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4. 日本の主要輸入先国の動向(2018年4月時点予測)(注)

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最終更新日:2018年5月10日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2018年4月時点予測)(注)

2018年5月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2017年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が69.5%(前年比17.3ポイント増)、タイが25.0%(同22.7ポイント減)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイは毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回は南アフリカを報告する。本稿中の為替レートは2018年3月末日TTS相場の値であり、1豪ドル=84円(83.66円)、1タイ・バーツ=3.48円、1南アフリカ・ランド=10.48円である。

(注)情報提供元が変更となり、算出方法が異なることから予測値が前月号と比べて大きく異なる場合がある。

豪州

2017/18年度の見込み、サトウキビの減産に伴い砂糖生産量、輸出量ともに減少
 2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は37万ヘクタール(前年度比1.4%増)とわずかな増加が見込まれているものの、2017年3月に襲来したサイクロンの影響による単収の減少から、生産量は3341万トン(同8.5%減)とかなりの減少が見込まれている(表6)。これに伴い、砂糖生産量は、453万トン(同5.9%減)とやや減少が見込まれている。輸出量は、中国向けなどの減少に伴い364万トン(同9.2%減)とかなりの減少が見込まれている。

3月上旬の洪水による被害見込み額は100万豪ドル程度
 豪州農業資源経済科学局(ABARES)が3月6日に公表した生産予測によると、2018/19年度は、サトウキビの収穫面積が拡大し生産量の増加が予想されることから、砂糖生産量は483万トン(同2.8%増)とわずかな増加が見込まれている。輸出量は、386万トン(同0.5%増)にとどまると見込まれている。しかし、クイーンズランド(QLD)州北部では3月上旬、数日間降り続いた豪雨の影響で大規模な洪水が発生し、サトウキビの生産地帯は圃場が冠水し、サトウキビを工場に輸送するための鉄道網が寸断するなどの甚大な被害を受けた。現地報道によると、これによる被害額は100万豪ドル程度(8400万円程度)と見込まれている。被害が大きかったケアンズからタウンズビルにかけての地域では、サトウキビが倒伏したり、長時間水に浸かったりしたため今期は減産が予想される一方、近年干ばつ傾向で推移していたことから、今回の雨をむしろ前向きに捉え、乾いた土壌に十分な水を行き渡らせる効果があったとする声もある。

TPP11協定の最終合意を受け、業界団体が声明を発表
 環太平洋パートナーシップに関する包括的および先進的な協定(TPP11協定)は3月8日、チリで各国閣僚によって署名された。これに先立ち、QLD州砂糖公社(QSL)(注)は声明を発表し、同協定は、QLD州の粗糖輸出に対して全面的な変革をもたらすまでの効果はないものの、特に日本、カナダおよびメキシコ市場へのアクセスが拡大するとしている。

(注)QLD州産砂糖の輸出を担う公社。同州産砂糖輸出の9割を扱っていたが、2015年の砂糖産業法改正により、2017/18年度以降、QSLが製糖企業を介して輸出する従来の形態に加え、砂糖を輸出する企業を生産者が選択できるようになった。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2017/18年度の見込み、砂糖生産量、輸出量ともに大幅に増加
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は他作物からの転作などにより169万ヘクタール(前年度比7.2%増)とかなりの増加が見込まれ、生産量は単収の増加もあり1億3026万トン(同40.1%増)と大幅な増加が見込まれている(表7)。砂糖生産量は、好天による製糖歩留まりの向上もあり1516万トン(同42.2%増)と大幅な増加が見込まれている。このため、輸出量は1157万トン(同56.5%増)と大幅な増加が見込まれている。

 現地報道によると、2017年12月〜翌4月上旬までの砂糖生産量は、すでに前年度の砂糖生産量を上回る1386万トン(前年同期比35.6%増)となった。

砂糖産業関連法の改正案、閣議で承認
 現地情報によると、砂糖産業関連法の改正案は2017年12月上旬、閣議で承認された(注1)。この改正によって、砂糖の販売割当(注2)は一部を除いて廃止され、製糖企業は生産量に応じた在庫量の確保が新たに義務付けられることとなる。政府が設定している国内砂糖価格の上限は廃止される。なお、砂糖産業全体の収益をサトウキビ生産者と製糖業者で7:3の割合で分配する現行の収益分配方式は存続する。

 政府は1月15日、国内砂糖価格については同日から2年間、現行のサトウキビ・砂糖法を適用しないことで、実質的な価格自由化への即時移行を発表した。また、国内供給向けの砂糖の販売割当に関する規定も併せて廃止された。サトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)によると、価格自由化へ移行後、砂糖卸売価格は1キログラム当たり17〜18バーツ(59〜63円)に下落しており、国際砂糖価格も低水準にあることから、2018/19年度のサトウキビ取引価格は1トン当たり700バーツ(2436円)程度まで下落すると見込まれている。

 関係者によると、改正後の制度の完全施行は、2018/19年度まで持ち越される可能性もある。現地報道によると、一部のサトウキビ生産者組合が、改正案におけるサトウキビ副産物の定義などに異議を唱えており、代替案を国民立法議会に提出する準備を進めているという。

(注1)タイ政府は2016年4月初旬、国際砂糖価格の低迷時などに製糖企業を通じて生産者に支払われる補てん金や、砂糖の販売割当および国内砂糖価格の設定が間接的な輸出補助金に当たりWTO協定に違反しているとして、ブラジル政府からWTOに提訴された。これを受け、OCSBがタイ政府に改革草案を提出したものの、政府は閣議において内容をよく吟味する必要性があると判断し、OCSBに対し公聴会を経るよう求めた。その後、OCSBは公聴会を実施した上で所要の見直しを行い、再度改革案を閣議へ提出、2017年12月上旬に承認された。
(注2)タイ産砂糖は、A割当と呼ばれる国内供給向けとB割当およびC割当と呼ばれる輸出向けなどの販売割当に基づき管理されている。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

南アフリカ

2017/18年度の見込み、砂糖生産量、輸出量ともに大幅な増加
 2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)は、サトウキビ収穫面積は28万ヘクタール(前年度比10.0%増)、生産量は1739万トン(同15.3%増)と深刻な干ばつの影響により大きく落ち込んだ前年度をかなり上回る生産が見込まれている(表8)。このため、砂糖生産量は215万トン(同25.4%増)、輸出量は79万トン(同3.5倍)と、ともに大幅な増加が見込まれている。

政府、4月1日から飲料メーカーと輸入業者に課税
 政府は2018年4月1日、飲料メーカーと輸入業者に「砂糖税」を課す新たな制度を導入した。同制度は、100ミリリットル当たりに含まれる糖類が4グラムを超える飲料を製造または輸入する業者に対し糖類1グラム当たり2.1セント(注)(0.2円)を課税する仕組みである。政府は、肥満者数や糖尿病患者数の増加が社会保障制度などに影響を及ぼすことを踏まえ、企業の税負担を増やすことで事業戦略の転換を促し、国民に対し健康増進の働きかけを進めたいとしている。

(注)1セントは、1南アフリカ・ランドの100分の1。

表8 南アフリカの砂糖需給の推移

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農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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