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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向 (2015年6月時点予測)

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最終更新日:2015年7月10日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向 (2015年6月時点予測)

2015年7月

 
【生産・輸出動向】
2014/15年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はかなり大きく減少の見込み

 2014/15砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、864万ヘクタール(前年度比2.8%増)とわずかに増加する見込みであるが、主要生産地であるサンパウロ州では、生育時期の干ばつが影響し単収が低下したことから、サトウキビの生産量は6億2432万トン(同4.1%減)、砂糖の生産量は3824万トン(同5.6%減)とやや減少する見込みである。このため、砂糖の輸出量は減産が響き、2474万トン(同13.3%減)とかなり大きく減少する見込みである(表2)。

 一方、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA(注1))が5月下旬に発表した2015/16年度の生産予測によると、サトウキビの単収は、生育当初の干ばつの影響により低下が懸念されていたが、収穫前に十分な降雨がもたらされたことから、ブラジル中南部地域のサトウキビ生産量は、5億9000万トン(前年度比3.3%増)とやや増加が見込まれている。しかしながら、サトウキビの茎長が平年以上となっており製糖歩留まりの低下が予想され、ガソリンに混合する無水エタノール比率の引き上げによる需要増によりエタノール仕向け量の増加が見込まれることから、砂糖生産量は3180万トン(同0.6%減)とほぼ前年度並みとなる見通しである。

 なお、同予測によると、ブラジル中南部地域のエタノール生産量は2728万キロリットル(前年度比4.3%増)とやや増加する見込みであり、このうち、無水エタノールは1095万キロリットル(同1.8%増)、含水エタノールは1633万キロリットル(同6.1%増)と見込まれる(注2)。一方で、国内需要の高まりから、輸出量は100万キロリットル程度に減少すると見込まれる。

 また、UNICAが発表した、5月末までの2015/16年度の製糖実績報告によると、ブラジル中南部地域の4〜5月のサトウキビ生産量は、1億1428万トン(前年同期比2.6%減)とわずかに減少し、砂糖の生産量は478万トン(同12.0%減)とかなりの減少となっている。これは、長雨による収穫作業の遅れやサトウキビの品質の低下に加え、経営状況が悪化している製糖企業の操業開始の遅れが影響しているものと考えられる。一方で、エタノール生産量は、堅調な国内需要を反映し、494万キロリットル(同1.7%増)と増加している。

(注1)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除いたアルコール100%で、ガソリンに混合して利用される。
 
 
【生産・輸出動向】
2014/15年度の砂糖生産量は前年度を大幅に上回るも輸出量は大幅に減少

 2014/15砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は前年度並みにとどまるものの、高単収苗の普及に伴い単収の向上が見込まれることから、サトウキビの生産量は3億7628万トン(前年度比5.6%増)とやや増加する見込みである。天候に恵まれたことにより製糖歩留まりが向上していることから、砂糖の生産量は3052万トン(同16.2%増)と大幅に増加する見込みである(表3)。

 一方で、インド砂糖製造協会(ISMA)によると、5月末時点の砂糖の生産量は、主要生産地であるマハーラーシュトラ州、ウッタル・プラデーシュ州およびカルナータカ州で前年同期を上回っており、精製糖換算で2796万トン(前年同期比16.3%増)と大幅に増加している(図4)。特に、マハーラーシュトラ州は過去最高の砂糖生産量が見込まれており、同協会は、2014/15年度の国内砂糖生産量は、史上最高を記録した2006/07年度に近い水準になると予想している。

 また、砂糖の輸出量は、200万トン(前年度比27.3%減)と大幅に減少する見込みである。政府は2015年9月まで粗糖に対する輸出補助金(注1)を措置していることから、粗糖の輸出量は大幅には減少しないという見方もあるが、国際価格が低迷していることから、今後も砂糖の輸出は伸び悩むことが予測される。

 政府は、国内外の砂糖価格が低迷する中、国内の砂糖在庫を削減し、負債を抱え生産者への原料代支払いが滞っている国内の企業を支援するため、 これまで、 1)砂糖の輸入関税の引き上げ(25%から40%)、 2)粗糖輸入に係る事前許可制度(ALS(Advanced Licensing Scheme))(注2)における再輸出までの期間の短縮(18カ月以内から6カ月以内)、 3)砂糖の副産物である糖みつを原料とするエタノールに係る消費税の非課税化(次年度(2015年10月)から)、といった対策の実施を決定してきた。

 加えて、政府は、生産者への原料代支払いを促進するため、60億ルピー(126億円(5月末TTS:1ルピー=2.10円))の予算を講じ、国内の企業に対し、無利息の貸し付けを行うことを発表している。

(注1)インド政府によると、粗糖の輸出補助金は2015年9月末までの措置としており、対象数量は140万トン、単価は1トン当たり4000ルピー(8400円(5月末TTS:1ルピー=2.10円))である。なお、単価は、米ドル為替に連動して2カ月ごとに設定された前年度の平均より同1000ルピー程度高く設定された。
(注2)精製後の輸出を条件に粗糖の輸入関税を免除する制度。
 
 
【生産・輸入動向】
2014/15年度の砂糖生産量は大幅に減少、輸入量は大幅に増加

 2014/15砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積が141万ヘクタール(前年度比13.2%減)とかなり減少したことに加え、最大生産地である広西自治区が、天候不順により大幅な減産となることから、サトウキビ生産量は8064万トン(同24.2%減)と大幅な減少が見込まれる(表4)。この減産により、甘しゃ糖の生産量は1034万トン(同23.9%減)と大幅に減少する見込みである。

 他方、てん菜の収穫面積は13万ヘクタール(同4.1%減)、てん菜の生産量は642万トン(同0.2%減)、てん菜糖の生産量は80万トン(同1.1%減)の見込みである。この結果、砂糖生産量は1114万トン(同22.6%減)と大幅に減少する見込みである。

 中国砂糖協会によると、5月までの砂糖生産量(精製糖換算)は、1052万トン(前年同期比21.0%減)と前年同期を大幅に下回る水準となっている。これは、てん菜糖生産量は前年度並みであるものの、広西自治区の甘しゃ糖生産量が634万トン(同25.9%減)と大幅に減少していることによる(図5)。

 中国気象局は、エルニーニョの発生に伴い、南部では激しい降雨が予想される一方で、北部では干ばつに近い状態になり得るという今夏の気象予測を発表した。すでに今春は、広西自治区と広東省で深刻な干ばつが発生しており、砂糖生産への影響が懸念される。

 中国政府は2015年4月、国際価格が下落傾向にある中で国内価格を安定させるべく、2015年の輸入量を350万トンに抑制することを発表し、国内企業の輸入動向に対する統制をさらに強めることとした(注)

 しかし、国内需要量から見た砂糖の輸入必要量として533万トン(前年度比47.8%増)が見込まれており、輸入量を抑制しつつ国内需要量を補うためには、政府が備蓄砂糖を放出するなどの措置が必要になると予想される。

 一方、現地報道によると、政府は先頃、2015年〜2020年までのサトウキビ生産推進計画を策定し、2020年までにサトウキビ生産量を1億400万トンに拡大し、その実現に向け、かんがい面積の拡大や機械化による労働費の削減などを推進することとしている。同計画では、2020年までに国内の砂糖需要量が1800万トンに達すると予測しており、このうち300万トンは輸入で補う必要があるとしている。

(注)中国政府は2014年11月1日、関税割当(精製糖換算195万トン、枠内関税15%)の枠外(税率50%)で、安価な精製糖の輸入量が増加した結果、国内価格が下落して国内産砂糖の在庫が増加する事態となっていることを受け、輸入割当制度を見直し、枠外で輸入できる業者に登録を義務付けることとした。さらに、2015年1月、枠外数量の上限を190万トンと設定し、実質385万トンの輸入数量の上限を定めていた。
 
 
【生産・輸入動向】
2014/15年度の砂糖生産量はかなり大きく増加、輸入量は大幅に減少の見込み

 2014/15年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は155万ヘクタール(前年度比3.3%増)とやや増加し、播種時の天候に恵まれたことから、てん菜生産量は1億1807万トン(同14.1%増)とかなり大きく増加した(表5)。また、てん菜糖の生産量は1888万トン(同12.1%増)とかなり大きく増加し、生産割当数量(精製糖換算で1353万トン)を超える見込みである。なお、生産割当数量を超えた分は、非食用(エタノールや工業製品)や輸出用などに向けられる。

 砂糖の輸入量は、生産量の増加を受けて305万トン(同22.2%減)と前年度を大幅に下回る見込みである。

 なお、2015/16年度の生産については、適度な気候に恵まれ、播種はおおむね平年並みに終了したものの、2014/15年度の期末在庫の増加による砂糖価格下落への不安から、生産者がてん菜栽培面積を縮小していることなどから、減少が予想されている。
 
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