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沖縄県における平成28年産さとうきびの生産状況について

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最終更新日:2017年10月10日

沖縄県における平成28年産さとうきびの生産状況について

2017年10月

沖縄県農林水産部糖業農産課

【要約】

 沖縄県の平成28年産さとうきびは、生産量93万7523トン(前年比124.2%)と、前年産を上回るとともに17年ぶりに90万トンを超える豊作となった。収穫面積は1万2938ヘクタール(同97.9%)と前年同様であったが、台風などの大きな災害も無く気象条件などにも恵まれたことにより10アール当たりの単収で7246キログラム(同126.9%)と大幅に伸びて生産量を押し上げた。また、平均甘しゃ糖度も14.6度(前年13.6度)と前年を上回る実績となり、品質的にも充実した年となった。

1.さとうきびの位置付け

 沖縄県におけるさとうきびは、県全体の農家数の約7割、耕地面積の約5割、農業産出額の約2割を占める基幹作物であり、特に多くの離島を抱える本県において製糖業とともに地域経済、社会を支える重要な作物となっている。また、さとうきびは他作物に比べて比較的台風や干ばつに強く、離島地域においては代替の効かない作物である。

 沖縄県では、国の「さとうきび増産プロジェクト基本方針」に基づき、平成18年に策定した各島別および県段階における生産目標や取り組み方向を示した「さとうきび増産プロジェクト計画」を27年に改定した。さらに、24年度から新たにスタートした「沖縄振興特別措置法」に基づき、「沖縄県21世紀ビジョン基本計画」を24年5月に策定し、この二つの計画によって生産基盤の整備、安定生産技術の開発および普及、機械化や地力増強、病害虫防除対策の推進、生産法人等担い手の育成、優良品種の開発・普及など総合的な施策展開による生産振興を推進している。

図1 さとうきびの生産量と10a当たりの収量の推移

2.平成28年産さとうきびの生育概況

(1)沖縄地域(沖縄本島、伊平屋島、伊是名島、伊江島、粟国島、久米島、南大東島、北大東島)

 生育初期は、気温、日照時間ともに平年並みで、適度な降雨により順調に生育した。その後、生育旺盛期から生育後期にかけても適度な降雨により順調に生育した。久米島は10月の台風襲来により折損、葉片裂傷が見られたが、全体的にはその後の気象条件にも恵まれたことから前年産に比べ増産した。

 大東地域では、生育初期は一部で小雨傾向だったが、生育旺盛期は適度な降雨により順調に生育した。9月に台風の接近はあったものの、特に大きな被害は無く生育後期も気象条件にも恵まれたことから前年産に比べ増産した。

(2)宮古地域(宮古島、伊良部島、多良間島)

 生育初期は平年に比べ降雨も多く順調に生育し、生育旺盛期も適度な降雨により順調に生育した。また、9月の台風襲来により葉片裂傷などの被害はあったが、全体的には気象条件に恵まれたことから前年産に比べ増産した。

(3)八重山地域(石垣島、小浜島、西表島、波照間島、与那国島)

 生育初期から生育旺盛期にかけて少雨傾向で一部生育に停滞が見られた。9月に2個の台風襲来で葉片裂傷などの被害もあったが、まとまった降雨もありその後の生育は順調であった。与那国島では、前期の収穫遅れに伴う肥培管理の遅れや9月の台風襲来の影響もあり前年産に比べ減産したが、その他の島では生育後期にかけ台風の被害も軽微で気象条件に恵まれたことから、前年産に比べて増産した。

3.平成28年産さとうきびの生産状況

 平成28年産さとうきびの収穫面積は1万2938ヘクタールとなり、27年産に比較して274ヘクタール減少した(前年比97.9%)。生産量は18万2852トン増加し93万7523トン(同124.2%)、10アール当たり収量は7246キログラムと、前年に比較して10アール当たり1534キログラム増加(同126.9%)した(表1表2表3)。

表1 地域別生産実績

表2 生産量の比較

表3 10a当たりの収量の比較

(参考) さとうきび生産農家数など(H28年産)

 沖縄地域では収穫面積は80ヘクタール減少したものの、10アール当たり収量が前年に比較して1598キログラム増加したことから、生産量も増加した。宮古地域では収穫面積は207ヘクタールの増加、さらに10アール当たり収量も1419キログラム増加し、生産量も増加した。八重山地域では収穫面積は403ヘクタール減少したものの、10アール当たり収量が前年に比較して1425キログラム増加したことから、生産量はわずかながら増加した。

 なお、各地域別生産量では、沖縄地域(周辺離島を含む)が全体の42.2%、宮古地域が46.5%、八重山地域が11.3%となっている。

 作型別では、夏植え栽培が623ヘクタール減少し4106ヘクタール(全収穫面積に占める割合31.7%)、春植え栽培が123ヘクタール減少し1248ヘクタール(同9.6%)、株出し栽培が473ヘクタール増加し7584ヘクタール(同58.6%)となった(図2)。

 品種構成は、農林27号が全収穫面積の38.0%を占め、次いで農林25号が10.2%、農林21号が9.8%、農林8号が6.7%、農林28号が5.4%となった(図3)。

図2 さとうきび生産の推移(作型別)

図3 主なさとうきび品種の推移(収穫面積構成比)

(参考) さとうきびの主な奨励品種(沖縄県)

(1)沖縄地域

 収穫面積は5932ヘクタールで平成27年産に対して80ヘクタール減少したものの、10アール当たり収量は6664キログラム(前年比131.5%)と前年に対して増加し、生産量は39万5341トンで9万800トン(同129.8%)増加した。

 作型別では、夏植え栽培831ヘクタールで61ヘクタール増加し、春植え栽培806ヘクタールで124ヘクタール減少、収穫面積の約7割を占める株出し栽培は、4296ヘクタールで15ヘクタール減少となった。春植え、株出し栽培の収穫面積は減少したものの、全作型で10アール当たり収量が増加したことに伴い、増収となった。

 品種構成は、農林21号が13.7%、農林8号が12.6%、農林28号が11.4%を占めており、次いで農林27号、農林22号も普及している。

(2)宮古地域

 収穫面積は5410ヘクタールで平成27年産に対して207ヘクタール増加し、10アール当たり収量は8051キログラム(前年比121.4%)、生産量は43万5564トンで9万492トン(同126.2%)と増加した。

 作型別では、近年、株出し栽培が増加傾向にあり、28年産は2682ヘクタール(同131.7%)、生産量は18万4702トン(同163.9%)と、昨年に引き続き増加した。

 品種構成は、農林27号が72.4%と最も多く、次いで農林25号が9.2%となっている。

(3)八重山地域

 収穫面積は1595ヘクタールで平成27年産に対して403ヘクタール減少し、10アール当たり収量は6684キログラム(前年比127.1%)、生産量は10万6618トンで1560トン(同101.5%)増加した。

 作型別では、春植え栽培で31ヘクタール減少、夏植え栽培で214ヘクタール減少、株出し栽培で157ヘクタール減少と全作型で減少したが、10アール当たり収量は全作型で前年を上回った。生産量は夏植え栽培で5169トン減少となった一方、春植え栽培で2481トン増加の9625トン、株出し栽培で4248トン増加の3万1948トンであった。

 品種構成は、農林25号が30.9%と増加し、次いで農林27号29.5%、農林22号14.0%、農林15号9.2%となっている。

4.ハーベスタによる収穫状況

 さとうきびの労働時間の大半を占める収穫作業の省力化を図るため、これまで国庫補助事業などを活用したハーベスタの導入を推進してきた。さらに、県では既存のハーベスタの導入に加え、刈り取り機、脱葉施設などの導入を進め、地域に応じた収穫体系を含む機械化一貫作業体系の確立を推進している。

 平成28年産では、県内全域において大型、中型、小型の各機種合計400台のハーベスタが稼働し、機械収穫率は収穫面積の70.2%(前年67.0%)と増加傾向にある。

5.製糖工場の操業状況

 沖縄県の製糖工場は、分みつ糖工場が8社9工場(8島)、含みつ糖工場が4社8工場(8島)が操業している(表4)。

 分みつ糖工場の平成28年産原料処理量は、27年産より17万3657トン増加し86万7214トン(前年比125.0%)となり、買入糖度は、前年より1.00度高い14.64度となった。
 含みつ糖工場の28年産原料処理量は、27年産より9195トン増加し7万309トン(同115.0%)となった。

表4 製糖工場ごとの操業実績

おわりに

 沖縄県では平成37年産を目標とする「さとうきび増産プロジェクト」および33年を目標とする「沖縄21世紀ビジョン基本計画」に基づき、各種の生産振興施策・事業を展開している。28年産さとうきびは、前年に対して収穫面積は若干の減少はあったものの、気象条件などに恵まれたこともあり10アール当たり収量は大幅に増加し、生産量は目標を達成し、17年ぶりに90万トンを超える結果となった。

 今回の増産は、気象条件に恵まれたことのほか、生産者や関係機関・団体の地道な取り組みが実を結んだ結果である。

 しかしながら、本県は台風常襲地域で、気象条件などは年変動も大きいことから、これまで同様の取り組みの継続と強化が必要である。

 今後も継続して目標を達成していくため、気象災害と病害虫被害などに対応したセーフティネット(さとうきび増産基金)などを活用することにより、関係機関・団体が一体となって増産への取り組みを強化し、本県さとうきび生産農家と製糖企業の経営の安定化に向けて取り組んでいるところである。
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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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