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5. 日本の主要輸入先国の動向(2018年6月時点予測)

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最終更新日:2018年7月10日

5. 日本の主要輸入先国の動向(2018年6月時点予測)

2018年7月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、 2017年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が69.5%(前年比17.3ポイント増)、タイが25.0%(同22.7ポイント減)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。
 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はグアテマラを報告する。本稿中の為替レートは2018年5月末日TTS相場の値であり、1豪ドル=84円(84.35円)である。

豪州

2017/18年度、サトウキビの減産に伴い、砂糖生産量、輸出量ともに減少の見込み
 2017/18砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は37万ヘクタール(前年度比1.4%増)とわずかな増加が見込まれている。一方、生産量は、2017年3月に上陸したサイクロンにより、少なくとも1300ヘクタール、サトウキビ生産量に換算して50万トン程度が被害を受けたとみられる上、前年度が記録的な高収量であったことから、3345万トン(同8.4%減)と前年度比で見るとかなりの減少が見込まれている(表7)。

 これに伴い、砂糖生産量は448万トン(同7.0%減)とかなりの減少が見込まれている。輸出量についても、生産見通しの下方修正に加え、中国向けなどの減少を受け、359万トン(同10.5%減)とかなりの減少が見込まれている。

 現地では、サトウキビ生産量の減少と国際相場の低迷を受け、「サトウキビ生産者は二重の苦しみを味わっている」と報じられている。

糖類摂取の低減に対する関心高まる
 5月18日付けの現地報道によると、豪州のコカ・コーラ・アマティル社はソフトドリンクの調合を変更し、糖類の含有率を減らすこととした。豪州では、肥満の増加が社会問題となっており、同社は、2020年までに砂糖使用量を減らしたり、ステビアなどの代替甘味料を用いたりすることで、飲料の砂糖含有量を1割近く減らしたいとしている。

 市民団体は、1980年には全人口のわずか1割程度であった肥満人口が、現在は全人口の3割強にまで増加したと警鐘を鳴らしており、政府に対して規制の制定を強く訴えている。

表7 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2017/18年度、砂糖生産量、輸出量ともに大幅増の見込み
 2017/18砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は、キャッサバなどの他作物からの転作を受け、175万ヘクタール(前年度比11.0%増)とかなり大きな増加が見込まれている。生産量は、2年続いた干ばつからの回復による単収の増加などを受け、1億3490万トン(同45.1%増)と大幅な増加が見込まれている(表8)。

 砂糖生産量は、好天による製糖歩留まりの向上もあり、1564万トン(同46.7%増)と大幅な増加が見込まれている。輸出量については、国際相場の低迷などを受け、前月予測から下方修正されたものの、1097万トン(同48.4%増)と大幅な増加が見込まれている。

価格低迷を受け、エタノール仕向けを優先
 5月16日付けの現地報道によると、サトウキビと砂糖の国内流通を管理しているサトウキビ・砂糖委員会事務局(OCSB)は、製糖業者に割り当てた輸出向け粗糖枠のうち、50万トン余りを、エタノールをはじめとしたバイオ燃料製造に仕向けることを承認した。砂糖の国際相場の低迷が続く中、タイ国内におけるバイオ燃料の需要が増加していることが背景にある。

 現地報道によると、輸出に仕向けられる粗糖はおよそ1100万トンで、今回の仕向け変更は、その4%強に相当する量となる。バイオ燃料の原料の一つであるキャッサバの価格が、生産量の減少に伴いこの1年で約2.5倍と急上昇しており、粗糖に対する需要は高まっている。これを受け、バイオ燃料に仕向けられる粗糖の割当数量は、前年度は20万トン、今年度は30万トンと増加している。

 なお、タイの現行法では、エタノール原料は糖蜜、粗糖、キャッサバに限定されている。現地では、サトウキビ圧搾汁からのエタノール製造(注)を認めるよう要請する動きが強まっており、OCSBは、来年には法改正が行われ、圧搾汁からのエタノール製造が可能となる見込みであるとしている。

(注)サトウキビ圧搾汁からのエタノール製造は、カドミウム汚染土壌地域や実験用など、例外的に認められた一部を除き、現在は認められていない。

表8 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

グアテマラ

2017/18年度、砂糖生産量はわずかに増加も、輸出量は減少の見込み
 2017/18砂糖年度(11月〜翌10月)のサトウキビ収穫面積は26万ヘクタールと前年度から横ばい、生産量は2678万トン(前年度比3.6%増)とやや増加すると見込まれている。砂糖生産量は、サトウキビ生産量の増加を受け、297万トン(同1.5%増)とわずかな増加が見込まれているが、砂糖輸出量は209万トン(同3.4%減)と前年度をやや下回ると見込まれている(表9)。

火山の大噴火により、サトウキビ生産への影響も懸念
 グアテマラ南部に位置するフエゴ山が6月3日、噴火した。海抜1万メートル近くまで噴煙が上がり、溶岩や火砕流が島南部に流出した影響などにより、死者73名、行方不明者192名と報じられている (6月5日現在)。

 通常の栽培暦であれば、すでにサトウキビの収穫時期が終了していることもあり、今のところ、グアテマラ砂糖産業協会をはじめとした砂糖産業界からの声明などは発表されていない。しかし、同国のサトウキビ生産地は南部沿岸に集中しており、今後のサトウキビ生産への影響が懸念される。

表9 グアテマラの砂糖需給の推移

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