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平成26年産てん菜の生産状況について

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最終更新日:2015年6月10日

平成26年産てん菜の生産状況について

2015年6月

北海道農政部生産振興局農産振興課

【要約】

 平成26年産のてん菜は、作付面積が減少する中、生育が順調に進み、前年を上回る生産量となった。平均根中糖分も高く、5年ぶりに60万トンを超える産糖量となった。

1. 最近のてん菜の作付動向

 てん菜は、北海道の畑作経営の輪作体系を維持する上で基幹的な作物であるとともに、てん菜糖業は地域経済の維持・発展に重要な役割を担っており、作付面積は過去20年にわたり7万ヘクタール前後と安定して推移していた。

 しかし、近年は生産者の高齢化や経営規模の拡大に伴う労働力不足、他作物への転換、また近年の天候不順の影響などにより不作が続いていることなどによって、作付面積は減少傾向で推移している(図1)。
 

2.26年産てん菜の生育概況

 播種作業は平年並に行われ、移植作業も、降雨や降雪があったが、4月下旬の気温が高く降雨が少なかったことから順調に進み、移植期は平年より3日早くなり、特に降雨が少なかった上川地方や胆振地方では、一週間程度早かった(表1)。

 5月以降も気温が高めに推移したことから生育は順調に進み、7月の高温・少雨により根部の肥大が緩慢となり生育が一時停滞したが、草丈、葉数、根周はほぼ平年並に推移した。8月は、台風11号から変わった温帯低気圧の影響で大雨となり、一部で冠水や浸水したほ場が見られたが、根周は平年をやや上回った。

 9月の天候は、おおむね平年並に推移し、気温の日較差も大きくなり、10月15日現在の根周は平年並で、収量は、道内のほとんどの地域で平年を上回った。

 病害虫の発生状況について、ヨトウガの発生量は平年より多く、褐斑病は全道的に平年並の発生量であったが、十勝地方では初発が早く発生量も多かった。また、西部萎黄病の発生が十勝地方で7月、オホーツク地方で9月ごろから目立った。
 

3.26年産てん菜の生産状況

 平成26年産てん菜の作付面積は、前年産と比べ954ヘクタール減少し5万7234ヘクタール、10アール当たり収量は332キログラム増加し6232キログラム(平年比103%)、生産量は13万1000トン増加し356万7000トン(前年比104%)となった。また、平均根中糖分は17.2%と、前年産より1ポイント向上し、5年ぶりに17%を超える高い糖分となった(表2図2)。
 
 品種別の作付構成は、「リッカ」(19.9%)、「パピリカ」(15.7%)、「かちまる」(12.1%)、「クリスター」(11.0%)、「リボルタ」(10.8%)の順となっており(表3)、前年より面積が増加した品種は、褐斑病の抵抗性が優れる「リボルタ」、「ラテール」および「アンジー」、糖量の多い「あままる」などとなっており、近年認定された優良品種への転換が進んでいる。
 
 てん菜の作付戸数は全道的に減少傾向が続いており、平成26年は7472戸となり、10年前(平成17年)と比べ2648戸減少(26%減少)となった(表4)。また、1戸当たりの作付面積は、平成26年は1戸当たり7.7ヘクタールと、10年で1ヘクタール増加した。このような作付規模の拡大や労働力不足などに対応するため、近年では、春の育苗・移植作業に要する労働力を大幅に削減できる直播栽培に取り組む地域も増加しており、平成26年は前年より1822ヘクタール増加の1万114ヘクタール(作付面積の17.7%)となった(図3)。
 

4. てん菜糖の生産状況

 北海道内の製糖工場は、3社8工場が操業している。平成26年産原料処理量は356万7000トンで前年比104%となり、また前年産よりも歩留まりが高く、砂糖生産量は60万8000トンで前年比110%であった(表5)。
 

おわりに

 平成26年産てん菜は、収量・根中糖分ともに平年を上回り、また、経営所得安定対策における畑作物の直接支払交付金の見直しにより、てん菜の交付単価が引き上げられたことも相まって所得が確保され、生産者の作付意欲の向上につながっている。

 しかしながら、砂糖需要の低迷や農産物の貿易ルールに関する国際交渉の進展など、てん菜・てん菜糖をめぐる情勢が変化する中で、輪作体系上重要な基幹作物として、さらには地域経済への影響も考慮し、てん菜の作付けの安定化を図ることが重要であり、生産者団体、製糖業者、行政などの関係者が連携しながら、低コストで省力的な持続的生産体制の確立や、糖量の多い耐病性品種の導入などの取り組みを推進していくこととしている。
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