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糖分が高く製糖品質が優れるてん菜新品種「アマホマレ」

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最終更新日:2014年11月10日

糖分が高く製糖品質が優れるてん菜新品種「アマホマレ」

2014年11月

独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構
北海道農業研究センター 畑作基盤研究領域 岡崎 和之

【要約】

 2014年に農林認定された「アマホマレ」は既存品種の中で最も糖分が高く、製糖品質も優れる品種である。糖分が基準糖度に達しにくいほ場を中心に「アマホマレ」の普及を図ることで、生産者所得の向上と製糖コストの低減が期待される。

はじめに

 砂糖の重要な原料作物であるてん菜において、糖分が高く、製糖品質に優れる品種は、生産者の所得向上、製糖コストの低減への寄与が期待できることから、生産者、製糖会社の双方から育成が強く望まれている。本稿では、独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構北海道農業研究センター(以下「北農研」という)が高糖分・高品質を目標に育成したてん菜新品種「アマホマレ」について紹介する。

1. 育成背景と育成経過

 1986年にてん菜の原料取引制度は、それまでの重量取引から糖分を加味する糖分取引へと移行した。以降、糖分は原料の買い入れ価格に大きく影響する重要形質となっている。生産者にとって、糖分が高い品種は買い入れ価格の面で有利となり、所得の向上が期待できる。一方、製糖会社にとって、高糖分で製糖品質が良好な原料は、製糖歩留まりが良く、糖分が低い原料に比べて輸送コストも抑制できるなど、製糖コストの低減に寄与すると考えられる。このため、生産者、製糖会社の双方から、糖分が高く、製糖品質に優れるてん菜品種の育成が強く望まれている。これまで、高糖分な品種としては「アニマート」や「あまいぶき」などが育成されているが、糖量では主要品種に及ばないため、限定的な作付けにとどまっていた。

 「アマホマレ」は糖分が高く、製糖品質が優れる品種の開発を目的に、北農研とベルギーのSESVanderHave社との間で共同育成した一代雑種品種である。2004年に北農研が育成した高糖分・高品質な種子親系統「JMS59」と、SESVanderHave社が育成した花粉親系統を交配して育成した。2007年から2009年までの3年間、「北海98号」の系統名で北海道内の5試験地(北農研、北見農業試験場、日本甜菜製糖株式会社、北海道糖業株式会社、ホクレン農業協同組合連合会)において、生産力試験および病害抵抗性の評価試験を実施し、2010年に北海道の優良品種に認定された。2013年には種苗法に基づく品種登録、2014年には農林認定されている。
 

2. 「アマホマレ」の特性概要

 表1は北海道内の5試験地で実施した生産力試験の結果である。「アマホマレ」の最大の特徴は、従来品種に比べて糖分が極めて高いことである。試験当時に栽培面積が多かった主要3品種(「クローナ」、「えとぴりか」および「レミエル」)と比較して、「アマホマレ」は、主要3品種と同程度の糖量であるが、糖分はいずれの品種よりも高く、既存品種の中で最も糖分が高い品種であることが明らかになった。また、製糖品質の指標である不純物価に関して、「アマホマレ」は「えとぴりか」並みに低く、製糖品質が優れていることが分かった。
 
 表2は「アマホマレ」の病害抵抗性および抽苔耐性の評価試験の結果である。「アマホマレ」の褐斑病抵抗性は“中”で、主要3品種と比べて褐斑病抵抗性が優れていることが明らかになった。このことは、表1の生産力試験の結果において、「アマホマレ」の褐斑病発病程度が主要3品種と比べて低いことと一致している。一方、「アマホマレ」の根腐病抵抗性は“弱”となっているが、生産力試験における「アマホマレ」の根腐症状株率は低く(表1)、移植前における殺菌剤の苗床灌注など、適切に防除することで大きな被害を避けることができると考えられる。その他、黒根病抵抗性、そう根病抵抗性および抽苔耐性については、主要3品種と同水準である。
 
 以上から、「アマホマレ」は既存品種の中で最も糖分が高く、製糖品質も優れる品種である。また、既存の高糖分品種の弱点であった糖量についても「レミエル」並みに多く、改良されている。さらに、「アマホマレ」は主要3品種に比べて褐斑病抵抗性に優れている。

3. 普及地域と栽培上の注意

 「アマホマレ」は2013年から斜網地域において、「レミエル」の一部と置き換えて一般栽培が開始された。栽培面積は2013年、2014年ともに200ヘクタール程度であるが、今後、その高糖分・高品質の特性を生かすことで、さらに広域での栽培が期待されている。その活用法の一つとして、土壌肥沃度が高いことに起因し、糖分が上がりにくい低糖分ほ場での作付けが想定される。低糖分ほ場における糖分向上対策の一つとして、高糖分品種の導入が有効であることが明らかにされている。「アマホマレ」を低糖分ほ場に導入することで、生産者の所得向上が期待できる。

 「アマホマレ」の栽培上の注意点としては、 1)根腐病抵抗性が“弱”なので適切な防除に努める 2)そう根病抵抗性が“弱”なので発病ほ場での栽培は避ける 3)褐斑病抵抗性品種ではないので、適切な防除に努める−の3点が挙げられる。なお、種子の販売はホクレン農業協同組合連合会により行われている。

4. 今後の課題

 2010年以降、北海道のてん菜は低糖分が続いている。低糖分の原因の一つとして、褐斑病や黒根病などの病害の多発が挙げられる。このため、てん菜生産の安定化を図る上では、糖分や糖量の向上に加え、病害抵抗性の改良が重要であると考えられる。

 こうした中、北農研は2011年に褐斑病、黒根病およびそう根病の3病害に強い抵抗性を持つ新品種「北海101号」を育成した。「北海101号」は2015年度から黒根病が発生しやすい排水不良なほ場を中心に一般栽培が開始される予定である。しかし、「北海101号」は、高度な病害抵抗性と引き換えに「アマホマレ」並みの高糖性を有しておらず、抽苔耐性も弱いという問題がある。病害抵抗性と糖分・抽苔耐性は相反する形質であり、これら全てを兼ね備えた品種を育成することは容易ではないが、北農研は国内唯一のてん菜の育成機関として、この難題に取り組んでいきたいと考えている。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713



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