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美食の国ベルギー王国でスイーツを

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最終更新日:2018年10月10日

美食の国ベルギー王国でスイーツを

2018年10月

 
 ベルギー王国大使館一等書記官・経済部長 ブレント・ヴァン・タッセル

○ベルギーの人々にとっての食文化

 ベルギー王国は、北にオランダ、南にフランス、そして東にドイツとそれぞれ独自の文化を持つ国々に囲まれた国です。そのため、それらさまざまな文化の影響を受けながらも、ベルギーならではの文化を独自に築き上げてきた歴史があります。

 ベルギーの人々は、古くからの伝統や慣習を非常に大切にする国民性であると言えます。食生活においても同様で、「Burgundian lifestyle(ブルゴーニュ式)(注)」という伝統的な食文化が根付いており、美食の国ベルギーにあって、「いかに質の高い食事を取るか」ということが重要視されているように思います。

 日本人もそうであるように、ベルギーの人々にとっても食べることは日々の暮らしを、ひいては人生を豊かにしてくれるものですから、一日の食事が持つ役割をとても重要なものとして捉えているのではないでしょうか。

 日本の食事は、主食があってスープ(汁物)があって、主菜、副菜があってと、一食の中で多様な味を楽しむ(私にとっては「味覚の旅」をしているようなイメージ)食事のように思います。一方、ベルギーの料理は、メインの料理と添え物、サラダなど一皿の中で完結するスタイルがほとんどです。そのため、満足感を高めるためにも、ベルギーの人々は必ずと言っていいほど食事の最後に果物、ケーキ、チョコレート、アイスクリームなどの甘い物(以下ここでは「スイーツ」という)を食べる習慣があります。ベルギーの人々にとって、「食事をより豊かにする」ためには、食後のデザートは欠かせないものです。

(注)「Burgundian lifestyle」を直訳すると「ブルゴーニュ式のライフスタイル」ですが、「美味しい食事と共に人生を楽しむこと」を意味しています。ベルギーの人々にとって、美味しい食事は欠かせないものです。

○日常的に親しまれているスイーツ

 日常的にスイーツを楽しむベルギーにおいては、その種類は多種多様です。
 代表的なもので言えば、伝統的なスイーツであるベルギーワッフルやベルギーチョコレートが挙げられるでしょう。日本でも、現地の直営店が出店されるなど、大変人気があるのではないでしょうか。もちろん、本場ベルギーでもワッフルスタンドやチョコレート専門店が街の至るところにあり、定番スイーツとして日常的にベルギーの人々に親しまれています。

 他にも、ベルギーを訪れたことがあれば経験されたこともあるかと思いますが、ベルギーのカフェではコーヒーや紅茶を注文した際、必ずと言っていいほどスペキュロス(堅焼きのビスケットのようなもの)や一粒のチョコレートが添えられて出てきます(写真1)。このスペキュロスもまた伝統的なお菓子の一つで、そのままはもちろんのこと、コーヒーに浸して食べたり、パンに挟んで食べたりと、人によって味わい方はさまざまです。最近では、スペキュロス味のスプレッド(ペースト)も売られています。  

 ベルギーでは、日本の「3時のおやつ」のように、だいたい午後4時ごろにおやつの時間を取ります。そこで、コーヒーや紅茶とともに前述のようなスイーツや果物などを食べて、疲れた体や頭をリフレッシュさせたり、エネルギーチャージをしたりしています。

写真1 ワッフルとコーヒーに添えられたスペキュロス(赤枠)

写真2 キュベルドン(伝統的な砂糖菓子)

写真3 ビスケットやクッキーの種類も豊富

 また、ベルギーでは人々の交流の場にスイーツは欠かせません。
 例えば、ベルギーの家族にとって毎週末の恒例となっている「Big Breakfast」。

 普段、仕事や学校などで一緒に過ごす時間がなかなか取れない家族にとって、日曜日の朝食は、家族そろって食事を取りながら会話を楽しむ家族だんらんのひとときです。そこでは、お気に入りのベーカリーで買ったチョコレートクロワッサンやデニッシュ、ベルギー式のペストリー(チョコレート、クリーム、甘く煮た果物が入ったもの)や、砂糖・卵・ミルク・小麦粉を混ぜ合わせたものにバニラなどの甘い香りをつけたパンケーキなどが振る舞われ、家族の会話に花を添えてくれます。

 他にも、親しい友人や近所の人々を招待して開くお茶会など、個々がお気に入りのスイーツを持ち寄ってたわいもない会話を楽しむ、そんな空間の中で好きなスイーツの話題で盛り上がったり、次の話につながるきっかけとなったりと、スイーツが和やかな雰囲気の演出に一役買ってくれているのではないでしょうか。

○イベントを通じてスイーツを楽しむ

 スイーツを楽しむイベントとしては、12月6日の「聖ニコラの日」が挙げられます(写真4)。ベルギーやオランダをはじめ、フランス北東部やドイツなどでも行われているこの伝統的なイベントは、子供たちが一年のうちでとても楽しみにしている年間行事の一つです。国によって祝い方はさまざまですが、ベルギーではその年一年間良い子にしていた子どもには、ご褒美としてお菓子が配られるというもので、イベントの時期ともなると聖ニコラをかたどったスペキュロスやチョコレート、砂糖とアーモンド粉末を混ぜて作られるマジパン(日本ではケーキのデコレーションとして用いられている)など、イベントを意識したお菓子で街中が彩られます。

 ここ数年日本でも耳にする機会が増えた「イースター(復活祭)」も、スイーツと強いつながりがあるイベントと言えるでしょう。毎年4〜5月ごろにイエス・キリストの復活を祝う祭りとして開催されるこのイベントでは、各家庭で伝統的な料理やお菓子を囲みながら祝うほか、豊穣の象徴である卵やウサギをかたどったチョコレートを家の中や庭先に隠し、それを子どもたちが探し当てる「エッグハント」などのイベントも楽しまれています。

 毎年この時期になると、王室御用達のチョコレート専門店から街の小さなお菓子屋さんまで、各店舗オリジナルの「イースターエッグチョコレート」や「イースターバニーチョコレート」が店先に並び、イベントをより一層盛り上げてくれます。

写真4 ベルギー大使館で聖ニコラを祝う様子

 このように、ベルギーの人々は甘い物を好む国民性であるとともに、ベルギーの料理には、フリッツ(フライドポテト)など脂質の高い料理も多いですから、全体的にバランスの取れた食事が重要となります。

 ベルギーの食事は、基本的に朝食にたくさん食べ、昼食はそこそこに、夕食は軽めに済ますといったスタイルです。近年では健康志向の高まりから、意識的に運動する人が増えており、糖質に限らず、食事全体で摂りすぎてしまったカロリーは身体活動で消費するというような考え方も浸透しているように感じます。

 最近では、人工甘味料を使用した商品なども販売されていますが、ベルギー人をはじめ欧州の人々は「ナチュラル(自然)」な甘さを好む傾向にあるため、砂糖はもとより、植物由来のステビアなどの天然の甘味料を好む風潮が依然として強いように思います。

 ベルギー王国には、前述でご紹介した他にも、伝統的な文化の中で生まれたさまざまなスイーツがあります。日本でもいくつか現地の味を楽しむことができるようになった今、お気に入りのベルギースイーツを見つけてみてはいかがでしょうか。
このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
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