砂糖 砂糖分野の各種業務の情報、情報誌「砂糖類情報」の記事、統計資料など

ホーム > 砂糖 > 砂糖の国際需給・需給レポート > 5. 日本の主要輸入先国の動向(2018年9月時点予測)

5. 日本の主要輸入先国の動向(2018年9月時点予測)

印刷ページ

最終更新日:2018年10月10日

5. 日本の主要輸入先国の動向(2018年9月時点予測)

2018年10月

 近年、日本の粗糖(甘しゃ糖・分みつ糖〈HSコード1701.14−110〉および甘しゃ糖・その他〈同1701.14−200〉の合計)の主要輸入先国は、タイ、豪州、南アフリカ、フィリピン、グアテマラであったが、2017年の主要輸入先国ごとの割合は、豪州が69.5%(前年比17.3ポイント増)、タイが25.0%(同22.7ポイント減)と、この2カ国で9割以上を占めている(財務省「貿易統計」)。
 豪州およびタイについては毎月の報告、南アフリカ、フィリピン、グアテマラについては、原則として3カ月に1回の報告とし、今回はグアテマラを報告する。本稿中の為替レートは2018年8月末日TTS相場の値であり、1タイ・バーツ=3.47円である。

豪州

2018/19年度、砂糖生産量は増加も、干ばつを受け下方修正
 2018/19砂糖年度(4月〜翌3月)のサトウキビ収穫面積は、39万ヘクタール(前年度比2.3%増)とわずかな増加が見込まれている。生産量は、3358万トン(同0.2%増)とわずかな増加が見込まれているものの、干ばつの影響で8月の降雨が引き続き少なかったことから、前月予測から1.1%下方修正された(表6)。

 これに伴い、砂糖生産量は478万トン(同6.7%増)とかなりの程度の増加が見込まれている。輸出量は373万トン(同4.0%増)とやや増加が見込まれているが、国内消費量については、一部の消費者の間で、健康意識の高まりなどから砂糖の消費を敬遠する動きがあり、108万トン(同4.0%減)と前年度をやや下回ると見込まれている。

 こうした見通しの一方で、現地製糖業者によると、干ばつが深刻なのは、畜産や牧草生産が盛んな豪州南東部の沿岸で、サトウキビ主産地の豪州北東部(クイーンズランド州中部〜北部)ではむしろ、少ない降雨によって、製糖歩留まりや単収の向上がもたらされるため、今年度開始時点の見通しを上回る生産量が見込まれる、といった楽観的な見通しも聞かれている。

モラセス、飼料用作物としての需要が高まる
 現地報道によると、牧草や綿実といった飼料用作物が、干ばつによる記録的な不作で価格が高騰する中、酪農家や肉牛肥育農家の間では、糖蜜(モラセス)由来の飼料を一時的に給与するといった動きがみられる。モラセスに合成タンパク質を添加したものが主に用いられているが、栄養失調などの改善によく効く上、牛の食い付きがよく、牧草よりも(トラックなどで)一度にたくさんの飼料を運搬できるとして評判も上々である。

 一方で、モラセスなどの副産物は、すでにサトウキビ生産者と製糖業者との間で供給契約が締結されており、余剰が少ないため、今後、安定的な調達が課題とされる。

 なお、日本でもサトウキビ糖蜜由来の飼料は生産されており、糖蜜飼料は、胃中の微生物やバクテリアにとって栄養源として有用であるといわれている。

表6 豪州の砂糖需給の推移

タイ

2018/19年度、生産量は微減も、輸出は好調
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は178万ヘクタール(前年度同)と横ばいが見込まれている。生産量は1億3145万トン(前年度比2.6%減)と、記録的な単収増となった前年度の生産量と比べると、わずかな減少が見込まれているものの、潤沢な降雨が得られる見通しであることから、引き続き高い水準での推移が続くと見込まれている(表7)。

 砂糖生産量は、サトウキビ生産量の減少を受け、1513万トン(同2.9%減)とわずかな減少が見込まれているが、国内消費を上回る生産が続いていることから、輸出量は、1364万トン(同32.6%増)と2年度連続の大幅な増加が見込まれている。この結果、2017/18年度に大幅に増加した期末在庫については、2018/19年度は大幅に減少し、例年並みの水準に戻ると見込まれている。

輸出用粗糖の入札、低調な結果に
 8月22日、輸出用粗糖の3回目の入札が行われたが、入札量12万トンに対し、落札量は1万2000トン、価格についても、低迷する国際相場を反映し、「+50セント」という価格にとどまるなど、低調な結果となったと現地報道は伝えている。

 7月4日に行われた1回目の入札では2万4000トンが落札となったものの、18日の2回目入札は価格が折り合わず不調となっていた。

 タイでは、80万トンの粗糖輸出枠が設定されており、半分の40万トンは製糖工場に振り分けられ、残りの40万トンは、タイ・サトウキビ砂糖公社が入札により、輸出業者を決定している。落札金額のうち、国際価格(ニューヨーク相場No.11)に上乗せされた額が「タイプレミアム」と呼ばれており、輸出向け砂糖価格の指標としての性格が強いとされている。

生産者協会、国内外の価格差拡大に対する支援を政府に要請
 サトウキビ生産者協会は、産業省に対し、低迷する国際価格との差額を穴埋めするようなさらなる施策の実施を求める要望書を提出した。

 これまでも、国際価格と国内価格の差額を穴埋めする基金制度はあったが、国際価格が低迷した2017/18年度はその差額が大きく、150億タイ・バーツ(521億円)近くを投じた結果、基金が赤字となったとされる。国際価格の低迷が続く2018/19年度は、その差額がさらに大きくなると見込まれており、440億タイ・バーツ(1527億円)近い予算が必要となるとされるため、こうした追加資金の注入を政府に求めている。

 しかし、追加資金の注入を実施すれば、貿易相手国からの反発が必至であることから、今後の対応が注目される。

表7 タイの砂糖需給の推移

(参考) タイの砂糖(粗糖・精製糖別)の輸出量および輸出単価の推移

グアテマラ

2018/19年度、砂糖生産量と輸出量はともに前年度を下回る見通し
 2018/19砂糖年度(10月〜翌9月)のサトウキビ収穫面積は26万ヘクタール(前年度同)と横ばいが見込まれている一方、生産量は2752万トン(前年度比6.1%増)とかなりの程度増加し、回復が見込まれている(表8)。

 しかし、砂糖生産量については、前年度を下回る286万トン(同3.5%減)とやや減少すると見込まれている。輸出量についても196万トン(同5.7%減)と軟調な推移が見込まれており、直近月(7月)は前年同月比で2割程度の減少が見られるとしている。

表8 グアテマラの砂糖需給の推移

このページに掲載されている情報の発信元
農畜産業振興機構 調査情報部 (担当:企画情報グループ)
Tel:03-3583-9272