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地域だより

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最終更新日:2015年1月13日

種子島さとうきび・でん粉原料用さつまいも研修会
〜さとうきびと甘しょでもうける持続可能な生産体制づくり〜の開催について

2015年1月

鹿児島事務所 丸吉 裕子

 平成26年12月3日(水)、種子島こりーなにおいて、平成26年度種子島さとうきび・でん粉原料用さつまいも研修会(主催:種子島糖業振興会および種子島地区さつまいも・でん粉対策協議会)が開催された。同大会には、島内の生産者、甘しゃ糖製造事業者、でん粉製造事業者、JAおよび行政関係者など436名が参加した。

  種子島における平成26年産のさとうきびの生産見込みは、収穫面積がほぼ前年並みの2703ヘクタールであったのに対し、生産量は前年産比15%減の16万1032トンとなっており、10アール当たり収量(以下「単収」という)は6トン弱となっている(平成26年11月1日現在)。これは、今年の春先の低温と日照不足や6月の豪雨により、さとうきびの茎数や茎長が平年以下となり、加えて、10月の2度の台風襲来により茎の倒伏や折損、葉の裂傷や枯死(潮風害)の被害があったことが原因とされている。

 一方、でん粉原料用さつまいもの平成26年産の生産量は、前年産比28%減の2万4426トンであり、島内の関係者もこれまでにない不作の年と位置付けている。さとうきびと同じく、生育期の天候不順やさつまいもが肥大化する10月期の台風による潮風害などにより収量が低迷したものと分析されている。

  このような状況を受け、川下三業 種子島糖業振興会会長(中種子町長)は開会のあいさつで、「26年産のさとうきびは、生育期間中の天候不良と10月の台風襲来により非常に厳しい生産見込みであり、でん粉原料用さつまいもについても同様に、生産者の高齢化により生産者数・収穫面積がともに減少し、でん粉工場の操業率も低迷している。これは島内経済に大きな影響を及ぼす事態である。さとうきびとさつまいもの輪作体系の崩れに歯止めをかけ、製糖工場とでん粉工場の能力を最大限に活用できるよう生産量を向上させる必要がある。そのためには農家の皆さまのお力添えが不可欠であり、今回の研修会の内容を大いに参考にしていただきたい」と生産者に呼び掛けた。
川下三業 会長 あいさつ
川下三業 会長 あいさつ
 まず、公益社団法人鹿児島県糖業振興協会主催の「平成25年度さとうきび生産改善共励会」の表彰が行われた。今年度から設けられた地域(島別)の部では、単収と糖度が高く評価された種子島地区が鹿児島県糖業振興会理事長賞に選出され、鹿児島県熊毛支庁(以下「熊毛支庁」という)の新坂伸一 農林水産部長から賞状とトロフィーが授与された。団体の部では、中種子町のきりしまさとうきび生産組合が独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞を受賞し、当機構の飯悟 副理事長から表彰状(注)が授与された。きりしまさとうきび生産組合は、平成15年度の設立以来、土づくりによる生産性向上や、優良種苗の更新による糖度の向上に努め、農業機械の共同利用や各種作業の受託にも積極的に取り組むなど、地域の安定したさとうきび栽培の継続を目指して運営されていることが評価された。
鹿児島県糖業振興協会主催「平成25年度さとうきび生産改善共励会」鹿児島県糖業振興会理事長賞を授与される種子島地区代表生産者 砂坂浩一郎氏(右)
鹿児島県糖業振興協会主催「平成25年度さとうきび生産改善共励会」
鹿児島県糖業振興会理事長賞を授与される種子島地区代表生産者 砂坂浩一郎氏(右)
鹿児島県糖業振興協会主催「平成25年度さとうきび生産改善共励会」独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞を授与されるきりしまさとうきび生産組合 鎌田保幸代表(右)
鹿児島県糖業振興協会主催「平成25年度さとうきび生産改善共励会」
独立行政法人農畜産業振興機構理事長賞を授与されるきりしまさとうきび生産組合 鎌田保幸代表(右)
(注)この表彰状は、さとうきびと鹿児島県の伝統工芸にちなんだものである。台紙は、島内の新光糖業株式会社(製糖工場)から提供いただいたバガス(さとうきび圧搾工程後の残渣)と楮(こうぞ)を材料とした「さつま和紙」で、縁には大島紬の糸がちりばめられている。額は、鹿児島県産のヒノキを用い、釘やビスは一切使用しない昔ながらの工法により作られている。
鹿児島県熊毛支庁 梶原雄二 農政普及課長による機構理事長賞賞状説明
鹿児島県熊毛支庁 梶原雄二 農政普及課長による機構理事長賞賞状説明
また、飯副理事長は、「今年産のさとうきび・でん粉原料用さつまいもについては、相次ぐ台風襲来を受けながらも、島内の多くの関係者の皆さま方が意気消沈せずに一丸となって増産に向けた取り組みを推進されていると聞き、大変心強く感じる。さとうきび・でん粉原料用さつまいもの増産と地域経済の一層の活性化を願い、また、今後の製糖開始に当たっては、作業の安全と一本でも多くのさとうきび、そして一粒でも多くの砂糖が生産されることをお祈りする」と関係者の皆さまを激励した。  
当機構 飯悟 副理事長 お祝いの言葉
当機構 飯悟 副理事長 お祝いの言葉
 その後の研修会では、「さとうきびと甘しょでもうける持続可能な生産体制づくり」をテーマに、行政機関や生産者、生産組合の取り組みが紹介された。

 上門隆洋 熊毛支庁農政普及課農業振興係長は、「さとうきびとでん粉原料用甘しょを維持するために“今”必要なこと」と題して、島内のさとうきびとでん粉原料用さつまいも生産者の高齢化により収穫面積や生産量が減少傾向にある中で、 1)生産者自身が、さとうきびにあってはマルチ栽培や土づくりなど、でん粉原料用さつまいもにあっては早植えやバイオ苗由来の種芋利用などに努めること 2)受託組織が収穫作業のみならず適期の管理作業などを実施することで機能を強化すること 3)行政機関などが、地域の生産組合や新規就農者への支援を強化し生産維持のための道筋をつくっていくこと―が必要であると講演した。
 上門隆洋 熊毛支庁農政普及課農業振興係長による講演
 上門隆洋 熊毛支庁農政普及課農業振興係長による講演
 続いて、南種子町生産者の柳田陽介氏は、「100俵を取り続ける私の取組と今後の課題」と題して、直近3カ年のでん粉原料用さつまいもの平均収量10アール当たり97俵(約3.6トン)を維持する自身の経営の工夫を紹介した。同氏は、バイオ苗による種芋づくりや、さとうきびとさつまいもの輪作の合間の緑肥(イタリアングラスなど)のすき込み、家族で役割分担をしながらの適期管理作業、地域の生産者との管理作業の相互受委託などに取り組んでおり、今後は、地域の人々と共に法人化・集落営農の実現を視野に入れていると発表した。
南種子町生産者 柳田陽介氏による発表
南種子町生産者 柳田陽介氏による発表
 また、島内の2つの生産組合の組合長が、各組合の運営状況について発表した。

 西田勉 佐野さとうきび生産組合長は、平成7年の設立以来、ハーベスタやプランターなどの機械導入や組合員の分業体制による効率的な適期の管理作業の実施により、収穫面積の増加と平均単収の向上を実現していることについて発表し、分業体制の維持のため、オペレーターの育成・確保が課題であることや、行政の支援を受けながら農地集積に取り組みたい旨を説明した。

 梶屋良幸 町山崎営農組合長は、組合設立時に事務管理と会計処理システムを開発・導入し、基幹作業委託申込状況の管理から作業実施計画の作成、作業日誌の作成や委託料金の計算などを電算化することにより効率的な運営が果たされていることについて発表した。
西田勉 佐野さとうきび生産組合長による発表
西田勉 佐野さとうきび生産組合長による発表
梶原良幸 町山崎営農組合長による発表
梶原良幸 町山崎営農組合長による発表
 そして、行政機関から、次年産に向けた生産回復対策や生産振興に関わる制度の紹介が行われた。

 熊毛支庁作物研究室の大内田真氏は、今年産のさとうきびは収量や糖度低迷が懸念されているため、「次年度にむけたさとうきび生産回復対策」と題した対策方法を生産者に紹介した。春植え・株出しともに、補植やマルチ栽培などを心がけることで茎数が確保でき、生産回復が期待できると呼び掛けた。
熊毛支庁作物研究室の大内田真氏による講演
熊毛支庁作物研究室の大内田真氏による講演
 平峯之廣 鹿児島県農地中間管理機構農地部長は、農地中間管理事業をさとうきびおよびでん粉原料用さつまいもの分野で活用すれば、規模拡大志向を持つ生産者の面積拡大や、生産者間の長期貸借による計画的な生産を実現し、製糖工場やでん粉工場の適正な操業につながるとして、同事業の内容を紹介した。

 最後は、鮫島忠雄 種子島糖業振興会副会長のあいさつで研修会は幕を閉じた。
平峯之廣 鹿児島県農地中間管理機構農地部長による講演
平峯之廣 鹿児島県農地中間管理機構農地部長による講演
 今年度、天候不順や台風襲来により大きな被害を受けた種子島のさとうきび・でん粉原料用さつまいも生産だが、今回の研修会で講演および発表された内容をはじめ、行政や製糖工場・でん粉工場と生産者との間で優良事例や生産回復対策、今後の課題を共有し、それぞれの立場で、次年産以降の生産回復に向けて尽力している。島内の関係者が一丸となって取り組む姿には、これからの「持続可能な生産体制づくり」が大いに期待される。

 当機構としても、生産者の皆さまが安心してさとうきび・でん粉原料用さつまいもを生産することができるよう、また、製糖工場やでん粉工場が安定した経営を続けられるよう、今後も交付金交付業務の適切な運営に努めてまいりたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-8713