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4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向

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最終更新日:2016年10月11日

4. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2016年9月時点予測)

2016年10月

2016/2017年度の見通し

2015/16年度の砂糖生産量はやや減少、輸出量はわずかに増加の見込み
 2015/16砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、900万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれ、単収の向上により、生産量は6億6559万トン(同4.9%増)と、やや増加が見込まれる(表2)。しかし、エルニーニョ現象の影響とされる過度な降雨により産糖量が減少していることから、砂糖生産量は3519万トン(同5.7%減)とやや減少が見込まれる。

 一方、世界の主要生産国で減産が見込まれる中、砂糖需要は高まっていることから、輸出量は2512万トン(同1.9%増)とわずかな増加が見込まれる。

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、輸出量は前年度並みの見込み
 2016/17年度のサトウキビ収穫面積は、収穫期の天候不順などにより前年度に収穫しなかったものも含め、959万ヘクタール(前年度比6.6%増)とかなりの増加が見込まれるものの、単収の低下が見込まれることから、生産量は6億8195万トン(同2.5%増)と、わずかな増加にとどまると見込まれる。

 一方、2015年末ごろから国内の含水エタノール(注1)の価格が高騰したためエタノール需要は縮小しており、国際砂糖価格の上昇と相まって、製糖企業がサトウキビの砂糖への仕向け割合を増やしていることや製糖歩留まりが向上していることなどから、砂糖生産量は、3920万トン(同11.4%増)とかなりの増加が見込まれている。世界の砂糖需要が引き続き高水準と見込まれる中、輸出量は前年度並みを維持し、2490万トン(同0.9%減)と見込まれる。

 また、ブラジル国家食糧供給公社(CONAB)(注2)が8月中旬に公表したサトウキビなどの2016/17年度生産見通しによると、同年度のサトウキビ栽培面積は897万ヘクタール(同3.7%増)とやや増加し、サトウキビ生産量も6億8477万トン(同2.9%増)とわずかな増加が見込まれる。これには、収穫期の天候不順などにより前年度に収穫しなかったサトウキビの収穫も考慮されていると考えられる。また、砂糖生産量は3996万トン(同19.3%増)と大幅に増加し、過去最高と見込まれるのに対し、エタノール生産量は2787万キロリットル(同8.5%減)とかなりの減少が見込まれる。

 ブラジルサトウキビ産業協会(UNICA)(注3)が発表した2016年4月〜8月の生産実績報告によると、同国中南部地域のサトウキビ圧搾量は、3億9366万トン(前年同期比6.3%増)とかなり増加した。砂糖生産量も2242万トン(同17.1%増)と大幅に増加した。これは、サトウキビ圧搾量の増加に加え、サトウキビ1トン当たりの産糖量が56.9キログラム(同10.1%増)とかなり増加していることや、企業がサトウキビの砂糖への仕向け割合を増やしているためとみられる。なお、同報告によると、同期間のエタノール生産量は、1646万キロリットル(同0.1%増)と前年度並みとなった。
 
 一方、同期間の輸出量も含めたエタノールの販売量は、1174万キロリットル(同5.2%減)となった。このうち、含水エタノールの国内販売量は、664万キロリットル(同13.9%減)と、エタノールのガソリンに対する価格優位性が低下したことなどから、かなり減少した。

 現地報道によれば、連邦政府は、2013年5月から免除していたエタノールの売上1リットルに対する0.12レアル(4円(8月末日TTS:1レアル=32円))の社会負担税(PIS/COFINS)を、2017年1月から再び導入する方針である。国際砂糖価格の上昇などによって、砂糖・エタノール企業の経営状況が改善傾向にあることを背景に、政府は再導入に踏み切るものと思われる。2015年2月にガソリンに対する国税の燃料税(CIDE)が再導入され、エタノールのガソリンに対する価格優位性は高まったが、この社会負担税が再び導入されれば、エタノールとガソリンの価格差は縮小し、エタノール需要の低下が予想されることから、今後、製糖企業がサトウキビの砂糖への仕向け割合をさらに増加させることが予想される。

(注1)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注2)主要作物の生産状況報告や予測などを行っているブラジル農務省直轄の機関。
(注3)ブラジル全体の砂糖生産量の9割を占める中南部地域を区域としている団体。

表2

ブラジルの砂糖の輸出量および輸出単価の推移

2015/2016年度の見通し

2015/16年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量は大幅増の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は506万ヘクタール(前年度比0.1%減)と前年度並みと見込まれるものの、生産量は3億5889万トン(同0.9%減)と、干ばつの影響によりわずかな減少が見込まれる(表3)。産糖量の減少も見られることから、砂糖生産量は2720万トン(同11.2%減)と、かなりの減少が見込まれる。
 
 砂糖輸出量は、402万トン(同54.1%増)と大幅な増加が見込まれている。この背景には、中央政府が6月中旬、国内供給の確保および高騰している国内砂糖価格の統制のため、砂糖の輸出関税(20%)の導入を決定したものの、7月上旬に、粗糖を輸入して6カ月以内に再輸出する精製糖を当該輸出関税の対象外とすると発表したことがある。なお、中央政府は同月下旬に、2500トンのオーガニックシュガーも対象外とすると発表した。

 中央政府は9月2日、国内砂糖価格の一層の統制のため、貿易業者に限定していた砂糖在庫量の上限設定を製糖企業にも適用とすることを決定した。適用期間は、砂糖の需要が高まるディワリ(注)の祭事前の9月から10月まで、各製糖企業の在庫量は、9月末時点では2015/16年度の砂糖生産量の37%、10月末時点では同24%が上限とされる。

 加えて、現地報道によると、中央政府は、国際砂糖価格の上昇による製糖企業の収益向上などを理由に、大気汚染対策としてバイオ燃料の使用促進を図るため実施してきた製糖企業に対する糖みつ由来のエタノールに係る付加価値税の免除を、2016年11月をもって廃止することを検討している。

2016/17年度の砂糖生産量はかなり減少、輸出量は大幅減の見込み
 2016/17年度は、サトウキビ収穫面積は474万ヘクタール(前年度比6.2%減)、生産量は3億3193万トン(同7.5%減)とともにかなりの減少が見込まれている。このため、砂糖生産量も、2450万トン(同9.9%減)とかなりの減少が見込まれている。

 インド砂糖製造協会(ISMA)が7月上旬に公表した2016/17年度の生産予測によると、サトウキビ栽培面積は499万ヘクタール(同5.5%減)とやや減少し、砂糖生産量は精製糖換算で2326万トン(同7.3%減)とかなり減少する見込みである。これは、主要生産地であるウッタルプラデシュ州やタミルナド州でサトウキビ栽培面積が拡大し、砂糖生産量の増加が見込まれる一方、昨年の干ばつと生育時期の降雨不足の影響を受け、マハラシュトラ州の砂糖生産量が615万トン(同26.9%減)と大幅に減少すると見込まれるためである(図4)。この予測の通りとなれば、最大の生産州であったマハラシュトラ州は、ウッタルプラデシュ州に次ぐ第2位に転ずることとなる。

(注)ヒンズー教における新年を祝う最大の祭り。毎年10月下旬から11月上旬の新月の夜に行われる。

表3

図4

インドの砂糖の輸出量および輸出単価の推移

2015/2016年の見通し

2015/16年度の砂糖生産量は大幅減、輸入量は大幅増の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、サトウキビについては、砂糖の国際価格が低水準にあったこともあり、生産者が果物や野菜などの他作物へ転作する動きが見られたことや、労働費の上昇により新植が進まないことから、収穫面積は166万ヘクタール(前年度比5.7%減)とやや減少が見込まれ、生産量は1億1730万トン(同6.6%減)とかなりの減少が見込まれる(表4)。
 
 また、てん菜についても、最大生産地である新疆ウイグル自治区の減産により、収穫面積は14万ヘクタール(同2.6%減)、生産量は734万トン(同8.3%減)と、ともに減少が見込まれる。天候不順からサトウキビおよびてん菜からの産糖量も減少していることが響き、砂糖生産量は、946万トン(同17.6%減)と大幅な減少が見込まれる。

 中国砂糖協会(CSA)によると、2015/16年度の製糖は6月で終了し、砂糖生産量は、精製糖換算で870万トン(同17.6%減)と前年度を大幅に下回った(図5)。これは、てん菜糖は85万トン(同15.2%増)とかなり増加したものの、甘しゃ糖が785万トン(同20.0%減)と大幅に減少したことによる。サトウキビの最大生産地である広西チワン族自治区は、1月に降霜、降雪に見舞われたため、収穫が遅れて産糖量が減少したことから、511万トン(同19.4%減)と大幅に減少した。

 また、砂糖輸入量は、576万トン(同18.3%増)と大幅な増加が見込まれる。これと併せて、ミャンマーやカンボジアなどからの「非公式な」砂糖の流入の急増が、国内生産量の減少を補っていると推測される。

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、輸入量は大幅減の見込み
 2016/17年度は、サトウキビ収穫面積が183万ヘクタール(前年度比10.0%増)、生産量が1億2652万トン(同7.9%増)とともにかなり増加が見込まれている。これは、広西チワン族自治区や海南省においてサトウキビ栽培面積が増加する見込みであることに加えて、サトウキビの生育状況が良好なことが要因として挙げられる。

 また、てん菜収穫面積は、15万ヘクタール(同10.0%増)とかなり増加し、生産量は771万トン(同5.0%増)とやや増加と予想されている。これは、主要生産地である内モンゴル自治区のてん菜生産量が増加していることなどが要因として挙げられる。これにより、砂糖生産量は、1050万トン(同11.0%増)とかなり増加し、輸入量は400万トン(同30.6%減)と大幅に減少すると予想されている。

表4

図5

中国の砂糖の輸出量および輸出単価の推移

2015/2016年度の見通し

2015/16年度の砂糖生産量は大幅減、輸入量はやや減少の見込み
 2015/16砂糖年度(10月〜翌9月)は、播種はしゅ時の天候に恵まれたものの、前年度末の在庫量の増加により砂糖価格の下落が懸念されたことから、てん菜収穫面積は144万ヘクタール(前年度比12.0%減)とかなりの減少が見込まれる(表5)。また、夏の熱波の影響によるポーランドやドイツなどの減産見通しにより、てん菜生産量は1億516万トン(同19.7%減)、砂糖生産量は1475万トン(同23.6%減)と、ともに大幅な減少が見込まれる。

 前年度の増産による在庫量の増加から、砂糖輸入量は抑制されるとみられ、326万トン(同5.8%減)とやや減少が見込まれる。

2016/17年度の砂糖生産量はかなり増加、輸入量は大幅増の見込み
 2016/17年度は、てん菜収穫面積が159万ヘクタール(前年度比10.8%増)、生産量は1億1218万トン(同6.7%増)と、ともにかなりの増加が予想されている。2017年10月以降の生産割当制度の廃止を目前に、生産量上位国であるフランスやドイツでは、在庫増への懸念から栽培面積の拡大に慎重になっているとみられる一方、ポーランドやオランダなどではてん菜栽培面積を前年度から約2割増加させるなど積極的に増産する国もみられている。また、てん菜の生育状況に恵まれ、産糖量の増加が見込まれることなどから、砂糖生産量は、1752万トン(同18.8%増)と大幅な増加が予想されている。

 砂糖輸入量は、特恵関税で輸入した砂糖を再輸出する動きがみられることから、399万トン(同22.5%増)と大幅な増加が予想されている。
 
 一方、欧州委員会が7月8日に公表した短期需給見通しによると、2016/17年度のてん菜生産量は、生産割当制度の廃止を控えた在庫抑制のため、生産が制限されていることから、1億680万トン(同4.9%増)とやや増加するにとどまると見込まれるものの、平均的な製糖歩留まりであれば、砂糖生産量は1630万トン(同9.4%増)と、かなりの増加が見込まれる。

表5

EUの主要国別砂糖生産見込みおよび生産割合

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