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遺伝子組換え表示制度の見直し

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最終更新日:2018年6月11日

遺伝子組換え表示制度の見直し

2018年6月

湯川食品科学技術士事務所 所長 湯川 剛一郎
(元東京海洋大学 大学院海洋科学技術研究科 食品流通安全管理専攻 教授)

はじめに

 遺伝子組換え表示制度については、その導入から約17年が経過しており、この間、遺伝子組換え食品のDNA等に関する分析技術の向上、全世界における遺伝子組換え農産物の作付面積の増加による流通実態の変化、遺伝子組換え食品に対する消費者の意識の変化などが生じている可能性がある。また、同制度は「食品表示一元化検討会報告書」(平成24年8月公表)において別途検討すべき事項とされたほか、消費者基本計画(27年3月閣議決定)において実態を踏まえた検討を行う事項と整理されていたことから、29年4月、消費者庁が開催する「遺伝子組換え表示制度に関する検討会」において検討が開始された。以下、筆者が座長として意見の取りまとめに当たった検討会での検討の経緯および結果の概要を紹介する。

1.検討経過

 検討会は、学識経験者や生産・製造・流通関係者・消費者団体の代表らから成る10人で構成され、平成29年4月から30年3月まで計10回にわたり開催された。第1回では制度の現状が説明され、関係者へのヒアリングの後、第5回から本格的な意見交換が行われた。

2.遺伝子組換え表示の現状

(1)表示義務の対象品目

 遺伝子組換え表示は、食品表示法第6条第8項の規定に基づく内閣府令には記載されておらず、食品を摂取する際の安全性に重要な影響を及ぼす事項とはされていない。

 遺伝子組換え食品の表示義務対象となるのは大豆、とうもろこし、ばれいしょ、菜種、綿実、アルファルファ(注)、てん菜、パパイヤの8品目およびこれらを原材料とする加工食品33品目である。なお、加工食品については、加工工程後も組み換えられたDNAまたはこれによって生じたタンパク質が残存する品目に限定されている。

(注)もともとは「飼料用」として開発されたもの。食用としての利用はスプラウト(もやし)のほか、乾燥させて茶にしたものを飲食する場合がある。

(2)現行制度の概要

 分別生産流通管理が行われたことを確認した遺伝子組換え農産物や対象農産物を原材料とする場合は、「遺伝子組換え」などと表示され、遺伝子組換え農産物および非遺伝子組換え農産物が分別されていない農産物およびこれを原材料とする加工食品は、当該原材料名の次に括弧を付して「遺伝子組換え不分別」などと表示を行う。加工食品においては原材料の重量に占める割合の高い原材料の上位3位までのもので、かつ、原材料および添加物の重量に占める割合が5%以上のものについて表示を行う。意図せざる混入は大豆、とうもろこしについて5%以下とされている。

 分別生産流通管理が行われたことを確認した非遺伝子組換え農産物およびこれを原材料とする場合は、当該原材料名を表示する(「遺伝子組換えでない」表示を行わない)か、または当該原材料名の次に括弧を付して「遺伝子組換えでない」などと表示する。「遺伝子組換えでない」表示は、義務ではなく任意の表示であるが、表示の方法が食品表示基準に示されている点が一般的な強調表示と異なる(図1)。
図1 現行の遺伝子組換え食品の表示制度

3.ヒアリング

 ヒアリングでは、消費者からは表示対象品目の拡大、5%以下とされている「意図せざる混入率」の引き下げに関する要望が多かった。他方、事業者からは総じて現状維持との声が多い一方で、「不分別」の意味が分かりにくいため改善を求める意見も多かった。

 こうした制度全般にわたる議論に加え、複数の消費者側の委員から、任意で表示できる「遺伝子組換えでない」の表示について最大5%の混入があるにもかかわらず「遺伝子組換えでない」という表示が認められることに対する疑問が示され、表示条件を現行の5%以下から「不検出」に引き下げるなどといった厳しいルールを定めるべきとの考えが示された。

4.委員会における議論

 委員会ではヒアリングの結果などから論点を以下の四つに絞り、議論を行った。議論が進むにつれ、対象範囲の拡大や5%ルールの引き下げなどについては、検証の技術、コストとの関連で容易ではないことが委員の間で理解され、結果的に「遺伝子組換えでない」表示の見直しが課題として取り上げられることとなった。

【表示義務対象範囲に関して】
(1)表示義務対象品目の検討:表示義務対象の加工食品を33品目に限るか

 大量の原材料や加工食品が輸入されるわが国の状況下においては、社会的検証だけでは表示の信頼性を十分に担保することが困難であり、現行制度と同様に科学的検証と社会的検証を組み合わせることによって監視ができる状況を確保することが必要である。そのため、表示義務対象品目は、科学的検証が可能な組換えDNA等が残存する品目に限定される現行制度を維持することが適当とされた。

(2)表示義務対象原材料の範囲の検討:原材料の重量に占める割合が上位3品目までのもので、かつ5%以上である原材料に限るか
 事業者の実行可能性、表示の見やすさ・優先度などを踏まえると、現行制度を維持することが適当とされた。なお、事業者においては、表示義務対象外の原材料についても表示の信頼性および実行可能性を確保できる範囲内で、ガイドラインなどにより消費者への情報提供に努めることが要望された。また、消費者庁に対しても、事業者の自主的な取り組みに対して必要な支援を行うよう努めることが要望された。

【表示方法に関して】
(3)「遺伝子組換え」および「遺伝子組換え不分別」表示の検討:消費者にとって分かりやすい「遺伝子組換え不分別」の表示方法

 現行の分別生産流通管理は、遺伝子組換え農産物の生産・流通に関する情報を消費者に伝達する取り組みとして有用性があるものの、「遺伝子組換え不分別」表示においては、意味が分かりにくいという消費者の意見があり、認知が広まっていない現状にある。そのため消費者庁に対しては、事業者や消費者などから幅広く意見を聴取し、「遺伝子組換え不分別」の表現に代わり、実態を反映した、分かりやすくかつ誤認を招かないような表示を検討し、Q&Aなどに示すよう取り組むことが求められた。

(4)「遺伝子組換えでない」表示をするための要件の検討
ア.「遺伝子組換えでない」表示の改善の必要性

 現行では、遺伝子組換え農産物が最大5%混入していたとしても「遺伝子組換えでない」表示を可能としている。しかし、誤認防止、表示の正確性の担保および消費者の選択幅の拡大の観点から、「遺伝子組換えでない」表示が認められる条件を現行制度の「5%以下」から「不検出」に引き下げることが適当とされた(図2)。

イ.意図せざる混入の基準の引き下げ
 事業者による原材料の安定的な調達が困難となる可能性、許容率引き下げに伴う検査に係る作業量やコストの増大などの事情を総合的に勘案すると、大豆およびとうもろこしについて5%以下の意図せざる混入を認めている現行制度を維持することが適当とされた。

 なお、引き下げに当たっては、新たな表示制度が現在の食品の製造・流通・消費に与える影響に配慮し、これらの現場で混乱が生じないよう、新たに公定検査法を確立し、円滑な検証や監視を担保することが必要とされる。事業者や消費者に十分な周知を行うこととともに、新たな公定検査法の確立に当たっては、現行の定量検査法のように、正確性と実行可能性のバランスにも配慮することが求められる。また、「不検出」に引き下げた際に「遺伝子組換えでない」表示ができなくなる食品については、消費者の食品選択の幅を広げる観点だけでなく、分別生産流通管理を適切に実施してきた事業者の努力を消費者に伝える観点からも、分別生産流通管理が適切に行われている旨の表示を任意で行うことができるようにすることが適当とされた。
図2 「遺伝子組換えでない」表示条件の引き下げ

おわりに

 今回の検討により、「遺伝子組換えでない」表示の厳格化という消費者の要望に応えることができたと考えている。今後、消費者委員会食品表示部会において検討が行われ、通知などの改正が行われることとなる。制度の変更に際しては「遺伝子組換えでない」とする表示の意味が変わるため、移行期間や施行時期について配慮する必要があろう。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272



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