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鹿児島県における平成26年産さとうきびの生産状況および実績について

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最終更新日:2015年7月10日

鹿児島県における平成26年産さとうきびの生産状況および実績について

2015年7月

公益社団法人鹿児島県糖業振興協会

【要約】

 鹿児島県の平成26年産さとうきびは、収穫面積が前年比108%の1万138ヘクタールに増加したものの、5月以降の低温・日照不足の影響や度重なる台風被害により、生産量は前年比93%の47万295トン、甘しゃ糖度も前年産より1.17度低い12.78度となるなど、収量・品質ともに厳しい状況にあり、不作からの回復には至らなかった。

1. さとうきびの位置付け

 さとうきびは、他の作物に比べて、台風や干ばつによる影響に強く、鹿児島県南西諸島の約7割の農家が生産している基幹作物であり、製糖業など関連産業とともに、地域経済を支える重要な役割を担っている。

 さとうきびの平成25年農業産出額は、前年の約91億円から約22%増加し、約111億円で耕種部門の第4位となっている(1位:米、2位:さつまいも、3位:茶(生葉))。

 鹿児島県では、国が17年12月に策定した「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づき、各島および県段階における生産目標や取り組み方向を示した「さとうきび増産計画」を18年6月に策定し、27年産を目標年として、品目別経営安定対策に対応した大規模経営体など担い手の育成などによる経営基盤の強化、機械化や地力増進などによる生産基盤の強化、病害虫防除対策の推進や優良品種の育成・普及などによる生産技術対策など、各般の施策を推進している。

 また、23年産以降の不作からの早期の生産回復・増産を図るため、関係機関・団体と一体となり、さとうきび増産基金やその他の補助事業などを活用して、面積確保・品質向上対策、メイチュウの効果的な防除体系確立・普及、製糖工場の施設整備などを支援してきた。

2. 平成26年産さとうきびの生育状況

(1)種子島地域
ア. 生育初期〜分けつ期

 生育初期は、比較的、気温・日照条件に恵まれ、順調に発芽(萌芽)・生育したものの、5月以降は、低温・日照不足により生育が遅れ、茎数も少なかった。

イ. 伸長期
 梅雨明け以降も、低温・日照不足や台風襲来の影響で、茎伸長は緩慢に推移した。

ウ. 登熟期
 10月の2回の台風被害(潮風害、倒伏など)などにより登熟が進まず、その後も低温の影響などを受け、製糖期を通して糖度は上昇しなかった。

(2)奄美地域
ア. 生育初期〜分けつ期

 3〜4月の少雨、5月以降の低温・日照不足などの影響を受け、発芽(萌芽)や初期生育(茎伸長、分けつ)は、島ごと、作型ごとにばらつきが見られた。

イ. 伸長期
 梅雨明け以降の気温上昇に伴い、茎伸長は回復したものの、春植えでは茎数が少ない状況が続いた。

ウ. 登熟期
 10月の2回の台風被害(潮風害、倒伏など)などにより、製糖初期の糖度は低く推移したが、2月以降、徐々に糖度も上昇するなど、品質は回復した。

3. 平成26年産さとうきびの生産実績

(1)県全体
 収穫面積は1万138ヘクタール(前年比108%)、生産量は47万295トン(同93%)となり、10アール当たり収量は4639キログラム(平年比79%)であった(図1)。生産量、10アール当たり収量ともに、さとうきび増産計画の目標(平成27年産)の7割程度となっている。
 なお、生産量の99%(46万5011トン)は、分みつ糖原料用として6社7工場が集荷している。
 
 栽培型別の収穫面積は、春植えが2190ヘクタール(構成比22%)、株出しが6168ヘクタール(同61%)、夏植えが1780ヘクタール(同18%)であった(図2)。株出しの割合は、さとうきび増産計画における目標の58.8%を約2ポイント上回っている。
 
 品種別の収穫面積は、農林8号が51%を占め、次いで農林23号の19%、農林22号の16%、農林17号の4%であった(図3)。平成16年産で約7割を占めていた農林8号が減少し、各地域の気象条件などに適した、新たな品種への移行が進みつつある(表1)。
 
 
(2)各島の状況
ア. 種子島(西之表市、中種子町、南種子町)

 収穫面積は2705ヘクタール(前年比100%)で、生産量は14万1641トン(同75%)となり、10アール当たり収量は5236キログラム(平年比73%)であった(表2)。
 株出しの比率は71%で、島別では最も高い。品種別では、農林8号が79%、早期高糖性の農林22号が16%を占める(図4)。

イ. 奄美大島(奄美市他3町村)
 収穫面積は642ヘクタール(前年比107%)、生産量は2万2144トン(同76%)となった(表2)。10アール当たり収量は3449キログラム(平年比71%)で、島別では最も平年比が低かった。
 株出しの比率は64%で、品種別では、農林22号が43%、農林17号が21%、農林23号が19%を占める(図4)。

ウ. 喜界島(喜界町)
 収穫面積は1392ヘクタール(前年比108%)、生産量は6万5325トン(同81%)となり、10アール当たり収量は4693キログラム(平年比73%)であった(表2)。
 株出しの比率が60%を占める一方、夏植えの比率も30%と高い。品種別では、農林8号が42%、農林23号が29%を占める(図4)。

エ. 徳之島(徳之島町、天城町、伊仙町)
 収穫面積は3603ヘクタール(前年比113%)で県全体の36%を占め、島別では最も多い(表2)。生産量は前年比105%の15万1167トンに増加したが、10アール当たり収量は4195キログラムと平年の8割程度にとどまった。
 株出しの比率は56%で、品種別では、農林8号が49%、農林23号が30%を占める(図4)。

オ. 沖永良部島(和泊町、知名町)
 収穫面積は1386ヘクタール(前年比120%)、生産量は6万7049トン(同137%)と前年産から大きく増加した(表2)。10アール当たり収量は4839キログラム(平年比89%)であった。
 株出しの比率は50%と低い。夏植えが39%を占め、島別では最も比率が高い。品種別では、農林8号が45%、農林22号が40%を占める(図4)。

カ. 与論島(与論町)
 収穫面積は410ヘクタール(前年比99%)、生産量は2万2968トン(同143%)、10アール当たり収量は5607キログラム(平年比118%)と、前年産から大きく回復した(表2)。
 株出しの比率は70%を占め、品種別では、農林23号が66%を占める(図4)。
 
(3)ハーベスタによる収穫の状況
 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、国庫補助事業などを活用してハーベスタの導入が進められている。
 また、県では耐用年数を経過したハーベスタの機能向上(長寿命化のための整備)の取り組みを平成23年度から実施しており、23年度に10台、24年度に14台、25年度に5台、26年度に8台と、これまでに37台を支援した。
 26年産では、全体の87%に当たる8835ヘクタールでハーベスタ収穫が行われた。島別では沖永良部島が93%と最も高く、与論島が60%と最も低い。 

4. 製糖工場の操業状況

 分みつ糖製造は、1島1社の体制となっており、6島6社(7工場)が操業している。

 分みつ糖工場における平成26/27年期の原料処理量は46万5011トンで、前年から3万7971トン減少した(表3)。買入糖度は12.78度で、前年から1.17度低くなった。
 

おわりに

 鹿児島県のさとうきびは、平成22年産まで「さとうきび増産計画」に沿って生産拡大が進み、計画をおおむね達成する実績で推移していたが、23年産以降4年連続で平年単収を大きく下回る不作となった。

 このため、当協会では、県とともに、関係機関・団体と一体となり、各種補助事業などを活用して、早期の生産回復に向けて、収穫面積の確保や基本技術の励行などによる単収向上対策を推進するとともに、農業機械の導入、製糖関連施設の整備などへの支援など、各般の取り組みを積極的に推進しているところである。

 これらの取り組みが、1日でも早い成果となり、さとうきびの生産が回復し、生産者と製糖工場の経営が安定するよう、今後とも、関係機関・団体と一体となり努めていきたい。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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