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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向 (2015年3月時点予測)

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最終更新日:2015年4月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向 (2015年3月時点予測)

2015年4月

ブラジル

 
【生産・輸出動向】
2014/15年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量はかなり大きく減少の見込み

 2014/15砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、前年度並みの889万ヘクタールの見込みである。主要生産地であるサンパウロ州では生育時期の干ばつが影響し、単収が低下するものとみられ、サトウキビの生産量は6億9249万トン(前年度比6.3%減)、砂糖の生産量は3700万トン(同6.3%減)と減産となる見通しである。砂糖の輸出量は減産が響き2349万トン(同13.2%減)と前年度に比べかなり大きく減少する見込みである(表2)。

 ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA(注1))が公表したブラジル中南部地域の製糖実績報告によると、2014/15年度の4月から2月までのサトウキビ生産量は、干ばつの影響により、年度後半のサトウキビ収穫量が平年の水準を下回ったことから、5億7107万トン(前年同期比4.2%減)とやや減少した。また、堅調な国内需要を反映し、エタノール生産量が261億913万リットル(同2.3%増)と増加したため、砂糖の生産量は3196万トン(同8.3%減)と減少した。

 政府は3月16日から、ガソホール政策を強化し、ガソリンに混合する無水エタノール(注2)の比率を25%から27%に引き上げる。これにより、エタノールは年間8億リットル(サトウキビ換算では1000万トン)の追加需要が見込まれるため、サトウキビの砂糖への仕向け量は今後も減少が見込まれる。

 また、UNICAによると、懸念されていた干ばつの影響が2月からの降雨により限定的であったことから、2015/16年度の中南部地域のサトウキビ生産量は、5億9800万トン(前年度比4.0%増)とやや増加するものの、エタノール向けが285億リットル(同11.3%増)と拡大することから、砂糖生産量は3100万トン(同3.1%減)と前年度に続き減産の見通しである。

 現地報道によると、多くの製糖工場(大半がエタノール製造設備を併設)の多くは、負債(注3)を抱える中、砂糖および原油の国際相場の下落を受けて収益が悪化しており、2015/16年度において、現在、稼働している370工場のうち10工場以上が資金難で一時閉鎖または途中で圧搾を中止する見込みとされている。製糖工場の稼働停止により、今後の砂糖生産の減少も懸念される。

(注1)ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)は、ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を所管している団体。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、ガソリンに混合して利用される無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除いた100%アルコールである。
(注3)2015年3月時点で総額854億レアル(約3兆2000億円)の負債がある。また、ドル建てで借入しているため、レアル安によりさらに負債額は増加している。
 

インド

 
【生産・輸出動向】
2014/15年度の砂糖生産量は前年度を上回るも輸出量は大幅に減少

 2014/15砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は前年度並みにとどまるものの、高単収苗の普及に伴い単収の向上が見込まれることから、サトウキビの生産量は3億4439万トン(前年度比0.9%増)の見込みである。天候に恵まれたことにより製糖歩留まりが向上することから、砂糖の生産量は2767万トン(同3.5%増)とやや増加する見込みである(表3)。

 また、インド砂糖製造協会(ISMA)によると、2月末時点の砂糖の生産量は、精製糖換算で1940万トン(前年同期比33.5%増)と大幅に増加している。これは、主要生産地であるマハーラーシュトラ州、ウッタル・プラデーシュ州、カルナータカ州の生産が前年度を上回っていることが要因である(図4)。

 一方、砂糖の輸出量は、170万トン(前年度比38.0%減)と大幅に減少する見込みである。このうち、粗糖は政府が在庫削減のために輸出補助金(注)を承認したことにより、107万トンと前年度並みとなるものの、精製糖は63万トン(同60.0%減)と大幅な減少が見込まれる。精製糖輸出の減少は、国際相場が下落する中、ブラジルの急激なレアル安の進行により輸出競争力を高め、インド産精製糖との価格差が1トン当たり約30ドルまで広がっていることによる。このため、製糖工場は政府に対して、精製糖についても輸出補助金を措置するよう要請している。

 こうした中、タイ製糖協会は、インドの粗糖に対する輸出補助金が世界の砂糖貿易をゆがめるとして、タイ政府に対して、世界貿易機関(WTO)に提訴するように働きかけている。一方、3月上旬にスイス・ジュネーブで開催されたWTO農業委員会でインド政府は単価を大幅に引き上げた理由について、粗糖の輸出で在庫を削減することで、製糖事業者が負債を減らし、農家に対するサトウキビ代金の支払い遅延を解消するためであり、貿易歪曲な意図はないと説明している。

(注)インド政府によると、粗糖の輸出補助金は2015年9月末までであり、対象数量は140万トン、補助金の単価は1トン当たり4000ルピー(8400円(2月末TTS:1ルピー=2.1円))である。なお、単価は、米ドル為替に連動して2カ月ごとに設定された前年度の平均より同1000ルピー程度高く設定された。
 

中 国

 
【生産・輸入動向】
2014/15年度の砂糖生産量は大幅に減少、輸入量は上限数量まで増加

 2014/15砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は182万ヘクタールと前年度並みであるものの、サトウキビの生産量は、最大生産地である広西自治区が天候不順により大幅な減産となったことから、1億1225万トン(前年度比10.6%減)と前年度に比べかなりの減少が見込まれる(表4)。この減産と製糖歩留まりの低下を受け、甘しゃ糖の生産量は1068万トン(同21.9%減)の見込みである。

 てん菜の収穫面積は前年度並みの25万ヘクタール、てん菜の生産量は1118万トン(同7.2%減)、てん菜糖の生産量は87万トン(同7.6%増)の見込みである。この結果、砂糖生産量は1155万トン(同20.2%減)と前年度に比べ大幅に減少する見込みである。

 また、中国砂糖協会によると、2月までの砂糖生産量(精製糖換算)は、729万トン(同21.0%減)と前年度を大幅に下回る水準となっている。これは、てん菜糖は前年度並みであるものの、広西自治区の甘しゃ糖生産量が489万トン(前年同期比20.2%減)と大幅に減少していることによる(図5)。

 一方、砂糖の輸入量は、政府の輸入制限(注)により前年度をかなり下回るものの、生産量の減少を受けて、輸入制限量の上限水準である380万トン(同6.3%減)となる見込みである。

(注)中国政府は2014年11月1日、関税割当(精製糖換算195万トン、枠内関税15%)の枠外(税率50%)で、安価な精製糖の輸入量が増加した結果、国内価格が下落して国内産砂糖の在庫が増加する事態となっていることを受け、輸入割当制度を見直し、枠外で輸入できる業者に登録を義務付けることとした。さらに、2015年1月、枠外数量の上限を190万トンと設定し、実質385万トンの輸入数量の上限を定めた。
 
 

E U

【生産・輸入動向】
2014/15年度の砂糖生産量はかなり増加、輸入量は大幅に減少の見込み

 2014/15年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積、生産量ともに前年度並みと見込まれるものの、EUの主要生産国であるフランス、ドイツ、ポーランド、英国、オランダが天候に恵まれ、生育や根中糖分が前年度より良かったことから、てん菜糖の生産量は1860万トン(前年度比12.7%増)とかなり増加し、生産割当数量(精製糖換算で1353万トン)を超える見込みである(表5)。なお、生産割当数量を超えた分は、非食用(エタノールや工業製品)や輸出用などに向けられる。

 砂糖の輸入量は、増産により244万トン(同38.7%減)と前年度を大きく下回る見込みである。
 
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