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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2015年11月時点予測)

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最終更新日:2015年12月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2015年11月時点予測)

2015年12月

 
2014/15年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はかなり減少の見込み
 LMC International(農産物の需給などを調査する英国の大手民間調査会社)の2015年11月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2014/15砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビの収穫面積は、879万ヘクタール(前年度比4.5%増)とやや増加となるが、主要生産地であるサンパウロ州で、生育時期の干ばつの影響により単収が低下したことから、生産量は6億3213万トン(同3.2%減)となり、砂糖の生産量は3819万トン(以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算。同5.8%減)とやや減少する見込みである。また、砂糖の輸出量は減産が響き、2487万トン(同12.9%減)とかなり減少する見込みである(表2)。

2015/16年度の砂糖生産量はわずかに減少、輸出量は前年度並みの見込み
 2015/16年度のサトウキビの収穫面積は844万ヘクタール(前年度比4.0%減)とやや減少するものの、生産量は6億5000万トン(同2.8%増)と、わずかな増加が見込まれる。一方、エルニーニョ現象の影響とされる過度な降雨でサトウキビの出穂現象が見られており、産糖量の減少が懸念されることから、砂糖の生産量は3707万トン(同2.9%減)とわずかに減少するものの、輸出量は2480万トン(同0.3%減)と前年度並みの見込みである。

 また、ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注1)が発表した2015年4〜10月の生産実績によると、ブラジル中南部地域のサトウキビの生産量は、5億1882万トン(前年同期比0.7%増)とほぼ前年度並みであるが、砂糖の生産量は2752万トン(同6.7%減)とかなりの減少となった。これは、過度な降雨により、サトウキビ1トン当たりの産糖量が53.0キログラム(同7.3%減)と減少していることに加え、企業が砂糖よりも短期間で利益を回収できるエタノールへの仕向け量を増やしていることが影響しているものと考えられる。

 同報告によると、4〜10月のエタノールの生産量は、2370万キロリットル(前年同期比1.8%増)となっている。また、10月の含水エタノール(注2)の国内販売量は、170万キロリットル(前年同月比36.4%増)となり、輸出量も含めた4〜10月のエタノールの販売数量は、1777万キロリットル(前年同期比25.4%増)に達している。

 なお、9月末に、国営石油公社ペトロブラスがガソリンの卸売価格を6%引き上げたことから、さらなるエタノールの需要増が予想されている。

 現地報道によると、国立社会経済開発銀行(BNDES) は、サトウキビの生産性向上を目的とする融資策(Prorenova)(注3)に対し、15億レアル(457億5000万円(10月末日TTS:1レアル=30.5円))の追加融資を承認した。これにより、今後、40万ヘクタールのサトウキビほ場が拡大される見込みである。

(注1)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。
(注2)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注3)サトウキビの新植促進や新規ほ場拡大を目的に、2012年1月より、政府が講じている融資策。
 
 
2014/15年度の砂糖生産量は大幅増も輸出量はかなり減少の見込み
 2014/15砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、519万ヘクタール(前年度比0.2%減)と前年度並みにとどまるものの、高単収品種の普及に伴い単収の向上が見込まれることから、生産量は3億7389万トン(同4.9%増)とやや増加する見込みである。また、天候に恵まれ製糖歩留まりが向上していることから、砂糖の生産量は3052万トン(同16.2%増)と大幅に増加する見込みである(表3)。

 一方、砂糖の輸出量は、政府が粗糖に対する輸出補助金(注1)を措置しているものの、国際価格が低迷していることから、248万トン(前年度比13.6%減)とかなり減少する見込みである。

2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量はかなり増加の見込み
 2015/16年度は、国内製糖企業による生産者への原料代の支払いが滞っていることから、サトウキビの収穫面積は、515万ヘクタール(前年度比0.7%減)と前年度並みにとどまる上、株出しほ場の増加により単収の低下が懸念されることから、生産量は3億5278万トン(同5.6%減)、砂糖の生産量も2857万トン(同6.4%減)と、ともに減少が見込まれる。

 インド砂糖製造協会(ISMA)が先ごろ発表した2015/16年度の生産予測によると、サトウキビの作付面積は528万ヘクタール(前年度比0.4%減)とほぼ前年度並みであるが、砂糖の生産量は精製糖換算で2700万トン(同4.6%減)とやや減少する見込みである。これは、主要生産地であるウッタル・プラデーシュ州、タミルナードゥ州の砂糖の生産量は増加しているものの、最大生産地であるマハーラーシュトラ州が7月から8月にかけて深刻な雨不足に見舞われ、製糖歩留まりの低下懸念により、同州の砂糖の生産量が900万トン(同14.3%減)とかなり大きな減少が見込まれるためである(図3)。

 一方、砂糖の輸出量は、265万トン(前年度比6.9%増)とかなり増加する見込みである。これは、政府が国内価格を安定させるため、高水準にある余剰在庫を積極的に輸出に仕向けようとしていることによると考えられる。輸出量は、ビハール州選挙後の11月中旬に発表されるとみられている輸出促進政策(注2)の詳細によっては、今後上方修正される可能性があると思われる。さらに現地報道によると、政府は、国内販売される砂糖への課税率を引き上げ、サトウキビ生産者へ直接支払う補助金の財源に当てる案を検討しており、これに関しても、ビハール州選挙後に何らかの動きがあるものとみられている。

(注1) インド政府によると、粗糖の輸出補助金は2015年9月末までの措置としており、対象数量は140万トン、単価は1トン当たり4000ルピー(8040円(10月末TTS:1ルピー=2.01円))である。なお、単価は、米ドル為替に連動して2カ月ごとに設定された前年度の平均より同1000ルピー程度高く設定された。
(注2) インド政府が、負債に苦しむ国内製糖企業に対して新設した救済措置。輸出促進を図るため、2015/16年度の輸出割当数量を400万トンと設定し、過去3年の平均生産量を基に各工場に割り当てる。
 
2014/15年度の砂糖生産量は大幅減、輸入量は大幅増の見込み
 2014/15砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビの収穫面積は、141万ヘクタール(前年度比13.2%減)とかなり減少した。また、最大生産地である広西チワン族自治区が、天候不順により大幅な減産となったことから、生産量は8226万トン(同22.7%減)と大幅な減少が見込まれる(表4)。この減産により、甘しゃ糖の生産量は1061万トン(同21.9%減)と大幅に減少する見込みである。

 他方、てん菜の収穫面積は13万ヘクタール(前年度比4.1%減)、生産量は642万トン(同0.2%減)、てん菜糖の生産量は80万トン(同1.1%減)の見込みである。この結果、砂糖の生産量は1141万トン(同20.7%減)と大幅に減少する見込みである。国際価格が下落傾向にある中、精製糖の輸入が増加したことにより、砂糖の輸入量は599万トン(同66.2%増)と大幅に増加する見込みである。

2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少の見込み
 2015/16年度は、砂糖の国際価格の低迷を受け、生産者が他作物への転換を図る動きが見られることや、サトウキビ新植のための十分な投資ができないことなどから、サトウキビの収穫面積は117万ヘクタール(前年度比17.5%減)、生産量は7137万トン(同13.2%減)と、ともにかなり大きく減少する見込みである。また、てん菜の収穫面積は12万5000ヘクタール(同3.6%減)、生産量は624万トン(同2.7%減)と減少する見通しである。この結果、砂糖の生産量は、993万トン(同13.0%減)とかなりの減少が見込まれ、輸入量は648万トン(同8.2%増)とかなりの増加が見込まれる。
 
2014/15年度の砂糖生産量はかなりの増加、輸入量は大幅減の見込み
 2014/15年度(10月〜翌9月)のてん菜の収穫面積は、155万ヘクタール(前年度比3.8%増)とやや増加し、播種時の天候に恵まれたことから、生産量は1億1939万トン(同14.6%増)とかなり増加する見込みである(表5)。また、砂糖の生産量は1897万トン(同11.0%増)とかなり増加し、生産割当数量(精製糖換算で1353万トン)を超える見込みである。なお、生産割当数量を超えた分は、非食用(エタノールや工業製品)や輸出用などに向けられる。砂糖の輸入量は、生産量の増加を受けて324万トン(同17.5%減)と前年度を大幅に下回る見込みである。

2015/16年度の砂糖生産量は大幅減、輸入量は大幅増の見込み
 2015/16年度については、播種は天候に恵まれ、おおむね平年並みに終了したものの、在庫の増加による砂糖価格下落への懸念から、てん菜の収穫面積は134万ヘクタール(前年度比13.7%減)とかなりの減少が予想される。また、夏の熱波の影響によりポーランドやドイツで減産するとの見通しから、EU全体では、てん菜の生産量は9273万トン(同22.3%減)、砂糖の生産量は1526万トン(同19.5%減)と、ともに大幅な減少が見込まれる。これを受け、砂糖の輸入量は、455万トン(同40.6%増)と大幅な増加が予想される。
 
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