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家庭で育む食への意識

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最終更新日:2018年8月10日

家庭で育む食への意識〜簡単、美味しく、幸せに〜

2018年8月

料理研究家 
山際生活デザイン研究所 主宰 山際 千津枝

料理に見た目は重要ですか

 料理は、作ることがゴールではありません。見た目良く作ることを否定するつもりはありませんが、料理は栄養のバランスを考えながら、どのように食べるか、誰と食べるかを想像しながら作るものだと感じます。だから、料理は特別なものである必要もなく、ワンパターンであったとしても気にすることはありません。忙しい毎日だからこそ、時間とお金を節約して、食事を楽しむことを心掛けたいものです。

 そのためにも、食事の準備にかける時間はなるべくなら減らしたいものですよね。しかし、そういったテクニックは、本や人に教えられてすぐに身に付くものではなく、自分自身で試行錯誤しながら身に付けていくものだという気がします。料理が苦手な方や、忙しくて作る暇がない方は、卵焼きやみそ汁など簡単なものから始めてみましょう。最初のうちは時間がかかるかもしれませんが、日々の実践を積み重ねることで調理の手際は必ず良くなります。炊き立てのご飯に、具だくさんのみそ汁、野菜入りの卵焼きがあれば、それだけで立派な献立になります。

 作ることに慣れた方でも、食事の支度に悩みを抱えている人は多いようですが、レシピを見なくても作れる定番メニューは数品あれば十分です。何度も繰り返し作ることで、料理の手際を自然と考えるようになります。あとは、定番メニューの食材や味付けを変えてバリエーションを楽しみましょう。特に旬の食材を取り入れた料理は、見た目も、美味しさも格別なものとなります。

 それでも、栄養バランスの良い食事を毎日作り続けるのは大変なことです。時には、市販の総菜や調理済みの食品を取り入れるのも一つの手です。これらの食品を利用することへの抵抗感や後ろめたさがある方は、ブロッコリーやミニトマトを添える、もやしを茹でてあえ物にするなど、ちょっとしたひと手間を加えるだけで見栄えが良くなり、栄養もプラスされ、温もりのある手料理に変身させることができます。
【皮なしシューマイ】レシピ

デザートは食事を締めくくる

 必要な栄養素の一つである糖質を極端に減らすことは、食に対する楽しみが失われるだけでなく、栄養バランスを欠くことになります。また、極端な食事制限をすると、かえって代謝が低下して太りやすい体質になるおそれもあります。日本では「デザートは別腹」という言葉があるように、どちらかと言えば食後または食事とは別に食べる()(こう)品という位置付けとなっています。しかし、欧米ではデザートまでが食事の一つであるため、デザートでお腹いっぱいになるようコントロールしながら食べています。何でも食べ過ぎには十分注意しなければなりませんが、おかずや副菜で取り切れない栄養を補うという目的でデザートを食べることは決して悪いことではありません。「何を食べないか」ではなく、「何を食べているのか」をしっかりと認識することで、結果的に健康的な減量につながるのだと思います。
【サツマイモでんぷんのくず餅】レシピ

食育は家庭から

 食事は、心のゆとりを育む栄養にもなります。現代では、大人も、子どもも日々時間に追われ、「孤食」「個食」が広がっていますが、それでは食事の大切さや楽しさは感じにくいものです。とかく、自分だけのために作る料理や、自分だけが食べる食事はおざなりになりがちです。忙しい毎日の中でも、できるだけ家族や友人と食事を楽しみましょう。誰かに食べてもらったり、一緒に食べる相手がいたりするだけで、自然と栄養バランスの取れた食事に気を配るようになるはずです。また、食育について「食育は家庭から」とよくいわれますが、難しく考える必要はありません。食育というと、子どもと一緒に料理をしたり、しつけや食について学ぶというイメージが強いですが、それでは親の負担が大きくなる一方です。もちろん、そうした経験や教育は子どもにとって大きな財産になりますが、実は料理する姿を子どもに見せるということだけでも十分に価値はあります。例えば、台所から聞こえる包丁の音や漂うにおいは、気持ちをほっとさせる何か不思議な力があります。子どもにとっては、家族が僕や私のために作ってくれているという大きな安心感があり、愛情を感じ取ることができます。こうした実体験の積み重ねこそが、子どもの自信や生きる力を育む土台になっていくのだと思います。

 そして、時間に余裕があるときには、子どもと一緒にお菓子作りに挑戦してみてください。その際、家族はあまり口出しせず、子どもに任せる気持ちが大切です。お菓子作りは繊細さが要求される分、料理に失敗はつきもの、失敗をしてもいいのだということを学ぶ良い機会となります。だからこそ、美味しく出来上がった時の喜びはひとしおです。お菓子作りを通じて食への関心を高めることはもちろん、きっと大人になっても心を温かくする思い出の味になることでしょう。

【略歴】
福岡県北九州市生まれ
1967年 料理研究家として活動を開始
1983年 山際生活デザイン研究所を設立

料理研究家として幅広く活躍すると同時に、企業のメニュー開発や原稿執筆、テレビ・ラジオのコメンテーターなど活動の場は多岐にわたる。
 
写真3 料理教室での調理実演の様子
写真4 講演会の様子
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272