[本文へジャンプ]

文字サイズ
  • 標準
  • 大きく
お問い合わせ
検索
alic 独立行政法人農畜産業振興機構
砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 調査報告 > てん菜 > 地域のてん菜作付面積の維持・確保のための春作業軽減に向けた取り組み

地域のてん菜作付面積の維持・確保のための春作業軽減に向けた取り組み

印刷ページ

最終更新日:2017年12月11日

地域のてん菜作付面積の維持・確保のための春作業軽減に向けた取り組み
〜有限会社メロディーファームの事例〜

2017年12月

札幌事務所 黒澤 和寛

【要約】

 てん菜生産における課題の一つは春作業の軽減であり、そのためには直播栽培の収量安定化や移植栽培における作業の外部化が必要とされている。北海道清水町では、町やJAが中心となって農作業支援組織を設立したほか、農業生産法人として畑作経営を行いながら農作業支援を行っている法人もあり、地域全体でてん菜生産を下支えしている。

はじめに

 有限会社メロディーファーム(北海道上川郡清水町、以下「メロディーファーム」という)は、清水町において200ヘクタールを超える規模で畑作経営を行う一方で、てん菜の()(しゅ)や育苗などの春作業を中心とした作業受託にも力を入れている。同社の経営面積と受託面積を合わせると、町内の移植栽培面積に占める割合は2割に達する。高齢化や労働力不足により、周辺の市町村では直播栽培に移行する生産者が増える中、移植栽培の面積の維持・確保に寄与している同社の取り組みについて報告する。

1.清水町における農作業支援

 清水町は、十勝平野が広がる十勝総合振興局管内の西部に位置し、町の西側を日高山脈が連なり、東側を十勝川が流れる(図1)。町の中央部を道東自動車道や日勝国道、滝川市と根室市をつなぐ根室本線が走っており、道央エリアと道東エリアを結ぶ交通の要衝でもある。

 農業では、小麦、豆類、てん菜、ばれいしょなどの畑作のほか、生乳生産などの畜産も盛んな地域である。平成28年産における町内の作付面積1万4621ヘクタールの内訳を見ると、最も多いのが飼料作物7303ヘクタールであり、次いで小麦2954ヘクタール、豆類1503ヘクタール、てん菜1286ヘクタール、ばれいしょ911ヘクタールなどとなっている(表1)。また、畜産においては、乳用牛2万4606頭、肉用牛1万6303頭、豚7097頭が飼養されている。

 農畜産物の取扱高は、生乳108億円、牛個体89億円、てん菜13億円、ばれいしょ11億円、小麦9億円、豆類6億円、豚5億円となっている(図2)。

 町内には、ホクレン農業協同組合連合会(以下「ホクレン」という)の清水製糖工場が操業しており、その他にも製糖業に関連した施設が所在する。

図1 清水町の位置

表1 農産物の作付面積および割合(平成28年産)

図2 農畜産物の取扱高(平成28年度)

 清水町には、町やJAに代わり、農作業支援を行う有限会社清水町農業サポートセンター(以下「農業サポートセンター」という)がある。農家の高齢化や大規模化に伴う労働力不足に対応するため、町とJA十勝清水町の支援の下、平成9年に前身である農作業受託協議会が設立された。そして、13年にJA十勝清水町や個人農家などの出資により、現在の法人形態となった。

 農業サポートセンターが受託している作業で最も多いのは牧草やデントコーンの収穫であり、28年産の実績は3700ヘクタールに上る。また、播種や堆肥散布でもそれぞれ、910ヘクタール、735ヘクタールを受託している。同町における飼料作物の作付面積は7300ヘクタール余りであることから、約半分の面積において農業サポートセンターによる作業支援が行われていることとなり、農業サポートセンターが町内の酪農家における粗飼料確保などに大きな役割を果たしていることがうかがえる。

 てん菜については、移植作業を受託しており、受託面積は28年産71ヘクタール、29年産88ヘクタールとなっている。

 また、移植作業以外では、4カ所の育苗センターが育苗作業を支援している。育苗センターは、てん菜の移植栽培を行うためペーパーポット(注)に播種を行う施設であり、移植栽培に係る育苗作業の負担を軽減するために道内各地で農協や共同利用組織が主体となって運営されている。

 てん菜の植え付けに当たっては、ペーパーポットであらかじめ苗を育ててそれを畑に定植する移植栽培と、種子を直接畑に播く直播栽培がある。移植栽培は直播栽培に比べて収量が高く初期生育が安定しやすい反面、育苗および移植作業に時間と労力を要する。このことから、近年では、移植栽培に比べ収量は落ちるものの、育苗および移植作業に係る時間と労力が省ける直播栽培の割合が拡大傾向にあり、平成28年産は全道平均で2割に達し、清水町内でも同様の割合となっている(図3)。

(注)移植用の紙筒のこと。ペーパーポットは、1冊当たり1400個の紙筒が連結している。10アール当たりの苗の作付け本数を7200本とすると、発芽不良の分も考慮して、1ヘクタール当たり約55冊のペーパーポットが必要となる。

図3 道内全体の直播率の推移

 同町の育苗センターは、本稿で紹介するメロディーファームの他、共同利用組織が主体となって運営する三つの育苗センターがあり、育苗センター同士の情報交換や技術研修などを行うため、清水町てん菜育苗センター連絡協議会(以下「連絡協議会」という)が設立されている。

 これら4カ所の育苗センターで作られるてん菜の苗は、平成29年産で820ヘクタール分に相当する(図4)。これは、清水町内のてん菜作付面積の6割、町内の移植栽培だけで見ると8割を担っていることになる。

図4 清水町のてん菜作付面積の内訳(平成29年産)

2.メロディーファームによる受託作業の取り組み

(1)メロディーファームの経営概況

 メロディーファームは、清水町内でてん菜やばれいしょなどの畑作経営のほか、てん菜の播種・育苗の作業受託を行う、複数戸で組織された農業生産法人である。同法人は、清水町下佐幌地区で汎用コンバインの共同利用を行っていた組織を母体として平成8年10月、畑作農家5戸により設立された。現在の構成農家戸数は4戸となり、構成員数は9名、その他労働力として繁忙期には町内外からパート従業員を雇っている。
 現在の代表は2代目に当たり、設立時からのメンバーである()(がわ)骰D(たかよし)氏が25年から務めている(写真1)。

写真1 メロディーファーム代表取締役の十川氏

 清水町は、今から30年以上前、町文化ホールのこけら落とし公演で町民合唱団がベートーベンの交響曲第9番(第九)を合唱して以来、町づくりの一環として町民による「第九」の合唱が行われており、メロディーファームの名称もこのことに由来している。また、農業の「夢を奏でる」という意味も込められているとのことである。

 メロディーファームの作付面積は現在、清水町の畑作専業経営の平均作付面積39ヘクタールを大きく上回る210ヘクタールであり、内訳はてん菜77ヘクタール、小麦66ヘクタール、ばれいしょ48ヘクタール、豆類17ヘクタール、ごぼう2ヘクタールとなっている(表2)。作付面積のうち、法人所有地が30ヘクタール、構成員や元構成員からの借地が129ヘクタール、残りの51ヘクタールが第三者からの借地である(図5)。

表2 メロディーファームの品目別作付面積

図5 作付面積の構成比

 施設や機械類はすべて法人所有のものである。設立時に構成員所有の機械を買い上げたものもあり、その場合は同時に機械購入に係る借入金も引き受け、構成員に支払う借地料と相殺して、15年度には完済している。

 資金調達は、農業経営基盤強化資金(スーパーL資金)のほか、ホクレンや農協の借入資金を活用してきたが、設立当初は対外的な信用がなかったため、資金調達には苦労をしたという。また、初期の返済額を抑えようと元金据え置き返済を選択したため、 元金が減らずに金利の返済ばかりがかさみ失敗したと思ったこともあるなど、借入後も資金繰りに苦労した年もあったとのことである。

 メロディーファームの輪作体系は、ばれいしょ、小麦、てん菜、豆類の順で行われている。作付け品目は、翌年の作付けに向けて6月ごろには()(じょう)ごとに決めている。基本的には輪作体系を優先しているが、過去の圃場図と生産実績などを勘案したうえで、役員会で最終的な決定を行う。

 作業実施に当たっては、作物ごとに担当を決めて作業日程や人員配置の調整を行うほか、担当外の作物についても生育状況などの情報を共有し、従業員全体で圃場の状態を把握するよう努めている。作付け後は、作物担当者が担当作物の全圃場を巡回して生育状況などを把握するとともに、構成員の所有圃場については当該構成員が肥培管理を行うこととしている。

(2)てん菜受託作業の概要

ア.播種および育苗作業受託の取り組み
 メロディーファームの農業経営の特徴の一つとして、自社で畑作経営を行いながら、てん菜生産の作業受託を行っていることが挙げられる。メロディーファームが行っている受託作業は、てん菜種子のペーパーポットへの播種および育苗作業(注)であり、平成29年産では約113ヘクタール分の苗の播種作業、17ヘクタール分の育苗作業を請け負っている。清水町のてん菜作付面積約1300ヘクタールのうち、移植栽培は1044ヘクタールであることから、メロディーファームの自組織分と作業受託分を合わせた作付面積190ヘクタールは、町内のてん菜移植栽培面積の2割を占めていることになる。

 作業受託は、13年ごろから開始した。開始したきっかけは、当時規模拡大のためにてん菜の育苗作業を行うビニールハウスを増設した際、ハウス苗床に余力があったため、農協に相談・依頼をしたことであった。それを契機に農作業受託の受け入れを開始し、現在まで至っている。

 町内の育苗センターは、メロディーファームの場合も含めて、作業受託の利用を希望するてん菜生産者との間を、農協とホクレンが仲介役を務める仕組みとなっている。具体的には、毎年末、農協に翌年のてん菜種子の購入数量などを申告する際、作業受託の利用希望を併せて申告する。農協はそれらを取りまとめてホクレンと協議の上、メロディーファームなど町内4カ所の育苗センターへの割り振りおよび依頼をする。依頼を受けた育苗センターは、2月中旬から育苗センター稼働の準備に入り、3月上旬に操業を開始し、10日間ほどで育苗センターの稼働を終える(写真2)。

 播種されたペーパーポットは、育苗センターで引き渡しとしており、生産者のビニールハウスまでの運搬を希望する場合は、別途運送業者が対応している。育苗作業も希望する場合は、50日齢程度まで苗を育ててから生産者に引き渡している(写真3)。

(注)本稿で紹介する作業受託における播種作業は、育苗センターでペーパーポットに播種するまでの作業を、育苗作業は、播種されたペーパーポットをビニールハウスで管理して、圃場に植え付けできる苗にするまでの作業のことを言う。

写真2 育苗センターにおける播種作業の様子(写真提供:ホクレン)

写真3 ビニールハウスにおける育苗作業の様子

 ペーパーポット1冊当たりの料金は約2000円とし、料金には育苗センター利用料、紙筒代、種子代が含まれている。育苗作業まで行う場合は、このほかに委託費と管理費が加わる。料金体系は、連絡協議会が定めた単価を採用しており、町内で一律となっている。

 育苗・播種以外の農作業受託として、メロディーファームは、法人設立時からばれいしょの植え付けを10ヘクタール、てん菜の移植作業を45ヘクタールほど行っていたが、移植作業のタイミングなどによっては受託作業を優先せざるを得ず、自社の作業が遅れることなどがあったため、法人経営が軌道に乗ったことを契機に、それらの受託作業を平成17年で中止している。メロディーファームのような経営規模になると、自社のてん菜移植作業だけでも1週間近くかかるうえに、数日雨が降ると作業が遅延するため、自社の経営との両立を図るために必要な判断だったと思われる。なお、てん菜の移植作業については、前述した農業サポートセンターが農作業支援を行っており、29年産で町内88ヘクタール分をカバーしている。

イ.受託作業が自経営と地域へ与える影響
 メロディーファームの受託作業は、自社の育苗センター内またはビニールハウス内で自社分と合わせて行うことができる作業であるため、受託の負担はないという。また、受託料収入は、平成28年度で播種作業約900万円、育苗作業約300万円となっており、メロディーファームの売上高の一部を占めている。これらのことは、メロディーファームにとって、作業受託を行うに当たってのメリットとなっている。

 町内全体の状況として、作業受託への需要のうち播種作業については、てん菜作付面積と同様近年頭打ち傾向にあるが、育苗作業は年々増加傾向にあり、町内の育苗作業受託面積は平成24年の44ヘクタールから29年には75ヘクタールに増加している。これは、今まで播種作業のみを委託していた生産者が育苗作業についても作業受託を利用するようになったことが要因と考えられ、こうした流れは今後も続いていくものと思われる。

(3)今後の見通し

 当面の作付面積の目標は、現状2割増の250ヘクタールとしているが、土地の確保が大きな課題となっている。また、作業受託面積を拡大することについては、所有するビニールハウス6棟の容量上限まで自社ならびに作業受託の育苗をしているため、今後さらに苗床を増やすには新たなビニールハウスの確保が課題となる。

 このような中で、まずは、引き続き法人としての経営を安定的に行っていくことが、地域におけるてん菜の移植栽培面積の維持につながるものと考えられる。メロディーファームは、平成15年以降、210ヘクタール規模を維持しており、地域農業における寄与度は高い。加えて、てん菜の作業受託組織としても、町内における作業受託体制の一翼を担っており、今後も引き続き自社経営およびてん菜作業受託の両面において、地域におけるてん菜作付面積維持に寄与していくことが、期待されている。

おわりに

 てん菜は、北海道畑作の輪作体系を維持していくには欠かせない作物であり、他の畑作物と比べても面積当たりの収益性は高い傾向にある。一方で、春先の作業を中心として投下労働時間が多く、省力化が課題となっている。このような課題に対し、取り組まれているものの一つが直播栽培であり、その割合は年々増加傾向にあり、現在、全道の作付面積の2割を占める。直播栽培はてん菜生産者がとり得る省力化の有効な手法として、今後も伸びていくことが見込まれている。他方、移植栽培を行うてん菜生産者にとっては、播種作業の外注が有効な手法であり、作業を請け負う育苗センターは全道においてさまざまな規模・形態で運営されている。てん菜生産における省力化を図ろうとした時に、どのような方法をとるかはその生産者の置かれた状況により異なり、その生産者にあった方法が採用できることが望ましい。そのための選択肢の一つとして、今後も作業受託の取り組みが道内各地で行われていくことが期待される。

写真4 メロディーファームの看板とてん菜畑

 最後になりましたが、本稿の執筆に当たりまして、ご多忙のなか取材にご協力いただきました有限会社メロディーファームの皆さま、ホクレン農業協同組合連合会の皆さまにこの場を借りて深く感謝を申し上げます。


[参考文献]
1)JA十勝清水町ホームページ「JA十勝清水町の概要」
http://www.ja-shimizu.or.jp/profile/profile.php (2017年10月24日アクセス)
2)林 敬貴(2012)「地域農業とコントラクター」(有)清水町農業サポートセンター
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272



このページのトップへ

Copyright 2016 Agriculture & Livestock Industries Corporation All rights Reserved.