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サトウキビを学校教材として活用するための工夫

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最終更新日:2017年3月10日

サトウキビを学校教材として活用するための工夫

2017年3月

琉球大学教育学部 齊藤 由紀子、福本 晃造、照屋 俊明、杉尾 幸司

【要約】

 栽培植物と食を関連付けた取り組みとして、沖縄県内の小学校での活用を想定し、サトウキビを活用した生活科教材の開発を試みた。本稿では、サトウキビを用いた実験室における砂糖作りの手順を詳述し、現職教員が実施するための注意事項と併せて紹介する。また、生活科における教材としての可能性について検討を行った。

はじめに

 生活科の特質は、直接体験を重視した学習活動を行うこと、身の回りの地域や自分の生活に関する学習活動を行うことなどにある(文部科学省 2008)。そのため、身近な動植物の飼育・栽培は関心の高いテーマになっており、特に身近な植物(野菜など)の栽培活動については、効果的に行うための手だてについてのさまざまな提案や報告などが行われてきた(寺澤・松本 2006、木村 2008、奥村 2010など)。しかしながら、学校現場における生活科授業のさまざまな取り組みの中で、最も長期間にわたるものは飼育・栽培であり、特に植物(野菜)の栽培はその中心となる(佐々木 2011)ため、実際の授業での実施は容易ではない。そのため、生活科の授業の中で取り上げやすい内容にすべく、身近な栽培植物と食を関連付けた取り組みなどの工夫が行われてきた(野崎 2012)。

 
身近な栽培植物と食を関連付けた取り組みであれば、実際に栽培している様子については近隣の農地の観察などを行うことで対応し、食の部分を教室で重点的に取り組む実践なども可能になる。その場合は、栽培されている様子についてよく知られていて、その地域の特徴を反映する作物である事が望ましい。沖縄県内の小学校での活用を想定した場合に、その対象作物として最も適しているのはサトウキビであろう。

 
岡田(2011)は、サトウキビの持つ環境学習としての教材性に着目して、サトウキビの体験活動を取り入れている小学校の実践について詳細に報告している。しかし、これらの授業は主に総合的な学習の時間を活用して行われており、学習内容を意義のあるものにしようと工夫するほど単元の授業時間数が多くなり、その指導者にしかできない実践になりがちで、一般化しにくいのが現状である。

 
以上の点を踏まえ、本研究では直接体験を重視した学習活動を行う生活科の授業において、容易に活用できる食に関する教材としての開発を試みることにした。

1.砂糖作りの手順

【準備】
材料:サトウキビ(30センチメートル×8本相当)、水酸化ナトリウム

器具:包丁、ナイフ、剪定ばさみ、ミキサー、計量カップ、糖度計、pH試験紙、布巾、カセットコンロ、
     カセットガス、ボウル、鍋(
20センチメートル)、雪平鍋(15センチメートル)、ゴムベラ


【手順】
(1)サトウキビを作業しやすい大きさ(約30センチメートル)に剪定ばさみを用いて切断する(写真1)。作業は屋外で行うか、室内で行う場合は床や実験台が傷つくのを防ぐため、下にダンボールなどを敷いて行う。

写真1 サトウキビを約30センチメートルの大きさに切断する
(2)ナイフや包丁などを使って、サトウキビの外側の皮を切り取る(写真2)。節の部分は節間よりも堅くなっているので、皮を切り取る際には注意を払う必要がある。皮を取り除いたサトウキビの総重量は1キログラムであった。小学生が刃物を扱う場合は、手の大きさに合わせて小刀やカッターナイフでも代用が可能であるが、多少堅さがあるので十分注意する。
写真2 サトウキビの外側の皮を切り取る

(3)繊維に沿って縦に割いたサトウキビを、剪定ばさみを使用して約1センチメートルの大きさに切り刻む(写真3)。堅い節の部分を取り除いておくと、次の作業((4))が行いやすくなる。この時点で口に入れることができるので、白い繊維質の部分をかじることで甘い汁が出てくることや茎の繊維質を体験してみることでサトウキビが繊維植物であることが実感できる。

写真3 繊維に沿って割いてから細かく切り刻む
(4)刻んだサトウキビをミキサーに入れ、さらに細かくしていく(写真4)。サトウキビは少量ずつ投入しミキサーにかけることで、刃の空回りや機械への大きな負荷を防ぐことができる。粉砕を長く行ってもドロドロの状態になってしまい、完全な液状のジュースを作ることはできない。
写真4 ミキサーで少しずつ細かくする
(5)薄い布巾で細かく砕いたサトウキビを包み、きつく搾って液を集める(写真5)。この作業はかなりの力が必要になる。圧搾汁は150ミリリットルとなり、それを糖度計とpH試験紙を用いて測定した。糖度は21度、pHは5.8であった。
写真5 圧搾して液を集める

 ここで、圧搾汁の全量をそれぞれ50ミリリットルずつに分け、異なる三つの方法でろ過および湯煎にかける作業を行った。

方法A:水酸化ナトリウムを加えて圧搾汁のpHを弱アルカリ性にし、15分間静置後、ろ紙でろ過を行い湯煎にかける。
方法B:圧搾汁をそのままの状態で1時間静置後、布巾でろ過を行い湯煎にかける。
方法C:ろ過の作業まではBと同様に行い、湯煎の工程の途中で圧搾汁が水あめ状態になったところで粉糖を投入する。

(6)紙や布巾により圧搾汁のろ過を行う。方法Aでは、圧搾汁に固形の水酸化ナトリウム0.2グラムを投入し、圧搾汁のpHは弱アルカリ性(pH8.2)となった。科学啓蒙施設でのワークショップや黒糖作り体験、製糖所などでは、不純物を沈殿させるために圧搾汁にアルカリ剤が加えられている。静置後15分が経過したところで圧搾汁が2層に分離したのを確認し、目の細かいろ紙を使用してろ過を行った。方法BおよびCでは、不純物を沈殿させるため圧搾汁を1時間静置し、布巾でろ過を行った。

(7)大きめの鍋に水を入れ、ガスコンロにかけて沸騰させた後、雪平鍋に圧搾汁を入れて湯煎にかける(写真6)。直接に火で加熱すると焦げてしまうことがあるので、火加減に注意する必要があるが、湯煎の場合は温度が100度以上に上らないため焦げることはない。ゴムベラで混ぜながらじっくり加熱すると湯煎を始めて約10分経過後、泡が出始めて圧搾汁にとろみが出てくる。15分経過後、圧搾汁に粘りが出始め、ねっとりとした水あめ状態になり、しばらくすると突然固まり始めて粒状になり、約5分経過後に砂糖が完成する(写真7)。方法AおよびBでは、湯煎開始から20分で砂糖が完成した。方法Cでは、湯煎開始から15分経過後、砂糖の核となる粉糖1グラムを投入し引き続き湯煎にかけ5分経過後に砂糖が完成した。

写真6 ゴムベラで混ぜながら湯煎にかける
写真7 水あめ状態だったものが突然粒状になる

2.砂糖作りの評価

 今回の砂糖作りの全工程で要した時間は、剥ぐ30分、砕く70分、搾る30分、分離・ろ過1日(方法A)、分離・ろ過60分(方法BおよびC)、加熱20分であった。三つの方法を比較すると、煎糖にかかった時間はいずれの場合も20分で大きな差は見られなかった。方法Aはアルカリ剤を投入し不純物の沈殿にかかった時間は15分であったが、ろ過作業に多くの時間を要し、収量は5.5グラムであった。収量は最も少なかったが、他と比べて出来上がった砂糖は植物の青臭さがなかった。これはアルカリ剤の処理とろ過作業により、他と比べてより不純物が取り除かれたことによると考えられる。方法Bは圧搾汁をそのまま1時間静置させたため作業としては最も手順が少なく、収量は6.1グラムであった。方法Cは加熱の途中で粉糖を加え、収量は9.6グラムであった。収量が最も多く、砂糖の粒が大きいものができた。

3.生活科の学習教材としての可能性

 身近に生育している植物から普段口にしている砂糖を作り、わずかな量でも砂糖を手にすることで、自然との関わりに関心を持つことができ、それが自分自身にとって価値があると実感することで、身の回りにあるものを見直すきっかけとなるであろう。さらに、サトウキビは節や繊維質の部分が観察しやすい。ただ眺めて観察するだけでなく、手で触るなどして対象に接することで、植物の体のつくりを学習する小学校第3学年の理科へつながる気付きが生まれることが期待できる。加熱の作業では、液体が固体へ変化する様子を体験することができ、それを通して科学的な見方・考え方の基礎を養うことができると期待される。砂糖作りの工程に伴う作業では、必要な道具や用具の準備、それらを使ってものを作るなどのことを経験する。これらを通して生活習慣や技能を身に付けることで、児童の自立への基礎を養うことにつながる。小学校では授業時間や低学年児童の作業スピードを考えた場合、加熱作業など一部の作業を抜き出して行うなど作業手順の簡略化を行えば実践可能であると考えられる。

 
本作業の一部を改良したものを用いて、現職教員を対象とした平成28年度琉球大学教員免許状更新講習の受講者13名を対象に実践を行い、再現性、操作性、安全性について検証を行った。作業を行った4グループの作業時間に大きな差はなく、全てのグループが砂糖を得ることができた。講習後に行った自由記述によるアンケート回答では、道具は身近にあるものを用いており購入に際しても安価で簡単に手に入りやすい、スケールを小さくしたことで学校の実験室や家庭でも簡単に再現できる点が評価された。

参考文献

1)木村光男,2008)「生活科栽培活動における気付きの生成と展開-「思考を経た気付き」に視点をあてて-
『せいかつか&そうごう』(15pp.76-83.

2)文部科学省, 2008)「小学校指導要領解説生活編」『日本文教出版』

3)野崎健太郎,2012)「保育者・小学校教員養成課程の「生活科」 授業における生命と食の学び」『椙山女学園大学研究論集(自然科学篇)』 (43pp.1-12.

4)岡田正三,2011)「サトウキビのもつ環境学習としての教材性-サトウキビの体験活動を取り入れている小学校の実践をふまえて-」『生活科・総合的学習研究』(9pp.73-84.

5)奥村一将, 2010)「栽培活動における意欲の高め方についての一考察」『生活科・総合的学習研究』(8pp.119-128.

6)佐々木 仁,2011)「生活科で大事にしたい学習」『理科教室』 54 4pp.16-19.

7)寺澤小織・松本謙一,2006)「栽培活動における生活科から理科への連続的な移行を促す単元展開:「単元名」と「副題」の関係に着眼して」『富山大学人間発達科学研究実践総合センター紀要』(1pp.1-14.

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