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4. 日本の主要輸入先国の動向(2018年5月時点予測)

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最終更新日:2018年6月11日

4. 日本の主要輸入先国の動向(2018年5月時点予測)

2018年6月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2017年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が69.5%(前年比17.3ポイント増)、タイが25.0%(同22.7ポイント減)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。

 豪州およびタイは毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はフィリピンを報告する。本稿中の為替レートは2018年4月末日TTS相場の値であり、1豪ドル=85円(84.61円)、1タイ・バーツ=3.53円、1フィリピン・ペソ=2.26円である。

豪州

2017/18年度、サトウキビの減産に伴い砂糖生産量、輸出量ともに減少の見込み
 2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は37万ヘクタール(前年度比1.4%増、前月予測と同水準)とわずかな増加が見込まれているものの、2017年3月に襲来したサイクロンの影響による単収の減少から、生産量は3346万トン(同8.3%減)とかなりの減少が見込まれている(表6)。これに伴い、砂糖生産量は、457万トン(同5.1%減、前月予測と同水準)とやや減少が見込まれている。輸出量は、中国向けなどの減少に伴い368万トン(同8.2%減、前月予測比1.1%増)とかなりの減少が見込まれている。

3月上旬の洪水による被害見込み額は100万豪ドル程度
 豪州農業資源経済科学局(ABARES)が3月6日に公表した生産予測によると、2018/19年度は、サトウキビの収穫面積が拡大し生産増が予想されることから、砂糖生産量は483万トン(前年度比2.8%増)とわずかな増加が見込まれているものの、輸出量は386万トン(同0.5%増)にとどまると見込まれている。

 しかし、クイーンズランド州北部では3月上旬、数日間降り続いた豪雨の影響で大規模な洪水が発生し、サトウキビの生産地帯では()(じょう)が冠水し、サトウキビを工場に輸送するための鉄道網が寸断するなどの甚大な被害を受けた。現地報道によると、これによる被害額は100万豪ドル(8500万円)程度と見込まれている。被害が大きかったケアンズからタウンズビルにかけての地域では、サトウキビが倒伏したり、長時間水に浸かったりしたため今期の減産が予想される一方、近年干ばつ傾向で推移していたことから、今回の雨をむしろ前向きに捉え、乾いた土壌に十分な水を行き渡らせる効果があったとする声もある。

世界砂糖連盟、インドとパキスタンが実施する輸出支援策を非難
 豪州に事務局を置く世界砂糖連盟(Global Sugar Alliance)(注1)は5月上旬、声明を発表し、インドとパキスタンの両政府が実施する砂糖の輸出支援策(注2)に対し、「長期的には自国の砂糖産業の持続的な生産や成長を阻害することになる」と警告するとともに、「世界的な供給過剰を引き起こす要因となっている」と非難し、WTOのルールを順守するよう求めた。

(注1)豪州、ブラジル、カナダ、チリ、コロンビア、グアテマラ、南アフリカ、タイの製糖業者が加盟する連合組織。砂糖の貿易自由化の推進、世界の砂糖取引環境の改善などを行っている。
(注2)インド政府は2018年3月、製糖業者に200万トンの最低輸出義務を課し、5月には生産者に補助金を交付する計画を公表した。パキスタン政府は、砂糖の国内供給量を調整するため、2018年1月から輸出補助金の対象数量を50万トンから200万トンに引き上げた。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2017/18年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は他作物からの転作などにより173万ヘクタール(前年度比9.9%増、前月予測比2.5%増)とかなりの増加が見込まれ、生産量は単収の増加もあり1億3353万トン(同43.7%増、同2.5%増)と大幅増が見込まれている(表7)。砂糖生産量は、好天による製糖歩留まりの向上もあり、1564万トン(同46.7%増、同3.2%増)と大幅増が見込まれている。このため、輸出量は1135万トン(同53.6%増、同1.9%減)と大幅増が見込まれている。

 現地報道によると、2017年10月から翌5月中旬までの砂糖生産量は、既に前年度の砂糖生産量を上回る1492万トン(前年同期比44.9%増)に達している。

タイの副首相、TPP11協定に参加の意向
 現地報道によると、ソムキット副首相は3月29日、「環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定」(TPP11協定)への参加の意向を示し、商務省に対し参加に向けた手続きを開始するよう指示した。また、同副首相は5月1日、タイを訪問した茂木経済再生担当大臣と会談を行い、TPP11協定へ参加する意向を伝えるとともに、日本の協力を求めた。正式な参加表明は、国内での調整が整い次第、年内に行う方針である。TPP11協定は、現参加国の少なくとも6カ国の国内手続きが完了し てから60日後に発効すると定めていることから、タイの参加は協定発効後になるとみられる。

ASEAN議長声明、RCEPの交渉加速化に意欲
 東南アジア諸国連合(ASEAN)は4月28日、シンガポールで首脳会議を開いた。会議終了後に発表された議長声明では、世界的に広がる保護主義・反グローバル化に強い懸念を示し、「自由貿易体制を支持する立場を引き続き堅持することを改めて確認した」と表明した。その上で、ASEAN加盟10カ国に日本、韓国、中国、インド、豪州、ニュージーランドの6カ国を加えた東アジア地域包括的経済連携(RCEP)について、「担当閣僚や交渉担当官に対し、早期妥結に向けて残された課題の解決に全力を尽くすよう指示した」と述べ、交渉の加速化を呼びかけた。また、5月9日の日中韓サミットでも、RCEPの早期妥結に向け連携することで一致するなど交渉参加国の間で合意に向けた機運が急速に高まっている。

 現地報道によると、関係者の間では貿易や投資などで質の高い自由化を求める日本、豪州、ニュージーランドなどと、国内産業の保護を優先したい中国、インドなどとの隔たりが大きく、交渉は難航するとの見方が優勢である。

図 アジア・太平洋地域における経済連携の状況

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

フィリピン

2017/18年度、砂糖生産量はかなり減少、輸出量は大幅減の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は42万ヘクタール(前年度比0.7%増)とほぼ横ばいと見込まれ、生産量は2547万トン(同9.0%減)とかなりの減少が見込まれている。砂糖生産量は、製糖歩留まりの低下に伴い227万トン(同9.4%減)とかなりの減少が見込まれている。そして、砂糖輸出量は22万トン(同21.6%減)と大幅減が見込まれている(表8)。

 砂糖統制委員会(SRA)(注1)が発表した2017年10月から翌4月までの生産実績報告によると、収穫期を迎えた12月上旬、被災者約16万人に及ぶ大きな被害をもたらした豪雨と壊滅的な洪水の影響により、サトウキビ圧搾量は2143万トン(前年同期比7.1%減)、粗糖生産量は187万トン(同10.2%減)と、ともにかなり減少した。

政府、1月から「砂糖税」を導入
 政府は1月、税制改革の一環として、飲料に対し「砂糖税」を導入した。飲料1リットル当たりの税額は、異性化糖を使用したものが12ペソ(27円)、砂糖を含むそれ以外の甘味料を使用したものが同6ペソ(14円)となっている。これによる税収は主に国内のインフラ投資の財源に充てられる。現地報道によると、糖種により税率が異なるため、飲料製造業者の間で異性化糖から国産糖へ切り替える動きが進んでいる。中国側から見ると、異性化糖を最も多く輸出している相手国がフィリピンであることから、こうした動きが加速すると中国国内の異性化糖産業に影響を与える可能性がある。

 また、これに合わせSRAは、2017/18年度の砂糖生産量に対する国内供給向けの割当数量を1月に80%から93%、4月にはさらに94%へ引き上げた(注2)。これに伴い、米国輸出向けの割当数量を6%へ引き下げ、その他国輸出向けは設定を見送った。

(注1)砂糖の供給管理政策など国内砂糖産業の管理・監督などを実施する政府機関。
(注2)2017/18年度の砂糖の割当数量は、2017年8月末時点では、国内生産量のうち、10%を米国向け(特恵的な関税枠を有す)▽80%を国内向け▽10%を輸出向け―に設定していた。

表8 フィリピンの砂糖需給の推移

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