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3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年4月時点予測))(注)

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最終更新日:2018年5月10日

3. 世界の砂糖需給に影響を与える諸国の動向(2018年4月時点予測))(注)

2018年5月

 本稿中の為替レートは2018年3月末日TTS相場の値であり、1米ドル=107円(107.24円)、1ユーロ=132円(132.02円)、1英ポンド=153円(152.84円)である。

(注)情報提供元が変更となり、算出方法が異なることから予測値が前月号と比べて大きく異なる場合がある。

ブラジル

2017/18年度の見込み、砂糖生産量はほぼ横ばい、輸出量はわずかな増加
 英国の調査会社LMC International(農産物の需給などを調査する英国の民間調査会社)の2018年4月現在の予測によると(以下、特段の断りがない限り同予測に基づく記述)、2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は856万ヘクタール(前年度比1.0%増)とわずかに増加すると見込まれているものの、北東部の干ばつの影響などから生産量は6億4031万トン(同1.8%減)とわずかに減少すると見込まれている(表2)。砂糖生産量(粗糖換算〈以下、特段の断りがない限り砂糖に係る数量は粗糖換算〉)は、サトウキビの砂糖への仕向け割合の増加に加え製糖歩留まりの向上により、4147万トン(同0.5%減)と北東部の減産分をカバーし、ほぼ横ばいとなると見込まれている。砂糖輸出量は、世界的に輸入需要が弱まるとされているものの3073万トン(同2.0%増)とわずかな増加が見込まれている。現地報道によると、次のサトウキビ収穫期を前に世界的に砂糖価格が低水準に推移しているため、粗糖の輸出を控え、国内の食品製造企業向けの精製糖の生産および販売を増やしている企業もある。

 UNICAが発表した2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)の生産実績報告によると、中南部地域のサトウキビ圧搾量は多雨の影響から5億9631万トン(同1.8%減)とわずかに減少したが、砂糖生産量は3606万トン(同1.2%増)とわずかに増加した。製糖業者におけるエタノール生産量は2609万キロリットル(同1.7%増)、輸出量も含めたエタノールの販売量は2641万キロリットル(同1.7%増)と、ともにわずかに増加した。このうち、含水エタノール(注1)の国内販売量は、価格上昇にもかかわらず、1546万キロリットル(同7.9%増)とかなり増加した。これに関連して、政府は1月、2017年9月に開始した輸入エタノールに対する20%の関税(注2)について、撤廃する可能性を示唆した。この背景には、ブラジル国内でガソリン価格が上昇し、エタノール需要の高まりによりエタノール需給が逼迫(ひっぱく)しつつあることがある。2017年のエタノール輸入量は182万キロリットル(前年比2.2倍)となり、現在の基準で統計を取り始めた2004年以来初めて輸出量を上回った。

EUとのFTA交渉、進展なし
 南米南部共同市場(メルコスール)とEUとの間で交渉が続く自由貿易協定(FTA)については、3月にアルゼンチンで開催された20カ国財務大臣・中央銀行総裁会議(G20)の機会に関係国間で協議や意見交換が行われたが、双方の立場に隔たりが大きく、新たな進展は見られなかった。一部報道によると、最終合意は2019年へ持ち越される公算が高まっている。EUでは、2017年9月の連邦議会選挙の結果によって政権の求心力が低下したドイツに代わり、交渉に消極的とされるフランスの存在感が高まっており、他方、南米ではブラジルが10月に大統領選挙を控えるなど、双方ともに当面は交渉を先送りせざるを得ない政治的な理由がある。

UNICA、インドとパキスタンの輸出支援策に懸念
 UNICAは、「インドとパキスタン両政府が実施する砂糖輸出に対する支援策が、世界的な砂糖価格の下落に拍車をかけている可能性がある」との懸念を示し、政府や関係国に対し世界貿易機関(WTO)への提訴を含めた対応を要請していくことを示唆した。

(注1)自動車の燃料として用いられるエタノールには、含水と無水の2種類がある。含水エタノールは製造段階で蒸留した際に得られた水分を5%程度含み、フレックス車(ガソリンとエタノールいずれも燃料に利用できる自動車)でそのまま燃料として利用される。一方、無水エタノールは含水エタノールから水分を取り除きアルコール100%としたもので、ガソリンに混合して利用される。
(注2)政府は2017年8月23日、エタノール輸入に対し、年間60万キロリットル(四半期ごとに15万キロリットル)の無税の関税割当を設けるとともに、これを超過して輸入されるエタノールに対しては20%の関税を課すことを決定した。同措置は、国内のエタノール生産量の減少やトウモロコシの国際価格の下落などにより米国からのトウモロコシ由来のエタノール輸入量が急増している状況を受け、UNICAや北東部の砂糖・エタノール製造企業などが、以前から政府へ実施を要請していたものである。同関税は、エタノール在庫量の低下に伴い2010年に適用停止して以来の再導入であり、2年間の実施に見直しが予定されていた。

表2 ブラジルの砂糖需給の推移

(参考)ブラジルの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

インド

2017/18年度の見込み、砂糖生産量は大幅に増加、輸入量はかなり減少
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は470万ヘクタール(前年度比9.8%増)とかなりの増加が見込まれ、生産量は3億7191万トン(同21.2%増)と大幅な増加が見込まれている(表3)。砂糖生産量は、サトウキビの増産に加え、主要生産州で適度な降雨に恵まれ、製糖歩留まりの向上が見込まれていることから、3267万トン(同49.5%増)と3年ぶりの増加が見込まれている。砂糖輸入量は、生産量の増加に伴い210万トン(同14.6%減)とかなりの減少が見込まれている。現地関係者によると、2017/18年度の期末在庫量は、国内消費量の4カ月分に相当する850万トンになると見込んでいる。翌年度も砂糖の需給に大きな変動がない場合、在庫はさらに積み上がる可能性が高い。

 インド製糖協会(ISMA)によると、2017/18年度上半期(10月〜翌3月)の砂糖生産量は、精製糖換算で2818万トン(前年同期比49.2%増)と大幅に増加した。このうち、マハラシュトラ州は1012万トン、ウッタルプラデシュ州は954万トン、カルナタカ州は356万トンといずれも前年同期を上回った(図3)。

図3  インドの地域別甘しゃ糖生産量

政府、砂糖に対し50%の追加関税
 政府は2月6日、砂糖の輸入増加による国内市場価格および国内生産への影響を緩和するため、砂糖に対して50%の追加関税を課した。国内では、サトウキビ取引価格が前年同期に比べ11%上昇する中で、安価な砂糖の輸入増加により製糖業者の業績が悪化していた。また、これはパキスタンからの輸入量を抑制するための措置とみられる。パキスタン政府は砂糖の国内供給量を調整するため2018年1月から輸出補助金の対象数量を50万トンから200万トンに引き上げており、現地関係者の間で輸入量を抑制するためには現行税率(50%)では不十分であるという声が高まっていた。

政府、200万トンの輸出枠を設定
 政府は3月、砂糖に対する20%の輸出関税(注1)を撤廃するとともに、製糖業者に対し200万トンの最低輸出義務を課した。今回の措置は、砂糖の輸入増加で国内消費が飽和状態にある中、サトウキビの増産による砂糖の国内価格の下落と在庫の急増が重なり、製糖業者の業績がさらに悪化し、生産者への原料代の支払いが滞っていたことから、これらを解消する狙いがある。最低輸出義務の設定は、2015年以来3年ぶりとなる。同時に、生産した砂糖を2018年9月までに輸出した製糖業者に対しては2021年までの間、その輸出量を上限に粗糖を無税で輸入できる措置も講じる。

 現地報道によると、3月末時点においてマハラシュトラ州の製糖業者だけですでに62万トンが消化されたとみられるが、世界的な砂糖価格の低迷から輸出価格が生産コストを下回っており、「全量の消化は難しい」と懐疑的な見方をする声もある。このため、政府が輸出補助金を措置するのではないか、という憶測が広がっている。しかし、米通商代表部(USTR)が3月14日、「インド政府の鉄鋼、医薬品、情報通信などに対する輸出促進政策(注2)は米国の労働者や製造業に損害を与えている」と主張し、WTOに提訴することを発表したことから、実際に措置されるかどうかは極めて不透明とみられる。

(注1)粗糖を輸入して6か月以内に再輸出する精製糖▽2500トンのオーガニックシュガーを除いた砂糖−に対し2016年6月中旬以降適用された。
(注2)砂糖に対する輸出補助金は、2015年9月をもって廃止されている。

表3 インドの砂糖需給の推移

(参考)インドの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

中国

2017/18年度の見込み、砂糖生産量はかなり増加、輸入量はかなり減少
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)においては、サトウキビについて、収穫面積は123万ヘクタール(前年度比4.5%増)、生産量は7678万トン(同4.2%増)と、ともにやや増加が見込まれている(表4)。てん菜について、収穫面積は19万ヘクタール(同10.7%増)、生産量は959万トン(同8.7%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている。地域別では、てん菜の主要生産地である内モンゴル自治区の増加が著しい。これらにより、砂糖生産量は1103万トン(同11.5%増)とかなりの増加が見込まれている。砂糖生産量が依然として消費量を下回ると見込まれる中、砂糖輸入量は砂糖に対する追加関税措置により514万トン(同11.2%減)とかなりの減少が見込まれている。

 中国砂糖協会(CSA)によると、2017/18砂糖年度上半期(10月〜翌3月)の砂糖生産量は、精製糖換算で954万トン(前年同期比10.6%増)とかなり増加した。このうち、甘しゃ糖は839万トン(同10.5%増)、てん菜糖は115万トン(同12.0%増)と、ともにかなり増加している。中でも3月単月の増加が著しく、前年より早くてん菜の裁断期を終え、てん菜糖の生産がなかったにもかかわらず、前年同月比48.3%増の217万トンと直近3カ年で最も多い水準となった。

中国農業省、2017/18砂糖年度の需給見通しを公表
 中国農業省は2月8日、砂糖を含む農産物の需給見通しを公表した。これによると、2017/18年度の砂糖生産量は、サトウキビおよびてん菜の栽培面積の拡大により、1035万トン(前年度比11.4%増)とかなり増加し、このうち、甘しゃ糖は915万トン(同11.0%増)、てん菜糖は120万トン(同14.3%増)と、ともにかなりの増加が見込まれている。

2月の砂糖輸入量、7年ぶりの低水準
 政府は、2017年5月22日から3年間、関税割当(枠内関税率15%)の枠外で輸入される砂糖に対し、反ダンピング関税を課している(注)。2018年2月の砂糖輸入量は、これに旧正月(春節)が重なり、単月の数量としては7年ぶりの低水準となった前月をさらに下回る2万トンとなった。

(注)海外からの安価な砂糖の流入により、国内の砂糖産業に損害が生じまたはその恐れがあるとして、ブラジル、豪州および韓国などの砂糖輸入先国を対象に実施した調査結果を踏まえ、50%であった枠外税率に45%の追加関税を課した。ただし、2年目は40%、3年目は35%と段階的に引き下げられる予定となっている。なお、追加関税について、開発途上の約190の国・地域(フィリピンやパキスタンなど以前から中国と関係の深い国も含む)については、一定の条件を満たせば除外される。

表4 中国の砂糖需給の推移

(参考)中国の砂糖(粗糖・精製糖別)の輸入量および輸入単価の推移

EU

2017/18年度の見込み、砂糖生産量、輸出量はともに大幅に増加
 生産割当廃止後の初年度となる2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)は、てん菜の収穫面積は172万ヘクタール(前年度比17.6%増)、生産量は好天による単収の増加もあり1億3398万トン(同25.3%増)と、ともに大幅な増加が見込まれている(表5)。これにより、砂糖生産量は2134万トン(同21.5%増)、輸出量は413万トン(同2.7倍)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

欧州委員会、2017/18砂糖年度の需給見通しを公表
 欧州委員会は1月下旬、2017/18年度の砂糖の需給見通しを公表した。これによると、砂糖生産量は精製糖換算で2058万トン(同22.2%増)と大幅に増加する一方、輸入量は186万トン(同38.9%減)と前年度の6割程度と見込まれている。輸出量は、域内消費量が大きく変わらない中、域内供給量の増加に加え、WTOの裁定により設けられた輸出上限が生産割当の廃止に伴い撤廃されることから、320万トン(同2.3倍)と大幅な増加が見込まれている。ただし、実際の輸出量は国際価格とEU域内価格の動向に左右されるとみられる。欧州委員会によると、2017年10月〜翌1月の輸出量は、エジプトやスリランカなど中東・アジア諸国向けを中心に129万トン(前年同期比3.9倍)と大幅に増加した。また、2017年12月の域内平均白糖卸売価格は、1トン当たり400ユーロ(5万2800円)と前年同期を同79ユーロ(1万428円)下回った。

寒波の影響で播種作業が大幅に遅延
 現地報道によると、てん菜の()(しゅ)期に当たる3月に広範囲で寒波に見舞われ、平年より播種作業が大幅に遅れている。てん菜の主要生産国であるフランスでは、3月下旬時点の播種作業の進捗率が平年の50%をはるかに下回る7%弱の水準であるという。これにより、てん菜生産量が3%程度減産する見込みで、この状況は他のEU諸国でも同様であることから、2018/19年度の砂糖の需給予測に影響が出るとみられる。

英国政府、4月から「砂糖税」を開始
 英国政府は、子どもの肥満対策として2016年3月に導入を発表した「砂糖税」について、当初の予定通り2018年4月6日から課税を始めた。飲料に含まれる糖類の量に応じて課税する仕組みで、100ミリリットル当たり5グラム以上8グラム未満の糖類を含む飲料には1リットル当たり18ペンス(注)(27.5円)、同8グラム以上の糖類を含む飲料には1リットル当たり24ペンス(36.7円)が課税される。課税対象となる飲料は清涼飲料水やエナジードリンクなどで、果実飲料は含まれない。現地報道によると、これによる税収は年間2億4000万英ポンド(367億2000万円)を見込み、学校のスポーツ関連施設への助成や子どもに朝食を提供する「朝食クラブ」の支援などに充てられる。

 同じ日に課税を開始する予定だった隣国のアイルランドでは、政府が導入までの手続きを慎重に進めた結果、約1カ月遅れの5月1日から始まった。同国では、100ミリリットル当たり8グラム以上の糖類を含む飲料に対して1リットル当たり0.3ユーロ(39.6円)が課税される。

(注)1ペンスは、1英ポンドの100分の1。

表5 EUの砂糖需給の推移

(参考)EUの主要国別砂糖生産見通しおよび生産割合

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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