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鹿児島県におけるサトウキビ栽培農家減少状況下でのサトウキビ品種の変遷と栽培型の動向

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最終更新日:2017年7月10日

鹿児島県におけるサトウキビ栽培農家減少状況下でのサトウキビ品種の変遷と栽培型の動向

2017年7月

鹿児島県農業開発総合センター徳之島支場 作物研究室長 佐藤 光徳

【要約】

 鹿児島県においてサトウキビ栽培農家は減少しているが、収穫面積はほぼ維持され、1戸当たりの収穫面積は増加した。確実な労働力減少に直面しているサトウキビ生産を収穫方法、品種、栽培型の動向から整理した。最近の10年で労働コストが低い株出し栽培へのシフトが顕著であり、新植の割合が低下した。多回株出しの増加は効率的なサトウキビ生産につながるが、一方で新植する能力の低下が懸念される。

はじめに

 鹿児島県において、サトウキビは種子島から与論島までの六つの島で栽培されている重要な作物であり、2015年には1万1595ヘクタールで収穫され、50万4409トンが生産されている(図1)。サトウキビの増産や生産安定化のために品種開発や栽培方法の改善などを行っているが、単収は長期的には減少傾向であり、特に2010〜2014年は大きな台風の襲来や強い干ばつなどで低収となった(図2)。一方2015年、2016年は干ばつや台風接近が軽微であったことから多収に転じ、特に2016年は2008年以来の大豊作であった。このようにサトウキビ生産は気象の影響を受け、その影響の大小で収量、単収が大きく増減するので、技術や資本投資の効果が分かりにくいという側面がある。

鹿児島県各島におけるサトウキビの収穫面積と生産量(2015/16年度)

図2 鹿児島県におけるサトウキビ単収の推移

1.サトウキビ農家戸数の確実な減少

 サトウキビ生産環境の基盤であるサトウキビ栽培農家は減少している(図3)。この減少は、気象変動に比べると明らかに確実な減少であり、今後も増加に転じることは難しく、引き続き減少する「安定した変化」である。2005年に1万408戸あった農家戸数は、2015年には8115戸(2005年対比78%)に減少した。労働力の減少はサトウキビの生産環境に確実な影響を与えているはずである。しかし、同期間の収穫面積は8749ヘクタールから1万171ヘクタール(同116%)と減少どころか増加している。その結果、1戸当たりの収穫面積は0.84ヘクタールから1.25ヘクタール(同149%)へと大幅に増加した。この現状を、収穫方法、品種の変化、栽培型の変化から考察する。

図3 鹿児島県におけるサトウキビ農家戸数と収穫面積および1戸当たり収穫面積の推移

2.ハーベスターの普及と収穫労力からの解放

 サトウキビ栽培において、重量がある長大な茎を刈り倒して(はく)(よう)し、畑から搬出する収穫は最も労働力、労働時間が必要な作業である。そのため手収穫の農家経営では、収穫労力が収穫面積増大に対する大きな制限要因であった。ハーベスターによる収穫面積割合の推移を図4に示す。2005年に56.7%であった機械収穫率は、2015年には87.7%にまで上昇した。徳之島では機械収穫率が96%に達し、手収穫の風景をほとんど見ることができない状況である。ハーベスターの普及によって農家経営では、長時間を要する収穫作業が不要になり、収穫労力は規模拡大の制限要因では無くなり、その結果、1戸当たりの収穫面積の増大が可能になったと推察できる。  

 収穫面積規模別の農家戸数の変化を見ると、1ヘクタール以下の農家戸数が大きく減少している一方で、2ヘクタール以上の農家が増加していることが分かる(図5)。さらに階級別の積算収穫面積を推定したところ、1.5〜2ヘクタールを境目に、小規模農家の収穫面積は減少、大規模農家の収穫面積は増加していた。また、ピークが1〜1.5ヘクタールと2〜3ヘクタールの二つにあり(図6)、これは管理に用いる機械装備の差異によるものと考えられる。従来の耕うん機中耕体系では、中耕作業に対して長時間が必要であるが、乗用管理機は中耕作業に対する省時間効果が高く、大面積の中耕管理が可能である。すなわち、前半のピークは従来の耕うん機中耕体系、後半のピークは乗用管理機体系の表れと推察できる。これは乗用管理機の導入が収穫面積の維持に寄与していることを示唆している。

 

図5 収穫面積規模別の農家戸数の変化

図6 栽培規模度数別の推定積算収穫面積の変化

3.株出し性に優れる品種Ni22、Ni23の普及と株出し面積の増加

 鹿児島県のサトウキビ奨励品種は現在8品種で、最も古い品種は1992年に採用されたNiF8、最も新しい品種が2016年に採用されたNi27である。収穫面積に対する品種割合の推移を図7に示した。種子島ではNiF8の寡占状態が長く続いていて、NiTn18、Ni22が少し導入されているが、今でも88%を占めている。奄美地域は種子島に比べると多くの品種が使われている。これは奄美大島から与論島まで地理的分布が広く、気温、土壌条件や島のサイズが多様な五つの島が独立していることで、品種の特性発現や適性、利用方法が異なることに要因がある。NiF8は奄美地域でも35%程度普及しているが、最大でも2002年頃の60%で、種子島とは異なる普及実績である。Ni22とNi23は株出し性がNiF8より優れる品種で2005年に採用された。春植え株出し2回体系を奄美地域でも可能にする株出し性と多収性を有することから、奄美地域の生産安定と効率的なサトウキビ生産に寄与することが期待されて導入された。採用後、両品種は少しずつ導入が進み、2015年にはそれぞれ14%、26%の普及率となっている。現在ではNi22は株出し萌芽に優れる早期高糖多収品種として認知されているが、茎径が細く、特に株出しで細茎化が進むことが弱点と捉えられている。また、Ni23は徳之島伊仙町と与論島で普及割合が高く、これは干ばつに強いという特性を数年の生産経験を経て生産現場が認めていることを示しているものと考えられる。株出し萌芽が良く多収であり今後の利用も期待されている。

図7 鹿児島県におけるサトウキビ品種の変遷

4.2005年以降の株出し面積の増加と夏植え面積の減少

 前述したように、Ni22とNi23はNiF8に比べ株出し性が優れる品種で、奄美地域において春植え株出し2回という栽培体系を可能にする品種として期待され、2006年に導入された。図8に栽培型別収穫面積の推移を示したが、1997〜2006年は株出し収穫面積が5000〜5500ヘクタール、夏植え面積が2300ヘクタール程度であった。

図8 鹿児島県における栽培型別収穫面積の推移

 島ごとの栽培型別収穫面積の推移を見ると(図9)、その頃は喜界島、沖永良部島で夏植え面積が株出し面積より広く、夏植え1作型が多い状況であったことが分かる。効率的なサトウキビ生産の観点から、夏植え1作型を春植え株出し2回体系に変化させることが期待されていた。2007年以降、奄美大島、喜界島、沖永良部島で株出し面積が明らかに増加しているが、同時にNi22、Ni23の普及率も増加していることから、これら品種の導入が株出し面積の増加に影響があったと考えられる。しかしながら、Ni22、Ni23の普及面積以上に株出し面積が増加していることから、NiF8やその他の品種も株出し栽培が増えたことを示している。

図9 鹿児島県の栽培型別収穫面積の推移と収穫面積指数

5.「春株2回・夏株1回体系」以上の株出し回数の多回株出しへ

 株出し栽培は収穫株の地下茎からの萌芽を利用する栽培型である。株出し栽培は新しい苗の植え込みを行わないので、新植に比べ生産コストが安い栽培型であり、春植えに比べ収益が上がりやすい。しかし一方で、株出し萌芽が不順な場合、欠株が発生し、その結果、収穫茎数が減少し、単収が低下する。株出しはその回数が増えるほど、単収が低下する傾向があることから、株出し栽培は数回した後に新植に切り替える必要がある。そこで、鹿児島県では、春植えで株出し2回、夏植えで株出し1回が、株出し回数の目標であり、基準である(以下「春株2回・夏株1回体系」とする)。

 前年度までの春植え、夏植えの面積と当年の株出し実績面積から多回株出し指数MR(注)を考案した(図10)。夏植えが無く春植え株出し2回体系が出来上がっていた種子島をこの指数で示すと、1991年から多回株出し指数MRはゼロ付近に推移し、種子島の「春株2回体系」を表している。沖永良部島は2005年まで指数MRは▲0.6〜▲0.5と算出された。これは夏植え1作が多かったことを表している。一方で、与論島は1990〜2007年の指数MRは0.4前後で多回株出しが多かったことを示している。2005年では、多回株出し指数MRで見ると島ごとに特徴があり、「与論島」、「種子島・徳之島」、「奄美大島・喜界島・沖永良部島」の3グループに大別できる。すなわち、(1)多回株出しの島(2)春株2回・夏株1回体系の島(3)株出し回数が少ない島−である。  

 2006年以降、多回株出し指数MRは明瞭な傾向がある変化が見られる。すなわち、指数MRがマイナスであった島々で急激に指数MRが増加している。つまり、株出し栽培の増加が急激に起こっていることを示している。最近でも指数MRの増加傾向はとどまらず、2015年には全ての島で指数MRはプラスの値となった。「春株2回・夏株1回体系」以上の多回株出しがあるということである。多回株出しは、効率的なサトウキビ生産につながるが、一方で多回株出し畑での単収低下が懸念されることから、多回株出しでの生産性維持が課題である。

(注)大きさが異なる島の多回株出し動向を比較するために、x年の各島の収穫面積Axを用いて多回株出し指数MRxを考案した。多回株出し指数MRx=(Rx−R’x)/Ax である。以下に、説明する。
 x年の株出し実績面積をRxとする。またx年の1年前、2年前の春植え面積をそれぞれ、PSPx-1、PSPx-2、さらにx年の1年前の夏植え収穫面積をPSUx-1とする。春植えでは株出しが2回、夏植えでは株出しが1回行われることを基準とすると、x−2年、x−1年の新植面積からx年の株出し面積を算出することができる。すなわちx年における算出株出し面積R’xは次式 R’x=PSPx-2+PSPx-1+PSUx-1となる。仮に新植面積から株出しへの移行がこの推定より少ない場合Rx
R’xの関係となる。そこで、Rx−R’xは多回株出しの指標と考えられる。すなわち、多回株出しが少ないとRx−R’x<0、多いとRx−R’x>0である。

図10 春株2回・夏株1回体系を基準とする多回株出し指数

おわりに
〜農業人口の減少と多回株出しの関係は。そして新植面積の維持が重要〜

 最近、新植時の採苗労働力確保が難しいとの意見を聞くことが多い。農業者の高齢化と農業人口の減少を考えれば当然の状況である。そのことを加味すると、近年の株出し面積と多回株出しの増加は、株出しに優れるNi22、Ni23の導入というインパクトだけで説明されることではなく、労働人口減少による新植労力不足が相まった結果と考えられる。新植が労力的に難しいから新植面積が少なくなり、そのためにとりあえず株出しを続けようという消極的な株出し選択が増加しているように感じている。島の収穫面積は、株出し面積が増えることで、しばらくは表面上現状を維持できるが、一方で新植能力の低下が見えないところで進んでいると危惧している。

 多回株出しの増加は効率的なサトウキビ生産につながるが、新植面積の確保も将来の生産維持のために必要である。多回株出しを活用しながらも、島の新植能力を維持するための技術開発(新植が安定的にできる簡易な植え付け方法の開発など)や体制整備(採苗・植え付け受委託作業システム構築など)に対する取り組みが早急に必要である。

 徳之島支場ではこの状況を考慮し、大規模農家のための省力的な栽培管理方法の改良、植え付け時期を分散させることができる夏植えの安定多収栽培技術の改善、さらに最も省力的な植え付け方法であるビレットプランター導入のための利用方法の確立などの試験研究を実施している。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03‐3583‐9272



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