実情に基づく土づくりの実践が安定生産に結びつく重要な対策技術になる。
 

2. 奄美地域に分布する土壌の特性

 奄美地域に分布する土壌は、主に「石灰岩」「粘板岩」「花崗岩」「泥灰岩」「海砂・サンゴ片(砂丘土)」を母材とし、鹿児島県本土に広く分布する黒色火山灰土を母材とする土壌(黒ボク土壌)と異なる。石灰岩風化土壌である暗赤色土(以下「石灰岩土壌」という)の奄美地域の全耕地面積に占める割合は47パーセント、粘板岩風化土壌である黄色土(以下「粘板岩土壌」という)が同32パーセント、花崗岩風化土壌である赤・黄色土(以下「花崗岩土壌」という)が同6パーセント、泥灰岩風化土壌である灰色台地土(以下「泥灰岩土壌」という)などが同4パーセント、海砂・サンゴ片風化土壌である砂丘未熟土(以下「砂丘未熟土壌」という)が同2パーセントである(表1)。これら土壌の分布は、鹿児島県が作成した「土壌生産性分級図」でおおむね確認することができる。
 
 土づくりの実践に当たっては、さとうきび畑の土壌特性を把握し、その実態に基づいて対策を講じることが重要である。次に分布土壌別の特性を示す(表2)。
 
(1)石灰岩土壌
 大島本島を除くすべての島に分布する。粘着性が強く、耕うんしにくい。透水性が高く、保水性が低いため、干ばつ害を受けやすい。土壌pHは一般に中性から微アルカリ性と高い。石灰は豊富であるが、腐植(有機物)やリン酸は乏しい。
 
(2)粘板岩土壌
 喜界島と与論島を除くすべての島に分布する。粘着性は極めて強く、乾燥すると著しく固結化する。保水性が中庸であるが、透水性が低いため、湿害を受けやすい。低pHで酸性土壌であり、石灰含量が少ない。また、腐植、リン酸やケイ酸も乏しい。
 
(3)花崗岩土壌
 徳之島北部、沖永良部島の一部に分布する。一般に、粘着性が強く、透水性が低く、保水性が中庸である。乾燥すると固結化し、干ばつ害を受けやすい。低pHで酸性土壌であり、石灰含量が少ない。腐植、リン酸も乏しい。

(4)泥灰岩土壌
 主に喜界島東部に分布する。粘着性は強いが、固結化しにくい。保水性が良好で、透水性も高くないため、干ばつ害を受けにくい。土壌pHが高く、アルカリ性を呈する。保肥力が高く、塩基含量も良好である。これらのことから、奄美地域では最も生産性の高い土壌といわれる。

(5)砂丘未熟土壌
 大島群島海岸地帯の一部に分布する。砂質で、透水性が高く、保水性が低いため、干ばつ害を受けやすい。土壌pHが高く、石灰も豊富であるが、腐植含量やリン酸含量が少ない。

3. 大型農業機械(ハーベスタ など)利用と土壌物理性

 奄美地域におけるさとうきび畑では、ほ場整備に伴いハーベスタ収穫面積が増加するなど、機械化による効率的な作業管理が進んでいる。一方、新植ほ場における深耕や堆肥散布などの土壌改良の実施面積が減少傾向にある(図3)。大型農業機械であるハーベスタ収穫機の踏圧による土壌の粗孔隙の低下や硬化など、土壌物理性の悪化が指摘されている。また、当センター徳之島支場は、平成20年度から24年度にかけて徳之島におけるさとうきび栽培ほ場(n=99)の土壌断面調査を行った。当調査による作土は16センチメートルの深さで、県土壌診断基準値の30センチメートルに比べて浅い結果が得られている。
 

4. 奄美地域さとうきび畑土壌の問題点

 前述の奄美地域に分布する土壌の特性や大型農業機械利用などによる物理性の変化から、さとうきび畑土壌の問題点を整理する。

(1)当地域に分布する土壌は、腐植(有機物)含量が少なく、粘土含量が多い。このため、保肥力の増大が望まれる。

(2)当地域畑土壌の約4割を占める粘板岩土壌や花崗岩土壌は、pHが低く酸性側である。さとうきびは、低pH土壌では生育が悪く、高pH土壌では生育が良いとされることから、酸性土壌では、酸度矯正を行う必要がある。

(3)石灰岩土壌は、排水性が高く、保水性が低い。粘板岩土壌や花崗岩土壌は、排水性が低いものの、保水性が中庸である。また、大型農業機械利用などは、作土を浅くし、作土直下に耕盤層(硬い層)を形成させる。これらは、土壌の通気性、排水性、保水性、易耕性を悪化させ、さとうきび根の伸張を抑制させるとともに、耕うんなどの作業効率を低下させる。したがって、根の健全な発達を図るためにも土壌物理性の改善が必要である。

5. 土づくりの目的と対策

(1)土壌腐植の増大

ア 土壌腐植の重要性
 土壌の性質は、化学性、物理性および生物性に大別される(図4)。化学性の改善は、土壌pHの適正化、作物が利用可能な養分の保持能、緩衝機能の増大を目的とする。物理性の改善は、通気性、保水性、透水性、易耕性などの向上を目的とする。生物性の改善は、土壌生物の生息密度や多様性を増大させ、投入された土壌有機物を分解する機能の向上を目的とする。これら3性質の改善に大きく寄与するのが腐植である。腐植は、牛ふん堆肥、バガスやハカマ堆肥、緑肥作物のすき込みによる有機物の施用によってその含量が増加する。
 
イ 有機物の施用
 牛ふん堆肥などの有機物は、さとうきび植え付け前に10アール当たり2トンを全面施用し、土壌と混和する。基盤整備地や開墾畑など地力の低いほ場、地力の向上を図る必要のある畑では、10アール当たり4トン程度を施用する。

 一方、奄美地域は、牛ふん堆肥など有機物資源が乏しい。このため、徳之島支場は、専用の堆肥条散布機によるさとうきびの新植発芽揃い期、株出し萌芽揃い期に10アール当たり1.0トンの堆肥条施用技術を開発した(写真3)。当技術は、専用の堆肥散布機だけでなく、ブロードキャスターでもほぼ対応可能である。
 
ウ 緑肥作物
 牛ふん堆肥など有機物の入手が困難な場合は、緑肥作物のすき込みを図る。緑肥作物の土壌へのすき込みは、牛ふん堆肥などと同様の土づくり効果だけでなく、土壌病害虫の抑制や休閑地の被覆効果などもある。また、一般にさとうきびは、連作障害のない作物とされるが、緑肥作物の計画的な作付けによるさとうきびとの輪作は、土壌養分の過不足による地力の低下、土壌生物相の単純化などを改善する効果も期待される。

 緑肥作物による土壌腐植の増大を図るためには、は種時期やすき込み時期などの栽培管理、肥培管理などを的確に行う必要がある。また、緑肥作物のすき込みによって土壌環境が大きく変化し、作物に悪影響を及ぼすことが予想されるため、すき込みから新植までの期間は、30日から45日置く必要がある。

 緑肥作物には、イネ科とマメ科がある。イネ科は乾物収量が多いため、土壌の腐植含量を多くする効果がある。すき込みによる土壌での分解は、炭素率(植物体中の炭素含量と窒素含量の比)が高いため遅い傾向にある。一方、マメ科は、空気中の窒素を固定する根粒菌の働きにより、腐植の供給と併せて窒素の供給の効果も期待される。すき込みによる土壌での分解は、炭素率が低いため速い傾向にある。イネ科であるさとうきびの連作ほ場では、マメ科の緑肥作物と組み合わせた輪作が望ましいと考えられる。
 
(2)土壌pHの適正化

 さとうきびは、pH6.5〜7.5の微酸性〜中性の土壌で生育が良いとされる。九州沖縄農業研究センターは、土壌pHの上昇に伴いさとうきびの仮茎長が長くなり、茎数も増加すると報告している。

 土壌が酸性化すると、多くの土壌養分が水に溶けにくい形態に変化して、作物の養分吸収を抑制する。また、毒性の強いアルミニウムが土壌に溶けやすい形態に変化して、作物根に障害を与える。このように、土壌の酸性化は、作物の生育を阻害する要因になる。

 奄美地域では、土壌pHの低い粘板岩や花崗岩を母材とする土壌も少なくない。これらの土壌では、炭酸カルシウムや苦土石灰など石灰質肥料の施用によって酸度矯正を図る必要がある(表4)。
 
(3)深耕および耕盤破砕

 さとうきび畑土壌では、大型農業機械などの利用によって作土の浅層化、作土直下の耕盤層の形成が予想される。このことから、ボトムプラウなどによる深耕、サブソイラーなどによる作土の確保と、耕盤破砕や心土破砕の対策を講じる必要がある。石灰岩土壌では、排水性が過度に良好となり、干ばつなどの影響が懸念されるため、牛ふん堆肥など有機物の施用などと併せての実施が望まれる。

6. 優良事例から学ぶ土づくり

(1)A氏(沖永良部島、石灰岩土壌)
  1)購入堆肥を10アール当たり3トンの施用 2)心土破砕 3)輪作 4)かん水 5)早期管理−の実践によって、低収年の平成23年と24年の単収は10アール当たり7.0トンを達成した。

(2)B氏(沖永良部島、石灰岩土壌)
 1)自家堆肥を10アール当たり4トンの施用 2)心土破砕 3)早期管理−の実践によって、平成22年の単収は10アール当たり8.9トン、23年の単収は同7.1トン、24年の単収は同10.8トンを達成した。

(3)C氏(宮古島、石灰岩土壌)
 1)緑肥作物(下大豆)のすき込み 2)心土破砕 3)輪作−の実践によって、平成19年〜22年の単収は10アール当たり10トン以上を達成した。

 上記のとおり、3生産者は、堆肥の施用、あるいは緑肥作物の導入、心土破砕による土づくりの実践によってさとうきびの単収向上を図っている。また、かん水や早期管理など基本的技術の励行も重要なポイントである。

まとめ

 過去30年間の奄美地域におけるさとうきび単収の推移は減少傾向と報告されている。このことから、ここ数年の低収要因として、生育初期の低温や寡日照、台風による被害など気象条件だけでなく、早期管理や適期・適量の施肥管理、土づくりなどの基本的技術の未励行が指摘されている。

 奄美地域畑は、腐植含量が少なく、粘土質で、作土層の浅い土壌がほとんどである。また、粘板岩や花崗岩の土壌は、pHが低く、強酸性も多い。これらの改善対策を行うためには、栽培畑の土壌特性を的確に把握する化学性分析や断面調査による土壌診断が重要になる。この診断結果に基づき、牛ふん堆肥など有機物の施用、緑肥作物のすき込みによる腐植の供給、深耕や耕盤破砕などの物理性改善、低pH土壌では酸度矯正など、必要とする技術の総合的、継続的な実践が重要である。

 作物の生育には、養分の供給だけでなく、水の供給も重要な要因である。当地域では、畑地かんがい施設の整備が進められている。干ばつ対策などの水利用と併せて土づくりを実践することで、さとうきびの長期的な安定生産を図ることが可能になる。地域全島における畑地かんがい施設整備の完成と水利用の促進を期待する。

 以上、奄美地域畑土壌の特性などからみた生産上の問題とその対策を紹介した。奄美地域さとうきび畑における土づくりの重要性を再認識していただくとともに、関係機関や団体の技術者などは、生産者への土づくりの総合的、継続的な実践を働きかけてほしい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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