地域だより

鹿児島事務所　渡邊　陽介
 

　平成26年2月27日（木）、さとうきび試験研究委員会が鹿児島市内にて開催され、さとうきび試験研究委員を中心とするさとうきびおよび甘しゃ糖の関係者36名が参集した。公益社団法人鹿児島県糖業振興協会（以下「鹿糖振協」という）が年に2回開催している同委員会は、鹿児島県の奨励品種を決定していく上で、生産量の増減に関わる要因である品種の特性や有用性を明らかにし、育種の方向性や試験設計などを議論する場として重要な会となっている。なお、平成25年度第1回は平成25年11月7日から8日にかけて鹿児島県大島郡喜界町にて現地検討会が開催されている。（地域だより平成25年11月号にて既報。）

　今年度第2回目となる今回は、生産力検定試験をはじめとする各育種・品種試験の平成25年度を通した成績について、独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構九州沖縄農業研究センター、鹿児島県農業開発総合センター各関係支場、各島の糖業振興会やさとうきび生産対策本部からそれぞれ報告を行い、その試験成績に基づき、翌年度以降の試験設計について議論を深めた。

　試験成績の発表では、試験ほ場におけるさとうきびの生育概況について、各地域の担当者から報告を行い、各者とも夏場に無降雨または少雨となった状況について触れ、地域間で試験成績への影響に多少の差があるものの、夏場の干ばつが生育不良の原因となったことが共通の認識であった。また、台風24号や27号などによる折損、葉部裂傷、塩害などの被害が見られ、干ばつと併せて生育不良の大きな原因となったことが多くの地域から報告された。

　平成23年産のさとうきびに多大な影響を与えたメイチュウによる食害については、大島本島さとうきび生産対策本部から、依然として被害が見られたものの、平成23年産や24年産に比べるとかなりの被害が抑制されているとの報告があった。

　第1回委員会で、今後育種していく新品種の特性について要望を承り、その内容について鹿糖振協から資料の提供があった。なかでも、機械による収穫が増加している近年の状況を踏まえ、機械収穫に適応した品種の育成を望む意見が多くの地域から寄せられた。そのほか、熊毛地域からは、生産者の手取価格の確保につながることから、早熟で糖度が安定した高糖度品種の育成が要望された。また、奄美地域からは、耐干性、風折抵抗性、耐病害虫性などの抵抗性品種の育成についての要望が多く挙げられた。

　今回の委員会の課題である、平成26年度の奨励品種決定試験及び現地適応性試験の設計に供される品種については、以下のとおり決定された。

　この後、鹿糖振協が実施しているさとうきび試験研究事業（技術開発研究事業）において今年度試験された3つの委託試験の成果について、それぞれの担当者から発表があった。試験内容と実施機関については以下のとおりである。

【試験内容および実施機関】

1）　GIS（地理情報システム）を活用した集落別サトウキビ生産情報システムの構築
　　　鹿児島県農業開発総合センター　普及情報課

2）　肥効調節型配合肥料の施肥基準の確立
　　　鹿児島県農業開発総合センター　熊毛支場

3）　ビレットプランタ用苗生産技術の確立
　　　鹿児島県農業開発総合センター　徳之島支場

　鹿糖振協では、平成26年度の「さとうきび研究成果発表会」の開催を7月22日と23日に予定しており、この開催内容について報告があった。また、この発表会において、当機構が賞を提供している、さとうきび生産改善共励会について、平成26年度から新設する地域（島別）の部の表彰を行う計画である。

　また、機械化の進展、病害虫の異常発生および多様化、新品種の普及などさとうきびの生産環境が変化していることに伴い、さとうきび生産性の向上と生産者の経営安定に資するよう「さとうきび栽培指針」を改訂する予定であることを報告した。

　おわりに、平成23年産から不作が続いている状況にあって、生産回復および増産に転じ、生産者がより安定した生産を行うためには、優良品種の育種が一つ求められているところである。同委員会の成果が実を結び、優良品種が出てくることを祈念したい。また、当事務所としてもさとうきびの安定した生産につながるよう、新品種の配布や肥培管理の優良事例、担い手対策などの取り組みについて、より有益な情報の収集、発信に尽力していく所存である。