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地域だより

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最終更新日:2014年12月9日

平成26年度第1回さとうきび試験研究委員会が開催される

2014年12月

鹿児島事務所 篠原 総一郎

 公益社団法人鹿児島県糖業振興協会は平成26年11月6、7日の2日間、大島郡天城町など(徳之島)で第1回さとうきび試験研究委員会を開催した。同委員会は、さとうきび生産振興の重要課題である優良品種の選定や普及について、生産力検定試験(注)の進捗状況や新品種の育成状況などを現地において検討するもの。

 今回は、試験研究委員や各島の生産力検定試験の担当者を中心に約50名の関係者が参集し開催された。

 なお、同委員会では年明けに第2回目の開催を計画しており、2月には品種試験の成績や次年度の設計などについて検討する予定である。

(注)生産力検定試験は、鹿児島県糖業振興協会から6島(種子島、奄美大島、喜界島、徳之島、沖永良部島、与論島)の島別さとうきび生産対策本部などに委託しているさとうきび新系統の品種試験。調査は、原料茎数、原料茎長、原料茎径、原料茎重、甘蔗糖度などの項目について実施され、鹿児島県におけるさとうきびの奨励品種選定や技術普及の基礎資料を得る上で重要な試験の一つとなっている。

(1日目:室内検討会)
 6日は、天城町役場会議室で行われた室内検討会では、各島における生産力検定試験の中間成績や品種・作型の動向について報告が行われた。

 検討に先立ち、同委員会の林満委員長(鹿児島大学名誉教授)が、「3年続きの不作から、今年はようやく回復傾向が見られているが、どこまで回復してくれるかを気に掛けているところ。地球温暖化の影響かどうかは定かではないが、台風の襲来期間も長くなりつつあり、かつ多様な進路を示すようになってきた。気候が変わりつつある中でどのように品種改良を行っていくか、慎重に実施していかなくてはならない」とあいさつした。

  続いて、各島における新品種の生産力検定試験の中間成績について、各担当者からの報告が行われた。併せて、各地域における26年産の作付け品種および作型の動向についても報告があったため、以下に紹介する。(品種動向を(品)、作型動向を(作)として記載)

○種子島
 (品)農林8号が約80%と大きな割合を占め、農林22号が約16%、農林18号が約4%と続く。面積比率は昨年と同程度。
 (作)株出しが71%を占め、春植えが27%、夏植えが1%で、こちらも昨年同様の比率。株出し栽培のうち、3株以上の多回株出しの割合が近年増加していたが,本年産はやや減少した。

○奄美大島
 (品)農林22号が約44%を占め中心品種となっている。また、農林23号(約17%)が増加傾向にある一方で農林17号(約21%)が減少傾向にある。
 (作)生産性の低い多回株出しが増加傾向にあることから、株出し面積の割合が65%となり、バランスある作型体系の構築に努める必要がある。

○喜界島
 (品)農林8号の割合は約43%を占めるが減少傾向。近年の不作の影響から、初期生育および株出し萌芽性の優れた農林23号が増加傾向にある。
 (作)株出し栽培の割合が約60%と増加傾向。土壌害虫防除対策や株出し管理機の普及により萌芽率も向上している。

○徳之島
 (品)減少傾向にあった農林8号が約49%に増加。また、農林23号が島内の干ばつ地帯を中心として増加傾向にあり、約30%となっている。
 (作)低単収になりがちな株出しから高単収の見込める夏植えへの移行が増え、収穫面積が増加。

○沖永良部島
 (品)減少傾向にあった農林8号が約45%に増加、農林22号が約40%となっている。農林22号については、この程度の割合を維持していきたい。
 (作)近年減少傾向にあった春植え、夏植えがともに増加。なかでも夏植えは前年比163%の増加。

○与論島
 (品)耐干性、株出し萌芽性に優れている農林23号が約65%を占めている。
 (作)春植えから株出しへつなげる体系が主流で、株出しの割合が約70%。今年は夏植えの割合も増加した。
室内検討会の様子
室内検討会の様子
(2日目:現地検討会)
 翌7日は、参加者が徳之島島内のほ場などに赴き、現地でさとうきびの生育状況などを確認した。

 最初に訪れた鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場(以下「徳之島支場」という)では、室内検討会で報告のあった奨励品種候補系統などが植え付けられている試験ほ場にて、徳之島支場の研究員から生育状況の説明を受けた。また、ハーベスタ採苗した苗について、浸漬やかん水の有無による発芽率の違いを試験しているほ場なども見学した。

 鹿児島県大島支庁徳之島事務所や徳之島支場が設置している実証ほでは、窒素成分量と緩効性肥料割合を増やした設計の肥料や、かん水を活用しての施肥量削減効果などの説明を受けた。また、徳之島の製糖業者である南西糖業株式会社が管理する生産力検定試験ほ場では、各系統の生育状況を確認した。

 最後に訪問した徳之島ダムは、730万トンもの水を貯水でき、これは徳之島島内の畑地約6900ヘクタールの約半分に当たる3450ヘクタールを賄える水量で、平成27年度に一部通水を予定している。参加者はダム管理所で説明を受けた後、実際に貯水池フェンス際まで足を運び、ダムの大きさを確認していた。
好天に恵まれた2日目の現地検討
好天に恵まれた2日目の現地検討
実際にほ場内に立ち入って確認を行う
実際にほ場内に立ち入って確認を行う
徳之島ダム管理所内で説明を受ける参加者ら
徳之島ダム管理所内で説明を受ける参加者ら
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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